86 / 314
本編 燦聖教編
奴隷を購入した貴族
しおりを挟む「美味い!こんなに美味しい肉……食べた事ない!はぁ幸せだ」
「もう私はいつ死んでも良い!こんなに幸せが訪れるなんて!」
「ここは天国なの?はぁ……おいし」
「オレはカラアゲが好き。タレが最高」
「おいちいねー♪」
初めは戸惑い遠慮して、中々食べようとしなかった獣人族だったが、この美味そうな匂いや肉の焼ける音には勝てなかった。
我慢が出来なくなり……肉に飛びついた。
皆美味そうに涙を流し肉を頬張っている。
子供達にはカラアゲが良いかなと思って出してみたら大正解だった。
口いっぱいにカラアゲを頬張り銀太やスバルと楽しそうに取り合いをしている。
「あー!我のカラアゲ!」
「あー!お前何個目だ?俺より先におかわりするとは!」
「早いもの勝ちだよーだっ!」
獣人族の子供達は、銀太の事を同じ獣人族の子供と思ってるな。
じゃないとカラアゲを取り合いしたりとか……しないよな。
獣人族達はキラやベヒィ、さらにはジャイコブウルフ達の事でさえ、馴染んではいるがまだ少し怖がってるのに。
これは正体を明かすタイミング考えないといけないな。
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
ジャイジャイジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪キュッキュウ♪
肉祭りの後はジャイコブ達百匹とキューによる壮大なダンスを獣人族達に披露している。
この迫力あるダンスを初めて見た獣人族達からは拍手喝采だ。
うんうん!その気持ち分かるよ!
俺が少し離れた場所でジャイコブダンスを見ていたらパールが走り寄り隣に座った。
「ティーゴよ、この後じゃがの?先ずは貴族達に捕まっておる獣人達を助けに行くんじゃよな?」
「そのつもりだ!」
「腐った貴族達には法的な仕置きが必要じゃ!
ファラサールに魔法鳥を飛ばし、糞貴族達の情報を全て送るのじゃ!
我が国ヴァンシュタイン王国では奴隷は禁止されておるからの?
奴等は貴族爵位剥奪だけではすまん筈じゃ!
奴隷を購入した事を一生後悔すると良いんじゃ!
ワシは奴隷とか好かぬ!許せんのじゃ!」
パールが怒っている……猫の姿だけど、パールの怒りがひしひしと伝わって来る。
俺も奴隷は嫌だ!
しかもあんな酷い扱い方をする貴族達は許せない!
「ありがとうパール!さすがだよ!糞貴族達は全てファラサールさんに報告するよ」
⭐︎★⭐︎★⭐︎
俺達は奴隷を購入した貴族の屋敷を、奴隷商に案内させ順番に訪れて行く。
「次はここか?」
「はいっ!間違いございません」
「では呼び鈴を鳴らし扉を開けよ」
「はいぃっ!」
奴隷商が呼び鈴を鳴らすと身なりの良い白髪の男性が出て来た。
「おや!これはクソヤン様何か御用でしょうか?」
「ロンダール様に用がありまして、御目通り宜しいでしょうか?」
「約束はされていますでしょうか?」
男性は奴隷商の横に居る俺達を不思議そうに見る。
「約束はしてないのですが……」
「ええい!もういい!お主らは違法奴隷を購入しておるじゃろ?」
「なっ?猫が喋った!」
パールは待ちきれなくズカズカと中に入って行く。
「えっ⁉︎ちょっとお待ち下さい!」
白髪の男性はパールを追いかけて走って行く。
奴隷商以外は皆動物なのだから……男性が訝しむ気持ちも分かる。
奴隷商と一緒にいるのは、アライグマティーゴ、黒犬三号、猫パールの三匹だからな。
俺達もパールの後を追い中に入ると……パールの前には、綺麗な服を着た獣人族の子供が立っていた。
その後ろにはこの屋敷の主人?らしき男女が獣人族の子供を守る様に抱きしめ立っていた。
「お主らはこの国では違法の奴隷を購入したのう?それは許されない事じゃ!」
「分かっております。奴隷が違法な事も……。
奴隷を購入した時点でいつかこの様な時が来る事も。
ですが私共は、奴隷を購入した事を後悔しておりません。
この子ルキアと出会えて、私達は幸せでしたから。
この子から私達は沢山の幸せを貰ったのです。
どの様な処分も受ける覚悟は出来ております。
ですが……私共が居なくなった後!このルキアが悲しい思いをしない様!それだけは絶対に約束して下さい!お願いします!」
獣人族の子供が泣きなら貴族の男女を庇う様に前に出る。
「お願いだよ……オレのお父さんとお母さんに酷い事しないで!
オレはお父さんとお母さんに出会えてやっと楽しいとか悲しいとか……幸せを知ったんだ。
罰を与えるならオレにしてよ!お願いだ!」
「分かったのじゃ。お主が全て罰を受けるのじゃな?」
「うん!」
パールが獣人族の子供に歩みよる。
「待って下さい!この子は何も悪くない!罰を受けるのは私共です!」
ロンダール夫妻が獣人の子供を庇う様に必死に抱きしめる。
「分かったのじゃ!」
パールは獣人族の子供に付いている。隷属の首輪を取った。
「お主らにはこの様な首輪は必要ないのじゃ」
「……えっ?」
ロンダール夫妻と獣人族の子供ルキアは何が起こったのか分からないって顔をしている。
「ここには奴隷はおらんかった。そうじゃのティーゴ?」
「そうだな!奴隷は居ないな!」
俺達の言葉を聞きロンダール夫妻と獣人族の子供ルキアは泣き崩れた。
「ああ……ありがとうございます」
俺達はそれ以上は何も言わずロンダール邸を後にした。
「パール?中々カッコ良かったぜ?」
「ティーゴよ茶化すでない!」
幸せになってる奴隷が居る事が分かって良かった。
皆が皆、奴隷に酷い事をする為に購入するんじゃないんだな。
俺達は少し笑顔になりながら、奴隷を購入した貴族がいる次の屋敷に向かった。
343
あなたにおすすめの小説
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。