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第2章 契約と誓約
第76話 屋毒対椿と綾香
しおりを挟む「屋毒、お前、あいつらを奴隷にしろと言ってるが、いったい何をやってるんだ?」
悪魔の商人が冷徹に言う。
「商人。黙ってろ。俺は他人に指図されるのが大嫌いなんだよ。お前に言われてやってたら、まるでお前の部下みたいじゃねぇか。嫌なんだよ、俺は」
屋毒は冷ややかに綾香と椿を指差す。
「奴隷契約の解除方法だと?教える義理はねぇが、それでも教えてやろうか?」
屋毒はそう言うと、ポケットから毒液の入った小瓶を取り出し、力強く投げつけた。小瓶は椿に向かって一直線に飛んでいくが、椿は冷静に異空間を開き、その中に小瓶を閉じ込めた。
「何!?」
屋毒は一瞬たじろぐ。
「屋毒、洞窟内では少し甘く見てたが、もう油断しない。さっさと解除方法を教えろ!」
椿は鋭い眼差しを屋毒に向け、左手のひらを掲げる。
「蒼き光」
瞬間、蒼白い光線が屋毒を襲う。
「ぐぬぅ…。これは、発火性の光線か!?しかも俺の魔力を炎が燃やしていやがる。くそっ、面倒な!」
屋毒は舌打ちし、小さな空き瓶を取り出すと、その瓶の中にズズズと蒼い炎を吸い込ませていく。
「変な魔法道具を持ってるな」
椿は小声で呟く。
綾香は尋ねた。
「今の術、手加減なしだったよね…?」
「ああ、蒼き光の威力は並じゃない。なのに、あいつはまるで無傷だ」
二人は警戒を強める。
「思ったよりも手強いようだな。面倒だ」
屋毒は舌打ちをし、手をかざすと、魔法で毒液の矢を生み出す。
「魔法使いか」
椿が納得した。
単なる商人ではない。屋毒は、魔法に長けた商人だと確信したその瞬間、屋毒が一気に呪文を唱えた。
「毒液を散らせ、呪いの矢」
小さな毒の矢が次々に現れ、椿と綾香に襲い掛かる。
「火遁・火炎」
ドォォォォォン!
綾香が火遁で応戦すると、毒液の矢が爆発。結界内に爆風が巻き起こる。椿はすかさず魔障壁を張り、自身と綾香を守り、商人たちは自分たちを守るために魔法を発動する。
爆風が収まると、屋毒の姿は椿たちの目の前から消えていた。そして、気づけば屋毒は綾香の後ろに立ち、手には刻印器を持っていた。
「悪く思うな」
屋毒は冷ややかな笑みを浮かべながら、刻印器を綾香の首元に押し当てる。
その瞬間、痣のような奴隷契約の印が綾香の首に浮かび上がった。
「しまった…!」
「くそっ、この…!」
椿は怒りを滲ませ、すかさず魔力を込めて光の剣を作り出し、屋毒に斬りかかる。しかし、屋毒の動きはあまりにも素早く、椿の斬撃は全て交わされていく。
「速い!何だこいつ!?」
外で見守るレイチェルと玲子はその商人の戦いぶりに驚き、目を見開く。
「悪魔の商人とやらには申し訳ないが…」
椿は目を細めながらも、さらに魔力を込める。
「私のことは、お気になさらず」
悪魔の商人はそれを聞いて、気にも留めずに不気味に笑う。
「天風の旋渦」
爆発的に生まれ、轟音と共にうねる巨大な竜巻を結界内に埋める椿。彼は冷静に、大きくなり続ける風の渦から綾香を魔障壁で守りながら屋毒を見据えていた。
屋毒は自分の身を守るため、「血塗れの守護壁《ちぬれのしゅごへき》」を詠唱する。赤黒い不気味な壁が四方を囲み、自分自身を守る。
「何だあいつは…」
椿は驚きと警戒の眼差しで屋毒を見つめた。ふと綾香の首元を心配して見ると、綾香はなにやら頭を抱えて何か苦しんでいる様子。
「あ…ああ」と叫ぶ綾香。
「大丈夫か!?綾香!?」
悪魔の商人は笑うように言う。
「そいつは今、もう一人の自分と戦っているのさ」
「もう一人の自分!?何を言っている?」
鋭い目つきで聞く椿に悪魔の商人は答える。
「刻印器による強制奴隷契約を結ばれたものには、仕込まれている屋毒の毒液によって、幻を見る。幻の正体は、直近の未整理の感情。つまり自分自身さ」
「自分の感情だと?」
「お前もソコに行けばわかる」そう悪魔の商人が笑い、指を指すと、椿の背後から刻印器を持つ屋毒が現れた。
そして、綾香と同じように、椿の首元に契約の印が浮かび上がり倒れ込んだ。
「椿!綾香!」
レイチェルと玲子が心配そうに声を上げる。
「さて、お嬢さん方。この結界、解いてくれないかね?仲間を助けたいだろう?」
屋毒は冷徹な笑みを浮かべながら言った。
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