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第5章 契約と誓約の戦
第275話 仲間探し
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「なんだ、お前たち、無事だったんだな……」
冷たく無愛想な声。それでも、ジョン・ジュニアの目の奥には、かすかな安堵がのぞいていた。
「うん。紫音たちがやられるかもしれない未来を聞いてたから、だいぶ不安だったけど……うまくいったよ。忍びたちの救出」
「そうか……」
「まあ、お前たちが行ったことで未来が変わったんだろう。だが、油断するな。この先の未来は、当面暗そうだぞ」
「何か見たの?」
ジョン・ジュニアはわずかに視線を逸らし、口元を引き結ぶ。
「いや……何も。ただ……」
「?」
「闇だけさ。霧のように濃い、真っ暗な闇」
その言葉は淡々としているのに、胸の奥底から冷えを伝えてくるようだった。
椿はその言葉に少し恐怖を覚え、話題を変えようとした。
「そういえば、ジュニア。ジョンさんとマリアンヌさんは元気?」
「ああ…。いや、それがよぉ…」
すると、椿の魔力融合者リストを持ったガンナがやってきた。
「遅れてごめん!はい、これ!融合者リスト!ドラフトだけど!」
ガンナが手渡したのは膨大な量の機構従事者の魔力情報冊子。この中には向こう三ヶ月ほどの予定も書かれている。椿は慌てて目を通すが、知っている者はあまりいなかった。
「あれ?でも、これって…」と椿が目に止めたのは、最近魔力融合をしたばかりの幹部、契術研究所副所長アシャ・カレンジと医療局副局長ミレン・ザフラウィだった。
「うん…。なぜか二人は週一で椿との魔力融合することになっているの。サナエさんも定期的に融合していたから、それでかなとは思ったんだけど、考えてみたらおかしいよね…?」
「うん。全ての型との融合を試して、"自然の魔力"の型、ZZZ型をつくる実験なら、定期的に別の魔力の型を融合するのは…おかしいよね。誰が作ったの、これ?」
「作ったのは契術研究所と医療局の職員数人だけど、最後にまとめたのはミレンさんかな。でも、まだこれドラフトで、来週には結依子医療局長とマカロン研究所長に回すんだって」
「あー……なるほど」と椿は少し引き気味に言った。椿は少し考えた後、「ありがとう。ちょっとこれ、まだ誰にも見せないで」と言って足早にその場を去った。
その頃、レイチェルは防衛局で、捕獲した指名手配犯ザンドリーを引き渡していた。
鎖で拘束されたサイプロスを見た瞬間、周囲の空気がざわめきに変わる。
「す、すげえ……サイプロスなんて化け物、よく捕らえたな……」
「ただのサイプロスじゃねえ…。アイツは、任務達成時の報酬を自分だけのものにしようと、仲間殺しを繰り返した化け物だ。管理官五人、執行官三人、調停官一人…。その中には長官もいたとかな……」
「マジかよ。これは賞与ものだぞ……」
視線と囁きが一斉に自分に向かうのを、レイチェルは感情を動かさぬよう表情を固めてやり過ごす。
そこへ、アイス防衛局長が姿を現した。スノーエルフの彼女は凛とした姿でレイチェルの前に立った。
「……本物ね。ザンドリーを捕まえるだなんて、お手柄だわ。どこで捕まえたの?」
「……霧ノ都です。皮肉にも、今まさに協力関係を強化している雷雨大名のお膝元にいました」
「そう……ご苦労様。でも、なんであなたは霧ノ都に?」
一歩踏み込まれた問いに、レイチェルはわずかに眉を寄せた。
「それを言う義務はありますか?」
「……ないわね。でも、霧ノ都に派遣されていた執行官たちが行方不明になっているらしいの。何か知っているかなと思って」
「そうなんですね。……いずれにせよ、賞金は受け取りましたので、失礼します」
背を向けたその瞬間、アイスの声が鋭く追いかけてくる。
「待って!」
ぴたりと足が止まる。振り返ると、局長の目は好奇心と探るような色を帯びていた。
