【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 暗躍編ー

愚者 (フール)

文字の大きさ
67 / 142
第4章  光と闇が混ざる時

第7話 親しき仲にも礼儀あり

しおりを挟む
  玄関に向かう道に人気はないが、どうも中庭から大勢の人の騒ぎ声や笑い声が響いていた。

とっても嫌な予感がする。

夕方まで時間はあるが、まさか公爵の屋敷でー。
あの強面こわもてのあいつらが、まさか酒盛りしているのではないだろうか。
お祖父様は、たまに公爵らしくない振る舞いをして下さる。

「ただいま、帰りました。
祖父母は、ヴァロへ無事に到着しましたのね」

執事長しつじちょう兼メイド長のイーダに挨拶すると、彼女はニャーッといつもの笑いと嫌みの言葉を伝えてくれた。

「イヤイヤ、お嬢様のご家族だけありますな。
イーダは、あの方々がたいそう気に入りましたぞ!」

このイーダさんに気に入られれば、この屋敷ではまず問題なく過ごせるであろう。
私がイーダさんと笑い合っていたら、懐かしい声が聞こえてきた。

「おおー、プリムよー~!
わしは会いたかったぞ!
元気そうでなによりだ」

「あぁ~、プリム!
お祖母様に、お前の可愛い顔を見せておくれ!
ずいぶん、成長して背丈が伸びたんではない!?」

声のする方へ振り向くと、自然に足がそちらの方へ向いていた。

「お祖父様ー!お祖母様ー~!!」

近くにいた人たちを置いといて、プリムローズは一気に二人に向って駆け出してしまった。

3人は人目を気にせず抱きしめ合うと、独りぽつんと立っている青年がいた。

「ギル師匠ししょう
あの独り静かに、お嬢様たちを見ているお方は誰ですか?
もしや、兄上様のブライアン様ですか?」

エリアスが、ブライアンのことをマジマジ見つめながら話す。

「えっ~?まぁ、ああそうだな!」

「ふぅ~ん、あまりお顔が似てませんね?!
すごく綺麗で格好良い方でー。
王子様かのようです」

ギルはエリアスの鋭い指摘に、挙動不審きょどうふしんな態度。

「ほぉ~、一人だけ他人のように見えるのう。
そんな家族もおります」

くそーっ、この婆さんは気づいたな。
彼は、どうも演技の下手な男のようであった。
エリアスは、純真無垢じゅんしんむくなのでだませたがー。

1人抜け者のような彼は、プリムローズの元へ歩きだす。

「プ、プリ、プリムローズ!!
久しぶりに会えて、兄は嬉しいぞー!」

抱きつこうとしたが、彼女はそんな兄を拒絶して軽く突き飛ばす。

祖母ヴィクトリアが持っていたおうぎで、ブライアン改めルシアン殿下の肩を軽く叩いた。

「【親しき仲にも礼儀あり】です。
ブライアンお兄様!」

「そうです!
なんと、図々ずうずうしいことか。
ブライアン、貴方には1000年早いです」

側に来ていたエリアスは、なぜ兄に対して素っ気ないのか不思議に感じる。

「おやおや、親しき仲でしょう?
変ですな、兄妹ですよね。
エテルネルは、厳しい礼儀の国なのですか?」

イーダはますます意地悪く笑って、プリムローズ達を茶化していた。

「イーダさんとやら、ブライアンはお年頃ですしな。
淑女しゅくじょに対する扱い方を、いまは勉強中なんじゃあ。
ワーハハハ!」

そう言い豪快に笑いながら、祖父グレゴリーはブライアンの足を踏みつけていた。

痛さで半泣はんなききになる、本当はエテルネルの王子ルシアンは黙ってひたすら耐え忍んでいる。

『防御が厚いんだ!
兄なら妹に挨拶で抱きしめたり、頬に軽くチューぐらいはいいではないか』

心で愚痴ぐちる王子は、立派にも表情には出さなかった。

「お祖父様、子分を団体で連れて来ましたの?
スクード公爵様にご迷惑ではなくって?!」

流石さすがに、何十人も世話になるのはどうだと気にしている。

「ははは、大事ない!
わしらは、違う屋敷に滞在するからのう」

「エッ、何処に行かれますか?
もしかしたら、王宮でご厄介やっかいになりますの?」

祖父は笑ってばかりで、返事が出来ないようであった。
それだけ、久しぶりに孫娘と会うのが嬉しいようだ。

「プリム、旦那様はコチラでは侯爵の位を頂いてますのよ。
何せ、先王の命の恩人ですからね。
わらわも行きの海の上で知らされました」

そう話す祖母は、夫に軽くにらみつけて孫に説明する。

「こ、侯爵ですって!
お祖父様、本当でございますか?
この国にも、お屋敷を持ちですの?」

もう彼女は祖父に関しては、予知夢や予想は考えても無駄なような気がしてしまった。

「無論じゃあ、領地は無いがな。
違法の船を取り締まる海賊もどきは、儂の部下がしておる。
儂が海賊の頭だな」

『何時から、そんな事を祖父はしていたのか。
パーレン伯爵が皇太子を失脚してから、お祖父様はそのお勤めをされてたの?』
時たまヘイズに訪れていたわけ?

頭の中で思いをめぐらし、プリムローズは考えすぎて知恵熱を出しそうになる。

「おいおいと話すがな!
王都に、儂の屋敷があるので安心せい。
子分たちの寝床は、まかせるがよい!」

「プリムローズ、旦那様は私たちに隠し事を平気でしてました。
妾もないとは言えぬが、今回だけは許しましょう。
貴方、もしこの国に女の影がありましたら分かりますわね!!」

お願いここで夫婦喧嘩ふうふげんかだけはしないでくれと思う、孫娘であった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

婚約破棄されたので、愛のない契約結婚を選んだはずでした

鍛高譚
恋愛
王太子の婚約者だった伯爵令嬢・カーテンリンゼ。 しかし、王太子エドワルドは突然の婚約破棄を言い渡し、彼女を冷たく突き放す。 ――だが、それは彼女にとってむしろ好都合だった。 「婚約破棄? 結構なことですわ。むしろ自由を満喫できますわね!」 ところが、婚約破棄された途端、カーテンリンゼは別の求婚者たちに目をつけられてしまう。 身分を利用されるだけの結婚などごめんだと思っていた彼女の前に現れたのは、冷徹と噂される若き公爵・レオポルド。 「契約結婚だ。君の自由は保証しよう」 「まあ、それは理想的ですわね」 互いに“愛のない”結婚を選んだ二人だったが、次第に相手の本当の姿を知り、想いが変わっていく――。 一方、王太子エドワルドは、自分が捨てたはずのカーテンリンゼを取り戻そうと動き出し……!?

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...