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第4章 契約世界への挑戦
第235話 綾香の修行一年目
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「呪われたゴーレム?」
綾香が不思議そうに篝を見やる。
「そう、あれがそのゴーレムだ。百年近く前、当時の四賢者の一人によって封印された、凶悪な巨人の魂を宿したゴーレムだよ。幾重もの呪いをかけられた不運な存在さ。頑丈な岩の体は滅多なことじゃ壊れないし、たとえ倒してもすぐに再生して蘇る。呪いのせいで死ぬことはないけど、この谷から出ることもできない。人格は残っているらしいが、こんな何もない谷で永遠に生き続けるのは、まさに地獄だね」
巨岩の体を持つ「呪われたゴーレム」は、十五メートルの巨体を誇り、黒い瞳に黄色く輝く大きな目を持つ。その巨体がのそのそと谷間を進む姿を、峠から覗き込む綾香、レイチェル、篝の三人。
「…それで、どうするの?」
「暇を持て余したゴーレムの相手をしてやろうってわけさ。幸い、あいつは頑丈で不死身ときた。この谷は魔力濃度が百九十と高いから、修行には最適だよ」
綾香とレイチェルは目を丸くし、改めてゴーレムに視線を向けた。
ズシン、ズシンと地面を揺らし進むゴーレムの足元に、三人が姿を現す。ゴーレムは即座に彼女たちの気配を察知した。
次の瞬間、巨大な足が振り上げられ、三人を踏み潰そうと迫る。
「…!いきなり攻撃してきた!」
「当たり前よ。人格は残ってるけど、元は狂人だったらしいからね。攻撃しか頭にないのよ」
「それより、早くなんとかしないと!」
レイチェルが慌てて綾香と篝を見やるが、篝は動く気配がない。両手を組んで仁王立ちのまま。綾香はレイチェルと目を見合わせ、小さく頷いた。
「聞け、天を裂き地を砕く暴嵐の咆哮を!我が刃に宿るは、破壊と飛翔の風。すべてを吹き飛ばし、断ち切れ……暴嵐の断頭!!」
「火遁・火射一閃!」
レイチェルの風がゴーレムの足を直撃し、綾香の炎が腹部を襲う。
ドゴオオ!!
「え!?」
「はあはあ…うそでしょ…!?ほとんど効いてない!?」
ゴーレムの足は半分ほど斬れたが、すぐに再生が始まった。腹部はえぐれ、黒く焼け焦げた跡が見えるものの、ゴーレムはまるで意に介さず足を下ろす。
ズン!!!
三人は慌ててその場を離れたが、振動と砂煙でバランスを崩す。
「レイチェル、まあまあだね。けど、もう魔力切れ? 上位呪文一発で息が乱れるなんて…」
レイチェルは自分が放った呪文の威力に驚いていた。知識としては知っていたこの呪文、普段は使うのを控えていたが、西の荒れ地で使ったことで何かコツを掴んだらしい。しかし、魔力の量は変わらない。彼女はすでに魔力のほとんどを消費していた。
『ただの岩山なら、遠距離から火遁で破壊したこともある…。このゴーレムの岩、ただの岩じゃない!』
綾香はかつて西の荒れ地で岩山を破壊したことを思い出す。あの頃より数段強くなったはずなのに、大した傷もつけられないことに驚き、額に汗をにじませた。
「こんな化け物、どうすれば…」とレイチェルが焦る。だが、篝は不敵な笑みを浮かべていた。両手をそっと前に出すと、荒々しい炎が現れた。
「火遁・紅蓮葬華」
その一言とともに、ゴーレムを囲むように無数の花型の炎が現れ、熱気で周囲を包み込む。すると、高温の炎がゴーレムを焼き尽くし、
ごおおおおおおお…!
