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1巻
1-2
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「うわっ!」
僕のお腹が盛大に鳴る。恥ずかしい……これがお腹が空くって感覚かぁ。
『あはは、腹が減ったのかい? せっかくだし、飯をご馳走してやろう。ほら四番目、魚を取ってきな』
『ん。わかた』
お母さんドラゴンにそう言われて、子供ドラゴンは、泉の上に浮かんで、尻尾を水中に垂らす。
するとすぐに、何かが尻尾に食いついて、二十センチを優に超える大きな魚が釣れた。
『ん。釣れた』
子供ドラゴンは尻尾を振って、釣り上げた大きな魚を、僕に投げてよこす。
それを何度も繰り返し、十分もすると、目の前には魚の山ができていた。
何これ……漫画みたい。
『さぁ、食べな?』
そう言って、お母さんドラゴンが、僕の目の前に積み上げられた魚に視線を向ける。
ええと……生のまま食べるの?
生の魚には寄生虫がいるって本に書いてあった。確か、アニサキス……だっけ。
体長は二~三センチくらいで、白色の糸のような見た目をしていて、ブラックライトで照らして見るとよくわかるらしい。
でもここは異世界だし、その寄生虫はいないかな?
転生する時、女神様に丈夫な体をお願いしたからお腹を壊すことはない……よね?
『ん。おいし』
僕の横で、子供ドラゴンが美味しそうに、生の魚を食べている。
……ゴクッ。美味しいんだ。
よし! 食べてみるか!
そう思って、ガブリッと勢いよく魚に齧り付くと……
「うん……なんか思ってたのと違うなぁ」
まずくはない。まずくはないんだよ。でも、僕にとってはこれが異世界での初めての食事。
美味しくもまずくもない魚が、初めての食事だなんて! 納得がいかないよ。
『どうだい? 美味いだろう?』
お母さんドラゴンがそう言って、にこりと笑う。
微妙……だなんて言えない。せっかくだから、美味しく魚を食べたいな。
そうだ、前世で読んだ本の知識を試してみよう!
記憶力には自信があるからね。
僕は体は弱かったけれど、頭はそこそこ優れていたと思うんだ。
一度本で読んだことや、聞いたことは忘れない絶対的な記憶力を持っていたし、辞書だって丸暗記できちゃうんだから。えっへん。
おっと、一人でドヤってる場合じゃない。
今すべきことは、目の前にある魚を美味しく食べること。
調理法の知識はある、実際に作った経験はないけれど。
ものは試しだ。やってみよう。
美味しく食べるには……調味料は必須だよね。
調味料になりそうなものは、何かないかな?
魚と相性抜群の醤油とかがあれば最高なんだけれど、ここは異世界。
そんなものあるかどうかわからない。あ、そうだ。せっかくスキルがあるんだ。
《鑑定》してみたら、近くに調味料になりそうなものが、あるかもしれない。
僕は近くの木々や草を《鑑定》で見てみる。
「あった!」
【ハーブ草】
魚や肉の臭みを取り、旨みを倍増させる。
【塩の実】
塩味が強い果実。硬い殻を割ると、中にはしょっぱい粉が詰まっている。
調味料として使われている。
ハーブに塩! いいじゃん!
この二つを使って、魚を蒸し焼きにしよう。すごく美味しくなる予感……
急いでハーブ草を集め、塩の実がなる木に登る。
木に登ったのなんて初めてだけど、爪を利用して簡単に登れちゃう。流石、猫獣人。
取れた塩の実を割って、中に入っていた粉を魚にまぶし、その上からハーブ草で巻いていく。
『おいおい? 魚に草を巻いて何をしてるんだい?』
『ん。変』
ドラゴンの親子が、キョトンとした顔で僕を見る。
「魚をさらに美味しくしてみようと思って!」
『さらに美味しく? そんなことができるのかい?』
『ん。今でもうまい』
「ふふ。まぁ見てて」
不思議そうに僕を見るドラゴンの親子を横目に、僕はせっせと同じ作業を進めていく。
よし、準備完了。あとは焼くだけなんだけど。
火はどうしよう……困ったぞ。何が一番早いかな。
頭をフル回転させて、本の知識を引っ張りだす。
『何を固まっているんだい?』
じっと考え込む僕を見て、お母さんドラゴンが首を傾げる。
「ええと……この魚を火で焼きたくて、でも火をどうやっておこそうかなと考えてたんだ」
『なんだそんなことかい? 火が欲しいんだね。《ドラゴンブレス》』
お母さんドラゴンの口から、大きな火の塊が飛び出し、僕の横にある大木がゴウゴウと燃えた。
すごい! 火ってこんなに熱いんだ……って感動してる場合じゃない!
