世界の終焉

ぴんくじん

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マダム

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私はいつもお淑やかで笑顔を忘れないマダムよ。

でも最近笑顔が影を潜めちゃってるの。

その理由はね、私の一人息子のハウザーが自殺してしまったの。

あぁ、なんで自殺なんて。あんなにも愛を注いでいたのに、私以上に良いママなんて存在しないはずなのに。
あぁなんでなのよ。


ハウザーの部屋を掃除している時にね、ハウザーの日記を見つけちゃったの。デパートで売っているような日記帳ではなくてね、変哲もないA4のノートに日記を書いていたみたい。

ママに言ってくれればすぐに、凶暴な動物の皮で作られた高級なカバーの日記帳を買ってあげたのに。

日記の中身を見ようとしたところで、主人に肩を叩かれてキャッて可愛い声を出しちゃった。
なにやら主人が辛そうな顔で私に向かってハウザーの日記を渡すように言ってくるの。

主人のそんな顔、今までに見たことがなかったから素直に従っちゃった。

私ったら本当に空気を読めるいい女ね。

つくづく私に慕われる人間は幸運だと思うわ。

なんだか気分が良くなってきちゃった。

今日は主人の大好きな、鰹節をぐちゃぐちゃにしてから、トイレットペーパーに包んだ私のスペシャル料理を振舞っちゃおうかしら。


風が気持ちよく空で踊っている。テンションが上がった風は、家々のカーテンをダンスに誘うべく、カーテンを揺らす。

どうやら風が、ある家のカーテンを揺らす時にカーテンの近くにあったノートまでも揺らしてしまったらしい。

ペラペラ ペラペラペラオ

「ママは狂っている。俺はもう限界だ。一日に一つや二つ嫌なことが訪ねてくるのであれば我慢できる。

しかし、ママと会うことが嫌なことなのだから、この家にいる以上地獄だ。

俺はもう三日連続で、ガムテープにシラスをくっつけた醜い物を食べている。

いや、食べていないかもしれない。こんな物を食べたなんて表現したくない。

でも、これはまだ良い方だ。先週は、ネズミでしゃぶしゃぶをした。

沸騰したお湯と無数の生きたネズミが入った籠が食卓に並んだ。

どこで捕まえてきたのか、沼の底から這い出てきたような強烈な生臭さを発しながら、血走った目を忙しなく動かしていた。

ミミズのような青黒い尻尾を掴み、マグマのように沸々としているお湯に浸け、しゃぶしゃぶした。

一口食べた時に、思ったんだ。気持ちいいって。

美味しいとか不味いとかそういう話ではない。

ただただ気持ちよかった。現に、ゾンビのようにぐちょぐちょになったネズミを食べながら射精をしていた。

それからは、ママの料理が唯一の楽しみになっていた。

今日はどんなに残酷で醜悪で劣悪で官能的で刺激的な料理が振舞われるのかって。

パパも同じ心境だろう。料理を食べている時は焦点の合っていない目を浮遊させ、口から涎を垂らしながら料理に食らいついている。獣が最高潮な幸せの中にいる証だ。

だから、僕は死ぬよ。もう普通の人間の食事じゃ満たされない。

人間ではなく、獣なんだ僕は。

パパと同じさ。

獣なのに、人間の姿をしている奴は、人間の社会に生きてはいけないんだ。

お袋の味とは、死と引き換えに得られるモノだったね」


ペラ ペラオ

風の門限が近づいているらしい。
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