【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第3章  カルロスの婚約者

第10話 彼女の見る先は

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  馬車の中は、笑いがえなかった。
侯爵夫人アデラは、彼女に自分の令嬢だった時の失敗談を面白おもしろおかしく話す。
グレースも、王宮勤めの失敗談を負けずに夫人に話すのだった。

恋多き侯爵令嬢は、どうもたくさんの令息たちにモテたようだ。
まぁ、本人の話だからどこまで本気かは想像にまかせる。

反対にグレースは話していて考えたら、婚約者を好きだったのもあやしい。
自分はまだ恋をしてなく、愛することもしてないのではと思った。
これも自称じしょう、恋多き侯爵夫人の話をうかがい考え直したお陰である。

「グレース、貴方の考えはお婆さんみたい。
まだ婚姻をあきめる歳ではないわ。
ザィール着いたら、一緒に夜会へ行きましょう」

グレースが、1番苦手な社交の世界に誘われてしまった。
一度くらいははなやかな場所も、いい経験になり思い出になるかもしれない。

世捨て人になる前に、一瞬でも経験し楽しんでみよう!
エテルネルでは出来ない事を、誰も私を知らない国では大胆に出来るはずよと考え始めていた。

アデラは彼女に夜会用のドレスを作るのがワクワクしていて、どんな色が似合うかとか想像してみていた。

馬車の外の麦畑を見ながらグレースは、祖国エテルネルのマロー子爵の領地を思い出している。

私がこの国に来る前、国から助成金が出ると父がたいそう喜んでいたわ。
それがきっかけで、少しは作物を多く収穫出来るようになるのであろうか。

どうして、あの川近くに領地があるんだろう。
あの川のせいで少し多く雨が降るといつも氾濫はんらんして、そして何度も畑が駄目になる。

青々と実りある麦を、知らず知らずににらみ付けていた。
この光景が我が領地であったら、どんなに良いのか!!

グレースの鋭い目つきを気にしていた。
そして、彼女が見ている実りある畑を一緒に眺める。
あの畑に、何か思い入れがあるようだわ。

そっと気が付かない振りをして、夫人は目を閉じ寝てる素振そぶりをした。

時たま馬車の窓から外を見ている、グレースの表情がどうしても心に引っかかる。

アデラは意を決して、思いきってただしてみた。

「窓の外に何を思ってるの?」

グレースは、アデラの言葉の意味が分からなかった。
窓の外には畑があり、忙しく収穫をしている農民たちが働いていた。

何を思う?!
故郷の作物が、水浸しになりくさった野菜や麦よ!
あの残酷な光景はもう見たくない、そう思い神に願う。
それなのに、裏切りを何度も私たちに見せつけたわ!

嫉妬しっとしてます。
あの畑を、収穫する農民の姿をです。
アデラ様は…、えた経験がございますか?!」

侯爵夫人に無礼だと思うが、聞かずにはいられなかった。

今度はグレースに質問されて、アデラが戸惑う番になる。
飢えるとは、食べる物がなくお腹をかす意味よね?
この私が、そんな経験をするなんてあり得ないわ!

アデラは彼女に向けて驚きの表情で見てると、目の前の若い女性が苦しみもがくような目で自分を見ていた。
それに耐えきれなくなると、咄嗟とっさに目をそむける。

「フフフ、ご無礼を!
侯爵の領地なら、きっと良い土地ですよね。
天候によって不作はありますが、飢えるまでは経験はない。
そうではございませんか?!」

固まるように下を向き、冷ややかな声を聞いている。

このとき、立場が完全に逆転したと感じた。

だがアデラは怒るどころか、罪悪感を感じてくる。
初めての感情に驚き、どうグレースに返せば良いのかわからない。

初めて経験した感情に、侯爵夫人は彼女を恐れおののきそうになる。

「アデラ様は善良ぜんりょうなお方です。
普通なら、身分が低い私に怒鳴りつけるでしょう。
私を見て何かを感じたから、うかがっ下さったのですね」

声色こわいろが変わって、優しく悲しげになってくる。

「グレース…、貴女の実家に関係してるの?!
小説を書いたのも、それが原因なのかしら?!」

何故、私の声は震えてるの?

何を恐れて、何を知りたいの?

「はい、そうですわ。
仕方ないとは思いますが、災害が何年も何回も起こる領地はえきれなくなるものです。我が家の領地もそうでした。
なぜ王は我が祖先に、あの地をお与えになったのか!
不敬ふけいですが、おみしました」

グレースは、窓の外を見て静かに怒りの言葉をいた。

「アデラ様、もうこの話はここまでにしませんか?
どの国にも領地格差かくさはあるものです。
貴族と平民のように、いつか未来に平等の世が訪れるのでしょうか?!」

その問いかけに、返事の答えが見つからない。

自分の胸が、あつく痛くなる。
アデラは体から、彼女の深く苦い思いを感じていたのである。
反対の窓の外に広がる麦畑を、沈黙し眺め続けるしかなかったのだった。

今の二人には、馬車が走る車輪の音と揺れしか感じなくなっていく。

 
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