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本編 燦聖教編
……誰?
しおりを挟む『やはり外の世界は最高じゃ!空気が違う。そこの者、妾を封印から解き放ってくれたこと褒めて遣わすのんっへぶっ!』
ぷかぷかと浮かんでいる女神の様な見目麗しい女性は、突然首を押さえ苦しみ出した。
『はっ……はぁビックリしたのだ。この忌々しい首輪めっ』
「金の戒めの首輪……書物に書いてあった通りじゃ」
パールは女性の首に光る首輪を見つめた後、足元にある封印されていた本を手に取った。
中を開くと紙面と交互に見比べている。
「パール何を見てるんだ?」
「いや書物に書いてある絵姿と見比べてたんじゃ」
ティーゴが絵姿?と不思議に思い見せてもらおうとパールに近寄ると、再び話しかけられる。
『深い緑の目をした少年よ!其方様が妾の封印を解きしご主人様でしょうか?』
先程の偉そうな態度から豹変し、やたらと下手に出る女性。
「えっ……封印を解いたって意味が分からないけど、魔力は俺が与えた」
『あの美味い魔力……ゴクリッ』
女性はジィーッと指を加えティーゴを見つめる。
「何だよっ?そんな美味そうな食べもんを見る様な目で俺を見るな!」
『ぬうっ……!』
「それに俺はお前のご主人とやらじゃないからな」
『そんなっ!其方が妾の封印を解いたのじゃろ?最後まで責任を取ってもらわないとない困るのじゃ!』
浮かんでいた女性は地上に降り立ちティーゴに抱きついた。
「わっいきなり何するんだよっ!」
「魔力をもう少し貰わねばっああっ!」
ボワンッ!!
白い煙とともに、女性の姿は金色狐へと変わる。
「狐……の子供?」
『なっ!妾を狐などの下等生物と同じにするでない!妾はもっとも気高く至高なる存在、金色九尾のキュウコン様だ』
五十センチ程の大きさになった狐、もとい金色九尾のキュウコンとやらは、踏ん反り返り自分よりも大きな尻尾をこれでもかと言わんばかりに左右に揺らしている。
その姿を見たティーゴは……。
「……金色九尾ったってお前の尻尾、二尾しか生えてねーぞ?」
『あやっ……こっコレはだのう。ちぃと深い訳があってじゃのう……』
ティーゴに尻尾の事を突っ込まれ、途端にしどろもどろと怪しい動きをしだす金色九尾のキュウコン。何やらダラダラと額から汗が流れている様にさえ見える。
「その理由はワシが説明してやろう」
『なっ!お前っ何を言う気なのだっ!変な事言うたらお前をっアグッ!?くっ苦ちっ……っ!』
キュウコンは、金色の首輪を触りながらのたうち回る。
パールはそんなキュウコンをチラリと見て話し始める。
「コヤツはのう、光の女神アグライア様の眷属。分かりやすく言うとペットじゃの。いやペットだったんじゃが、此奴は悪さばかりしでかしての?此奴の所為で滅びた国や街は数知れず、困り果てた女神アグライア様はお仕置きと称して、この本に封印したんじゃよ。その時に九尾ある内の七つは封印された。その首に付けておる金色の首輪に七色の石が埋め込まれておるじゃろ?」
そう言われ首輪を見ると金色のプレートに七色に輝く宝石が埋め込まれていた。
「うん……綺麗な石が」
「その石が封印されし其奴の尻尾じゃよ」
「えっ……お前尻尾を封印されてるのか?」
『ほっ本来なら美しい九尾があるんじゃ』
恥ずかしそうにそっぽを向いて話すキュウコン。
「金色の首輪は戒めの首輪と言っての?怠慢な態度や危害を加えると締まる様になっておる。さっきから苦しそうにしておったのはその所為じゃ」
「あっ……なるほどな!偉そうだったもんな」
『……偉そうじゃないのじゃ、妾は偉いのじゃ』
キュウコンは拗ねた様に否定する。
「それでじゃ。本来の力を取り戻すには、本の封印を解きし主人と一緒に善行を重ねる事により、尻尾の封印が解けるんじゃと」
「えっ……それって」
……何か嫌な予感しかしないんだが。
「そうじゃ!封印を解きしティーゴと一緒に、善行を行い尻尾の封印を解き、全ての封印が解けた暁には……本来の力を全て取り戻し、最強の眷属としてティーゴに使えてくれるらしいぞ」
「えーーっ!何それっ」
俺とんでもない封印解いちゃったんじゃ……チラリとキュウコンを見ると。
『よろしくな!妾のご主人』
そう言って尻尾をふりふりティーゴにピタッと抱きついた。
うっ……可愛い。うん可愛いんだけどさ?燦聖教の問題もまだ解決してないのにな……大丈夫か?
などと不安を抱えるティーゴだった。
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