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第2章 解けない謎解き
第14話 良工は材をえらばず
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帰宅したらいち早く、元ゲラン伯爵当主ウィル親方ことウィリアムに話し合いの内容を伝えるプリムローズ。
この話し合いに、当然息子ギルことギャスパルも同席してもらう。
「王弟夫妻の事故の原因を作った犯人を油断させるため、私たち親子がこの世からいなくなったことにしたと……」
「そういうことよ。
誘拐されて行方知れずになったエリアス様を、探し出す役目を王から密命されていたとするの!」
「あのさぁ、お嬢……。
他の貴族たちは、そんなんで納得するか?」
「あの人たちが深掘りすると思う?
王様の言うことなら、素直に納得するでしょ」
うーんと悩む声を出し、口をへの字にしながら疑って反論する。
「わざわざ海を渡り、アルゴラを飛ばしてエテルネルに行くか?
なぜ、そこへ逃亡したのを不審がられると思うぜ」
ギルに痛いところを突かれたが、回避する考えを述べてくる。
「まぁ、それは……。
他国にエリアス様がいるかもしれないとか。
適当に言い訳をすれば大丈夫じゃない?
結局はアルゴラとヘイズの間を、船で行ったり来たりしていたんだし」
ギルの父親ウィリアムは、彼女の発言に賛同するしかない。
「言ってることは一理ある。
王族のエリアス殿下が、船で働いていたんだからな」
「これは盲点だった。
だからこそ、エリアスは見つけられずに済んだ。
彼方さんだって、血眼になって探していたはずだしな」
彼方さんねぇ~、敵と味方がなりふり構わず探しまくっていたに違いない。
しかし、この男が将来ゲラン伯爵になるのか。
この話し方は、いつか直るのかと心配するプリムローズ。
「私の愛馬ヴァンブランのお陰もあるわね。
コホン、貴方たちは立派に使命を果たしました。
よって、汚名を雪いだとして復権を褒美に与えることになります」
「いいのですか。
私たちは逃げ延びて、クラレンス領で暮らしてました」
「いいじゃん、親父!
明日、イングリッドが俺たちに会いに来てくれるんだぜ。
アイツ婚姻していて、伯爵夫人になっていたよ。
綺麗になって、なにより幸せなそうだった」
ウィリアムは娘の名を耳にすると、目が自然と潤んでくる。
この様子を見て、彼女は横目で言う。
「新年の晩餐会に、ゲラン親子も出席してちょうだい。
なんたって2人は、エリアス様の次に主役になるのです。
それなりに、立派な身なりにしないとならないわ」
「親父は持っているかもしれんが、俺は気取ったキンキラした服はないぜ!
お嬢には悪いが、俺は遠慮させてほしい」
「ダメよ、出席しなくては!
おばあ様がわざわざ、餞別にと用意してある。
キンキラまで派手ではないけど、ギルでも上品に見えそうな服よ」
プリムローズがベルを鳴らすと、メリーとキルシが服の入った箱を持って現れた。
「ヴィクトリア様から?どうして、服が必要と分かったんだ?」
「それはね、私がおばあ様に頼んだのよ。
もしかしたら、パーティーに付き添いの出番があるかと思っていたから」
そうギルに言って片目を瞑ると、二人を残し部屋を去っていく。
ゲラン親子はメリーたちに着替え手伝いをされ、服の寸法あわせをされるのだった。
部屋でエテルネルからの手紙を読んでいると、ロレアル大司教の文面に釘付けになった。
「前王妃の派閥が、孤児院の運営費を着服していた。
仲間を増やすために使われていたようね。
前王妃は知らなかったと書いてあるけど、ますます印象が悪くなってしまったわ」
アルフレッド様とルイ様に、影響がなければ良いのだけど…。
「お兄様も気にされて、復学の時には周りの友人たちにもいじめとかないように口添えしてくれるみたい。
私が居なくても、問題は起きるものなのね」
友人たちにも、彼の事を頼む手紙を書いておこう。
正義感が強く、ジェイクやアレンが必ず助けてくれる。
彼らは、力強い援護になるわ。
「本人が気をしっかりもって、この試練に堪えてもらいたいわ」
その夜、彼女は不思議な夢を見ていた。
ゲラン伯爵が、ヘイズ王からお褒めのお言葉を賜っている。
国中から集まる貴族たちからは、歯の浮くような賛辞の言葉が飛び交う。
この貴族たちの輪の中から、外れていた侍従長の伯爵が気になる。
彼には疑いがあり、潔白ではない。
灰色なのか、黒なのか。
この先、エリアスの害になるのか。
見たい真実は、夢には出て来なかったのである。
翌日、彼女は祖国に向けて手紙を書いていた途中に夢のことで思いふけっていた。
「お嬢様、プリムローズ様」
「おお、驚くじゃない。
メリー、大きな声を出してどうしたの?」
「それはコチラの話ですわ。
どうかなさったのですか?
