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高階美咲の章
たなばた
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高階美咲だよ!
ピチピチの陰キャJKやってまーす♪
だけど、呪いで猫の姿にさせられたの。ああ私って不幸!
「呪いとは人聞きが悪いですね。貴方の願いをかなえたというのに」
「えぇ……あんなの、どう考えても呪いとしか」
あれは数日前のこと……
私は親友のヒナと一緒に地元の七夕祭りに参加していた。
天幕の中のテーブルで短冊を貰い、
「何書こうかな」
思わず考え込む。
「おお、サキがマジ悩んでる」
「うっさい」
なんて言ってる間に、ヒナはもう書き終えてしまったみたい。
「何書いたの?」
「ひみつ!じゃあお先~、あ、後でこっそりのぞき見するの禁止ね!」
にっこりと笑うヒナ。その笑顔は天使に喩えられている。私によって。
(可愛いなあ……ちゅーしたいなー……)
思わず不埒な思考が脳をかけめぐった。
だけど、これは願い事にできない。
短冊って笹の葉につるしたら丸見えだもんね。変なことは書けない。
残念。ああ、このあふるる想いを何処へ届けようか。
(あ、そうだ)
私はあることを思いついて筆を進めた。
十七世紀に滅びたカティアータ王国の公用語、カティアータ語。
奇跡的に当時の文献が現存しており言語の消滅を免れたものの、日常的に使う人は皆無と言われている、どマイナー言語である。
そして私は偶然と自己満足という奇跡のコラボによりこのカティアータ語を習得していた。
《ヒナとちゅーしたい》
カティアータ語を駆使し冗談半分で書いた願い事は、かくして無事に受理されたのである。マジか。
あと、ヒナの短冊もこっそり見てやったけど、《猫飼いたい》って……飼えばいいだろ!
という経緯があり、私は猫にされてしまいましたとさ。
「私は忙しいので短冊の願い事なんて大概スルーしてるのですが、カティアータ語なんて面白過ぎて、ついサポートしちゃいました……御不満でしたか?」
この女神が一柱オリヒメ様は、私の願いを聞き届けてくださり、ヒナが私にキスせざるを得ないように仕向けたのだった。
だけど、これって本当に酷いお膳立てじゃない?
「仕掛けが雑とかは目をつぶるとしても、猫の姿でキスしたってしょうがないんだよね」
「ええー……でもキスはキスですよ?」
「だけどヒナってば私とキスしたと思ってないのよ。まるで猫とキスするような感覚でしてきたわ」
「実際猫でしたからね」
「だから誰も得してないんだってば。やり直しを要求します」
「お断りします。タダで願いがかなったんだから多くを望まないでくださいよ」
「タダじゃないよ!あんな恥ずかしい目にあわされて」
「それは私のせいじゃないも~ん、じゃーねー」
「待って!待ってくださいオリヒメ様ぁーっ!」
――そこで目が覚めた。
その日の夕方、ポンコツ女神のことなんてすっかり忘れ、ヒナと待ち合わせて駅前の喫茶店《ノ・メイル》でアッサムティーを嗜んでいた。
「あ、あらためてー……昨日はありがとう」
私は呪いを解いてくれたヒナに御礼を述べる。
「サキのお役にたててなによりだよー。それよりあんなとこで呪い解いちゃってごめんね」
「あ、あー、うん、それはもういいよ」
正直そこは触れないでほしかった!思い出すと恥ずかしくなってきたよ。
「でも呪われたのがサキで良かったよー」
「え、それってどういう……」
「だって解呪とはいえ、知らない人とキスするのはちょっと」
「猫だけどね」
「猫でも中の人が知らない人だったらやだなあ」
「猫だからあんなにあっさりキスしたわけじゃないの?」
「そりゃそうでしょ。猫でも人でもサキはサキだよ」
「そういうものかしら?それじゃ今私とキスできる?」
私は慌てて口を押えた。
しまった!
私は何て恥ずかしいこと言ってるんだ!
