シュガーポットはなくならない

壬玄風

文字の大きさ
4 / 11
第一章 脱出

わたしの、最高のともだち

しおりを挟む
 魔女の世界での名前はアーヤンラナ・クレムミト。通称アヤ。日本名もアヤ。日本大好きで、将来日本で暮らすことを念頭にずっと日本人っぽい呼び名を自称してた。アヤかしこい!(自画自賛)

 魔女学校の課題で、人間界に溶け込んで人助けをするというものがあって、私もしばらくの間、人間界で暮らすことになった。
 だけど、この課題に挑む魔女の多くは他の目的を持っている。
 それは人間の男性と結婚すること。
 魔女の国には女性しかいないから、こうして人間界で結ばれるのは多くの魔女達の夢でもある。
 私もご多分に洩れず、人助けの課題をこなしながら、あわよくばいい男を捕まえようと考えていた。

 そんな私が選んだ人助け候補こそが理恵だった。

 理恵はひどく心を病み人との接触を避けていた。見習い魔女にとってはうってつけの題材である。
 私は魔法を駆使し、クラスメイトの望月アヤとして潜入して彼女に接近した。
 課題のためというのもあるけど、それ以上に本心から彼女を助けたいと思った。

 理恵は人を信じず、かなりうわべだけの人付き合いにとどまりとっつきづらいというのが周囲の評価だった。私は塩対応にめげず押しの一手で理恵に食らいついていった。
 本当はやっぱり根は感情豊かで優しい子だとわかった。ひたすら甘やかし続け少しずつ私に笑顔を見せてくれるようになった。
 何かの要因があってこうなっていることは間違いないのだけど、私は魔女としても人としても未熟で、理恵を多少癒すことはできても、心の闇の根源まで追究することまではかなわなかった。

 しばらくすると、理恵はアルバイトを始めた。
 放課後一緒にいられなくて少し寂しいけど、気持ちが前向きになったからとポジティブに解釈して安心してしまったんだ。

 夏休みが近づいたある日、頭の中で恐ろしい光景が閃いた。
 理恵が虚ろな目で彷徨い、山中の崖で足を滑らせて転落するところだった。
 映像はまだ続く。
 理恵の父親が嘆いている。
 だけど、よく見れば娘が自殺したことで、自分の名に傷がつくことに憤っている様子だった。こいつが全ての元凶だと、私は確信を持った。

 助けなきゃ!
 課題とか彼氏とかはもうどうでもいい!
 理恵を助けられるなら全部捨てていい。
 私は魔女服に着替えて箒で理恵を迎えに行った。

 服を脱がせて、お風呂で身体を洗っていると、理恵は家で酷い扱いをされていたことや、そのせいで対人関係がうまくいかなくなったこと、何度も何度も死のうと思ったこと……私のおっぱいを揉みながらゆっくりと話してくれた。




「私、アヤが来てくれなかったら死んでたのね」

 理恵の話を聞いて私が見た未来の話をすると、理恵は私のおっぱいに顔を埋めて淡々とつぶやいた。

「とは限らないけど、特別何もなければありえた未来というだけで……」

「でも、どうしたって幸せにはなれなかったと思う。ありがとう、アヤには感謝してもしきれないよ」

「友達を助けるのは当たりまえのことだもん。だけどごめんね。さっき言ったけど魔女とかこの世界のことを知られてはいけないから、人間界に帰すことはできないんだよ……」

「そんなの、全然問題ないよ。もう元の世界には未練もないし戻りたくない。それにね、えへへ……アヤがいればそれだけでいいの」

「うれしい!私も、ずっと、ずーっと理恵と一緒にいたい。……ねえ、私と結婚してくれる?」

「もちろんだよ、結婚しよう」

 あまりにも簡単に返事をされて不安になった。

 いつもの戯言じゃないんだよ。
 だってここは魔女の国。
 女の子同士の結婚に障害はないどころかごく普通のこと。

「もちろん私は本気だよ。アヤのことが好きなの。迷う余地なんてない」

 理恵があらためて私を抱き寄せて、お互いに人生初のキスをかわした。

 そして、唇を離してにっこりと微笑みあう……つもりだったんだけど。

「わぁぁ!自分でしておいてなんだけど、あまりに急すぎて気持ちが追い付かないょ……」

 理恵は恥じらって顔を背けてしまった。
 でも、お互いにつないだ手を離そうとはしなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のない、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...