「違うの! こんな大きな火じゃなくて! もっと小さい、これくらいの火でいいの」
僕はそう言って、手でジェスチャーする。
『なんだい。細かいねえ』
お母さんドラゴンが、面倒くさそうにため息を吐く。
う~ん。困ったぞ。どう説明したらわかりやすいのかな。
あっそうだ、火をつけてもらう場所を僕が作ればいいんだ。
「ちょっと待ってね。僕が今から場所を作るから、そこに火をつけて」
僕は大急ぎで、落ちていた枝を一箇所に集める。そして、その周りを石で囲う。
「この枝を燃やしてくれる? 石が置いてあるところからはみ出さないように、小さくだよ」
お母さんドラゴンにお願いすると……
『こんな小さな場所に火を? 私には無理さ。四番目がやってあげな』
『ん。わかた』
子供ドラゴンが口から火を吐くと、木の枝に火がついた。
よし! あとはこの場所に、さっき下拵えした魚を置いて焼くだけだ。
数分もすると、ハーブがチリリと焼け始め、香ばしい香りが辺りに漂ってきた。
『ほう……これは。なかなか美味そうな匂いだね』
『ん。おいしそう』
二匹のドラゴンの口からヨダレが垂れている。これは大成功の予感。
「もうそろそろいいかな?」
巻いているハーブ草がいい具合に焦げ、美味しそうな魚の油が、炭になった枝の上に落ちる。
「できたー♪ はい、どうぞ」
焼けた魚をドラゴンの親子の前に並べる。お皿はないから、葉っぱで代用だ。
さぁ、僕も食べるぞ。
お箸もないから直接魚に齧り付く。
「あっ、熱つ」
ふわぁぁぁぁぁぁぁっ! なんて美味しいの。
口の中が幸せだ。
魚を咀嚼するたびに、旨みとハーブのいい香りが口の中いっぱいに広がる。
味わってから、ゴクンッと飲み込んだ。
なんて幸せなんだろう。味わって食べるってこんなにも心が満たされるの?
あああっ、幸せ。
「はふっ。美味しっ」
魚を口に入れるたびに幸せだよう。
舌を軽く火傷しちゃったけれど、それもいい。
こんな熱々の料理食べたことないし……この感覚も初めてだから。
異世界に来てまだちょっとなのに、こんなにもいっぱい初めてを経験できてる。
創造神様、女神様、神様ガチャで僕を選んでくれて、ありがとうございます!
『なんて美味いんだい! こんな美味い魚は初めて食べたよ』
『ん。おかわり』
どうやら僕の初めての料理は、ドラゴンの親子のお口にも合ったらしい。
僕がゆっくりと堪能している間に、二匹はペロリと全ての魚を平らげていた。
あんなにたくさんあった魚が一瞬で消えた。
なのに『おかわり』って……まだ食べるの!?
ドラゴンの胃袋は僕の想像をはるかに超えていたみたい。
「おかわりを作ってあげたいけれど、お魚がもうないよ?」
『ふむ……ちょっとお待ち』
お母さんドラゴンは翼を広げてふわりと浮かび上がると、泉の上空まで飛んでいった。
そして翼を大きく動かすと、次の瞬間、大きな水の竜巻が起こった……と思ったら、こちらに向かって飛んでくる。
「えっ!? ちょっと待って!?」
このままここにいたら……あの大きな水の竜巻に巻き込まれちゃうよっ!
慌てて逃げようとするも、体が動かない。
「あれ!? どうして!?」
『だいじょぶ』
「え?」
子供ドラゴンが僕の尻尾を握りしめている。
だから、体が動かなかったのか。
「本当に? ……って、うわぁぁぁぁぁ!?」
もう目の前に大きな水の竜巻が迫ってる!
直撃すると思って諦めた時。水飛沫と一緒に、たくさんの魚が地面に転がる。
どうやら水の竜巻は、僕の目の前で消えたようだ。
まるで雨のように、水がたくさん降ってくるけれど、これは気持ちいいから大丈夫。
『ふふふ。どうだい? これならいっぱいあるだろう?』
お母さんドラゴンがドヤ顔で僕を見る。
たくさんのお魚はすごいけど、あの水の竜巻にはびっくりしたんだからね?
ってか……こんなにいっぱいの魚を食べるの?
お母さんドラゴンは僕の何十倍も大きいから、これが当たり前なのかな。
『さぁ。たんと作っておくれ』
「う、うん、わかった。じゃあ材料集めてくるね」
『実、とる』
「本当? ありがと」
子供ドラゴンがふわりと浮かび上がり、塩の実がなっている木に向かう。
空を飛べるのって便利でいいなぁ。
女神様に空を飛べるようにお願いしたらよかったかも。
でも猫に翼が生えるとか……ププ。想像したらちょっと可愛いかも。
そんなことを考えながら、僕はハーブ草をせっせと集めていく。
せっかく森にいるんだし、他にも調味料になりそうなものないかな?
