【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

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第4章  王家の陰り

第13話 貴族の罠

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    華やかな女性たちの集いに誘われて、クラレンス前公爵が戦友を連れて部屋に現れた。

「おぉまさに、女神たちの集まりのようだ!
のう、ブロイ前公爵」

「ほんにのう、おやっ?!
見知らぬ美女がおるの。
名を教えてくれんかのう?」

ブロイ前公爵が、にこやかに問う。

「お初にお目文字叶めもじかなって光栄に存じます。
ズザナ・ロジュアンです」

どこか、少し影がある挨拶であった。
名前を聞きくと彼女の身の上に、2人の公爵たちは眉をしかめた。

「これは、すまんない。
こんな美しい方が気の毒な。
夫だった方もご無念じゃろうに。
きっと、天国で貴女様を見守っているはずじゃあ」

祖父が悲しげに、ロジュアン侯爵未亡人に話すと祖母が話しかけた。

「貴方、たった今その話をしてましたの。
こんな素晴らしい女性を世捨て人とは、神もなげかれるに決まっています。
どうですか!?
王の側室に推挙すいきょできませんか?」

「うむ、そうだのう。
ロジュアン侯爵未亡人は、儂も噂で聞いとる。
結婚後にすぐに、夫が病になり長く介護したとか。
皆は、聖女のようだと話してたわい」

「たしかに、貴女のことだ!
儂も、一緒に推挙して良いぞ!王も、貴族たちが誇れる妃を持つべき」

ブロイ前公爵は、皆に提言する。 

「無理矢理はダメです!
一生のことですから、ご家族とよくよく話し合って決めないといけませんわ。
もう!お祖父様もおばあ様も、無理強いは良くありませんことよ!」

プリムローズが、頬を膨らませる。

その場にいた人たちは、プリムローズを見て笑いだした。

「年寄りは、どうもせっかちでな。
すまん、すまん!
もしも王がお好きなら、いつでも儂に言うが良い。
我らが、喜んで後ろ楯になるからのう」

祖父はプリムローズを見てから、困り顔で未亡人を見る。
それから他愛たあいのない話をして、側室のことはいっさい言わなかった。

「あらっ、もうこんなにお時間が…。
久しぶりに、楽しい思いをさせて頂きましたわ!」

未亡人は、皆に心からのお礼を言う。

「また、お茶会に来て下さいませ。
私は、スザナ様にすっかり心が奪われましてよ!」

未亡人の手に触れる、プリムローズ。

「あ、ごめんなさい!
つい、興奮してお手を触れてしまって‥!
それに、勝手にお名前までー」

下を向いてしょんぼりとすると、未亡人が手を握り締めてきた。

「全然、構わなくてよ!
私も出来ることなら貴女のような、娘が欲しかったわ!」 

悲しみの涙を、ハンカチで目を押さえる未亡人。

「そんな悲しい言葉を、まだまだお若いんですもの。
機会なら沢山ありますわ」

伯爵夫人も、思わず貰い泣きをする。
ロジュアン侯爵未亡人とリンドール伯爵夫人は、同じ馬車でケーキのお土産を持って仲良く帰って行った。

 サロンに戻り、残った者たちで話し始める。

「プリムや。
何故、リンドール伯爵夫人を返したのじゃあ?!」

祖父は、疑問に思い孫に聞いてみた。

「真っ直ぐな清い方です。
私たちは…。上位貴族は、汚く暗いことから逃げられない宿命ですわ。
その中には、あの方は相応ふさわしくないでしょう?!
ねぇ、皆さま?!」

大人達は、子供の中に大人を感じた。

「あれは脈ありますわ。お義父様!」

ブロイ公爵夫人は、話を側室の件にすぐに戻す。

「はい、偶然とはいえ驚きましたわ!」

プリムローズは、子供らしく可愛く微笑んだ。

「これで儂ら好みの王妃が、やっと誕生出来るかもしれんな。
ワーハハハ!」

祖父は笑いを終えると、紅茶を飲んだ。

「そんなに、上手くいくかのう?」

ブロイ前公爵が考える素振りで、テーブルを指でリズムをとりながら叩く。

「いくのではなく、私たちがさせるのですわ!」

祖母は扇を握り、強きに言葉を言い放つ。

「おぉっと、女は怖いのう。
プリム、そなた!
子供なのに、この手のことに詳しいのう?」

祖父は、自分の孫ながら恐ろしくなる。

「昔、本を読みましたの。
まさしく、そっくりですわ。
内容がね!クスクス」

プリムローズは一瞬だけ冷たい目付きをしたが、誰も気付きはしなかった。

「私たち貴族は、国の繁栄と安寧を求めて王に助言するのが役目。
それに答えるが、国王ではないでしょうか?!」

ブロイ公爵夫人は、皆に同意を求めた。

「もし、未亡人が王を求めたら…。
ブロイ公爵夫人が、前王妃に薦めて下さいませ。
その後に、私たち動きますからね」

祖母がブロイ公爵夫人に、目を細めながら話しかける。

「果たして、王はどうするのか楽しみじゃの?!
まぁ、男なら美女を邪険に出来んのう~!」

祖父は、ニヤニヤして感想を述べた。

「貴方!その歳で浮気は無しですわよ!」

祖母は、祖父の片耳を引っ張った。

「イタタタッ!!
お前にはかなわんのう。
すまんが、離してくれんか!!」

目に涙を浮かべて、耳をさすっていた。
皆の笑い声が、サロンに響き渡る。

  ジェイクが、帰って来てサロンを覗いて見た。

「ただいま、帰りました!
プリムローズ様、お客様でしたか?!」

カップの数を見て、ジェイクは聞いてくる。

「ええ、とっても大事なお客様よ。
皆さまで、素敵な楽しい相談してましたのよ!」

「新しいお店の件ですか?
本当に、楽しみですね!
プリムローズ様!」

ジェイクは、知らない貴族の本当の怖さを。

「フフフ!ジェイク、もうじき分かるわ。
私たちは、罠を仕掛けたのよ。
それも、1番偉い方にね。
必ずや、あの方は引っ掛かるわ!
貴方は気付くかしら?
この言葉を、けして忘れないで頂戴ちょうだいね!?」

話してから部屋から出ていく、プリムローズをジェイクは見送る。

その時話したプリムローズの言葉の意味を知るのは、まだまだ当分先の事であった。
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