お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金

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本編 浮島編

過去

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 アレクとロックは、見つめ合ったまま微動だにしない。

 これって……まさかケンカになったりしないよな? もしそうなるなら、俺が止めないと。

 一人そんな事を脳内で考え悶々としていたら、二人が急に動き出した。

 おいおい? 殴り合いとか止めてくれよ? 
 それなら俺が二人の間に割って入らないと。
 急いで二人の間に入って止める。

「アレク、ロックちょっと待ってくれ!」

「「えっ?」」

 なんと二人は土下座していた。 
 間に割って入った俺に向かって。

「えっ?」

 何この可笑しな展開は? 俺が間に入った所為で余計に変な構図になってるぞ? この場所に立ってる事がとんでもなく恥ずかしくなってきたので、慌てて後ろに下がった。

「あっその。どうして二人揃って土下座してるんだよ」

 ロックとアレクは、顔を上げ困った顔をしている。まだ二人は何も話さない。

 なんなんだ。この妙な緊張感は、こんな時に獣人と鳥人の間にあった騒動を、知っているパールがいてくれたら……

「ええとな? アレクにロック、お前達の間に何があったかは知らないが、仲良くしないか?」

「あっ……気ぃ使わせてすまねぇな」

 先に沈黙を破ったのは、アレクだった。

「俺はこの異空間にある獣人街をまとめている。ヒョウ獣人のアレクだ。過去とはいえ、鳥人族が地上に住めなった争いを、俺達獣人族は何百年もずっと後悔していた。だからいつか鳥人族に会える事があったなら、謝りたいと代々言い伝わってきたんだ」

 そう言い終えると、アレクは再び頭を下げた。

 争い? 何か揉め事があったんだろうか?

「いやっアレク殿! 頭を上げてくれないか。私は鷹鳥人のロックだ。悪いのは全て、私達鳥人族の先祖なのだから……」

 ロックは少し言いにくそうに口篭る。

 そしてまた沈黙が続く。
 あー……! この何とも言えない空気は耐えられない。

「あのさ? 俺は過去に何があったのかなんて知らないんだ。教えてくれないか?」

「あっそっそうか……そうだな? すまねぇなティーゴ。ええとだな……」

 アレクが少し言いにくそうに口を開くと「過去にあったお話は私がします」とロックが前に出た。

「鳥人族の愚かな行為を語り辛いでしょう?」
「いやっそんな訳では……はは」

「では過去に何があったのか、話させてください」


ーーー

今から約五百年ほど前ですかね。獣人族の国【マーレ獣人国】と鳥人族の国【アシル鳥人国】という二つの国が隣接してありました。
今はどちらの国もないですがね?

二つの国は友好国として、仲良く平和に暮らしていたした。
だがある時鷹の王が、獣人国に戦争を仕掛けたのです。
鷹の王とは鳥人族の王の事。鳥人族は代々鷹鳥人が王となり国を取り纏めていました。
だが戦争をしかけた鷹の王は愚王だった。
この戦いで何千もの鳥人族が亡くなった。もちろん獣人国だって無傷では済まなかった。
この愚かな戦いで、どちらの国も滅び、大勢いた獣人や鳥人達の数は数百人となってしまった。

こんな戦いをするべきじゃ無かったんだ。

獣人達は自分達がまた住める場所を見つけたけど、愚かな戦いをしかける野蛮な鳥人族の住める場所などありませんでした。

私達鳥人族は、このまま死ぬ道を選ぶしか残って無かった。だってどこにも住む場所がないんですから。
そんな時でした。優しい大賢者様に出会ったのは「地上に住む場所がないのなら自分達で新たに作ればいいじゃろう? 例えば空とかのう」と我らに今の浮島フロッティを授けてくれたのです。

ーーー

「っとこんな感じです」

 全てを話し切り、少しスッキリしたのか、ロックの顔はもう青褪めてなかった。

 おいおいちょっと待ってくれ。

 思っていたよりも、ずっと壮大な話だったぞ? ロックはサラッと語ったけど、国が滅んでしまったんだよな? 獣人国と鳥人国があったのも初めて知ったし……


「それだとロック? 鳥人族だけが悪いみたいだろ?」
「アレクさん……?」

「聞いてくれティーゴ、俺達獣人族の罪を。俺達獣人は鳥人達が住む場所もなく困っていた時に、助けることなく見放したんだ。放っておけば、鳥人族が滅んでしまう事が分かっていてな。本当なら自分達の住める土地に誘うべきだったんだ……」

「アレクさん……」

 アレクはまるで、自分がした事のように辛そうに語る。お前が悪いんじゃないんだぞ? 過去のご先祖様達がした事だろ?

「……アレク……その」

 俺がアレクやロックになんて言うか戸惑っていたら

「またせたのう! くくっ魔道具の完成じゃ。むふふ」

 パールが意気揚々と少しニヤつきながら、おーちゃんの肩に乗り戻って来た。

 パールよ? さっきからタイミング悪すぎな?
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