ハーブ草を集めながら周りに生えている植物や木々を《鑑定》する。う~ん、なかなかないなぁ……
「ん? これは使えるかも!」
調理に使えそうなアイテムを見つけたけど、ハーブ草で両手がいっぱいになっちゃったなぁ。
もう持ちきれないや。
「あっ! そうだった。《アイテムボックス》」
女神様からもらった、他のスキルのことをすっかり忘れていた。
《アイテムボックス》と頭の中で念じたら、目の前の空間が歪んだ。
きっとこの場所に入れろってことだよね?
頭に思い浮かべるだけでスキルが使えるとか、異世界は便利だなぁ。
ハーブ草をドサドサと歪んだ空間に入れていく。
「うわぁ。吸い込まれていく」
どれくらい入るのかなぁ。とりあえず、いっぱい入れておこう。
「ただいま~♪」
『ん? 草は?』
塩の実を山盛り取って、先に戻ってきていた子供ドラゴンが、僕の周りを走る。
僕が何も持っていないから、不思議なのだろう。
「ふふふ。ちゃんと取ってきたよ! 《アイテムボックス》」
取ってきたハーブ草を、亜空間から取り出す。
『ほう、レアスキル持ちとはやるねぇ』
『ぬ。すごい』
「えへへっ」
これは女神様が授けてくれた力で、僕の実力じゃないんだけれど、褒められるのは嬉しい。
さてと、頑張って作るぞー!
『てつだう』
魚に塩をまぶしていたら、人の姿になった子供ドラゴンが見よう見まねで手伝ってくれた。
「ありがとう。じゃあ塩は任せたよ」
『ん。まかせて』
なんだか不思議。ドラゴン姿の時は服を着ていないのに、今はちゃんと服を着ている。
どうなってるんだ? もしかして鱗が服になってるのかな?
「さてと、できた」
『よし!』
子供ドラゴンと一緒に、大体の魚の下処理は済ませた。
『まだこの大きな魚たちが残ってるよ?』
一メートル以上はある大きな魚の山を見て、お母さんドラゴンが言う。
「それは大きいから、調理しやすく三枚におろしたいんだけど……」
『三枚におろす? なんだいそれは?』
「ああっ。使いやすく小さくしたいんだ。でも刃物もないし」
ドラゴンさんにそんなこと言っても、意味がわからないよね。
僕も三枚におろすのはやったことがないから、刃物があったとしても、上手にできる自信がない。
『刃物? お前が使えるような剣でいいのかい?』
お母さんドラゴンがそう言ったと思ったら、剣やナイフがドサドサと目の前にいっぱい現れた。
『ふふふ。私も《アイテムボックス》のスキルを使えるのさ。その中で使えそうなものを使いな』
「わぁ。すごい! 流石ドラゴンさんだ」
剣やナイフは、どれも見事な装飾が施されていて、見るからにとっても高そうだ。
でもなぁ、どれも僕が扱うには大きすぎるんだよなぁ……もっと小さな……
「あっ、これ丁度いい」
本で見た出刃包丁に似ている。それよりかは、ちょっと……大きい気もするけれど、他のに比べたら小さい。
でも、魚も大きいし、これくらいのサイズがいいかも。
上手く捌くことができるかわからないけれど、挑戦してみるぞ。
まずはエラの横にナイフを入れてっと……
「んしょ、んしょ。あっ! ちょっとズレた……でもまぁ、こんなもんか」
苦戦しながらも、どうにか一匹の魚を骨と身に分けることができた。
『これが……三枚におろす? かんたん』
「え? 簡単?」
作業している間、子供ドラゴンが僕の動きをじっと見ているなと思ったら、どうやらやり方を確認していたみたいだ。
『見てて?』
子供ドラゴンが魚を宙に投げる。
『《ドラゴンクロー》』
子供ドラゴンがそう言うと、一瞬で三枚におろされた魚が地面に落ちた。
『ん、かんぺき。どう?』
「わぁ! 僕が捌いたのよりも綺麗……骨にほとんど身がついていない。どうやってあんな一瞬で?」
『ふふ。この爪』
子供ドラゴンの手から、ニュッと鋭利な爪が伸びた。
こんなこともできるの!?
魔法を使えたり、人の見た目でも体の一部をドラゴンのものに変化させたり、色んなことができるんだね。
僕の爪でもできないかな? 自分の手をじっと見つめる。肉球……弱そう。
『できた』
「え?」
僕が肉球を見ている間に、残っていた全ての魚が三枚におろされていた。
『ふふん』
子供ドラゴンが腰に手をあて、僕を見る。これは褒められ待ちだよね?
