シュガーポットはなくならない

壬玄風

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第一章 脱出

ラブラブ☆初デートです

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 アヤから簡単に家事を教わった。
 電気も魔法もあるこの国では、生活家電がやたらと便利。
 掃除ロボットは高性能すぎて人が手をかける余地はほとんどない。
 洗濯は洗濯物のQRコードを読み取って自動的に適切な洗い方を採用し、乾燥にアイロンがけまでやってくれるから、ほとんどの場合は洗濯槽に放り込むだけ。

 手がかかるのは料理ぐらいかな。
 それも全自動でできるといえばできるけど、やはり手をかけたほうが美味しいのはこちらの世界も同じ。

 家事が一段落すると、アヤの提案で街に出かけることになった。

「もっと服がいるよね。買いに行くよ。アクセサリも必要だよね。さあ行こう」

 アヤは私の手を取って歩き出す。

「え、この恰好で出かけるの?」

 私達はまだ天使と悪魔だった。

「この国なら普通だよ!たぶん!」

 たぶんってなんだ。

 アヤが手をかざすと、ここに来た時のように空間に裂け目ができた。
 裂け目を越えて闇の中を少し進んだ先は、木の板で囲まれた小部屋で、小さな出口があるだけだった。
 出口から外に向かうと、大通りらしい場所に出てきた。

 舗装されていない道路の両側には、さまざまな店が無造作に立ち並ぶ。
 街行く人を見れば、魔女の国というだけあって男性の姿は全く見当たらない。
 アヤの言う通り天使と悪魔の私達は特に浮いていない。魔女だからなのか黒のローブを着た人が割と多い一方で、普通のワンピースだったりパンツルックもあり、ビキニアーマーの戦士風の人もいればフリフリドレスの魔法少女風の衣装の子もいて、そうやってみると確かに私達なんて普通だね。

 いや、でもやっぱりちょっと目立ってるみたいで明らかにこっちを見てる人もいるみたいだけど。

「ねえアヤ……」

「あはは、なんかちょっと目立っちゃってるみたいだね。でも私達が可愛すぎるから仕方ないよねー」

 後でわかったことだけど、私達がとても仲良さそうに見えて微笑まれていたらしい。その通りだから仕方ない……えへへ……

 本屋みたいな店に入って、二人がけのテーブルに座る。
 ここでデートスポットを検索するらしい。

 三人ぐらいのグループがアヤに声をかけてきて、何かを話しはじめた。
 どんな話してるんだろう。

 アヤが知らない人と知らない言葉で話をしているのを見ていると、チクリと胸が痛む。
 アヤはこの世界の人で、友達や家族がいる。
 でも、私は言葉も通じない異国人。
 一瞬アヤが遠く見えた気がして、心がそわそわして落ち着かない。

「行こうか、待たせてごめんね」

「うん」



 密かに気を取り直して、二人で近くのログハウス風喫茶店に入った。

「やった、個室取れた!」

 アヤいわく、個室は予約優先、人気のお店だから予約で一か月待ちなんてこともあるらしいけど、たまたまキャンセルが出て空きができたんだって。

 お店の人に半透明のカプセルのような部屋に案内された。
 カプセルの中は透明の床が敷かれ、四人掛けのテーブルとシンクが置かれている。

 テーブルに座ると、カプセルの外側のツタが延びて全面を覆い、色とりどりの花を咲かせた。

「きれい……」

「気にいって貰えてよかった!私のお気に入りなの」

 運ばれてきた料理は、日本でもよく見かけるものによく似ていた。
 柚子風味のクリームパスタ、フルーツサラダ、食後のコーヒー。
 素材は違うけど、私にも違和感なく美味しく食べることができた。良かった。

 地球大好きな魔女達によって、こちらにない原材料でも似たものができないか常に研究が続けられていて、今でもこの世界の食文化は大きく変化しつつあるらしい。

「あのね理恵」

 ぬるめのカフェラテ(この国でコーヒーといえばこれが標準らしい)を飲みながら、アヤが話を切り出した。

「うん」

「さっき私とお話をしてたのって私の友達なんだけど、理恵の助けになってもらえないか聞いてみたんだ」

「え?」

「この国って魔女仕様だから魔力がない人にはどうしても暮らしにくいんだよね。何かあったとき私だけじゃなくて友達を頼れるほうがいいと思って。だけど、勝手に話を進めるのよくなかったよね」

「ううん、もちろんお願いするわ。いつも私のこと考えてくれてありがとう」

助けが必要というのもそうだけど、これから未知の社会の中で暮らしていって、いずれはアヤと支えあっていきたいもの。
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