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第二十話

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 「ごめんね、琴美。寂しいよね。」

 玄関で律が琴美をぎゅっと抱きしめる。
 琴美は手を伸ばして、律の頭を撫でる。

 「ふふっ。大丈夫ですよ。
 律さんこそそんなに寂しそうにしないの。」

 はぁ…と律は溜息を吐く。

 「こんなに寂しいのは俺だけ?琴美は寂しくない?」

 琴美は頭を撫でる手を止め、背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめ返す。

 「勿論、すっごく寂しいです。
 でも、お仕事じゃ仕方ないし。

 律さん、副社長でしょう?律さんにしか出来ないお仕事がたくさんあるでしょう?」

 「そうだけど…さ。」

 副社長だと知った数日後、しっかりと琴美は律から日本支社の副社長をやっていることを聞き出していた。律は特に隠していた訳じゃないと言ったが、律の話を聞けば聞くほど、稼ぎも肩書も何もかも琴美とは別世界の人だった。琴美は流石に腰が引けたが、逃げたら許さない…と律にお仕置きにも近い愛され方をして、もう律がどんな立場の人でも気にしないことにしたのだった。

 「大丈夫です。一週間ですもんね。
 ちゃんと待ってます。」

 律は琴美の瞳をしっかりと見つめて、訴える。

 「絶対だよ?毎晩連絡してね?俺も夜、電話する。」

 「わかりました。連絡待ってます。」

 琴美は微笑むが、律は眉を下げる。

 「…他の男に靡いたりしちゃダメだよ?」

 「靡くわけありません。律さんが大好きですもん。
 信じられないですか?」

 琴美は律の顔に手を添える。律は首を横に振るが、その表情は浮かない。

 「ううん、ごめん。信じてる。
 信じてるんだけど、琴美は可愛いから心配で…」

 「私がそんなに可愛く見えるのなんて、律さんくらいですよ。大丈夫です。」

 琴美がにっこり笑い飛ばそうとするものの、その笑顔を見て、律はより大きく溜息を吐いた。

 「はぁ…。自分の可愛さに気付いてないところも可愛いけど、離れるとなると心配だなぁ。」

 「あ!ほら、律さん!
 新幹線の時間があるんでしょ?」

 「うん…。じゃあ、行ってくるね。」

 律は濃厚なキスを琴美におくる。

 「んっ…。行ってらっしゃい。」

 琴美はしょんぼりと肩を落とす律を笑顔で見送った。

 きっと会社ではあんなに可愛い表情を律は見せないんだろうな…と思ったら、琴美はさっきのしょんぼりした顔が愛しくて堪らなくなった。
 少し律が喜びそうなことをしてみようかと、琴美は考えた。


   ◆ ◇ ◆


 その夜、琴美は律のシャツを着ていた。その下にはパンティを身につけているだけだ。

 琴美は鏡に映る自分を見て、顔を赤くした。

 (これは…なんというか…かなり恥ずかしいな…)

 以前、律が琴美に自分のシャツを着てほしいと頼んだことがあった。その時、琴美は訳が分からず、シャツに皺をつけてしまうのが嫌で、断った。しかし、後々それが彼シャツというもので、男性にとっては喜ばしいことだったと日菜子から聞いて、琴美は知った。

 だから、今回、それを写真に撮って送ったら、律が喜んでくれるかと思ったのだ。琴美は鏡に映った姿を写真に撮る。かなり恥ずかしいが、スマホで顔はほとんど隠れているし、シャツワンピースだと思えば大したことないような気がしてきた。

 琴美よく撮れた一枚を律に送る。

 『お仕事お疲れ様です。シャツ、お借りしました。』

 なんて送ればいいか分からず、シャツを借りたことだけ報告した。

 既読はまだ付かない。琴美はシャツを着たまま、ソファに腰掛けた。ギュッと身体を抱いて、シャツの匂いを吸い込む。クローゼットに入っていたからか、シャツはクリーニングから戻った物だったが、ほのかに律の匂いがした。

 (律さんの匂い嗅いだら…変な気分になってきちゃった…)

 琴美はそっと陰核に手を伸ばす。そっと優しく触れる。

 「んっ…りつ…さん。」

 もどかしくなってパンティを脱ぐ。もう片方の手ではボタンをいくつか外し、胸を揉む。…律が触ってくれる感触を思い出しながら、触るが、何か足りない。琴美は切なくなって、律の名を呼んだ。

 「あぁ、ん…。律さん…っ。」

 次の瞬間、電話が鳴った。
 琴美は思わず固まる。しかし、着信を見ると、律だった。琴美は飛び上がって電話を取った。

 「もしもし、琴美?」

 「律さん!!」

 「ごめん、すぐに返信できなくて。
 というか、あの写真なんなの…!?