「すごい、すごいよ!」
気持ちを察して、僕はそう言いながら子供ドラゴンの頭を撫でる。
『ふふ。気持ちいい』
すると、子供ドラゴンがヘニャリと笑った。
「笑った!」
その笑顔はお日様みたいに眩しくて、可愛かった。
三枚におろされた切り身を、食べやすい大きさに、三等分に切っていく。
「よし。全て終わったかな? 今度は、さっきとはちょっと違う方法で調理してみるよ」
これで加工しやすい大きさになったし、本調理に入ろう。
『これ、どうする?』
ドラゴンの子供が切り身を指さし、興味津々といった感じで僕を見てくる。
その気持ちには、僕も同感。今からすることを考えると、僕もワクワクする。
「ふふ。あとはね、この場所に穴を掘るんだ……」
『穴?』
「うん。そう」
掘る道具はないから手で掘ってみる? 僕にできるかな?
手で土を掘ってみると……想像していたよりも柔らかい。
獣人だから力持ちなのかな? だってこの土、見るからに柔らかそうに見えないし。
獣人パワーすごいや! これなら穴掘りも楽々できちゃう。
なんだか土の匂いを感じるし、ワクワクして楽しい。
『てつだう』
僕があまりにもニコニコしながら穴を掘っていたので気になったのか、子供ドラゴンがマネをして、一緒に穴を掘ってくれる。
「ありがと」
二人で掘ったから、すぐに一メートルほどの大きな穴ができた。
あとは……ジャジャ~ン! さっき見つけた、この香木。
《アイテムボックス》から、さっき見つけたアイテムを取り出し、並べる。
【サクラ香木】
燃やすといい香りの煙が発生し、食欲を激しく刺激して、七倍美味しく感じる。
この香木で肉や魚を燻すと、旨みが増して、日持ちする。
ふっふっふ。
僕はこのサクラ香木を使って、魚の燻製を作ってみようと思ってるんだ。
だけど燻製を作る道具がないから、代わりに穴を掘ったってわけ。
「この木を燃やしてくれる?」
『これ? ん。わかた』
子供ドラゴンが香木に火をつけると、なんとも言えない、いい香りが漂う。
火が燃え尽き、木が炭になったのを確認する。
そして、拾ってきた細長い枝を格子状に穴の壁面に刺して……っと。
その上に魚を置いたら。落ち葉で軽く蓋をして、あとは二時間ほど待つだけ。
二時間か……時間を計る時計はない。こんな時はあれだね。
お母さんとやっていた遊びの一つ、『時間当て』。
これはその名の通り、どれくらい時間が過ぎたのかを当てるゲームだ。
最初は十秒とか短い時間でやってたんだけど、暇な時間がたっぷりあったから、次第にエスカレートして、どんどん計る時間が長くなっていった。
この遊びのおかげで、僕は正確に一分一秒を計れるようになったんだ。最長記録は四時間。流石にその時は、お母さんも呆れてたけどね。
ふふ、まさかそれが異世界で役に立つなんてね。
『なんだい? 煙で魚が臭くならないかい?』
お母さんドラゴンが、心配そうに穴を覗き見る。
どうやらお母さんドラゴンは、煙をあまり好ましく思っていない様子。
出来上がって、ドラゴンの親子の口に燻製が合わなかったら、違うのも作ってみよう。
それと、二時間も待ちきれないだろうから、その間にハーブで巻いた焼き魚をもう一度作った。
『魚、おいし』
『うん。美味いねぇ』
「ふぅ~。いっぱい食べた。お腹が苦しい」
焼き魚を何も気にせず食べたので、僕はお腹がいっぱいになってしまった。
これが満腹かぁ。苦しいのに幸せって、不思議な感じ。
僕の知ってる苦しいは、辛いものばかり。
食べるって、本当に楽しいことなんだと改めて思う。
前世の僕は食べる喜びを知らなかったけど、だからこそ、今の幸せを、より感じられると思うんだ。皆の当たり前が、僕にはできなかったから。
僕はかわいそうなんかじゃなかった。
前世の経験があるからこそ、他の人よりもいっぱい幸せな発見があるんだから。
「ふふふ。幸せ」
お腹いっぱいだけど、燻製が出来上がるまでまだ時間もあるし、その間にまた食べられるようになるよね?
『あれ、いつ食べる?』
ドラゴンの親子と泉のほとりで寝そべって休憩していたら、子供ドラゴンが一緒に掘った穴を指さして言った。
二時間経ったし、もうそろそろいいかな。
燻す時間を間違えると、美味しくなくなるって本に書いてあった。
これくらいが理想の時間のはず。
中に並べられた魚を穴から取り出して見てみると、艶々と輝いている。
これは絶対美味しいやつ!