手紙に良くないことでも、なにか書かれてましたか?」
彼女に、孤児院の横領の犯人を話して聞かせた。
「あっ、お嬢様が1番初めに再起不能にした方ですね。
シャーロット様のご実家も、孤児院のお金を着服してたのですか?」
メリーはプリムローズが追いやっていった人物リストを、頭の中で引っ張り出して話す。
「ええ、そうなの。
あの娘を王妃にするために、かなりお金を裏で使ったみたい。
まさか侯爵とあろう者が、みみっちく金を掠めているとは誰も思わないでしょう」
「侯爵家ですからね。
しかし、見事にお嬢様に殺られ…。
いいえ、お仕置きされてしまいました。
それにもまして、元第一王子殿下はー。
仕方ないとは思いますが、現在は伯爵の子息まで落とされてしまってお気の毒です」
「あの時メリーも、一緒に見舞いに付き添って行ったでしょう。
彼女は学園に勉強についていけないのが嫌で、記憶喪失のふりしてたんじゃないの。
心配して損したわ!」
「私は演技に騙されてましたので、お嬢様の見破りには本当に驚きました。
廃人の様に座ってた人の顔を、迷いなく引っ叩きましたからね」
「あの子、かまってちゃんだからね。
悲劇のヒロインになっていたのは、すぐにわかったわよ」
「いい音を立てて叩いたら、お嬢様に怒鳴ってきましたものね。
プッ、思い出すと笑いが止まらなくなります」
2人で思い出し笑いして、叩いた彼女の顔を思い返す。
「ご両親の侯爵夫妻に奇跡だと、なぜか御礼を言われたわ。
あの娘も、やっと学園に通うって手紙に書いてあった。「
嘘がバレたからだって、しょうがない人ね」
そんな小物はどうでもいいと、プリムローズはメリーに本題を聞かせる。
「問題は、アルフレッド達よ。
領民たちやお祖父様の子分たちに頼んで、彼らのよい評判を流させるようにしたわ」
「お嬢様、もう大旦那様がなさっているのではありませんか?」
座りながら腕を組んで、彼女の考えに同意した。
「私の考えていることは、すでにお祖父様ならやっているか。
エテルネルの問題は、国にいる者で何とかなるわね」
メリーは、黙ってうなずくだけだった。
「そうそう、ギルたち。
ゲラン親子の服は似合っていたかしら?」
「お見立てがよいようで、なかなかよい男振りでした。
ウィリアム様は黒に近い紺で、ギル師匠は紺よりちょっと明るい青。
親子ですので、お色を合わせた様に見えました」
「おばあ様とポレット夫人のお見立てよ。
男性は適当でいいわよね。
暗い色を着せてれば無難で」
主人の発言に、一ひねり加えてメリーは気を効かせて返す。
「【良工は材をえらばず】。
お二人とも、素材は良いですから」
「すぐれた技術を持つ人は、材料の良し悪しなど問題にしないという意味ね。
「なるほど服も問題なしですわ。クスッ」
うまい言葉を言うなとメリーに感心して、意味を言っては鼻で笑ってからお茶に口をつけた。
「メリー、明日ギルの妹君イングリッド様が来訪するわ。
貴女がお茶をいれてちょうだいね。
私は、晩餐会で着るドレス選びをするから」
「え~、私がお嬢様のドレスをお選び致します。
お茶の支度は、他の者に頼んで下さい」
『もう、イングリッド様と顔見せする絶好の機会ですのに分かっていない』
心の中で、彼女に向かって言っている。
『家族たち水入らずの再会で、なんで私を指名したのかしら?
