荒れた世界で桃色の<魔王>になります

溟yuu

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暗闇と舞う

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冷静、無言、クローガは動かず。ベンチからベースボールを眺める監督のように次の動きを伺う。

やはり死角はなく、どこから狙っても対応されてしまうのが事実。光を吸い込む夜の肌は、全身が目であることと同等。

メインの雷獣のみを使役して閃光の走る戦闘を繰り返す。

「そろそろ掛かるカ」

異形はそう言うと、跳ね返るように襲いかかる雷獣に蹴りを入れる。

破裂のように聞こえるその蹴りは雷獣を5メートルほど突き飛ばした。

「ググググワ...」

唸る獣は攻守に優れている。空間を裂くかのような鈍い蹴りを入れられても何もなかったかのよう。

「攻撃が通ってないナ。なら...。」

異形はクローガをめがけて動き出す。圧巻の素早さ、まるでジェット機が自らに迫ってきているような感覚。

傀儡に攻撃がまともに入らないのであれば、本体を狙うが最も合理的。

しかし、実に単純!

「俗だな...。」

異形がこちらに向かってくる刹那、隣から気配を感じる。雷の如く駆ける雷獣は異形のジェット機のような素早さをわずかに上回って....。

異形の拳を、雷獣は両前脚で受け止めた。そして異形は先程とは違う、死角のないはずの自分のどこかにわずかな脆弱性を感じた。

踵を返して、クローガと雷獣から距離を取る。

「帰巣本能」-クローガ(本体)に近づくほど、雷獣は素早くなる。それによって魔王を凌駕する異形のスピードをも僅かに上回ることができた。

そしてその空間が“死地”を作り出した、異形は攻撃を喰らい続ければいずれ敗北すると覚える。

雷獣は動かず、異形を見つめる。また異形も、相手を見つめたままゆっくりと姿勢を低くする。猛獣が狩の対象を狙うように...。

一瞬の静寂ののち、雷獣・異形は同時に飛びかかり、衝突。惑星同士がぶつかるような衝撃波を散らす。

真夜中の拳はばちばちと音を鳴らしながら首にめり込んでいた。一方で雷獣の爪は異形に届かず。

異形は範囲外であれば自らの方が優位だと。そう確信する。そして、殴打の衝撃で吹き飛ぶ雷獣をさらに追う。

一方的な打撃は機関銃のように多大なる衝撃を与え続ける。拳は、雷獣の芯に少しずつヒビを入れていた。

しかし、殴殺の最中。雷獣の黄色の瞳がぎょろっと異形を見つめ出す。

それを狼煙に、報復が始まった。刹那に切り離された異形の左腕が宙を舞う。
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