百万の契約

青いピアノ

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第3章 契約と運命

第172話 マナコの逆襲

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木霊喰らいの弱点は依然として謎に包まれていたが、悪霊である以上、封印が基本原則だ。

「魔法で可能な限り弱らせ、封印を試みましょう」とサリューは冷静に告げた。冷や汗が頬を伝い、言葉に重みを加える。

「サリュー執行官、封印の魔法は使えるんですよね? 私は全く使えないので」とロコが確認する。

声には焦りが滲み、彼女の指先は無意識に剣の柄を強く握りしめていた。

「…もちろんです」

サリューの声は低く、抑揚を欠いていた。

「しかし、大きいことが強いとは限らないとはいえ、この大きさ。普通の悪霊でも長官級従事者が四人は必要です」

彼女の視線は、蠢く木霊喰らいの巨体に釘付けにされていた。

「いるじゃないですか…! 若い二人を合わせれば」とロコが叫ぶ。

彼女の横目は、ステファニーと百合を鋭く捉えた。サリューは頷くでも首を振るでもなく、ただその言葉を飲み込んだ。  

『…確かに、この二人は他の執行官より優れている。しかし、この規模の悪霊を相手に、果たして四人で足りるのか…?』 

サリューは重い沈黙を破り、ゆっくり口を開いた。

「新指揮官。あなたの戦闘スタイルは対人戦でこそ活きる。ルーク執行官とサク管理官の援護に向かい、その上で二人をここに連れ戻してくれませんか?」 

「え…? い、いいんですか? そんなことをして」と新指揮官が戸惑う。

「こいつがここにいることで全滅する恐れがあります。屋毒を捕まえるのは、残りの二人に任せましょう。おそらく屋毒はこいつを召喚したことで大幅に魔力を消耗しています」とサリューは断言した。

木霊喰らいの咆哮が響き、大地がわずかに震えた。

新指揮官は短く頷くと、ルークたちの後を追った。足音が土を蹴り、草木を踏みしめる音が闇に吸い込まれる。

「皆さん、本気で行きますよ!」  
「はい!!!」 ステファニーと百合の声が鋭く響き、戦場に火花を散らす。


その頃、ルークとサクは巨漢の三姉妹の圧倒的な力と耐久力に追い詰められていた。空気は熱を帯び、汗と土埃が混じる中、戦いの轟音が森を揺さぶる。

「まったくよー、なんでさっきっからルークの攻撃を受けて倒れないんだよ!」 サクが叫ぶ。息が荒く、握りしめた杖が震えていた。

「はあはあ…。温存せず、もっと魔力を使うべきか…?」 

ルークの声は疲労に掠れ、額から滴る汗が地面に落ちる。

「ひゃーはっはっは! 見たろ! これ! このうちらの連携!」 

三姉妹の哄笑が戦場を切り裂く。マナコの声が特に甲高く、嘲るように響いた。

その瞬間、轟音と共に新指揮官の蹴りがマナコの顔面に炸裂した。  

ドガ!

「うわ! いてぇ!」

 マナコが斧を地面に突き立て、両手で顔を覆う。その隙を逃さず、新指揮官はナイフをマナコの腹に突き刺した。

ズブ

「沈め」と低く呟き、呪文を詠唱。ナイフがズズズと肉に沈み込む不気味な音が響く。マナコの絶叫が森を切り裂いた。

「ぎぃぃやあああああーーーー!」

「何者だ!? テメェ!」  
「姉御に何を!? この陰キャ野郎!」 ハナコとヤナコの怒号が重なり、地面が震える。

「新指揮官!?」 

マナコが痛みにのたうち、激しく手足をバタつかせる中、新指揮官は冷酷に次の呪文を紡ぐ。彼女の腹にそっと足を乗せ、「加重! 二倍、四倍、六倍…」と詠唱。  

メキメキと骨が軋む音が響き、新指揮官の足がマナコの腹を押し潰す。彼女が泡を吹いて意識を失うと、彼は静かに足を下ろし、薄い笑みを浮かべた。

「さて、ルーク執行官。サク管理官。とっとと残りを片付けましょう」 

彼の声は冷たく、面倒くさげに響く。すると、ハナコが顔を真っ赤にし、怒りで顔を歪めながら槍を握り、突進してきた。

「きぃー! この野郎!」

「雷光騎兵」  

ドカッ!

ルークが雷を纏い、光の速さで突っ込む。ハナコの腕に直撃し、彼女の巨体が吹き飛んだ。ルークは手を広げ、即座に次の呪文を放つ。

「石の礫!」  

無数の石が高速でハナコを襲い、彼女の悲鳴が響く。

「あががが!」  

「あ、姉御!」 

ヤナコが叫び、湯煙を身体から噴出し、全身を真っ赤にして突進。だが、サクが「硬質な壁」と詠唱すると、壁を瞬時に作り出し、激突させた。

ゴーン

「かはっ!」

 ヤナコがよろめく。

「素晴らしい連携ですね。あまり俺が来る必要なかったですかね…」 

新指揮官は呟き、二十本のナイフを異空間から取り出し、宙に浮かせる。次の瞬間、ナイフが一斉にハナコへ飛んだ。

ドドドド

「ぐはぁ!」 

「爆発しろ」と新指揮官が一言。ナイフが爆発し、ヤナコが倒れた。爆音が森を揺らし、煙が立ち込める。

ハナコが「おのれーー!」と咆哮し、石の礫を弾き返す。全身に魔力を纏わせ、何かを仕掛ける構えだったが、時すでに遅し。

ルークが「彗星の突撃」と詠唱。流れ星のように空気を焼きながらハナコを突き飛ばした。

ドン!

「…す、すげぇ。新指揮官って強かったんだな」
「増援、感謝します。しかし、なぜここに?」
「サリュー執行官の提案です。屋毒のやつはおそらく魔力量がそれほど多くありません。やはり、あの男は椿と綾香に任せることにしました」
「なーるほどねー。俺たちの力が必要だから呼び止めにきたってわけか。いやいや、強いってのも大変だな」
「…ルークさんですけどね。必要なのは」
「ぐはっ!冗談なんだからもう少し優しく扱ってよ~」
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