ギル師匠とくっつけようと、お嬢様が画策しているのはバレバレなのよ』
「知らないメイドよりも、メリーのような気心知れた人がいいでしょう。
貴女なら貴人の接待に慣れているんだし、何かあったら私の責任にもなるのよ」
「お嬢様の責任にー。
そんなことさせません!
私にお任せ下さい!」
「ありがとう、メリー。
よろしくお願いするわ」
返事してからしまった顔のメリーに対して、ひっかかったとニンマリとプリムローズヒル。
なかなか素直な気持ちになれない、メリーとギル。
はっきりしない関係に、イライラしながら見守るしかなかった。
この話し合いに、当然息子ギルことギャスパルも同席してもらう。
「王弟夫妻の事故の原因を作った犯人を油断させるため、私たち親子がこの世からいなくなったことにしたと……」
「そういうことよ。
誘拐されて行方知れずになったエリアス様を、探し出す役目を王から密命されていたとするの!」
「あのさぁ、お嬢……。
他の貴族たちは、そんなんで納得するか?」
「あの人たちが深掘りすると思う?
王様の言うことなら、素直に納得するでしょ」
うーんと悩む声を出し、口をへの字にしながら疑って反論する。
「わざわざ海を渡り、アルゴラを飛ばしてエテルネルに行くか?
なぜ、そこへ逃亡したのを不審がられると思うぜ」
ギルに痛いところを突かれたが、回避する考えを述べてくる。
「まぁ、それは……。
他国にエリアス様がいるかもしれないとか。
適当に言い訳をすれば大丈夫じゃない?
結局はアルゴラとヘイズの間を、船で行ったり来たりしていたんだし」
ギルの父親ウィリアムは、彼女の発言に賛同するしかない。
「言ってることは一理ある。
王族のエリアス殿下が、船で働いていたんだからな」
「これは盲点だった。
だからこそ、エリアスは見つけられずに済んだ。
彼方さんだって、血眼になって探していたはずだしな」
彼方さんねぇ~、敵と味方がなりふり構わず探しまくっていたに違いない。
しかし、この男が将来ゲラン伯爵になるのか。
この話し方は、いつか直るのかと心配するプリムローズ。
「私の愛馬ヴァンブランのお陰もあるわね。
コホン、貴方たちは立派に使命を果たしました。
よって、汚名を雪いだとして復権を褒美に与えることになります」
「いいのですか。
私たちは逃げ延びて、クラレンス領で暮らしてました」
「いいじゃん、親父!
明日、イングリッドが俺たちに会いに来てくれるんだぜ。
アイツ婚姻していて、伯爵夫人になっていたよ。
綺麗になって、なにより幸せなそうだった」
ウィリアムは娘の名を耳にすると、目が自然と潤んでくる。
この様子を見て、彼女は横目で言う。
「新年の晩餐会に、ゲラン親子も出席してちょうだい。
なんたって2人は、エリアス様の次に主役になるのです。
それなりに、立派な身なりにしないとならないわ」
「親父は持っているかもしれんが、俺は気取ったキンキラした服はないぜ!
お嬢には悪いが、俺は遠慮させてほしい」
「ダメよ、出席しなくては!
