荒れた世界で桃色の<魔王>になります

溟yuu

文字の大きさ
47 / 89

鉄の掟は取り立て人

しおりを挟む
「誰に言われてここに来たの。」

サラの腕を流れるように火がまとわりつく。腕はルビーレッドの硬い鱗で覆われて、爪も刃物のように鋭く変化した。

まるで竜人の腕。サラの体の周りにも薄い炎が滲み出ているようであった。

「教えてくれたら“太陽”くれるの?」

この敵対する生徒、アンは意地の悪い笑顔を向けながら言う。そして抱えていた大きな茶色のクマのぬいぐるみを路地に落とす。

そのぬいぐるみはふわりと地面に転がり、黒かった両目がフルビームのように発光して立ち上がる。

中に機械でも詰めたかのような挙動を見せたクマ。立ち上がったと同時に今度はアゴが大きく下に落ちて、口の中から大砲の筒のようなものが露出する。

「太陽はあげない。」

「んじゃあ、死んでね。」

クマは口の筒を通して、周りの空気を一斉に吸い込む。すぐに大砲のようなそれは金色に光り始める。

「セントリーベア!!」

一気に質量は放出される。まるでサラの“魔法少女アルトラ”のような光線。

サラはすぐに体を下に落として躱わす。

振り向くと煉瓦造りの壁には円形の焦げ跡、煙が上がっていた。これをまともに喰らえば自らの身体が焦がされる。

しかし軌道は見えやすい。アンがいちいち調整している様子もなくて、かなり単純な狙撃である。

サラはすぐに振り切ったように地面を蹴って、風を取り巻きながら前方に跳ぶ。

このクマを破壊する必要があると判断するのであった。同時に嫌な予感が背後から自分を睨んでいるような気もしたが...。

クマは空気を吸い込んでいる段階である。前例をみると、ここから発射されるまで最低でも2秒はかかるので余裕で辿り着くことができる。

クマの頭部を目掛ける。握った拳は炎を巻き上げていた。やがて鱗に覆われた拳はクマのヘッドランプのような目を殴打。

鉄の掟アイアンディーズ。」

サラはクマを殴打した。ながらも拳を振り切ることができないのだ。

クマに目を向けると、殴った箇所から血のように吹き出していたのは銀色の液体。

銀色のそれは、すぐにサラの拳を包み込むとまるで金属のように硬化してしまう。

さらにクマの大砲機能も失われておらず。筒は黄色にチカチカと光を増幅させていたのである。

放出されるまでは瞬きほどの時間もない、サラは拳に力を入れ直す。そしてほぼ同時に無慈悲なレーザーは爆発音を立てる。

一方後ろでクマを操作しているアンは無表情。放たれる寸前に何かを見たからである。

周り壁や地面を巻き込んだことによって、土埃は煙幕のように周りに広がっていた。そしてサラの肉を抉られた死体の代わりに、土埃の奥からゆっくりと歩いてくる1人の影。

下に垂れた右腕を押さえたサラであった。

「痛いでしょう。金属を腕ごと自分の炎で焼いて溶かしたのなら。」

腕の皮膚は爛れて、もはや動かすこともできまい。

アンはふざけたようにクマに寄りかかって言う。

「ねえムツキさん、ここで諦めて“金色の太陽”を渡してくれたらその腕も治してあげるけど。」

サラは手の甲をアンに向けて、指先からパズルのピースがはまっていくように。カタカタと鱗が覆っていく。鱗で傷を覆うことで一時的なあれこれを和らげるという意図。

アンの質問には答える価値がない。

もう考えるより先に体は動いた。踏み出した脚はアンの方へ一直線で向かう。

不意打ちすら狙ったものではない。もうすでにボロボロになった右腕を振りあげて、燃え盛るような火傷に油を注ぐ。

メラメラと火を吹いて、今度は本体であるアンの腹部に拳が直撃。

「ごり押しやっぱりつまんない。」

アンは、サラに朗らかな笑顔を向ける。このような拳撃が人にあたれば、普通は弾け飛ぶ。

でもアンは一歩も動かずにそっと彼女の拳に手を添えるだけ。

「私に当たった時点で、隕石だって石に変わるよ。」

やけに哀れみをも含んだような言葉に、果てしない挑発を感じ取り、サラは再び後ろに飛んで距離を空ける。

本体にも、クマにもダメージが0ゼロ。これほどまでの“初見殺し”...。

「お礼の約束をしたなら、守ろうよ?ムツキちゃん。」

おそらく”金色の太陽“を渡さなければ、本体にもクマにもダメージを与えられない。

ーーこのアンという少女は。たぶん今の状態だと、無敵だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

裏切り者達に復讐を…S級ハンターによる最恐育成計画

みっちゃん
ファンタジー
100年前、異世界の扉が開き、ハンターと呼ばれる者達が魔物達と戦う近未来日本 そんな世界で暮らすS級ハンターの 真田優斗(さなだゆうと)は異世界の地にて、仲間に裏切られ、見捨てられた 少女の名はE級ハンターの"ハルナ•ネネ"を拾う。 昔の自分と重なった真田優斗はハルナ•ネネを拾って彼女に問いかける。 「俺達のギルドに入りませんか?」 この物語は最弱のE級が最強のS級になり、裏切った者達に復讐物語である。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...