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第2章 契約と誓約
第82話 自分と向き合え
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空から見下ろす戦場は、まるで世界がひっくり返ったような狂乱の坩堝だ。何千もの人間が、魔法の閃光、剣の斬撃、銃弾の咆哮をぶつけ合い、血と汗が地面を染める。朝霧の陣営は山の麓を大砲で叩き、敵の大軍をなんとか足止めしていた。だが、山を越えた奴隷兵たちは、召喚された兵器を従え、じりじりと、だが確実に涼の拠点に迫ってくる。
「リナの拠点がやられてる!」
「…涼様、龍之介様、無事でいて!」
「レイチェル、大丈夫か!?」
「…なんとか……」
レイチェルの顔色は最悪だ。過去の傷が、戦場の地響きの中で彼女の心を締め付ける。椿はワイバーンを操り戦場を見渡す。
だが、その瞬間――
ヒュン!
砲弾が空を切り裂き、ワイバーンの翼をかすめた。空中に浮かぶドラゴンは目立つ。奴隷兵の魔法弾が次々と飛来し、爆炎が空を焦がす。
「ここはまずい! いったん北へ! 涼の拠点を確認しよう!」
椿はリナの拠点に目をやる。テントは燃え、小屋は倒壊し、リナの姿はどこにもない。胸をえぐる不安を押し殺し、涼の拠点へ急ぐ。そこはまだ持ちこたえていたが、負傷者のうめき声と増援の怒号が響き合い、収拾がつかない。
涼の拠点――
涼の側近がワイバーンに駆け寄る。
「涼様はどこだ!? 大事な報告がある!」
椿と玲子は急いで涼のテントへ。綾香はフラつくレイチェルを支え、木箱に腰かけて待つ。
涼の間――
「本当か!? よくやった、玲子、椿!」
椿が告げた強制奴隷契約の解除方法を聞き、涼は扇を広げ、口元を隠しながら声を弾ませる。
「だが…未整理の感情を受け入れる、か。単純そうで厄介だな」
「人の心はそう簡単に動かない。高位の精神魔法使いでもいれば…」
「仮にそんな奴がいたとしても、あの数だ。どうする?」
椿は拳を握り、目を光らせる。
「やるしかない。拡声器を!」
拡声器を手に、椿と玲子はワイバーンに飛び乗る。綾香とレイチェルには待機を命じ、戦場のど真ん中へ戻る。
「…この短時間でだいぶ押し込まれたな」
「数が多すぎる。山を崩して足止めしてるのに…西の地に地雷がなかったら終わってた」
椿はワイバーンの背で身を起こし、拡声器を握る。剣がぶつかり合う金属音、兵士の雄叫び、山が砕ける轟音――その全てをぶち抜くように、深く息を吸い込む。
「霧ノ都の奴隷軍! 聞いてくれ!!」
その声は戦場を震わせ、奴隷兵の動きを一瞬だけ止める。
「お前たちは強制奴隷契約に縛られ、意志を奪われて戦わされてる! ここにいたくない者!家族の元に帰りたい者!その奴隷契約は解除できる!!」
反応した奴隷兵たちが、わずかに足を止める。だが、すぐにまた機械のように進み出す。
「お前達を縛るその契約印、その毒は、自分を受け入れることで消える! 何に苦しんでる? 何を恐れてる? 目を背けず、全部飲み込め! 自分のダサさ、情けなさ、全部だ! それが自由への道だ!!」
椿の声は山々にこだまし、戦場の空気を切り裂く。喉が焼けるように痛むが、叫び続ける。だが、奴隷たちは止まらない。椿は膝をつき、息を荒げる。
「くそっ…なんでだ! ガハッ!」
「…奴隷にされてから時間が経ちすぎたんだ。毒に心が食われ、理性がないのかも…」
「それでも諦めない!」椿は立ち上がり、拡声器を握り直す。
「止まれ! 奴隷にされた者よ! お前達は戦う必要なんかない! 自分の心を取り戻せ!!」
何度も叫ぶ。だが、誰も立ち止まらない。絶望が椿の心を締め付けようとしたその時――
「龍之介様だ! 椿、あそこで戦ってる!」
玲子が指差す先で、龍之介が剣を振り回していた。
「まずは龍之介さんだ! 降りよう」
ワイバーンを急降下させ、龍之介の前に立つ椿。龍之介は椿に気づかず、剣を振り上げる。
「椿! どけ! 俺は…俺はもう…」
「龍之介さん、落ちついて! あなたはこんなところで死ぬ男じゃない!」
龍之介の剣が椿の肩をかすめ、血が滲む。だが、椿は一歩も引かず、龍之介の腕を掴む。
「…椿、悪いな…俺は…俺のせいだ…全部俺が弱えから…こんな目に…」
龍之介の声は震え、自責の念に苛まれている。「俺はただの商人ごときに…奴隷にされた…こんなはずじゃなかった…俺の誇り、俺の人生…全部無駄だった…」