どれ……まずは味見だよね。パクッ……
僕のお腹が盛大に鳴る。恥ずかしい……これがお腹が空くって感覚かぁ。
『あはは、腹が減ったのかい? せっかくだし、飯をご馳走してやろう。ほら四番目、魚を取ってきな』
『ん。わかた』
お母さんドラゴンにそう言われて、子供ドラゴンは、泉の上に浮かんで、尻尾を水中に垂らす。
するとすぐに、何かが尻尾に食いついて、二十センチを優に超える大きな魚が釣れた。
『ん。釣れた』
子供ドラゴンは尻尾を振って、釣り上げた大きな魚を、僕に投げてよこす。
それを何度も繰り返し、十分もすると、目の前には魚の山ができていた。
何これ……漫画みたい。
『さぁ、食べな?』
そう言って、お母さんドラゴンが、僕の目の前に積み上げられた魚に視線を向ける。
ええと……生のまま食べるの?
生の魚には寄生虫がいるって本に書いてあった。確か、アニサキス……だっけ。
体長は二~三センチくらいで、白色の糸のような見た目をしていて、ブラックライトで照らして見るとよくわかるらしい。
でもここは異世界だし、その寄生虫はいないかな?
転生する時、女神様に丈夫な体をお願いしたからお腹を壊すことはない……よね?
『ん。おいし』
僕の横で、子供ドラゴンが美味しそうに、生の魚を食べている。
……ゴクッ。美味しいんだ。
よし! 食べてみるか!
そう思って、ガブリッと勢いよく魚に齧り付くと……
「うん……なんか思ってたのと違うなぁ」
まずくはない。まずくはないんだよ。でも、僕にとってはこれが異世界での初めての食事。
美味しくもまずくもない魚が、初めての食事だなんて! 納得がいかないよ。
『どうだい? 美味いだろう?』
お母さんドラゴンがそう言って、にこりと笑う。
微妙……だなんて言えない。せっかくだから、美味しく魚を食べたいな。
そうだ、前世で読んだ本の知識を試してみよう!
記憶力には自信があるからね。
僕は体は弱かったけれど、頭はそこそこ優れていたと思うんだ。
一度本で読んだことや、聞いたことは忘れない絶対的な記憶力を持っていたし、辞書だって丸暗記できちゃうんだから。えっへん。
おっと、一人でドヤってる場合じゃない。
今すべきことは、目の前にある魚を美味しく食べること。
調理法の知識はある、実際に作った経験はないけれど。
ものは試しだ。やってみよう。
美味しく食べるには……調味料は必須だよね。
調味料になりそうなものは、何かないかな?
魚と相性抜群の醤油とかがあれば最高なんだけれど、ここは異世界。
そんなものあるかどうかわからない。あ、そうだ。せっかくスキルがあるんだ。
《鑑定》してみたら、近くに調味料になりそうなものが、あるかもしれない。
僕は近くの木々や草を《鑑定》で見てみる。
「あった!」
【ハーブ草】
魚や肉の臭みを取り、旨みを倍増させる。
【塩の実】
塩味が強い果実。硬い殻を割ると、中にはしょっぱい粉が詰まっている。
調味料として使われている。
ハーブに塩! いいじゃん!
この二つを使って、魚を蒸し焼きにしよう。すごく美味しくなる予感……
急いでハーブ草を集め、塩の実がなる木に登る。
木に登ったのなんて初めてだけど、爪を利用して簡単に登れちゃう。流石、猫獣人。
取れた塩の実を割って、中に入っていた粉を魚にまぶし、その上からハーブ草で巻いていく。
『おいおい? 魚に草を巻いて何をしてるんだい?』
『ん。変』
ドラゴンの親子が、キョトンとした顔で僕を見る。
「魚をさらに美味しくしてみようと思って!」
『さらに美味しく? そんなことができるのかい?』
『ん。今でもうまい』
「ふふ。まぁ見てて」
不思議そうに僕を見るドラゴンの親子を横目に、僕はせっせと同じ作業を進めていく。
よし、準備完了。あとは焼くだけなんだけど。
火はどうしよう……困ったぞ。何が一番早いかな。
頭をフル回転させて、本の知識を引っ張りだす。
『何を固まっているんだい?』
じっと考え込む僕を見て、お母さんドラゴンが首を傾げる。
「ええと……この魚を火で焼きたくて、でも火をどうやっておこそうかなと考えてたんだ」
『なんだそんなことかい? 火が欲しいんだね。《ドラゴンブレス》』
お母さんドラゴンの口から、大きな火の塊が飛び出し、僕の横にある大木がゴウゴウと燃えた。
すごい! 火ってこんなに熱いんだ……って感動してる場合じゃない!