 さいっこうなんだけど!!」

 引かれてなかったと安心して、琴美はフフッと笑った。

 「出発する時、元気なかったから。少しでも喜んでくれたら、と思って。」

 「あー、離れてても、琴美は最高に可愛い…。

 でも、俺の前じゃ着てくれなかったのに…。
 …触りたい!琴美に直接触りたい…!

 ねぇ、今も着てるの?」

 「はい、まだ着てました。」

 少し間が空いた後、律は言った。

 「…へぇ。…ねぇ、琴美。
 今、何してた?」

 琴美はまさか律を思い出して、自分を慰めてたなんて言えなかった。昨晩だって、一週間離れるからと言って、散々律に抱かれたのだ。なのに、たった一日でそんなことをするなんて、とんでもなくエッチな子だと思われてしまう!と琴美は焦った。

 「え、えっと…テレビ、テレビ観てました!」

 テレビなんて付けていないが、琴美は必死だ。

 「そう。俺も見ようかな。どの番組?」

 「あっ、えっと…テレビは付けてただけでほとんど観てないっていうか…。」

 「ふーん…じゃあ、何してたの?」

 「えー、と…ぼーっとしてました!」

 「フフッ。ねぇ、琴美。その部屋には隠しカメラがあるんだ。俺、琴美が何してるか知ってるよ。」

 「えぇ!?…ひ、酷いです!
 そんなの聞いてない……」

 琴美はグスッと鼻を鳴らした。律は黙ったままだ。
 何も話してくれない律に琴美は不安感を募らせる。

 「……だって、律さんのシャツ着てたら、寂しくなっちゃって…。か、身体がそわそわしちゃって…。
 一人で弄ったりする私、嫌いになっちゃいました…?」

 電話の向こうでククッと律が笑うのが聞こえた。

 「琴美ってば、そんなことしてたの?可愛い。」

 琴美は、唖然とする。

 「…っ?!だって、隠しカメラがあるって…」

 「嘘だよ。
 琴美が嘘ついたから、俺も意地悪しちゃった。」

 「…うそ…」

 「でも、琴美が俺を思い出して、一人で弄ってたなんて嬉しいなぁ。…ねぇ、一人でやってるの、聴かせて?」

 「えっ…や、やだ。」

 「触ってあげられないけど、どう触ったらいいか教えてあげる。琴美だって一人だと物足りないんじゃない?」

 図星だった。一人でやっても何か足りない。
 大体琴美は自慰の経験なんてほとんどなかった。琴美がこんなにエッチな身体になったのは、律のせいだ。
 でも、恥ずかしすぎる。琴美が返事に迷ってると律が言った。

 「俺も、琴美を思い出して、したいなぁ…。
 ねぇ…一緒にシよ?」

 律にそう色っぽく囁かれれば、琴美は抵抗も出来なかった。いつの間にか正直な気持ちを吐露していた。

 「うん…一緒にシたい…。」

 「うん。可愛いね、琴美。

 じゃあ、両手を使えた方が良いから…イヤホン近くにある?」

 「うん、目の前に…。」

 「じゃあ、イヤホンに切り替えて。」

 琴美は素直にイヤホンをつけた。

 「で、出来た。」

 「うん。じゃあ、琴美。

 …まずは指を舐めてみようか?」

 律の声が耳元で響き、ドキドキする。

 「指?」

 「そうだよ。下を触る時に濡れてた方が気持ちいいでしょう?俺に聞こえるようにちゃんと舐めてね。」

 「うん…分かった。」

 琴美はペチャペチャと指を舐める。

 「琴美…俺のを想像しながら舐めるんだよ。その指が俺の代わりに琴美の中に入るんだから。」

 (これが律さんの…)