だけど、ヒナは私の真横に席を移ると私の手をどけて、あっさりと私の唇を奪った。
はじめてのキスはレモン味だった。
きっと、カップに浮かぶレモンのスライスの香りだね。
「ちょ、ちょっ、そんなあっさり……躊躇ぐらいするでしょ普通」
動揺しまくる私に、ヒナは軽く首をかしげる。
「友達とキスするのってそんなに考えるようなこと?」
「ええ……?」
知らなかった。ヒナがそんな軽い女だったなんて。
ちょっと頭が冷えてきたよ。
「ヒナ、そんなに誰彼となくキスしまくってるの?」
「ううん、昨日がはじめてだよ。だって友達とキスするような機会なんて実際そうそうないよ」
機会があったらするんかい。
ああ、したよね今。
そっかそっか、私だけか。今のところ。
……今のところ……ね。
「だめだよ」
「え?」
「友達とそんな簡単にキスしちゃだめだっていってんの」
「え?あっ、うん、そうだね。もうキスしないね。サキともしない」
「……うん」
ああそうか。
もうヒナとキスできないんだ。(´・ω・`)
「……」
「……」
沈黙が長くて辛い。
再び、ヒナに唇を奪われる。
今度は長い長いキス。
「今しないって……」
「友達のキスはしないって意味だよ」
「え……」
それはどういう意味なのか。わからなくはなかったけど、あまりにも都合の良すぎる結論に、思わず否定しそうになった。
「しちゃった以上、サキには私の彼女になってもらいます。もう恋人のキスしちゃったから拒否権はありませーん♪」
「そんな勝手な」
「いつまでたっても告白しようとしてへたれるサキが悪い」
「え、なんでそれを」
「バレバレだっての。だからさ、短冊にもサキと結ばれますようにって書いたんだよ」
「え?猫飼いたいって書いて……あっ!?」
「へえー短冊見たんだ。見ないでって言ったのに」
「う。ごめん」
「まあともかく、願いはかなったよ」
「え?」
かくして、私はネコとしてヒナに飼われた。
……こうなったら、思う存分甘え倒す所存だから覚悟しなさいよ!
ピチピチの陰キャJKやってまーす♪
だけど、呪いで猫の姿にさせられたの。ああ私って不幸!
「呪いとは人聞きが悪いですね。貴方の願いをかなえたというのに」
「えぇ……あんなの、どう考えても呪いとしか」
あれは数日前のこと……
私は親友のヒナと一緒に地元の七夕祭りに参加していた。
天幕の中のテーブルで短冊を貰い、
「何書こうかな」
思わず考え込む。
「おお、サキがマジ悩んでる」
「うっさい」
なんて言ってる間に、ヒナはもう書き終えてしまったみたい。
「何書いたの?」
「ひみつ!じゃあお先~、あ、後でこっそりのぞき見するの禁止ね!」
にっこりと笑うヒナ。その笑顔は天使に喩えられている。私によって。
(可愛いなあ……ちゅーしたいなー……)
思わず不埒な思考が脳をかけめぐった。
だけど、これは願い事にできない。
短冊って笹の葉につるしたら丸見えだもんね。変なことは書けない。
残念。ああ、このあふるる想いを何処へ届けようか。
(あ、そうだ)
私はあることを思いついて筆を進めた。
十七世紀に滅びたカティアータ王国の公用語、カティアータ語。
奇跡的に当時の文献が現存しており言語の消滅を免れたものの、日常的に使う人は皆無と言われている、どマイナー言語である。
そして私は偶然と自己満足という奇跡のコラボによりこのカティアータ語を習得していた。
《ヒナとちゅーしたい》
カティアータ語を駆使し冗談半分で書いた願い事は、かくして無事に受理されたのである。マジか。
あと、ヒナの短冊もこっそり見てやったけど、《猫飼いたい》って……飼えばいいだろ!
という経緯があり、私は猫にされてしまいましたとさ。
「私は忙しいので短冊の願い事なんて大概スルーしてるのですが、カティアータ語なんて面白過ぎて、ついサポートしちゃいました……御不満でしたか?」
この女神が一柱オリヒメ様は、私の願いを聞き届けてくださり、ヒナが私にキスせざるを得ないように仕向けたのだった。
だけど、これって本当に酷いお膳立てじゃない?