「違うの! こんな大きな火じゃなくて! もっと小さい、これくらいの火でいいの」
僕はそう言って、手でジェスチャーする。
『なんだい。細かいねえ』
お母さんドラゴンが、面倒くさそうにため息を吐く。
う~ん。困ったぞ。どう説明したらわかりやすいのかな。
あっそうだ、火をつけてもらう場所を僕が作ればいいんだ。
「ちょっと待ってね。僕が今から場所を作るから、そこに火をつけて」
僕は大急ぎで、落ちていた枝を一箇所に集める。そして、その周りを石で囲う。
「この枝を燃やしてくれる? 石が置いてあるところからはみ出さないように、小さくだよ」
お母さんドラゴンにお願いすると……
『こんな小さな場所に火を? 私には無理さ。四番目がやってあげな』
『ん。わかた』
子供ドラゴンが口から火を吐くと、木の枝に火がついた。
よし! あとはこの場所に、さっき下拵えした魚を置いて焼くだけだ。
数分もすると、ハーブがチリリと焼け始め、香ばしい香りが辺りに漂ってきた。
『ほう……これは。なかなか美味そうな匂いだね』
『ん。おいしそう』
二匹のドラゴンの口からヨダレが垂れている。これは大成功の予感。
「もうそろそろいいかな?」
巻いているハーブ草がいい具合に焦げ、美味しそうな魚の油が、炭になった枝の上に落ちる。
「できたー♪ はい、どうぞ」
焼けた魚をドラゴンの親子の前に並べる。お皿はないから、葉っぱで代用だ。
さぁ、僕も食べるぞ。
お箸もないから直接魚に齧り付く。
「あっ、熱つ」
ふわぁぁぁぁぁぁぁっ! なんて美味しいの。
口の中が幸せだ。
魚を咀嚼するたびに、旨みとハーブのいい香りが口の中いっぱいに広がる。
味わってから、ゴクンッと飲み込んだ。
なんて幸せなんだろう。味わって食べるってこんなにも心が満たされるの?
あああっ、幸せ。
「はふっ。美味しっ」
魚を口に入れるたびに幸せだよう。
舌を軽く火傷しちゃったけれど、それもいい。
こんな熱々の料理食べたことないし……この感覚も初めてだから。
異世界に来てまだちょっとなのに、こんなにもいっぱい初めてを経験できてる。
創造神様、女神様、神様ガチャで僕を選んでくれて、ありがとうございます!
『なんて美味いんだい! こんな美味い魚は初めて食べたよ』
『ん。おかわり』
どうやら僕の初めての料理は、ドラゴンの親子のお口にも合ったらしい。
僕がゆっくりと堪能している間に、二匹はペロリと全ての魚を平らげていた。
あんなにたくさんあった魚が一瞬で消えた。
なのに『おかわり』って……まだ食べるの!?
ドラゴンの胃袋は僕の想像をはるかに超えていたみたい。
「おかわりを作ってあげたいけれど、お魚がもうないよ?」
『ふむ……ちょっとお待ち』
お母さんドラゴンは翼を広げてふわりと浮かび上がると、泉の上空まで飛んでいった。
そして翼を大きく動かすと、次の瞬間、大きな水の竜巻が起こった……と思ったら、こちらに向かって飛んでくる。
「えっ!? ちょっと待って!?」
このままここにいたら……あの大きな水の竜巻に巻き込まれちゃうよっ!
慌てて逃げようとするも、体が動かない。
「あれ!? どうして!?」
『だいじょぶ』
「え?」
子供ドラゴンが僕の尻尾を握りしめている。
だから、体が動かなかったのか。
「本当に? ……って、うわぁぁぁぁぁ!?」
もう目の前に大きな水の竜巻が迫ってる!
直撃すると思って諦めた時。水飛沫と一緒に、たくさんの魚が地面に転がる。
どうやら水の竜巻は、僕の目の前で消えたようだ。
まるで雨のように、水がたくさん降ってくるけれど、これは気持ちいいから大丈夫。
『ふふふ。どうだい? これならいっぱいあるだろう?』
お母さんドラゴンがドヤ顔で僕を見る。
たくさんのお魚はすごいけど、あの水の竜巻にはびっくりしたんだからね?
ってか……こんなにいっぱいの魚を食べるの?
お母さんドラゴンは僕の何十倍も大きいから、これが当たり前なのかな。
『さぁ。たんと作っておくれ』
「う、うん、わかった。じゃあ材料集めてくるね」
『実、とる』
「本当? ありがと」
子供ドラゴンがふわりと浮かび上がり、塩の実がなっている木に向かう。
空を飛べるのって便利でいいなぁ。
女神様に空を飛べるようにお願いしたらよかったかも。
でも猫に翼が生えるとか……ププ。想像したらちょっと可愛いかも。
そんなことを考えながら、僕はハーブ草をせっせと集めていく。
せっかく森にいるんだし、他にも調味料になりそうなものないかな?
