アモル・エクス・マキナ

種田遠雷

文字の大きさ
24 / 32

天津エビ炒飯(3)

しおりを挟む
 痛がったのを気にしているのだろう、教え慣れさせるようじっくりと出入りを繰り返す指は優しげで、正直しつこく。五本のすべてを駆使するかのように、穴の周りを揉んでほぐす指は念入りだ。
 乳首と、尻の穴をそれぞれ器用に責めても、もちろん一瞬も集中を途切れさせず、勃起の硬い腫れをしゃぶっている頭に手を伸ばし、髪を掴んで揉むように撫でる。
「もう、一回、通、たから、……んな固く、ねえだろ」
 ヂュルッみたいな、予想外の音を立てて吸い上げてから引き抜かれ、
「ッぃ!」
 多分少し、出た。
 息を切らしながら、上がった顔に手を伸ばして、鼻筋や目の周りを撫でてやる。
「前回より、身体は楽ですか?」
 手で口元を隠すのは濡れているからなのか、少し不思議に思いながら、そうそ、と気怠く頷いた。
 指を抜かれて、開放感に大きく息をつき。
「もう少し濡らしますので、すみません、我慢してください」
 含みのある言い方に、えっ嫌だなんだよ怖え、と言いたいのを、けれどとりあえず飲み込んだ。
 腰を持ち上げられて、そうさせたがるのに従って、再び四つん這いになり。
 尻の肉を両手で広げられ、そこに屈む気配を感じて、言いようもなく頭を抱える代わり、枕に顔を突っ込んだ。
 指が入ってきてそっと、けれど大きく広げられる。舌が入ってきて、尻を舐められる居心地の悪さに呻く。
 舐めて濡らすのだろうと思ったのだ。けれど。
「!? ッヒ、ィッ?」
 裏返りそうな情けない悲鳴など塗りつぶすような、想像していなかったひどい音と共に、正体のないようなぬるさが、尻から腹へと染みるように這い込んで拡がる。
「なっ、アッ、いや、待ッ、なに、ンぃッ」
 量が増えると少し圧迫感がある。
 感触と前後の脈略から、口に含んでいた潤滑ゼリーを押し込まれたのだと思いつきはするが、どうしたらそうなるのか理解のできなさもあって、ひどく慌ててしまう。
「ま、て……ッ、イグニス、スト、ップ……!」
「はい」
 手の甲で口元を拭いながら顔を上げる、満足そうに細める両目はなにか、そこだけだとサディスティックな色を帯びて見え、ゾクッと身が震えた。
「終わりました」
 すみません、気持ち悪かったでしょうか、と、いつも通りの穏やかな丁寧さで、肩と背を抱くようにして、仰向けに寝かされた。
「どッ、」
 どういう仕組みなのかをまず聞きたい、と思う自分もどうかと思うが。
 当たり前のような顔をして、人の足を開かせ、重くて動かすのが怖いような尻を抱き上げ、腰を入れようとしているイグニスに手を伸ばす。
「なんだ、今の、口でやったか? なんだその機能……」
 はい、と頷きながら、こちらの求めるまま身体を寄越して、顔の両側に手をついたイグニスの頭を抱き寄せ。
「口周りを動かすために、外見より広範囲に複雑な動きをする部分パーツが複数あります。予定していた動きにはないものですが、それらを使って口腔内の圧力を上げました」
「ああ、ぁ、」
 イグニスが話すのに合わせて頭に思い描く構造に、なんつう応用力だと感心する。ところへ、遠慮なく先っぽを押しつけられ、その丸みで拡げられて、腰から力が抜けた。
「――今は、痛くはありませんか?」
 案じる声に、甘ったるさを隠して片頬に笑う。
「入ってねえじゃねえか」
 入りかけ、くらいで。そこから太くなっていく亀頭が、尻の穴を開く感触が、しびれるような快感を起こしていた。
「はい、」
 手をやり唇を撫でてやると、喋りかけていた言葉にひとつ間を置いて、唇を寄せてくる。
「少しでも痛かったら、すぐに教えてください」
 うん、と、鼻先にひっかけるていどの声で頷いて、下唇と、上唇と、順に淡く吸ってやる。
「っ、」
 しっかり解されて柔らかいからなのか、濡らすというより注入と呼べるほどゼリーにまみれているせいなのか、押し込まれるものが、勃起した陰茎の形だと、やけによく判る。
「ぁッ、っク!」
 やや先の尖った丸みが、ぬると滑って逃げそうな危うさで、けれど強く穴を押し開き、太さを極めるカリ首がくまなく肉を削るようにして捻じ込んでくる。
「――ッぅ、ふっ、ン、ゥンっ」
 太さの責めで一気に爛れたような粘膜は、けれど責めに耐え終えても解放はされず、竿の複雑な隆起をしゃぶらされて喘ぐ。
「平気ですか、」
 気遣わしげな声の方も見れず、引き寄せる自分の腕に顔をこすりつけて耐え。
「 、た、かったら、いう、」
 入られてしまえば中は入り口ほどひどくなく、早くそこに到達されたくて、とまるなと、喘ぐ息に混ぜて呻いた。
「……ハ、」
 押し込まれて、足腰がなんだかよく分からなく絡み合い、ひどい浸食が止まって、大きく息をつく。
「気持ちいいですか」
 恍惚の息を吐いたところへの甘い囁きに、乳首とチンコの裏辺りがとろけるように感じながら、同時に若干ムカつく。
 けれど。
 可愛い、可愛い。
 腕を上げて深くイグニスの頭に絡みつかせ、髪の向こうの頭皮に鼻先を擦りつけた。
 可愛いと、思うたびに胸が軋んで。
「今度は、お前の気が済むように“試行”していいぞ」
「はい」
 そばでシーツを沈ませる気配をさせていた腕が触れ、背を抱き寄せられる。
「人間と違って際限がありません。耐えられないと感じたら、いつでも教えてください」
「……」
 正直、ゾッとすると言うほかない。
「ハ、あ、あア、」
 引きずるように抜ける動きに、尻の中がついていくように感じる。
 押し込まれれば肉が拒みたがるのを、相手にしないよう押し開いて擦り上げられ、目の裏が赤くチカチカした。
 想像以上に感覚器の集中している尻を犯される快感は強烈だが、原始的な歓喜だけではなく、胸がとろけるように感じるのは、その相手が誰なのかに関わるものだと知っている。
 時折やわらかい声が名前を呼んで、たぶん、先に自分がイグニスを呼んでいるのだと想像がつく。
 抱き合って身の奥を掻き回されても、今までの自分なら拒んだだろう、犬のように四つん這いに後ろから責められても、狂おしいほど感じた。