 そう思ったら琴美はより熱心に指を舐め始めた。

 「そう…吸ったり、舌で扱いたりして…
 はぁ、琴美…俺も気持ちいいよ。」

 琴美の鼓膜に律の熱い吐息が響く。
 その声に琴美の子宮は疼く。

 「もう片方の手はシャツの中に入れて…直接胸を揉んであげて。どう乳首は勃ってる?」

 「あ…うん…。た、勃ってる…。」

 「そう、可愛いね。乳首も指で押し潰したりして。その刺激に慣れてきたら少し強めに摘んであげてね。」

 「ん…。はぁ…いい、みたい。」

 電話の向こう側で律が次の指示を出す。

 「琴美、じゃあ舐めた手で優しくクリを触ってあげようか。優しくだよ。」

 「…うん。」

 つん、と優しく触れると琴美の身体は震えた。

 「あぁ…」

 「ちょっとずつ力を加えながら、小刻みに動かしてごらん。」

 「んっ…はぁ…はぁ。あぁ…良い、よぉ。」

 「そしたら、入口を触ってごらん。
 どう?ちゃんと濡れてる?」

 「…うん。グチョグチョ…いっぱい濡れてる。」

 「ふふっ。上手。そしたら、蜜を掬って、クリに塗りつけてごらん。今度はさっきより強めに、ね。」

 「はぁあん…っ。

 あっ、あっ、あっ、気持ちっ、いい…
 りつぅ…りつ…っ!!」

 「はぁ…、琴美。可愛い。好きだよ、琴美。

 俺のも琴美の中に入りたいって。もうガチガチだよ。」

 「りつぅ…律の、律の、欲しいよぉ!!」

 「俺も、俺も琴美の中に挿れたい。
 狭くてあったかい琴美の奥まで入れて、ズンズン突いてやりたい…。」

 琴美は自然に蜜口へ手を伸ばしていた。

 「ここに…ここに…律のぉ…。」

 「琴美…中指を挿れてごらん。」

 「やぁ、足りない…!おっきい律のが良いよぉ。」

 それでも手は止まらず、ぐちゃと音を立てながら、琴美の指が差し込まれる。

 「大丈夫、ちゃんとイかせてあげる。
 ほら、ゆっくり抜き差しするんだ…。

 目を瞑って、俺のをちゃんと感じて…。」

 琴美の手がゆっくりになる。
 まるで焦らされてるようだ。

 「律の…。はぁ、ん…あぁ…」

 「そうだよ。俺のが琴美の中に入ってるんだ…。

 そしたら、指を少し曲げてごらん、お腹側にざらざらしたところがあるだろ?その中央をゆっくり押すように刺激して…」

 琴美は言われた通りに指を動かす。
 最初は恐る恐る触れてみるが、押すたびに快感が身体に広がっていく場所があった。それは律が与えてくれる甘い快感に似ていた。どんどんと琴美は行為に溺れる。琴美の喘ぎ声が電話を通じて、律に届く。

 「あぁん…、あっ、はぁん!」

 「はぁ…っ、琴美。気持ちいいよ…。」

 「あっ、はっ、あぁ!りつ、りつぅ!!
 …な、なんかへんっ、へんに、なるぅ。」

 「はっ、上手に見つけられたみたいだ、ね。
 ちゃんと、開発してるから大丈夫だよ。

 ふぅ…
 それでクリも一緒に刺激してごらん。」

 琴美の指の動きは激しくなる。こんないやらしいことをしてダメだと思うのに、止められない。

 「はぁ、あっ、律!気持ちいいっ、よぉ!!」

 「ふっ…琴美。俺も、すごく良い…。
 琴美の声でイきそう…っ!

 琴美、可愛い…あいしてる…!」

 「あっ、やっ、あ、あ、イっ、く!
 イっちゃう…あぁんっ!りつ…っ!!」

 「俺も…イく!!」

 二人はほぼ同時にイったようだった。
 琴美は呆然としている。

 「……琴美?大丈夫?」

 「大丈夫…。
 
 …あの、すごい良かった…。」

 「ふふっ、俺もだよ。ねぇねぇ、ビデオ通話にしてよ。琴美の顔が見たい。」

 「あ、うん。」

 そう言われ、琴美は深く考えず、ビデオ通話にした。

 しかし、その姿はシャツのボタンはほとんど外され、胸は丸見えだった。イったばかりの琴美の頬は上気しており、瞳は潤んでいた。

 律は口を押さえて、新たに持ち上がる欲望に耐えていた。

 「…律?」

 気づかない琴美は悪気なく尋ねる。

 「……すごい、すごいよ、琴美。
 なんて、エロくて可愛いんだろう。

 はぁ…大好きだ。琴美。」

 こうして二人は結局電話越しでもイチャイチャしたのだった。
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