轟音とともに、ゴーレムは一瞬にして灰と化した。
「す、すごい…!」綾香とレイチェルが声を揃えて驚く。
「ま、ざっとこんなもんね!」
だが、ゴーレムの灰はゆっくりと集まり、再び巨岩の姿を取り戻そうとしていた。
「一旦、ここから離れようか。けど、いい? 綾香、今のが真の紅蓮の力よ。紅蓮の炎は岩も鉄も灰にする。あなたの紅蓮は、まだまだ半人前ね。これから、この力を教えてあげる」
「あ、あの…! 私も! せっかく本部から休養の許可も得たのですし、どうか…!」とレイチェルが割って入る。
「そっか、あなたも修行したいんだよね。でも、無詠唱魔法はあなたなら自力でできるようになるんじゃない?」
「そ、それは…。できれば、戦い方や魔力増幅などを教わりたいです」
「うーん。魔力の量は簡単には増やせないけど、この魔力濃度の高い土地なら、少しは増えるかもしれない。いいわ、二人とも修行をつけてあげる」
「はい!!」
自分たちの力不足を痛感した二人は、力強く答えた。胸の奥には、椿を守りたいという強い想いと、契約や誓約に縛られず、己の信念で生きる意志。
その後、篝の指導のもと、二人は魔力濃度の高い土地を転々としながら一年間の修行を積んだ。確実に力を伸ばしていった二人。やがて綾香は高位の火の精霊に会うため旅に出て、レイチェルは休養期間を終えて任務に復帰した。この頃には二人とも、篝に「見違えた」と絶賛されるほど成長していた。
綾香が不思議そうに篝を見やる。
「そう、あれがそのゴーレムだ。百年近く前、当時の四賢者の一人によって封印された、凶悪な巨人の魂を宿したゴーレムだよ。幾重もの呪いをかけられた不運な存在さ。頑丈な岩の体は滅多なことじゃ壊れないし、たとえ倒してもすぐに再生して蘇る。呪いのせいで死ぬことはないけど、この谷から出ることもできない。人格は残っているらしいが、こんな何もない谷で永遠に生き続けるのは、まさに地獄だね」
巨岩の体を持つ「呪われたゴーレム」は、十五メートルの巨体を誇り、黒い瞳に黄色く輝く大きな目を持つ。その巨体がのそのそと谷間を進む姿を、峠から覗き込む綾香、レイチェル、篝の三人。
「…それで、どうするの?」
「暇を持て余したゴーレムの相手をしてやろうってわけさ。幸い、あいつは頑丈で不死身ときた。この谷は魔力濃度が百九十と高いから、修行には最適だよ」
綾香とレイチェルは目を丸くし、改めてゴーレムに視線を向けた。
ズシン、ズシンと地面を揺らし進むゴーレムの足元に、三人が姿を現す。ゴーレムは即座に彼女たちの気配を察知した。
次の瞬間、巨大な足が振り上げられ、三人を踏み潰そうと迫る。
「…!いきなり攻撃してきた!」
「当たり前よ。人格は残ってるけど、元は狂人だったらしいからね。攻撃しか頭にないのよ」
「それより、早くなんとかしないと!」
レイチェルが慌てて綾香と篝を見やるが、篝は動く気配がない。両手を組んで仁王立ちのまま。綾香はレイチェルと目を見合わせ、小さく頷いた。
「聞け、天を裂き地を砕く暴嵐の咆哮を!我が刃に宿るは、破壊と飛翔の風。すべてを吹き飛ばし、断ち切れ……暴嵐の断頭!!」
「火遁・火射一閃!」
レイチェルの風がゴーレムの足を直撃し、綾香の炎が腹部を襲う。
ドゴオオ!!
「え!?」
「はあはあ…うそでしょ…!?ほとんど効いてない!?」
ゴーレムの足は半分ほど斬れたが、すぐに再生が始まった。腹部はえぐれ、黒く焼け焦げた跡が見えるものの、ゴーレムはまるで意に介さず足を下ろす。
ズン!!!
三人は慌ててその場を離れたが、振動と砂煙でバランスを崩す。
「レイチェル、まあまあだね。けど、もう魔力切れ? 上位呪文一発で息が乱れるなんて…」
レイチェルは自分が放った呪文の威力に驚いていた。知識としては知っていたこの呪文、普段は使うのを控えていたが、西の荒れ地で使ったことで何かコツを掴んだらしい。しかし、魔力の量は変わらない。彼女はすでに魔力のほとんどを消費していた。
『ただの岩山なら、遠距離から火遁で破壊したこともある…。このゴーレムの岩、ただの岩じゃない!』
綾香はかつて西の荒れ地で岩山を破壊したことを思い出す。あの頃より数段強くなったはずなのに、大した傷もつけられないことに驚き、額に汗をにじませた。
「こんな化け物、どうすれば…」とレイチェルが焦る。だが、篝は不敵な笑みを浮かべていた。両手をそっと前に出すと、荒々しい炎が現れた。
「火遁・紅蓮葬華」
その一言とともに、ゴーレムを囲むように無数の花型の炎が現れ、熱気で周囲を包み込む。すると、高温の炎がゴーレムを焼き尽くし、
ごおおおおおおお…!
轟音とともに、ゴーレムは一瞬にして灰と化した。
「す、すごい…!」綾香とレイチェルが声を揃えて驚く。
「ま、ざっとこんなもんね!」
だが、ゴーレムの灰はゆっくりと集まり、再び巨岩の姿を取り戻そうとしていた。
「一旦、ここから離れようか。けど、いい? 綾香、今のが真の紅蓮の力よ。紅蓮の炎は岩も鉄も灰にする。あなたの紅蓮は、まだまだ半人前ね。これから、この力を教えてあげる」
「あ、あの…! 私も! せっかく本部から休養の許可も得たのですし、どうか…!」とレイチェルが割って入る。
「そっか、あなたも修行したいんだよね。でも、無詠唱魔法はあなたなら自力でできるようになるんじゃない?」
「そ、それは…。できれば、戦い方や魔力増幅などを教わりたいです」
「うーん。魔力の量は簡単には増やせないけど、この魔力濃度の高い土地なら、少しは増えるかもしれない。いいわ、二人とも修行をつけてあげる」
「はい!!」
自分たちの力不足を痛感した二人は、力強く答えた。胸の奥には、椿を守りたいという強い想いと、契約や誓約に縛られず、己の信念で生きる意志。
その後、篝の指導のもと、二人は魔力濃度の高い土地を転々としながら一年間の修行を積んだ。確実に力を伸ばしていった二人。やがて綾香は高位の火の精霊に会うため旅に出て、レイチェルは休養期間を終えて任務に復帰した。この頃には二人とも、篝に「見違えた」と絶賛されるほど成長していた。
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