百万の契約

青いピアノ

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第5章 契約と誓約の戦

第264話 百合との再会

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忠誠契約印──それはショート総監補佐の説明通り、機構命令に背く者や機構の判断に反対する者たちへ呪印による罰を与える契約。忠誠の度合いに応じて、呪印の効果は異なるが、一度罰を与えられると契約印が赤黒く光り、一目で忠誠心の低さを判別できる。

これは、現体制への反対者を炙り出すと同時に希望制と称した魔力融合を半ば強制的に行うものでもある。

忠誠契約印を全機構従事者に使われることが発表されてからわずか一日。

霧ノ都の契約管理機構《コードレジスト》全体が、ひそやかな動揺に包まれた。

そして、最初の刻印者たち──かつて職場の愚痴や、方針への軽口を口にしていた者たち──の腕に、契約印が現れはじめた。

契約印は機構に反発すると血管のように皮膚を這い、赤黒く光る呪印となって他者から隔てられていることを示す。

「……どうしてあの人が? 機構に忠実だったはずよ」
「いや、あいつ、今朝『命令が非合理だ』って叫んでいたこと、覚えてるか?」
「やばい、私……前に彼の肩を持ったことある…目をつけられないかな…」

声にならないざわめきと、管理されるという意識が広まっていた。

「――椿管理官、本日以降の外出は許可制となりました。忠誠契約印の対象者として、行動の自由には制限が課されます。外出は、事前に外出契約を防衛局・警備部と交わしてください」

無表情な警備員が、形式的な言葉で椿に通達すると、簡易契約書を渡された。

椿は沈黙したまま、それを受け取った。

「……これは、軟禁と変わらないわね」

後ろで、レイチェルがため息をつく。

「施設にも自由に出入りできない。病院も図書室も。わたしたちが危険人物だとでも言うの?」

「……違う。危険じゃないの。機構にとって“予測できない”人間が、不都合なだけ」

椿は、契約書への署名を終えると、警備員へと手渡した。

――最上階のあの無窓の会議室では、今、何が話し合われているのだろう。

あの静寂と統制の中で、誰が主導し、誰が従い、そして誰が消されるのか。

「すべてが変わったな……」

椿はそう呟くと、ふと目を伏せて続けた。

「以前まで魔力融合の力は、希望だった。
けれど今、それは機構の“選別”に利用される力になった。適合する者は利用され、疑念を持つ者は縛られ、排除される。幹部は希望者のみ融合と説明するものの、忠誠契約印が用いられるようになった今、その説明はもはや信頼できない。
力ある者がその立場を利用して作る契約は、公平ではないよ…」

レイチェルは静かに椿の横に座り、彼の肩に背を預ける。

「……空気が、重たいわね。まるで何かが沈んでいく前の静けさみたい」

「うん…」

椿の声は、遠くを見据えるように硬かった。
すると、そよ風が椿の髪を軽く揺らし、ベンチに座る椿とレイチェルの前に、軽やかな足音が近づいてきた。

椿が顔を上げると、そこには淡い茶色のロングヘアが風に揺れる百合が立っていた。緩やかなウェーブの髪は陽光を浴びて輝き、前髪がアーモンド型の鋭い目をわずかに覆う。彼女の白い肌は透明感を湛え、薄い唇がほのかに微笑む。黒いコートが身体に馴染み、しなやかな筋肉と服の上からでもわかる大きな胸が際立つ体型が健在だ。

