無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 過去から未来編ー

愚者 (フール)

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第1章 閉ざされし箱

第15話 頭剥げても浮気はやまぬ

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   ベルナドッテ公爵に案内されて、広大な庭園を並んで歩く。
行き着く先には、とある小さな屋敷が紫色の瞳に入ってくる。
そこにあるものは、彼女の予想とはかけ離れていた。

可愛らしい白壁に若草色の屋根の屋敷である。
もっと、贅を凝らした威厳と格調の高い屋敷が、
そう城みたいな屋敷が、見えてくるものだと思っていた。

「これが、奥方様のお屋敷ですか?
田舎の風景に溶け込むような建物ですね。
想像していたのと違いましたわ」

裏表ない素直な性格をしたご令嬢だと、ベルナドッテはこの反応に笑いそうになる。
絢爛豪華けんらんごうかで、贅沢ぜいたくな作りの屋敷だったのだろう。

「妻は、贅沢はそんなに望まない女だった。
見かけと態度で、よく知らない人にはそう思われていたが、損な人だった」

自分の妻を悪く思われ、気分をがいして否定してくる。
そんな人をプリムローズは、大人げないけど可愛いと不謹慎にふきんしんになるがそう感じていた。

「さて、中に入ろう。
使われてはいないが、掃除はさせてある。 
亡くなった当時のまま、物はそのままにさせている」

当時のままか、時を止めたまま動かしたくないのね。
死を受け入れていても、どこかで受け入れたくない感情が残されているのかな。

鍵を開けて屋敷の中へ入ると、頭上の天井から光が床に向けて降り注ぐ。
綺麗なバラの花がピンク色に白い大理石だいりせきの床で咲いていた。

「きゃあ、素敵~。
なんて綺麗で可愛らしいの。
天井は、ステンドガラスになっているのですね」

プリムローズは叫んで、薔薇模様の床をくるくる踊りながら視線を上げて天井を眺める。

「妻も体調がよく、気分良い日はそうしておった。
懐かしいな。
女性は、みな同じ事をするのかのう?!」

ピタリと足が止まり、顔をピンク色に染めて公爵に話しかけてくる。

「アルゴラの神殿の中にもございます。
そちらのステンドガラスは、神々や神話を題材にしていて荘厳そうごんで美しいです。
ですが、私はこちらの方が好みだわ。
こちらは奥方様の趣味ですか?」

「あぁ、そうだよ。
エルザベッドは、自分を隠して生きていた。
死期を悟ったのか。
私に離れが欲しいと、ねだってきた。
最初で最後のお願いだ。
屋敷のデザインを自ら、書いて寄越よこしたのだ」

マーシャル伯爵夫人の話の中での公爵夫人と、この屋敷を見る限り真逆に思えた。

『どちらが本当のエルザベッド・ベルナドッテ公爵夫人なの?』

前を歩く彼の後を追って、亡き夫人のことを考えていた。

「こちらにどうぞ。
ここでよく、親子三人でお茶をしていたんだ。
彼女を亡くしてからは、一度も部屋に足を踏み入れていないのだ」

この部屋も可愛らしいですわ。
もしかしたら、エルザベッド様はこういう場所で過ごしたかったのでは?
彼女は幼少期に、どんなお部屋で過ごされていたのかしら?

「それは、父親である公爵様が立ち寄らないからでは?
ヨハン様は、公爵を思い遠慮されているのですわ。
貴方様からお誘いをすれば、喜んでここでお茶をされますわよ」

雷に打たれた思いで、ヤンはプリムローズを見ている。
正確には、彼女に息子ヨハンを重ね合わせていた。

「私がいけなかったのか。
ヨハンからは、とても言えない話だったのか…」

親子は思いやって、不器用にもすれ違っていた。
他人に指摘されて気づく、良くある事ね。

「早速、奥方様のお話を伺いたいですわ。
どうして、王妃の座に執着するのですか?
ベルナドッテ公爵家だって、地位は高いはず!
普通は満足するでしょうに」

椅子に対面しての語らいに、互いの表情は丸見えの姿勢になる。

「妻の実家は、元は公爵の家柄だったのですよ。
何代に渡り、賢く完璧な王妃を幾人いくにんも出してきた。
その中の、たった一人の女性が大罪を犯したのです。
そうして、公爵から侯爵へなってしまった」

口調は苦しげに耳に響き、これが根本こんぽんだと理解する。

「大罪ですって?
それで、公爵から侯爵に爵位を落とされた。
いったい、どんな罪だったのでしょうか?」

「王妃は見目みめ美しく、頭脳も優れ礼儀も完璧。
心持ちも慈悲深じひぶかく、誰からみても文句のつけようがない女性だった」

「そのような方が、罪を犯したのですか?
何をされたのか。
想像もつきません」

まさか、浮気なの?!
夫である王が、何かをしたとしか考えられない。

「令嬢の仰る通りだ。
完璧が故に側にいる王は息苦しさを感じ、反対に自由奔放じゆうほんぽうの女性を愛されたのですよ」

「当たりました。
あらまぁ、嫌ですわ。
私はまた独り言を言いましたのね」

まだ子供なのに年寄りくさい言い方に、つい鼻で笑って聞いてしまう公爵。

王様や貴族の男性は、一人の奥方に満足できないものなのか。
男性の浮気が、まったく理解できないでいた。

「その相手は子爵夫人です。 
夫に先立たれた未亡人で、側室にはするのには無理があり、。
公式愛妾あいしょうになったのだ」

プリムローズは怒りを通りすぎ、同じ男性のベルナドッテ公爵に言ってくる。

「【頭禿あたまはげげても浮気はやまぬ】ですわね。
禿げるくらい歳をとっても、色気はなくならず。
浮気心はおさまらない。
特に王様だと、色んな女性が近寄ってきますものね。
しかも愛妾ねぇ~。
ふぅ~ん?!」

愛妾って言葉に、疑問といやらしさを感じる。
純粋無垢じゅんすいむくな公爵令嬢。

話していて、自分でもバツの悪さを感じていた。彼は頭髪を触りながら、気まずさを隠すようにわざとせき払いを始めた。
気恥ずかしくなり、誤魔化ごまかすフリしていたのだ。
プリムローズもその態度が分かり、見かけよりも親しみやすい人物なのだろうと思いかけていた。

この後の話は、聞くのも嫌になる事柄であった。
どうして、王妃にこだわるのか。
理由は、すぐに判明するのだった。
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