【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 暗躍編ー

愚者 (フール)

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第5章  常勝王の道

第21話 郷に入っては郷に従え

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 二人は、各々の陣地に戻る前に幾つか話し合っていた。
他国の者がまだ将軍の身分ある人を、捕らえて保護してもいい事はない。
グレゴリーは、孫娘プリムローズに考えをべる。

「ヴェントは前にも言ったが、このままヘイズ王へ送るとしよう」

「では、私も娘サンドラをヘイズ王へ送りますわ。
ついでに、ルシアン殿下も!
戦いは、身軽にして集中しなくてはなりません。
そうでございましょう?」

グレゴリーはそうじゃなと一言だけを言って、首を上下に振って見せた。

「明日、早朝に日が昇る前からミュルクヴィズに入る。
あの森は、夜には戦えない。
火も夜は使えぬ、のろいがかけられているからのう」

現在のこの世界に、呪いって存在してますの?
魔法とか、そんな部類ってことかしら?


「呪い?私は存じませんわ。
どんな呪いですの?
お祖父様?!」

悩むような顔つきになると、世にも不思議な話を孫にする。

「その昔、一度だけ森で戦いがあってのう。
その時に夜に焚火たきびをしていたそうじゃあ。
それが原因で、山火事がおきた。
直ぐに消されたので、大事にならなかったが…」

話の続きによると、黒い森の精霊がお怒りになり、森を焼いた兵士たちを呪い殺したそうだ。

「それ以来、あの森で火は使えない。
朝から夕方までしか戦えないのじゃ」

おっしゃる意味が、よく分かりませんわ。
だって、何時からいつまでと時間がハッキリしません!
もし、雨が降ったらどうしますの?」

プリムローズは曖昧あいまいすぎて、線引きが難しいと思うのだった。

「プリムの言うとおりだ!
雨の日は戦わない。
日が昇り日が沈むまでと決まっておる。
戦うに時間は、ラッパをお互いに吹き鳴らしてから始めて終わるのじゃ」

「……。不思議な盟約めいやくですわね。
ごうに入っては郷に従え】ですか?」

いろんな国があるだけに、おかしな習わしもあるもんだと感じた。

「その土地に入ったら自分の価値観に異なっても、その土地の習慣にあわせなくてはならんものだ」

「クスクス、知らせてからの戦いですか。
笑ってはなんですが、緊張感があるようなないような変な感じですね」
 
「プリムローズ、お前には戦いは早いぞ!
まだまだ、幼いからのう。
剣術の試合とはいかん。
生と死の隣合わせだ」

そんな二人の話を少し離れた所で聞いていて、ニルスは戦の神に賛同していた。

お嬢は、まだ11歳だ。
普通は男だって、早くても16歳位だろうと思っていたからだ。

「お祖父様、今回の戦は私にも原因の一因いちいんがございます。
お祖父様だけ森に行かせたりしたら、一生涯後悔を致しますわ」

祖父は孫娘の真剣な表情から、これは説得に時間がかかると考えた。
しかし、戦場では時間が貴重だ。

「プリムローズ、今回はひけ!
そなたは、我軍の足手まといになる。
わしでも余裕はない。
正直に言うが歳を取り、ましてや久々ひさびさの戦場だ」

痛いことを言われたと、彼女は思った。
これだけ言われては、今は引くしかないのだろうか?

「確かに力不足ですわ。
それに、初めての戦場。
人を切り捨て、殺めたこともない。
もしその時になったら、自分を保てるのかも自信がない」

いきなり剣で、美しい長い髪を肩下くらいにジョリジョリと切り出した。

「お祖父様、これが私の決心ですわ!
危険は承知してます。
お祖父様一人行かせ。
安全な場所で祈って待つのは、私の性分にあらず!
どうか、お認め下さいませ!」

二人の男性は短くなった髪を見て、顔をしかめて辛そうな表情を一瞬した。
目の前で髪を掴んで、戦の神に差し出す少女を見ている。

「愚かな事を…。
お前の心意気を貰った!
来るが良い、一晩よく考えるのだ。
迷ったら来るな、約束じゃあ」

「有難うございます。
では、早朝に此処で会いましょう!」

私が礼をすると、祖父は大きな手を出して髪を寄越よこせという態度をした。

「お前の決心を、兵たちに見せつける!
指揮を高めるために、時に茶番だが見せ場が必要だ。
これは使えるからのう」

満面の笑みで、私は自分の切り落とした髪を渡した。

「トンボ、帰って二人を送ってから早めに寝ましょう。
明日は、早起きしないといけないしね!」

軽くなった髪を揺らしながら愛馬に乗ると、祖父も反対方向へ走って陣営に帰って行く。

ニルスは空の日を浴びて輝く短くなった銀髪の髪。
それを後ろから見てた時、馬を走らせて思った。

「お嬢は、やっぱ男前だよな」

颯爽さっそうと走る二人も、自分らの仲間が待つ陣地へ向う。

プリムローズの黒い森の戦いは、明日が初陣ういじんとなる。


    
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