百万の契約

青いピアノ

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第3章 契約と運命

第195話 追っ手

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ドオオオオン!

爆発による巨大な火柱がそびえ立つ。ステファニーと、彼女に恨みを抱く者たちや追っ手との戦闘は、激しさを増すばかりだった。

「電撃の縛り網!」  

バリバリと電撃を放つ網が、傭兵の使い魔の巨大な猫を絡め取る。ステファニーは素早く動き、網に捕らわれた使い魔を無視して傭兵本人を狙う。

「遥か深淵より出でし、冥府の炎よ。万象を灼き尽くす、終焉の業火よ。我、汝に命ず。蠢く生命を消し、大地を滅ぼせ。冥府の焦土!」  

傭兵の足元の大地が地獄の炎に包まれる。地面は瞬く間にマグマのような質感に変わり、赤黒い光が辺りを照らしあ。

「ぐわぁぁ!」  

「はあはあ…! 今日、これで何人目よ…!」  

ステファニーの息は荒く、額には汗と雨が混じる。彼女はフラフラと歩きながら、近くの岩陰に腰を下ろす。

「ち、ちくしょう…! 長官にもなっていない女に…!」  

遠くで倒れた傭兵が最後の力を振り絞って呻くが、声はすぐに途切れた。

ステファニーは岩に寄りかかり、目を閉じる。  

『ああ、疲れた…。最初のはおそらくお祖父様や親戚の者たちの差金…。その後は融資を受けていた取引先の差金だろうな…。そして、私のせいで仕事を突然失った仕入れ先や召使…。今の男は変な武器を持っていて強かったな…兵器の開発資金を失った兵器開発関係者だろうな』

ぽつりと水滴が彼女の肩に落ちる。  

『ん…また雨か。この島は雨が多いなー…。魔力の使いすぎかな、少し眠い』

全身の力が抜けるように、彼女は岩に身を預け、意識を失う。


どれくらい眠っていたのかわからない。  

「おい! 元・お嬢様! 起きろよ!」  

ガバッと勢いよく立ち上がるステファニー。岩の上には、銃を二丁構えたカウボーイ風の男が、ニヤリと君悪く笑っている。ステファニーは即座にレイピアを抜くが、男の放った弾丸が彼女をかすめる。  

ドドン!  

「うっ…! こんな時に王子様がいてくれれば…!」  

ステファニーが呻くその瞬間、どこからともなく温かな声が響く。  

「精霊の怒り!」  

ドン! 蒼白い光が男を包み込み、男は地面に倒れ込んだ。

「うそ…!? 王子様…? なんでこんなところに…?」  

ステファニーは涙を浮かべ、呆然と呟く。だが、ふと目を覚ますと、そこは雨と土の匂いに満ちた岩陰だった。  

『夢か…。そりゃあ、そうだよね…』

ステファニーはゆっくり立ち上がり、目の前に広がる森へ向かって歩みを進めた。

森は驚くほど豊かだった。川魚、バナナ、パイナップルなど食物が豊富で、ステファニーはようやく体力を回復できた。  

「このまま、逃亡生活になるのかな。機構に戻ったところで命を狙われるだけ…。まいったな…」  

森の奥深く、雨は止むことなく降り続き、木々の間を抜ける風が不気味な唸りを上げる。ステファニーは一時的な休息を得たものの、追っ手の気配は途切れない。遠くで聞こえる獣の遠吠えや、枝が折れる音が、彼女の神経をさらに研ぎ澄ませる。

ステファニーは森の奥で小さな洞窟を見つけ、雨をしのぐために身を隠した。彼女はレイピアを膝に置き、青い魔法石の指輪をじっと見つめていた。

コツコツコツ…

洞窟の外で、かすかな足音が聞こえる。ステファニーは即座に立ち上がり、レイピアを構えた。

「誰だ!」  

暗闇の中から現れたのは、黒いマントに身を包んだ女だった。顔は仮面で隠されているが、その動きには見覚えがある。ステファニーの心臓が早鐘を打つ。  

「…百合?」  

ステファニーの声に、わずかな動揺が混じる。百合は、機構の契約執行官の中でも特に優れた実力者だ。ステファニーと仲良くなったはずだが、今は機構の執行官として彼女を追っている可能性は否定できない。

「ステファニー・ハイアット。一方的な契約破棄者として、お前を拘束する」  

百合の声は冷たく、仮面の下の目は感情を一切見せない。彼女の手には、電気を帯びた短剣が握られている。  

「百合、待って! なんであなたがここにいるの!?」  

ステファニーは必死に訴えるが、百合は一歩踏み出す。  

百合の短剣から雷が迸り、洞窟の壁を焦がす。ステファニーは咄嗟に氷の障壁を展開し、雷撃を防ぐ。  

「氷の盾!」  

ガキン! 雷と氷がぶつかり合い、洞窟内に火花が散る。  

戦闘は一進一退。ステファニーの魔法は百合の雷を封じ込めるが、百合の執拗な攻撃は、ステファニーの体力をさらに削る。  

その時、洞窟の奥から別の気配が近づく。ステファニーの背筋に冷たいものが走る。  

『まさか…増援!?』

だが、洞窟の闇から現れたのは、意外な人物だった。白いローブをまとった若い男。手に持つ杖には、淡い緑の光が宿っている。  

「ステファニー、こっちだ! 早く!」  

男の声に、ステファニーは一瞬戸惑う。彼の、その声にはどこか聞き覚えがあった。  

「…椿!?」  

ステファニーの叫びに、男は小さく頷く。  

「話は後だ! 今は逃げるぞ!」  

椿の杖から放たれた緑の光が、百合の雷を一時的に押し返す。ステファニーはその隙に洞窟の奥へ駆け込む。百合は追おうとするが、椿の魔法が洞窟の入り口を土砂で塞ぎ、追跡を阻んだ。

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