百万の契約

青いピアノ

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第4章 契約世界への挑戦

第236話 ルークの恋物語

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機構本部の街は、晴天の下で活気に満ちていた。石畳の通りには、契約執行官や管理官たちが忙しなく行き交い、遠くの教会から響く鐘の音が聞こえてくる。契約執行官ルーク・ヴァイスハイトは、漆黒のローブをなびかせ、純白の仮面で顔を隠しながら、街の中心広場を歩いていた。双頭ランス「ジャッジメント」を肩に担ぎ、右手の人差し指には銀色の魔法の指輪が鈍く光る。彼は、契約執行官としての任務を終えたばかりで、心は少し軽かったが、胸の奥では別の感情が渦巻いていた。

「ルーク、ぼーっとしてるとまたサクにからかわれるぞ!」

メリンダ・ハランの明るい声が広場に響く。彼女は、ピンクに染めたブロンドのロングヘアを低めのポニーテールにまとめ、黒いコートの下にタイトなタートルネックとレザーパンツを着こなしていた。キラキラした瞳と口角の上がった笑顔が、彼女の自信と親しみやすさを際立たせる。ルークは彼女の声にハッとして振り返るが、仮面の下で頬が熱くなるのを感じた。メリンダに会うたび、彼の心は揺れる。かつて戦場で彼女に助けられ、優しく肌を撫でられた記憶が蘇る。ルークは彼女の深い人柄に惹かれたのだ。

「メリンダさん…お、遅かったじゃないですか」


ルークの声は少し震え、枯れる。彼は積極的に話しかけられず、いつも言葉を飲み込んでしまう。メリンダは笑いながら近づき、「遅刻は私の特権よ」と軽く肩を叩いた。その瞬間、ルークの心臓は跳ね上がった。

そこへ、軽快な足音とともにサクが現れる。「おーい、ルーク!お!メリンダさん!おふたりともお似合いですね!」 サクの声はからかうような響きで、ルークは仮面の下で顔を真っ赤にする。「ち、違うって!サク、からかうなよ!」と反論するが、声は弱々しい。メリンダはサクの冗談に「なんだよ、それ!姉と弟の間違いだろ!?」と大きな声で笑う。

その少し後ろで、大津ミナミが白いコートを着て、セミロングのブラウンヘアを揺らしながら歩いてくる。彼女は、ルークのことが好きで、大きな瞳で彼をそっと見つめるが、シャイな性格ゆえに言葉が出てこない。かつてルークの契約見守り人を務めた経験から、彼への想いは特別だった。

「ほら、ミナミ!ルークが待ってるぜ!」

サクが突然ミナミの背中をドンと押し、彼女はバランスを崩してルークにぴたりとくっついてしまう。

「あっ、ご、ごめんなさい!」

ミナミは真っ赤になり、ルークも彼女の柔らかな胸の感触にん、仮面の下で目を丸くして固まる。

「う、うわっ、大丈夫、ミナミさん…」と慌てて言うが、声は枯れたままだ。二人のぎこちない様子に、メリンダが笑いながら言う。

「相変わらず仲良いね、あなたたち!」

その言葉に、ルークの心はズキリと痛む。メリンダは自分に興味がないのか? 彼女の明るい笑顔が、なぜか遠く感じられた。ルークは仮面の下で唇を噛み、ショックと落ち込みが胸を締め付ける。サクはそれを見て大笑いするが、ルークの真剣な雰囲気に気づき、笑いを引っ込める。「お、おい、ルーク、まじで落ち込むなよ…」と焦るサク。

その夜、ミナミはサクに相談を持ちかけていた。

「ルークさん、メリンダさんのこと…大人な女性が好きなのかな?」ミナミの声は不安げで、大きな瞳には涙が浮かんでいた。

サクは頭をかき、「いや、まあ、ルークのやつ、確かにメリンダさんにベタ惚れだけど…」と言葉を濁す。ミナミの悩みに、サクはますます困り果てる。

夜の酒場で、サクはルークを誘い、二人でグラスを傾けることにした。

「ルーク、ミナミのことちゃんと見てやれよ。あの子、お前のこと…」

サクは言いかけて、ルークの真剣な表情に言葉を止める。

「メリンダさんは年が離れてるって。気持ちはわかるけどさ、あの人ももうすぐ三十五歳だぜ?」

サクが説得するが、ルークは静かに首を振る。

「年齢じゃない。メリンダさんの人柄だ。戦場で俺を助けてくれたとき、彼女の優しさに触れた。契約印痕を見ながら、俺の傷を撫でてくれたんだ…」

ルークの声は熱を帯び、過去の記憶に浸る。

サクは困った顔でグラスを手に持つ。

「ったく、お前ってやつは…」と呟き、二人は黙って酒を飲んだ。星空の下、機構本部の街は静かに夜を包み、ルークの心はまだ揺れていた。
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