「……あなたも、魔力の融合儀式をやったの? どうだった?」
一瞬、胸の奥に小さなざわめきが走る。しかしレイチェルはすぐに感情を抑え、淡々と答えた。
「すみません、私はまだ……」
それだけ告げ、再び歩き出した。
その頃、百合は真弓、ナナ、アラナと共に、小さな会議室の隅で机を囲んでいた。
紙コップの中の紅茶はもう冷え切っている。
一同はアラナから受け取った呪印封じの塗り薬を忠誠契約印に丁寧に塗っていた。
「よく手に入ったね。こんなの…」
「アラナはまだ契約見守り人。忠誠契約印対象外だからね。頑張って色々な市場を見てまわってもらったんだよ」
百合は忠誠契約印の効果が弱まったことを確認すると、相手の言葉を待った。
「……機構の過激化に反対する人たちは次々と排除されてるよ」
真弓が声を潜める。
「でも、上層部にも機構へ拠出している土地の主たちや財閥も一部反対してる。エレナさんが支部長として残れているのは、そうした人たちのおかげみたい」
無事に塗り薬の効果が発揮されているようだった。それを確認して、四人は安堵する。
「エレナさん付き添いの龍之介さんと沙耶香さんも支部に移った」
「新指揮官も、エレナさんの付き添い人だったから、左遷させられる話が出ていたみたい。ケーキ総監補佐が使える手駒として残したらしいけど…」
アラナは黙って腕を組み、眉間の皺を深くする。百合はため息を飲み込み、視線を床に落とした。
「エレナさんの支部は遥か彼方の大陸…。協力は求められそうにもないね…。ジョン元総監補佐は?」
「アザール新資源管理局長のはからいで、本部にはいるけど、役職にはついていないみたい」
「あの人は管理官とか執行官経験もないし、事務方なんだとは思う」
百合は小さく頷き、唇を噛んだ。
「椿ならジュニアかマリアンヌに話し聞けるかな…。家族なら流石に知ってるでしょ…。でも、事務職ならあまり話したくもないかもしれないね…」
「ロコさん、ポポンさんたちは今どこにいるんだろう?」
ナナが椅子を少し引き、足を組み替えた。
「それも調べていたんだけど、どうも長期任務でいないみたいだね」
「ルークさんたちは過激化に反対しているから、彼らも仲間集め中。後で進捗確認してみよう」
冷たく無愛想な声。それでも、ジョン・ジュニアの目の奥には、かすかな安堵がのぞいていた。
「うん。紫音たちがやられるかもしれない未来を聞いてたから、だいぶ不安だったけど……うまくいったよ。忍びたちの救出」
「そうか……」
「まあ、お前たちが行ったことで未来が変わったんだろう。だが、油断するな。この先の未来は、当面暗そうだぞ」
「何か見たの?」
ジョン・ジュニアはわずかに視線を逸らし、口元を引き結ぶ。
「いや……何も。ただ……」
「?」
「闇だけさ。霧のように濃い、真っ暗な闇」
その言葉は淡々としているのに、胸の奥底から冷えを伝えてくるようだった。
椿はその言葉に少し恐怖を覚え、話題を変えようとした。
「そういえば、ジュニア。ジョンさんとマリアンヌさんは元気?」
「ああ…。いや、それがよぉ…」
すると、椿の魔力融合者リストを持ったガンナがやってきた。
「遅れてごめん!はい、これ!融合者リスト!ドラフトだけど!」
ガンナが手渡したのは膨大な量の機構従事者の魔力情報冊子。この中には向こう三ヶ月ほどの予定も書かれている。椿は慌てて目を通すが、知っている者はあまりいなかった。
「あれ?でも、これって…」と椿が目に止めたのは、最近魔力融合をしたばかりの幹部、契術研究所副所長アシャ・カレンジと医療局副局長ミレン・ザフラウィだった。
「うん…。なぜか二人は週一で椿との魔力融合することになっているの。サナエさんも定期的に融合していたから、それでかなとは思ったんだけど、考えてみたらおかしいよね…?」
「うん。全ての型との融合を試して、"自然の魔力"の型、ZZZ型をつくる実験なら、定期的に別の魔力の型を融合するのは…おかしいよね。誰が作ったの、これ?」