「椿!」  

百合の声は弾むように響き、彼女の目は一瞬で輝いた。椿も立ち上がり、驚きと喜びが混じる笑顔を浮かべる。  

「百合!二年ぶり…!元気だった?」  

百合は一歩近づき、コンバットブーツの静かな足音が芝生に吸い込まれる。彼女の心臓は高鳴り、胸の内で叫びがこだまする。一瞬、辺りが静けさに包まれる。

『…ダメだ!私、やっぱり椿のこと好きすぎる!!!何この子!?かっこかわいすぎる!!』

その想いを押し隠し、百合は少し照れくさそうに手で口を塞いで笑った。  

「あ…!ご、ごめんね、椿が帰ってきたとき、任務でいなくて…迎えに行けなかった」  

椿は軽く手を振って、気にしないよ、と柔らかく答えた。  

レイチェルがベンチから立ち上がり、百合の肩を軽く叩く。  

「百合、任務から戻ったばかりでしょ?新幹部の新方針で、みんな混乱してるみたいね。忠誠契約とか、魔力融合者の選定とか」  

百合はコートの裾を軽く払い、ダークグレーのボディスーツが光に映える。彼女は小さく頷き、ため息をついた。  

「そうみたいだね。さっきも、忠誠契約の印で火傷させられた人を見たよ。呪印が赤黒く光って、まるで呪いみたい。反対したら即罰だって…ひどいよね」  

「でさ、椿!」

百合は急に明るい声に切り替える。

「これからまた別の任務なんだけど…一緒に行かない?」  

椿は少し驚いた顔で百合を見た。  

「え、機構の命令じゃないのに、いいの?」  

百合はにっと笑い、首元のスタンドカラーを軽く整えた。  

「指揮官の新《アラタ》さんが、椿もよければ連れてってあげて、って。久々の任務に慣れさせるため、らしいよ」  

椿は一瞬考え、頷いた。  

「…うん、行くよ。せっかくの機会だし」  

百合の顔がぱっと明るくなり、彼女のしなやかな体幹がわずかに揺れる。  

「やった!じゃあ、準備して!一緒に頑張ろうね、椿!」  

公園の陽の光の下、百合の笑顔はまるで二年前と変わらない輝きを放っていた。

百合の自室は、柔らかな間接照明が暖かい光を投げかけ、壁には任務で集めた小さな装飾品が並んでいる。彼女は黒いコートを脱ぎ捨て、淡いピンクのウサギ柄パジャマに着替えた姿で、ベッドの上で巨大なウサギのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめていた。緩やかなウェーブの茶色い髪が肩に流れ、興奮で頬がほんのり赤い。  

「きゃー!椿、かっこよかった!さいこーだよ!」  

百合はぬいぐるみに顔を埋め、足をバタバタさせて叫ぶ。

「だめ!私、やっぱり椿のこと諦めちゃだめ!」 
 
一通りはしゃいだ後、彼女はベッドに寝転がり、天井を見つめる。椿の姿が脳裏に浮かぶ。細身なのにしっかり筋肉質な体、任務中の鋭い目つき、そして二人で過ごした夜の記憶。百合の心臓がまた高鳴り、頬が熱くなる。「うう…あの時の椿、ほんと…やばい!」彼女は枕に顔を押し付け、興奮を抑えきれず小さく唸った。  

翌朝、椿のワイバーン、ストームの背に乗り、百合と椿は菜の花の国へ向かった。ストームの強靭な翼が風を切り裂き、あっという間に機構本部の島々を抜けた。百合は椿の背中にしがみつき、コンバットブーツのつま先をストームの鞍に引っかけながら、風に揺れる髪を押さえた。

「椿、ストーム速いね!気持ちいい!」

彼女の声は風にかき消されそうだったが、椿は振り返り、軽く笑った。そして、すぐに俯き、頬を赤く染めた。

『気持ちいいのはこっちだよ…。相変わらず大きくて柔らかい…。なんだよこのふわふわした感触…。最高すぎる…』

数日後、二人は菜の花の国に到着。飢饉に苦しむこの国は、黄金芋の購入契約をペッパーと呼ばれる商人と結んでいたが、ナナ契約管理官の報告では輸送が遅れている。百合の任務は、契約違反の罰として10%の芋を上乗せさせるか、さもなくば上乗せ分の金板を受け取ることだった。  

菜の花の西、名もない紛争地の外れにある、埃っぽい倉庫に着くと、ペッパー商人は汗だくで弁解した。

「下請けが遅れてるんです!芋は来週には届きます!」

だが、倉庫には芋の影すらなく、百合は鋭い目で商人を見据えた。彼女のレザーベストの銀装飾が、薄暗い倉庫で冷たく光る。

「契約は契約。金板を渡して」

商人は渋々金板を手渡し、来週の配送を約束して契約を更新した。椿は黙ってそのやり取りを見守り、百合の毅然とした態度に小さく頷いた。  

その夜、菜の花の国の役員に報告を終えた二人は、簡素な宿に泊まった。木造の部屋には小さな窓から月光が差し込み、百合の白い肌がほのかに輝く。彼女はベッドの端に座り、椿をじっと見つめた。  

「ねえ、椿…」

百合の声は少し震え、頬が赤らむ。

「前に、私の暴走で椿を困らせちゃって…ごめんね。でも、やっぱり我慢できない。魔力融合、しよう?」  

椿は静かに首を振った。

「ごめん…機構の判断がないと、融合はできないよ。そういう契約だから」  

百合は一瞬唇を尖らせ、だがすぐに目を輝かせて身を寄せた。

「じゃあ…普通に、しよう?」

彼女は椿の頬に手を当て、そっと唇を重ねた。月光の下、百合の淡い茶色の髪が揺れ、彼女の心は再び高鳴った。椿は一瞬驚いたが、優しくそのキスを受け止めた。

「あの時以来だから、優しく、ね?」

「うん」と椿が短く返すとサナエとの別れ、機構の冷たい方針その重さを、百合の温もりに溶かすことにした。

百合の唇が椿の唇に重なり、最初はためらいがちに、探るように触れては離れ、また触れる。柔らかく湿った感触が伝わるたび、椿の息が小さく乱れた。百合は目を閉じ、椿の頬を両手で包み込むようにして、ゆっくりと舌を滑り込ませる。甘い吐息が絡み合い、部屋に小さな水音が響く。