椿は龍之介の目を真っ直ぐ見つめ、叫ぶ。
「あなたが弱いわけじゃない!屋毒はただの商人じゃない! 魔法使い、いや、おそらく忍びだ! あなたの心を操ったんだ! あなたは悪くない!」
龍之介は首を振る。「…それでも、俺は…俺がもっと強けりゃ…仲間を、家族を守れた…こんなみっともない姿には…」
「みっともなくてもいいじゃないか!」椿は龍之介の胸ぐらを掴み、声を張り上げる。
「お前は龍之介だ! 弱くても、情けなくても、いいじゃないですか!自分を受け入れてください!それが毒を抜く鍵です!お願いです!」
龍之介の瞳が揺れる。彼は剣を落とし、地面に膝をつく。
「…俺は…俺は弱え…家族を置いてきた…俺のせいで…」
椿は龍之介の肩に手を置き、優しく、だが力強く言う。「その悔いを背負えばいいじゃないですか。家族の元に帰りたいなら、今、ここで自分を赦せばいいじゃないですか。誰もあなたを咎めたりしませんよ」
龍之介は目を閉じ、涙をこぼす。「…椿…俺は…俺を…赦す…」
その瞬間、龍之介の首の奴隷印が眩い光を放ち、砕け散った。彼は自由の身となり、立ち上がる。
「…俺は?…椿?玲子?」
龍之介の解放を、近くの奴隷兵が見ていた。彼は呆然と立ち尽くし、首の印に手をやる。
「…俺も…自由になれるのか?」
玲子はその男に駆け寄り、叫ぶ。
「そうだ! お前の心の毒を吐き出せ! 何に苦しんでる? 何を恨んでる? 全部ぶちまけろ!」
男は震えながら呟く。
「…俺は…村を焼かれた…俺が戦わなかったから…」
「その罪悪感を赦せ! 村を想うなら、今、自由を選べ!」
男は叫び、涙を流す。
「…俺は戦う! 村のため、自分のために!」
男の奴隷印も砕け、光が戦場に広がる。奴隷兵たちの間に動揺が走り、次々と足を止める。
椿はワイバーンの背に飛び乗り、拡声器で戦場に叫ぶ。
「霧ノ都の奴隷たち! 見ろ! 自由はここにある! 自分の心と向き合え! ダサくても、みっともなくても、情けなくてもいい! お前らは人間だ! 自分の人生を掴み取れ! 奴隷契約をぶち壊せ!!」
その言葉に呼応し、奴隷兵たちが次々に自分の印に手をやる。光の粒子が戦場に舞い上がり、奴隷印が砕ける音が響く。解放された者たちの咆哮が戦場を震わせる。
「自由だ! 俺は自由だ!」
「家に帰れる…!」
椿は汗と血にまみれ、喉が潰れそうになりながら叫び続ける。
「そうだ! 全員自由だ!!」
戦場は一変した。奴隷兵たちは武器を捨て、抱き合い、自由を叫ぶ。敵の奴隷以外の兵たちは混乱し、進軍が止まる。
「リナの拠点がやられてる!」
「…涼様、龍之介様、無事でいて!」
「レイチェル、大丈夫か!?」
「…なんとか……」
レイチェルの顔色は最悪だ。過去の傷が、戦場の地響きの中で彼女の心を締め付ける。椿はワイバーンを操り戦場を見渡す。
だが、その瞬間――
ヒュン!
砲弾が空を切り裂き、ワイバーンの翼をかすめた。空中に浮かぶドラゴンは目立つ。奴隷兵の魔法弾が次々と飛来し、爆炎が空を焦がす。
「ここはまずい! いったん北へ! 涼の拠点を確認しよう!」
椿はリナの拠点に目をやる。テントは燃え、小屋は倒壊し、リナの姿はどこにもない。胸をえぐる不安を押し殺し、涼の拠点へ急ぐ。そこはまだ持ちこたえていたが、負傷者のうめき声と増援の怒号が響き合い、収拾がつかない。
涼の拠点――
涼の側近がワイバーンに駆け寄る。
「涼様はどこだ!? 大事な報告がある!」
椿と玲子は急いで涼のテントへ。綾香はフラつくレイチェルを支え、木箱に腰かけて待つ。
涼の間――
「本当か!? よくやった、玲子、椿!」
椿が告げた強制奴隷契約の解除方法を聞き、涼は扇を広げ、口元を隠しながら声を弾ませる。
「だが…未整理の感情を受け入れる、か。単純そうで厄介だな」
「人の心はそう簡単に動かない。高位の精神魔法使いでもいれば…」
「仮にそんな奴がいたとしても、あの数だ。どうする?」
椿は拳を握り、目を光らせる。
「やるしかない。拡声器を!」
拡声器を手に、椿と玲子はワイバーンに飛び乗る。綾香とレイチェルには待機を命じ、戦場のど真ん中へ戻る。
「…この短時間でだいぶ押し込まれたな」
「数が多すぎる。山を崩して足止めしてるのに…西の地に地雷がなかったら終わってた」
椿はワイバーンの背で身を起こし、拡声器を握る。剣がぶつかり合う金属音、兵士の雄叫び、山が砕ける轟音――その全てをぶち抜くように、深く息を吸い込む。
