次女と狂女と皇女

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第2話「腐女子の妄想ノート」

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次女と狂女と皇女 
第2話「腐女子の妄想ノート」
朝のホームルームが終わると、教室はいつものようにざわつき始めた。自皆ジュンコは、窓際の自分の席で静かに教科書を片付けている。今日も目立たず、誰にも声をかけられず、一日が過ぎていくはずだった。――そう思っていた。「ジュンコぉぉぉ!! 朝から地味に座ってんじゃねぇよ!! もっと派手に私に気づけよ!!」共原キョウカが、深紅のリボンを揺らしながら教室に飛び込んできた。朝からテンションが高く、周囲の生徒たちがびっくりして振り返る。「き、キョウカ……おはよう。まだ朝なのに大声出さないで……」ジュンコは小声で注意するが、キョウカは気にせずジュンコの机にどっかりと腰を乗せた。「ふひひ……ジュンコの寝顔、想像して一晩中興奮してたぜ♡ 今日も私のために生きてくれよな?」過激な発言に、ジュンコの顔が一瞬で赤くなる。「寝顔って……見てたの!? いや、見てないよね!?」「見てねぇよ! 想像だよ想像!! でもいつか本物見せてくれよな♡」キョウカがにやにやしていると、教室の入り口から優雅な声が響いた。「まあ! 朝から下品な会話をしないでちょうだい! 学園の朝は清らかに始まるべきですわ!」公野コウミが、金色の髪を朝陽に輝かせながら入ってきた。手には高級そうな革の手帳。今日もお嬢様オーラ全開だ。「お、おはよう、コウミさん」ジュンコが控えめに挨拶すると、コウミは少し頰を赤らめながらジュンコの隣の席に座った。「ふん! おはようなんて、平民から言われても嬉しくないですわ! ……でも、あなたの声はまあ、悪くないわね。少しだけ、聞いてあげるわ」キョウカが即座に反応する。「おい金ピカ皇女、またジュンコに近づいてんじゃねぇよ! 朝からジュンコを独占しようとしてんのか? ぶっ殺すぞ♡」「殺すだなんて、またそんな下品な! 私はただ、席がここしか空いてなかっただけですわ!」二人がいつものように火花を散らし始め、ジュンコは苦笑いしながら仲裁に入ろうとしたその時――。教室の後ろの席から、小さな笑い声が聞こえてきた。「ふふ……ふふふふ……朝から最高の展開……」茶色のポニーテールを揺らしながら、扶宮フウカがスケッチブックを広げていた。目はキラキラ輝き、手元のペンが高速で動いている。「キョウカの独占欲丸出しの攻め顔……コウミのツンデレ嫉妬顔……そして真ん中で困ってるジュンコの受け顔……完璧……これは伝説の朝の修羅場シーン……!」フウカは完全に自分の世界に入り、興奮気味につぶやいている。ジュンコはそれに気づいて、慌てて声をかけた。「フ、フウカちゃん……何してるの……?」フウカはびくっと肩を震わせ、スケッチブックを隠そうとしたが遅かった。「え!? あ、ああ! ジュンコちゃん! なんでもないよ! ただの……落書き! 授業のメモ!」しかし、ちらりと見えたページには、キョウカがジュンコを壁ドンし、コウミが後ろから悔しそうに見つめているイラストが描かれていた。しかもかなりクオリティが高い。キョウカが興味津々で覗き込む。「おお! 何これ! 私とジュンコが超絡んでるじゃん! いいねぇ!! もっと過激に描けよ!!」「ええ!? キョウカちゃんが見てる!? 本物が……本物が私の絵を……!!」フウカは顔を真っ赤にして興奮の頂点に達し、鼻血を出しそうになる。コウミは眉をひそめてスケッチブックを覗き、すぐに顔を背けた。「な、何ですのこの下品な絵は! 私がこんな悔しそうな顔をするなんてありえないわ! ……でも、髪の描き方は悪くないわね」「コウミちゃんも褒めてくれた!? うわあああ!! 夢みたい!!」フウカは完全に暴走モード。スケッチブックを胸に抱き、教室の隅でくるくる回り始める。ジュンコは頭を抱えた。「フウカちゃん……そういうの、教室でやらないで……みんな見てくるよ……」実際、クラスメイトたちが「また扶宮が暴走してる」「あの三人絡みのネタか?」とひそひそ話している。キョウカは楽しそうに笑いながら、フウカの肩を叩いた。「よし! お前、才能あんじゃん! 次は私とジュンコのラブラブシーン描けよ! サービスシーンも忘れんなよ♡」「サービスシーン!? わ、分かりました!! 今すぐ描きます!!」フウカは即座にペンを握り直し、新たなページに描き始める。コウミは慌てて止める。「ちょっと! そんな下品なものを描かせるなんてだめですわ! ジュンコは私の……いえ、純粋な子なんですのよ!」「純粋って、お嬢様もジュンコのこと好きだろ? だったら一緒に描かれろよ♡」「好きだなんて言ってないわ! ただの友人ですわ!」二人がまた言い争いを始め、フウカはそれを横目で見ながらさらに興奮。「最高……最高の素材……三角関係のリアルタイム更新……!!」ジュンコはため息をつきながら、机に突っ伏した。「今日も……朝から平和じゃないなあ……」しかし、キョウカがジュンコの背中を撫で、コウミがそっとハンカチを差し出し、フウカが「みんなで表紙にしよう!」と叫ぶ。教室の喧騒の中で、ジュンコは少しだけ笑った。――こんな朝も、悪くないのかもしれない。チャイムが鳴り、次の授業が始まる。フウカのスケッチブックには、新しいページが追加されていく。きっと、今日も一日は騒がしく終わるのだろう。
(第2話 終わり)
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