恋というかなんというか

Sna9

文字の大きさ
4 / 6

4話、クラスメイト

しおりを挟む
今思えば、俺にとって花宮 真央は特別だった。
高校に入学してから3ヶ月程経ちクラスでは、中学からの知り合い同士や新しい友達と、いくつかのグループができていたが俺は周りに馴染めずいつも1人だった。
別にそれが嫌だった訳ではない。ただ、いつも、なんとなく退屈だった。
朝起きて、登校して、授業を受け、下校する。そんな当たり前の学生生活が退屈でたまらなかった。そんなある日、風邪をひき病院へ行った帰り病院のロビーで花宮 真央を見かけた。
看護師さんと親しげに会話をしている姿が目に入ってきた、この時は、誰にでも優しいクラスの人気者というイメージで、学校ではいつも1人でいる俺にさえ席が隣だからと律儀に挨拶を交わしてくれる。
そんな彼女が休日に病院で、しかも看護師さんと病院のロビーで楽しげに話をしていた。
「真央ちゃん楽しそうね!安心したわ!」
「はい!毎日すごく楽しくて、友達も出来たんですよ!」
そんな会話が聞こえてきて何故看護師さんに学校での近況報告をしているのか少し不思議に思ったが体が辛かったので顔を下に向け早足で横を通り抜けた。
それから3日後のことだった。
風邪が治り朝登校すると、既に席に座っていた花宮 真央から話しかけられた。
「あ!佐倉くんおはよ!体調もう大丈夫なの?」
「おはよ花宮さん、うん、もう大丈夫」
「そっかー!良かった!ところでさ...こないだ病院ですれ違ったのって佐倉くん、だよね?」
「え?あぁ~、うん」
バレてたのか、気まずい。
「えーっと、もしかして、私と綾子さんの話してたことって聞いてたりする?」
少し困ったような顔で問いかけてきた。
綾子さん?あの看護師さんの名前だろうか。
「いや、まぁ、学校での近況報告みたいなの話してたのはちょっと聞こえたぐらいかな」
「そ、そっか、ならいいや、....いや佐倉くんならいいかな...」
「え?」
「よし!決めた、放課後時間ある?」
「放課後?あるにはあるけど...」
「じゃあ!ちょっとだけ待ってて、聞いて欲しい話があるの、いいかな?」
正直断りたかったが、あまりに真剣な顔でこちらの目をまっすぐ見つめながら言ってくるものだから断れず了承してしまった。
そして、放課後。
「ごめんね、待たせて、他の人には知られたくない話だから。」
笑いながらそう言いう花宮 真央から発せられた次の言葉で、俺の中で花宮 真央という存在が特別になった。

「わたしね、あと2年で、死んじゃうんだ」

静かだった。まるで世界が止まったかのようだった。そう言いながら笑う彼女の顔を今でも鮮明に覚えている。それ程に、この時の彼女は退屈だった日常を繰り返していただけの俺には、衝撃で、鮮烈で、切なく、そして、どこか美しいものに見えていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...