「作ったのは契術研究所と医療局の職員数人だけど、最後にまとめたのはミレンさんかな。でも、まだこれドラフトで、来週には結依子医療局長とマカロン研究所長に回すんだって」
「あー……なるほど」と椿は少し引き気味に言った。椿は少し考えた後、「ありがとう。ちょっとこれ、まだ誰にも見せないで」と言って足早にその場を去った。
その頃、レイチェルは防衛局で、捕獲した指名手配犯ザンドリーを引き渡していた。
鎖で拘束されたサイプロスを見た瞬間、周囲の空気がざわめきに変わる。
「す、すげえ……サイプロスなんて化け物、よく捕らえたな……」
「ただのサイプロスじゃねえ…。アイツは、任務達成時の報酬を自分だけのものにしようと、仲間殺しを繰り返した化け物だ。管理官五人、執行官三人、調停官一人…。その中には長官もいたとかな……」
「マジかよ。これは賞与ものだぞ……」
視線と囁きが一斉に自分に向かうのを、レイチェルは感情を動かさぬよう表情を固めてやり過ごす。
そこへ、アイス防衛局長が姿を現した。スノーエルフの彼女は凛とした姿でレイチェルの前に立った。
「……本物ね。ザンドリーを捕まえるだなんて、お手柄だわ。どこで捕まえたの?」
「……霧ノ都です。皮肉にも、今まさに協力関係を強化している雷雨大名のお膝元にいました」
「そう……ご苦労様。でも、なんであなたは霧ノ都に?」
一歩踏み込まれた問いに、レイチェルはわずかに眉を寄せた。
「それを言う義務はありますか?」
「……ないわね。でも、霧ノ都に派遣されていた執行官たちが行方不明になっているらしいの。何か知っているかなと思って」
「そうなんですね。……いずれにせよ、賞金は受け取りましたので、失礼します」
背を向けたその瞬間、アイスの声が鋭く追いかけてくる。
「待って!」
ぴたりと足が止まる。振り返ると、局長の目は好奇心と探るような色を帯びていた。
「……あなたも、魔力の融合儀式をやったの? どうだった?」
一瞬、胸の奥に小さなざわめきが走る。しかしレイチェルはすぐに感情を抑え、淡々と答えた。
「すみません、私はまだ……」
それだけ告げ、再び歩き出した。
その頃、百合は真弓、ナナ、アラナと共に、小さな会議室の隅で机を囲んでいた。
紙コップの中の紅茶はもう冷え切っている。
一同はアラナから受け取った呪印封じの塗り薬を忠誠契約印に丁寧に塗っていた。
「よく手に入ったね。こんなの…」
「アラナはまだ契約見守り人。忠誠契約印対象外だからね。頑張って色々な市場を見てまわってもらったんだよ」
百合は忠誠契約印の効果が弱まったことを確認すると、相手の言葉を待った。
「……機構の過激化に反対する人たちは次々と排除されてるよ」
真弓が声を潜める。
「でも、上層部にも機構へ拠出している土地の主たちや財閥も一部反対してる。エレナさんが支部長として残れているのは、そうした人たちのおかげみたい」
無事に塗り薬の効果が発揮されているようだった。それを確認して、四人は安堵する。
「エレナさん付き添いの龍之介さんと沙耶香さんも支部に移った」
「新指揮官も、エレナさんの付き添い人だったから、左遷させられる話が出ていたみたい。ケーキ総監補佐が使える手駒として残したらしいけど…」
アラナは黙って腕を組み、眉間の皺を深くする。百合はため息を飲み込み、視線を床に落とした。
「エレナさんの支部は遥か彼方の大陸…。協力は求められそうにもないね…。ジョン元総監補佐は?」
「アザール新資源管理局長のはからいで、本部にはいるけど、役職にはついていないみたい」
「あの人は管理官とか執行官経験もないし、事務方なんだとは思う」
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「椿ならジュニアかマリアンヌに話し聞けるかな…。家族なら流石に知ってるでしょ…。でも、事務職ならあまり話したくもないかもしれないね…」
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