「霧ノ都の奴隷軍! 聞いてくれ!!」
その声は戦場を震わせ、奴隷兵の動きを一瞬だけ止める。
「お前たちは強制奴隷契約に縛られ、意志を奪われて戦わされてる! ここにいたくない者!家族の元に帰りたい者!その奴隷契約は解除できる!!」
反応した奴隷兵たちが、わずかに足を止める。だが、すぐにまた機械のように進み出す。
「お前達を縛るその契約印、その毒は、自分を受け入れることで消える! 何に苦しんでる? 何を恐れてる? 目を背けず、全部飲み込め! 自分のダサさ、情けなさ、全部だ! それが自由への道だ!!」
椿の声は山々にこだまし、戦場の空気を切り裂く。喉が焼けるように痛むが、叫び続ける。だが、奴隷たちは止まらない。椿は膝をつき、息を荒げる。
「くそっ…なんでだ! ガハッ!」
「…奴隷にされてから時間が経ちすぎたんだ。毒に心が食われ、理性がないのかも…」
「それでも諦めない!」椿は立ち上がり、拡声器を握り直す。
「止まれ! 奴隷にされた者よ! お前達は戦う必要なんかない! 自分の心を取り戻せ!!」
何度も叫ぶ。だが、誰も立ち止まらない。絶望が椿の心を締め付けようとしたその時――
「龍之介様だ! 椿、あそこで戦ってる!」
玲子が指差す先で、龍之介が剣を振り回していた。
「まずは龍之介さんだ! 降りよう」
ワイバーンを急降下させ、龍之介の前に立つ椿。龍之介は椿に気づかず、剣を振り上げる。
「椿! どけ! 俺は…俺はもう…」
「龍之介さん、落ちついて! あなたはこんなところで死ぬ男じゃない!」
龍之介の剣が椿の肩をかすめ、血が滲む。だが、椿は一歩も引かず、龍之介の腕を掴む。
「…椿、悪いな…俺は…俺のせいだ…全部俺が弱えから…こんな目に…」
龍之介の声は震え、自責の念に苛まれている。「俺はただの商人ごときに…奴隷にされた…こんなはずじゃなかった…俺の誇り、俺の人生…全部無駄だった…」
椿は龍之介の目を真っ直ぐ見つめ、叫ぶ。
「あなたが弱いわけじゃない!屋毒はただの商人じゃない! 魔法使い、いや、おそらく忍びだ! あなたの心を操ったんだ! あなたは悪くない!」
龍之介は首を振る。「…それでも、俺は…俺がもっと強けりゃ…仲間を、家族を守れた…こんなみっともない姿には…」
「みっともなくてもいいじゃないか!」椿は龍之介の胸ぐらを掴み、声を張り上げる。
「お前は龍之介だ! 弱くても、情けなくても、いいじゃないですか!自分を受け入れてください!それが毒を抜く鍵です!お願いです!」
龍之介の瞳が揺れる。彼は剣を落とし、地面に膝をつく。
「…俺は…俺は弱え…家族を置いてきた…俺のせいで…」
椿は龍之介の肩に手を置き、優しく、だが力強く言う。「その悔いを背負えばいいじゃないですか。家族の元に帰りたいなら、今、ここで自分を赦せばいいじゃないですか。誰もあなたを咎めたりしませんよ」
龍之介は目を閉じ、涙をこぼす。「…椿…俺は…俺を…赦す…」
その瞬間、龍之介の首の奴隷印が眩い光を放ち、砕け散った。彼は自由の身となり、立ち上がる。
「…俺は?…椿?玲子?」
龍之介の解放を、近くの奴隷兵が見ていた。彼は呆然と立ち尽くし、首の印に手をやる。
「…俺も…自由になれるのか?」
玲子はその男に駆け寄り、叫ぶ。
「そうだ! お前の心の毒を吐き出せ! 何に苦しんでる? 何を恨んでる? 全部ぶちまけろ!」
男は震えながら呟く。
「…俺は…村を焼かれた…俺が戦わなかったから…」
「その罪悪感を赦せ! 村を想うなら、今、自由を選べ!」
男は叫び、涙を流す。
「…俺は戦う! 村のため、自分のために!」
男の奴隷印も砕け、光が戦場に広がる。奴隷兵たちの間に動揺が走り、次々と足を止める。
椿はワイバーンの背に飛び乗り、拡声器で戦場に叫ぶ。
「霧ノ都の奴隷たち! 見ろ! 自由はここにある! 自分の心と向き合え! ダサくても、みっともなくても、情けなくてもいい! お前らは人間だ! 自分の人生を掴み取れ! 奴隷契約をぶち壊せ!!」
その言葉に呼応し、奴隷兵たちが次々に自分の印に手をやる。光の粒子が戦場に舞い上がり、奴隷印が砕ける音が響く。解放された者たちの咆哮が戦場を震わせる。
「自由だ! 俺は自由だ!」
「家に帰れる…!」
椿は汗と血にまみれ、喉が潰れそうになりながら叫び続ける。
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