「……んっ」

椿が小さく漏らした声に、百合の背筋が震えた。彼女はキスを深くしながら、椿の肩に手を回し、そっとベッドに押し倒す。月が椿の黒髪を銀色に染め、細い首筋のラインを浮かび上がらせる。百合は唇を離し、椿の耳たぶを甘く噛んだ。

「椿……大好き」

熱を帯びた囁きに、椿の頬がさらに赤く染まる。百合は椿のパジャマのボタンを一つずつ外していく。指先が震えながらも、確かな想いを込めて。白い肌が露わになるたび、百合の息が熱くなる。

大きな百合の胸がふわりと揺れる。影に潜みきれない大きな乳輪が椿の舌を誘う。

百合は顔を寄せ、椿の鎖骨に唇を這わせる。舌先でゆっくりとなぞり、首筋から下半身へと降りていく。椿の体がびくりと反応し、小さな吐息が漏れる。

「百合……っ」

その声に、百合の胸の奥が疼いた。彼女は椿の硬くなった肉棒に口をつけ、優しく吸い上げる。舌で転がし、歯で軽く甘噛みする。椿の背が弓なりに反り、指がシーツをぎゅっと掴んだ。椿は百合の片方の胸を手で包み、親指で頂を円を描くように刺激する。

「……かわいい。椿のここ、こんなに硬くなってる」

恥ずかしそうに目を逸らす椿に、百合は微笑みながらさらに下へ唇を滑らせた。すると、椿が百合との位置を交代する。

椿は百合の膝の間に体を滑り込ませ、両手で内ももを優しく開いた。彼女の秘部はすでに熱を帯び、淡い蜜で濡れ光っていた。椿は息を呑み、そっと指で触れる。ぬるりとした感触に、百合の腰が小さく跳ねた。

「…恥ずかしい……」

「だめ、ちゃんと見せてほしい。百合の全部、僕にくれるんでしょ?」

椿は優しく言葉をかけ、指をゆっくりと滑らせる。濡れた花弁をなぞり、敏感な突起を軽く押す。椿の息が一気に乱れ、甘い声が漏れ始めた。彼は顔を近づけ、舌先でそっと舐め上げる。熱く甘い味が口の中に広がり、百合の体も熱くなった。

「んあっ……!」

百合の声が大きくなり、椿はさらに舌を絡ませる。柔らかく吸い、舌先で円を描きながら、時折指を浅く挿入する。彼女の内壁は熱く、椿の指をきゅっと締めつけた。彼はもう一本指を加え、ゆっくりと出し入れしながら、舌の動きを速める。

百合よ腰が自然と動き始め、椿の髪を掴む手が強くなる。二人は互いの反応を確かめながら、連携を深くしていく。ふたりの体が震え、甘い喘ぎが部屋に響く。

「百合……もう、だめ……っ」

椿は舌で敏感な部分を強く吸い、指を深くまで挿入して内壁を擦る。百合の体がびくんと大きく跳ね、熱い蜜が溢れ出した。

「ああっ……!」

「大好きだよ、椿……」

二人の体温が溶け合うように重なる。椿は腰をゆっくりと動かし、敏感な突起を擦り合わせる。熱と快感が波のように押し寄せ、二人の息が重なる。

「椿……一緒に……ん!」

「うん……百合……あぁ!」

腰の動きが速くなり、二人の体が激しく震えた。熱い波が同時に押し寄せ、二人は強く抱き合いながら達した。甘い叫びが重なり、部屋に静かな余韻が広がる。

月光の下、二人は汗ばんだ体を寄せ合い、優しくキスを交わした。百合は椿の髪を指で梳きながら、幸せそうに微笑む。

「二年ぶりでも……やっぱり、椿といると落ち着く」

椿は恥ずかしそうに笑い、百合の胸に顔を埋めた。

「……僕も。百合の温もり、忘れられなかった」

外の夜風がそっと窓を揺らし、二人の体温だけが静かに部屋を満たしていた。久しぶりの交わりは、機構の冷たさを忘れさせるほどに、熱く優しく深かった。
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