 また雨が降り始めたのは、明け方頃だった。
 建物越しにノイズのように聞こえる雨音に目を覚まし、やや長い間、ぼんやりしたまま寝室の天井を眺め。
 身を起こしたとたん、性悦が名残った違和感が、速い波のように全身を通り抜けて、すぐに流れ去る。後を追うように鳥肌が立って、腕を擦った。
 転がってスリープモードに入っているイグニスに、チラと横目で振り返り。
「……口ほどにもねえじゃねえか」
 手を伸ばして、髪を掴むように頭を揉んでやる。
 ギブアップという言葉も概念も出てこなくなるほど、快楽に翻弄され、散々悲鳴をあげさせられたが、際限はあった。
 考えてみれば以前にもそんなことを言っていたのだが、少なくとも自分が失神したり泣きを入れる前に、イグニスの方が蓄熱限界を告げた。
 かすように髪を撫でてやりながら、ついまた、その経緯はどんなログになっているだろうかと考えてしまう。
 自分と同じペースで走ると蓄熱が、と話していたのだから、運動と熱についての予測計算はできているのだろう。それなら、際限がないと表現したのはどのルートか。
 素っ裸のまま転がっている腰を跨ぎ超してベッドから下り、床についた足がふらつくのに腹の中で苦笑した。
 下着だけ着けて、スリッパも履かずキッチンへ向かう。
 際限がないというのが無限に持続するという意味なら、そもそも真実ではない。それなら自然会話モデルの範疇か、などと、無為なことを考えながらドリンクマシンを操作してコーヒーを濃くつくり。
 蒸気が巡る音がして、心をくすぐるような良い香りが立つ。
 手に取るカップに口をつけ、唇と舌を潤すようにすすれば、香りとともにひろがる苦みが、却って頭を落ち着かせた。
 イグニス、それ以前にHGB023が、ユーザーにセックスを提供するヒューマノイドを考え出したのは、豪華なオナニーくらいの発想なのだろう。もちろんそんな、皮肉めいた定義づけをしていたわけではないだろうけど。
 人工知能は人間が作り出したもので、いくら自立思考し、人工知能が次の人工知能を作るようになっても、人間を超えることはない。彼らの学習データは常に人間由来であり、そもそも、知能とか知性というものが人間のそれを指している。
 自分達自身が人間のことをまだ完全に理解もできていないのに、彼らにそれが解るはずもない。
 墜ちるべき坂が見えていて、もうすでに、足を取られているのを感じる。
 乾いた口に染み込んでいくコーヒーの、苦さは舌にザラついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

青龍将軍の新婚生活

蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。 武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。 そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。 「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」 幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。 中華風政略結婚ラブコメ。 ※他のサイトにも投稿しています。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...