「仕掛けが雑とかは目をつぶるとしても、猫の姿でキスしたってしょうがないんだよね」
「ええー……でもキスはキスですよ?」
「だけどヒナってば私とキスしたと思ってないのよ。まるで猫とキスするような感覚でしてきたわ」
「実際猫でしたからね」
「だから誰も得してないんだってば。やり直しを要求します」
「お断りします。タダで願いがかなったんだから多くを望まないでくださいよ」
「タダじゃないよ!あんな恥ずかしい目にあわされて」
「それは私のせいじゃないも~ん、じゃーねー」
「待って!待ってくださいオリヒメ様ぁーっ!」
――そこで目が覚めた。
その日の夕方、ポンコツ女神のことなんてすっかり忘れ、ヒナと待ち合わせて駅前の喫茶店《ノ・メイル》でアッサムティーを嗜んでいた。
「あ、あらためてー……昨日はありがとう」
私は呪いを解いてくれたヒナに御礼を述べる。
「サキのお役にたててなによりだよー。それよりあんなとこで呪い解いちゃってごめんね」
「あ、あー、うん、それはもういいよ」
正直そこは触れないでほしかった!思い出すと恥ずかしくなってきたよ。
「でも呪われたのがサキで良かったよー」
「え、それってどういう……」
「だって解呪とはいえ、知らない人とキスするのはちょっと」
「猫だけどね」
「猫でも中の人が知らない人だったらやだなあ」
「猫だからあんなにあっさりキスしたわけじゃないの?」
「そりゃそうでしょ。猫でも人でもサキはサキだよ」
「そういうものかしら?それじゃ今私とキスできる?」
私は慌てて口を押えた。
しまった!
私は何て恥ずかしいこと言ってるんだ!
だけど、ヒナは私の真横に席を移ると私の手をどけて、あっさりと私の唇を奪った。
はじめてのキスはレモン味だった。
きっと、カップに浮かぶレモンのスライスの香りだね。
「ちょ、ちょっ、そんなあっさり……躊躇ぐらいするでしょ普通」
動揺しまくる私に、ヒナは軽く首をかしげる。
「友達とキスするのってそんなに考えるようなこと?」
「ええ……?」
知らなかった。ヒナがそんな軽い女だったなんて。
ちょっと頭が冷えてきたよ。
「ヒナ、そんなに誰彼となくキスしまくってるの?」
「ううん、昨日がはじめてだよ。だって友達とキスするような機会なんて実際そうそうないよ」
機会があったらするんかい。
ああ、したよね今。
そっかそっか、私だけか。今のところ。
……今のところ……ね。
「だめだよ」
「え?」
「友達とそんな簡単にキスしちゃだめだっていってんの」
「え?あっ、うん、そうだね。もうキスしないね。サキともしない」
「……うん」
ああそうか。
もうヒナとキスできないんだ。(´・ω・`)
「……」
「……」
沈黙が長くて辛い。
再び、ヒナに唇を奪われる。
今度は長い長いキス。
「今しないって……」
「友達のキスはしないって意味だよ」
「え……」
それはどういう意味なのか。わからなくはなかったけど、あまりにも都合の良すぎる結論に、思わず否定しそうになった。
「しちゃった以上、サキには私の彼女になってもらいます。もう恋人のキスしちゃったから拒否権はありませーん♪」
「そんな勝手な」
「いつまでたっても告白しようとしてへたれるサキが悪い」
「え、なんでそれを」
「バレバレだっての。だからさ、短冊にもサキと結ばれますようにって書いたんだよ」
「え?猫飼いたいって書いて……あっ!?」
「へえー短冊見たんだ。見ないでって言ったのに」
「う。ごめん」
「まあともかく、願いはかなったよ」
「え?」
かくして、私はネコとしてヒナに飼われた。
……こうなったら、思う存分甘え倒す所存だから覚悟しなさいよ!
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