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本編 燦聖教編
王都
しおりを挟む「王都に行くって事は……今はここだろう?」
俺は地図を開きミナトゥークを指した。
その指先をパールは地図をじっと見つめている。
「そうじゃ……まぁ地図を見る限り、ミナトゥークから王都まで広い街道が続いておるようじゃから、この道を通れば半日程で着くじゃろう」
「今が昼前だろ?じゃあ……昼飯を食べたら出発か?」
「そうじゃのう。ふむ昼飯か……ワシはカラアゲが食べたいのう」
「ブッッ!パールはスバルと一緒でカラアゲが好きだな!」
またパールのカラアゲ食べたいが始まった。
初めて出会った時もカラアゲを盗み食いしてたんだよなパールのやつ。
『主と俺が一緒?おいおい何だよっ。そんな褒めるなよっ!』
何を勘違いしたのか、パールと一緒だと言うと、スバルは嬉しそうにパタパタとティーゴの周りをくるくると飛ぶ。
『ぬっ?カラアゲなら我も大好物なのだ!フンスッ』
すると銀太が、スバルに対抗するかの様に調理台の上に顔をドンっと置くと、自分の方がカラアゲが好きだとアピールする。
分かったから!銀太も好きだよな。
『主殿、カラアゲとはなんじゃ?』
スバル達が余りにもカラアゲで盛り上がってるので、コンちゃん少しも気になったのか話に割ってはいる。
「そうか……コンちゃんは食べた事なかったな」
ティーゴがカラアゲについて説明しようとすると、先に銀太が美味しさを伝える。
『コンちゃんよ?カラアゲは美味いのだ!我は主の作るカラアゲが大好きなのだ』
『そんなに美味いのか……ゴクリッ』
銀太の話を聞き喉を鳴らせるコンちゃん。
『そうだぜ?まずはな?肉汁が口中で暴れて攻撃してくるんだ!その次は、肉のぷりぷり攻撃が襲ってくるんだよ』
『なっ!?攻撃してくる食べ物じゃと!?そんな危険な食べ物が美味いのか!?あわわっ……妾が封印されてる間に食も変わってしもうたんじゃ。妾は上手に食せるじゃろうか……』
コンちゃんはスバルの所為でカラアゲの事を危険な食べ物だと勘違いしてしまった。
尻尾をぎゅっと抱きしめ、カラアゲを食べるのを少し戸惑っている。
コンちゃん?誤解だからな?そんな危険な食べ物は流行ってないから安心して食べてくれ。
ティーゴはアイテムボックスから作り置きしていた大量のカラアゲを出し、ソワソワとカラアゲを待つ聖獣達が座っている机に並べて行く。
『美味いのだっ!やっぱりこれなのだ!』
『ティアは!カラアゲが大好きなの』
『やっぱりカラアゲが最高だな!サクサク止まらなねーッ』
皆が美味しそうに食べる中、コンちゃんはカラアゲをじっと見つめ固まっていた。
その姿を見たティーゴは横に座り、カラアゲを食べて見せた。
「旨っ!肉汁がしみだして外はサクサク!モグッ…タレを付けてもうまいなぁ。ゴクンッ」
その姿を見たコンちゃんはそろりとカラアゲに手を伸ばした。
「コンちゃん?カラアゲは攻撃したりしないからな?美味いから食べてみてくれ」
『……本当か?』
「ああっ美味いだけだ」
ティーゴに攻撃しないと言われ安心したのか、コンちゃんは口いっぱいにカラアゲを頬張った。
『あわっ……何て美味!美味いのじゃ!妾はっ妾はカラアゲが気に入ったのじゃーっ!』
コンちゃんはこの後、パールとスバルそれに銀太とカラアゲを最後まで取り合っていた。
『妾はっ!こんなに美味い食べ物初めて食べたのじゃー!』
★ ★ ★
お腹もいっぱいになり、聖獣達は皆お昼寝をしだした。
ティーゴとパールの二人がミナトゥークから王都に続く街道を、のんびりと歩いていた。
「俺に合わせて良かったのか?」
「ワシは別に先を急いでないからのう」
「そうか……なら良かった。俺達二人で景色を見ながら歩いて行こうぜ」
一時間も歩くと……街道の景色はほとんど同じなのでパールが飽きて来た。
「むう……この街道は整備されその周りの景色も岩山や何もない平地でつまらん」
「ははっまぁまぁ?もう飽きたのか」
「ワシはっ!やっぱり飛んで行くのじゃーっ!」
そう言うとティーゴをふわりと魔法で浮かし、パールは浮かぶティーゴを引っ張るように魔法で飛んで行った。
その姿はまるで、足先にロープを巻かれ馬で引っ張られている様だった。
「ワァァー!っちょっ!パール急がないって」
「急いでないが、つまらんのは別じゃ」
「分かったからっちょっと待っ……飛ぶのは分かったから!この体制はどーにかしてくれっ」
ティーゴの悲痛な訴えは虚しく、半ば強制的に引っ張られるのだった。
……三十分も飛ぶと、王都の周りをぐるりと囲む大きな川が見えて来た。
王都の中へ入る事が出来る、唯一の跳ね橋には馬車が集まり検問をしている様だ。
パールは近くまで行くと目立つので、少し離れた場所に静かに下りた。
「着いたのじゃ……これはまた」
横幅五十メートルは有にある川に囲まれた王都。まるで水の中に浮かんでいる様にも見える?
その圧巻の景色にパールは息を呑んだ。
「はぁ……心臓に悪いよっ」
ったく!あんなの引き摺り回しの刑じゃないかっ。
パールのやつおぼえてろよ。
ティーゴはやっと落ち着き前を見た。そして同じ様に呆然と見つめるのだった。
「……これが王都」
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