ハーブ草を集めながら周りに生えている植物や木々を《鑑定》する。う~ん、なかなかないなぁ……
「ん? これは使えるかも!」
調理に使えそうなアイテムを見つけたけど、ハーブ草で両手がいっぱいになっちゃったなぁ。
もう持ちきれないや。
「あっ! そうだった。《アイテムボックス》」
女神様からもらった、他のスキルのことをすっかり忘れていた。
《アイテムボックス》と頭の中で念じたら、目の前の空間が歪んだ。
きっとこの場所に入れろってことだよね?
頭に思い浮かべるだけでスキルが使えるとか、異世界は便利だなぁ。
ハーブ草をドサドサと歪んだ空間に入れていく。
「うわぁ。吸い込まれていく」
どれくらい入るのかなぁ。とりあえず、いっぱい入れておこう。
「ただいま~♪」
『ん? 草は?』
塩の実を山盛り取って、先に戻ってきていた子供ドラゴンが、僕の周りを走る。
僕が何も持っていないから、不思議なのだろう。
「ふふふ。ちゃんと取ってきたよ! 《アイテムボックス》」
取ってきたハーブ草を、亜空間から取り出す。
『ほう、レアスキル持ちとはやるねぇ』
『ぬ。すごい』
「えへへっ」
これは女神様が授けてくれた力で、僕の実力じゃないんだけれど、褒められるのは嬉しい。
さてと、頑張って作るぞー!
『てつだう』
魚に塩をまぶしていたら、人の姿になった子供ドラゴンが見よう見まねで手伝ってくれた。
「ありがとう。じゃあ塩は任せたよ」
『ん。まかせて』
なんだか不思議。ドラゴン姿の時は服を着ていないのに、今はちゃんと服を着ている。
どうなってるんだ? もしかして鱗が服になってるのかな?
「さてと、できた」
『よし!』
子供ドラゴンと一緒に、大体の魚の下処理は済ませた。
『まだこの大きな魚たちが残ってるよ?』
一メートル以上はある大きな魚の山を見て、お母さんドラゴンが言う。
「それは大きいから、調理しやすく三枚におろしたいんだけど……」
『三枚におろす? なんだいそれは?』
「ああっ。使いやすく小さくしたいんだ。でも刃物もないし」
ドラゴンさんにそんなこと言っても、意味がわからないよね。
僕も三枚におろすのはやったことがないから、刃物があったとしても、上手にできる自信がない。
『刃物? お前が使えるような剣でいいのかい?』
お母さんドラゴンがそう言ったと思ったら、剣やナイフがドサドサと目の前にいっぱい現れた。
『ふふふ。私も《アイテムボックス》のスキルを使えるのさ。その中で使えそうなものを使いな』
「わぁ。すごい! 流石ドラゴンさんだ」
剣やナイフは、どれも見事な装飾が施されていて、見るからにとっても高そうだ。
でもなぁ、どれも僕が扱うには大きすぎるんだよなぁ……もっと小さな……
「あっ、これ丁度いい」
本で見た出刃包丁に似ている。それよりかは、ちょっと……大きい気もするけれど、他のに比べたら小さい。
でも、魚も大きいし、これくらいのサイズがいいかも。
上手く捌くことができるかわからないけれど、挑戦してみるぞ。
まずはエラの横にナイフを入れてっと……
「んしょ、んしょ。あっ! ちょっとズレた……でもまぁ、こんなもんか」
苦戦しながらも、どうにか一匹の魚を骨と身に分けることができた。
『これが……三枚におろす? かんたん』
「え? 簡単?」
作業している間、子供ドラゴンが僕の動きをじっと見ているなと思ったら、どうやらやり方を確認していたみたいだ。
『見てて?』
子供ドラゴンが魚を宙に投げる。
『《ドラゴンクロー》』
子供ドラゴンがそう言うと、一瞬で三枚におろされた魚が地面に落ちた。
『ん、かんぺき。どう?』
「わぁ! 僕が捌いたのよりも綺麗……骨にほとんど身がついていない。どうやってあんな一瞬で?」
『ふふ。この爪』
子供ドラゴンの手から、ニュッと鋭利な爪が伸びた。
こんなこともできるの!?
魔法を使えたり、人の見た目でも体の一部をドラゴンのものに変化させたり、色んなことができるんだね。
僕の爪でもできないかな? 自分の手をじっと見つめる。肉球……弱そう。
『できた』
「え?」
僕が肉球を見ている間に、残っていた全ての魚が三枚におろされていた。
『ふふん』
子供ドラゴンが腰に手をあて、僕を見る。これは褒められ待ちだよね?
