【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 暗躍編ー

愚者 (フール)

文字の大きさ
58 / 142
第3章  暗躍と毒女たちとの戦い

第25話 木を隠すなら森の中

しおりを挟む
 昼間食堂での恐ろしく汚れた言い争いを聞いたので、気分転換きぶんてんかんしたくなった。
清く清浄せいじょうな魂の持ち主に、会いたくてたまらなくなるのである。

プリムローズが学園から戻り制服から着替えると、使用人たちの住まう別宅に向かう。

扉をノックしてギルの返事を中から聞くと、プリムローズは扉を開けた。

「エリアスとギルは、元気にしている?
ヒンメルは、また大きく育ったみたいだわ」

フレデリカ様のピアノ練習で、なかなか様子を見に行けなかったプリムローズ。

「お嬢様、お久し振りです!
もうピアノはいいのですか?
見て下さい、ヒンメルもほらこんなに大きくなりました」

エリアスの側にいる猫?
違うこれは、猫のデカさではない絶対に違う!

「また、一段と成長しましたね?ヒンメル」

あのプリムローズの声が、動揺どうようして震えていた。
これ、雪ヒョウで決定だわ。

「ギル、ヒンメルはどのくらい食べるの?!
食事代は、私が支払うことに決めました。
この子、どうも猫には見えないわ。
タルモ殿が仰ったとおりに、ヒョウに間違いないわ」

「ハハハ、でしょうな!
いっぱい生肉をガッついていますぜ。
料理長が、人より何倍も食うってボヤいでましたよ」

お利口なのか、ヒンメルが私の足に顔をり寄せて悲しい目を向ける。
ダメダメ、すがる様な目をしないでよ。

「ヒンメル、大丈夫よ。
ママは、稼ぎがたくさんあります。
大きくなって、今はエリアスを守ってあげて頂戴ちょうだいね」

ご飯確保で安心したのか、首を振ってみせるヒンメルを近くにいる者たちは笑って見ていた。

「エリアス、学園生活はどう?
貴族の方々と一緒で、いじめられたりしていない?」

「はい!オスモ様がよく貴族方々にお伝えくれたので、逆に親切にして貰っています」

本当はエリアス様と呼ばなくてはいけない身分だが、エリアスが拒んでいた。
彼はいつか、それを受け入れなくてはならない。  
今はそれでいいと、プリムローズたちも思って接していた。

「そう、安心したわ!
これがきっかけで、貴族と平民が歩み寄れるようになれたら素敵ね」

プリムローズにとって、長年の願いでもあった。

「王宮ではキナ臭くなっているようですな。
これから、どうなるんですかい?」

珍しくギルが真面目な顔をして、プリムローズに聞いてくる。

「エリアスの代わりに、王宮にいる方の食事に何か盛られたと言っていたわ。
それは間違いだったみたい。
ヘイズは気候が暑いでしょう?
食材に問題あったそうよ」

「それは本当ですかい?
お嬢に心配かけたくなくって、偽っているんじゃないかい」

ギルは疑ってかかり、プリムローズに話しかけた。

「本当かどうか分からないわ。
エリアスは気を緩まずに、これ以上に用心してね」

彼は話を聞くと、不安と困惑気味な態度を表す。

「お嬢様、私はこのまま隠れていいのでしょうか?
身代わりの人が、気の毒に思います」

「【木を隠すなら森の中】、という言葉を伺ったことがございます。
エリアスは、目立つ翡翠ひすいの瞳をしてます。
学園の中に緑の色の瞳を持つ、貴族の方々が大勢いれば誤魔化ごまかせると思いますけど」

メリーは少し前から、そっと部屋に入って様子を見ていた。
彼の側によると、彼女はエリアスの美しい瞳を見ながら話する。

「それが、その方の使命なのです。
国を納めるのは、辛く厳しいのですよ。
貴方が王になるかは、まだ先です。
今は健康で健やかに、学ぶことを1番に考えて欲しいとお嬢様もお思いですよ」

優しいエリアスにはきついが、この先はもっと辛いことになる。
彼は理解したのだろう。
固い表情で、メリーからプリムローズへ向きを変えて言ってきた。

「お嬢様、分かりました。
私がすることは、それしかありませんから…」

素直で優しく賢い、きっと王弟もそんなお方だったのね。

「ヘイズ王とは、お手紙でやり取りしているのでしょう。
早く一緒に、王宮で暮らせたらと願っているわ」

「お嬢、敵は尻尾を出さないんですかい?
なかなか、我慢強いお方みたいですな!」

プリムローズが話したら、間をおかずギルが気になるのか質してきた。

「もし、ギルの考えで王宮に間者がいたらー。
結構な貴族たちが、仲間にいる可能性もあるわ」

彼らは長い年月、この機会を待ち望んでいたのか。

物騒ぶっそうですわ。
お嬢様、エテルネルに1度帰国しませんか?!」

メリーは心配そうに、プリムローズにお願いをする。

「メリー、貴女一人でエテルネルに帰りなさいな。
心配してくれるのは有難いわ。 
もう、事態は動いている。
静かだけど、必ず嵐がくると思います」

「お前の気持ちは分かるが、下手に動くと気づかれる。
エリアスが、ここに居ることを知られては不味いだろう」

私は何故か、ギルが気になるのだった。
一度彼に、出生を聞き出した方がいいのかも。

「ギルの意見は正しいわ。
敵の狙いはエリアスよ。
彼らが玉座を欲しているなら、余計にそうだわ」

ギルの顔が一瞬だけ曇ったのを、プリムローズは見逃さなかった。
彼はヘイズの貴族出身で、何か私たちの知らない事を知っている。
偶然にも祖父の願いで、私の護衛を兼ねて里帰りしたのはー。
これも神の悪戯かしら?

「私のせいで、迷惑かけています」

エリアスは居心地悪そうに、私たちに謝ってくる。

「謝らないで、エリアスは悪くありませんよ!
ごめんなさい、誤解させたわね。
お嬢様はこの私がお守りしますので、ギル師匠は、ちゃんとエリアスを頼みましたよ!」

ギルはメリーの勇ましい顔つきを見て、笑いを堪えてなんとか返事をした。
エリアスと私も、そんなメリーを見て思わず吹き出した。

『ホント、メリーは私のいやしだわ』

プリムローズは、ギルに命じる姿を見て笑うしかない。
これからは、メリーからギルに対してお願いしようと思い始めるのだった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

婚約破棄されたので、愛のない契約結婚を選んだはずでした

鍛高譚
恋愛
王太子の婚約者だった伯爵令嬢・カーテンリンゼ。 しかし、王太子エドワルドは突然の婚約破棄を言い渡し、彼女を冷たく突き放す。 ――だが、それは彼女にとってむしろ好都合だった。 「婚約破棄? 結構なことですわ。むしろ自由を満喫できますわね!」 ところが、婚約破棄された途端、カーテンリンゼは別の求婚者たちに目をつけられてしまう。 身分を利用されるだけの結婚などごめんだと思っていた彼女の前に現れたのは、冷徹と噂される若き公爵・レオポルド。 「契約結婚だ。君の自由は保証しよう」 「まあ、それは理想的ですわね」 互いに“愛のない”結婚を選んだ二人だったが、次第に相手の本当の姿を知り、想いが変わっていく――。 一方、王太子エドワルドは、自分が捨てたはずのカーテンリンゼを取り戻そうと動き出し……!?

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...