「すごい、すごいよ!」
気持ちを察して、僕はそう言いながら子供ドラゴンの頭を撫でる。
『ふふ。気持ちいい』
すると、子供ドラゴンがヘニャリと笑った。
「笑った!」
その笑顔はお日様みたいに眩しくて、可愛かった。
三枚におろされた切り身を、食べやすい大きさに、三等分に切っていく。
「よし。全て終わったかな? 今度は、さっきとはちょっと違う方法で調理してみるよ」
これで加工しやすい大きさになったし、本調理に入ろう。
『これ、どうする?』
ドラゴンの子供が切り身を指さし、興味津々といった感じで僕を見てくる。
その気持ちには、僕も同感。今からすることを考えると、僕もワクワクする。
「ふふ。あとはね、この場所に穴を掘るんだ……」
『穴?』
「うん。そう」
掘る道具はないから手で掘ってみる? 僕にできるかな?
手で土を掘ってみると……想像していたよりも柔らかい。
獣人だから力持ちなのかな? だってこの土、見るからに柔らかそうに見えないし。
獣人パワーすごいや! これなら穴掘りも楽々できちゃう。
なんだか土の匂いを感じるし、ワクワクして楽しい。
『てつだう』
僕があまりにもニコニコしながら穴を掘っていたので気になったのか、子供ドラゴンがマネをして、一緒に穴を掘ってくれる。
「ありがと」
二人で掘ったから、すぐに一メートルほどの大きな穴ができた。
あとは……ジャジャ~ン! さっき見つけた、この香木。
《アイテムボックス》から、さっき見つけたアイテムを取り出し、並べる。
【サクラ香木】
燃やすといい香りの煙が発生し、食欲を激しく刺激して、七倍美味しく感じる。
この香木で肉や魚を燻すと、旨みが増して、日持ちする。
ふっふっふ。
僕はこのサクラ香木を使って、魚の燻製を作ってみようと思ってるんだ。
だけど燻製を作る道具がないから、代わりに穴を掘ったってわけ。
「この木を燃やしてくれる?」
『これ? ん。わかた』
子供ドラゴンが香木に火をつけると、なんとも言えない、いい香りが漂う。
火が燃え尽き、木が炭になったのを確認する。
そして、拾ってきた細長い枝を格子状に穴の壁面に刺して……っと。
その上に魚を置いたら。落ち葉で軽く蓋をして、あとは二時間ほど待つだけ。
二時間か……時間を計る時計はない。こんな時はあれだね。
お母さんとやっていた遊びの一つ、『時間当て』。
これはその名の通り、どれくらい時間が過ぎたのかを当てるゲームだ。
最初は十秒とか短い時間でやってたんだけど、暇な時間がたっぷりあったから、次第にエスカレートして、どんどん計る時間が長くなっていった。
この遊びのおかげで、僕は正確に一分一秒を計れるようになったんだ。最長記録は四時間。流石にその時は、お母さんも呆れてたけどね。
ふふ、まさかそれが異世界で役に立つなんてね。
『なんだい? 煙で魚が臭くならないかい?』
お母さんドラゴンが、心配そうに穴を覗き見る。
どうやらお母さんドラゴンは、煙をあまり好ましく思っていない様子。
出来上がって、ドラゴンの親子の口に燻製が合わなかったら、違うのも作ってみよう。
それと、二時間も待ちきれないだろうから、その間にハーブで巻いた焼き魚をもう一度作った。
『魚、おいし』
『うん。美味いねぇ』
「ふぅ~。いっぱい食べた。お腹が苦しい」
焼き魚を何も気にせず食べたので、僕はお腹がいっぱいになってしまった。
これが満腹かぁ。苦しいのに幸せって、不思議な感じ。
僕の知ってる苦しいは、辛いものばかり。
食べるって、本当に楽しいことなんだと改めて思う。
前世の僕は食べる喜びを知らなかったけど、だからこそ、今の幸せを、より感じられると思うんだ。皆の当たり前が、僕にはできなかったから。
僕はかわいそうなんかじゃなかった。
前世の経験があるからこそ、他の人よりもいっぱい幸せな発見があるんだから。
「ふふふ。幸せ」
お腹いっぱいだけど、燻製が出来上がるまでまだ時間もあるし、その間にまた食べられるようになるよね?
『あれ、いつ食べる?』
ドラゴンの親子と泉のほとりで寝そべって休憩していたら、子供ドラゴンが一緒に掘った穴を指さして言った。
二時間経ったし、もうそろそろいいかな。
燻す時間を間違えると、美味しくなくなるって本に書いてあった。
これくらいが理想の時間のはず。
中に並べられた魚を穴から取り出して見てみると、艶々と輝いている。
これは絶対美味しいやつ!
どれ……まずは味見だよね。パクッ……
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***
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心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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