おばあ様がわざわざ、餞別にと用意してある。
キンキラまで派手ではないけど、ギルでも上品に見えそうな服よ」
プリムローズがベルを鳴らすと、メリーとキルシが服の入った箱を持って現れた。
「ヴィクトリア様から?どうして、服が必要と分かったんだ?」
「それはね、私がおばあ様に頼んだのよ。
もしかしたら、パーティーに付き添いの出番があるかと思っていたから」
そうギルに言って片目を瞑ると、二人を残し部屋を去っていく。
ゲラン親子はメリーたちに着替え手伝いをされ、服の寸法あわせをされるのだった。
部屋でエテルネルからの手紙を読んでいると、ロレアル大司教の文面に釘付けになった。
「前王妃の派閥が、孤児院の運営費を着服していた。
仲間を増やすために使われていたようね。
前王妃は知らなかったと書いてあるけど、ますます印象が悪くなってしまったわ」
アルフレッド様とルイ様に、影響がなければ良いのだけど…。
「お兄様も気にされて、復学の時には周りの友人たちにもいじめとかないように口添えしてくれるみたい。
私が居なくても、問題は起きるものなのね」
友人たちにも、彼の事を頼む手紙を書いておこう。
正義感が強く、ジェイクやアレンが必ず助けてくれる。
彼らは、力強い援護になるわ。
「本人が気をしっかりもって、この試練に堪えてもらいたいわ」
その夜、彼女は不思議な夢を見ていた。
ゲラン伯爵が、ヘイズ王からお褒めのお言葉を賜っている。
国中から集まる貴族たちからは、歯の浮くような賛辞の言葉が飛び交う。
この貴族たちの輪の中から、外れていた侍従長の伯爵が気になる。
彼には疑いがあり、潔白ではない。
灰色なのか、黒なのか。
この先、エリアスの害になるのか。
見たい真実は、夢には出て来なかったのである。
翌日、彼女は祖国に向けて手紙を書いていた途中に夢のことで思いふけっていた。
「お嬢様、プリムローズ様」
「おお、驚くじゃない。
メリー、大きな声を出してどうしたの?」
「それはコチラの話ですわ。
どうかなさったのですか?
手紙に良くないことでも、なにか書かれてましたか?」
彼女に、孤児院の横領の犯人を話して聞かせた。
「あっ、お嬢様が1番初めに再起不能にした方ですね。
シャーロット様のご実家も、孤児院のお金を着服してたのですか?」
メリーはプリムローズが追いやっていった人物リストを、頭の中で引っ張り出して話す。
「ええ、そうなの。
あの娘を王妃にするために、かなりお金を裏で使ったみたい。
まさか侯爵とあろう者が、みみっちく金を掠めているとは誰も思わないでしょう」
「侯爵家ですからね。
しかし、見事にお嬢様に殺られ…。
いいえ、お仕置きされてしまいました。
それにもまして、元第一王子殿下はー。
仕方ないとは思いますが、現在は伯爵の子息まで落とされてしまってお気の毒です」
「あの時メリーも、一緒に見舞いに付き添って行ったでしょう。
彼女は学園に勉強についていけないのが嫌で、記憶喪失のふりしてたんじゃないの。
心配して損したわ!」
「私は演技に騙されてましたので、お嬢様の見破りには本当に驚きました。
廃人の様に座ってた人の顔を、迷いなく引っ叩きましたからね」
「あの子、かまってちゃんだからね。
悲劇のヒロインになっていたのは、すぐにわかったわよ」
「いい音を立てて叩いたら、お嬢様に怒鳴ってきましたものね。
プッ、思い出すと笑いが止まらなくなります」
2人で思い出し笑いして、叩いた彼女の顔を思い返す。
「ご両親の侯爵夫妻に奇跡だと、なぜか御礼を言われたわ。
あの娘も、やっと学園に通うって手紙に書いてあった。「
嘘がバレたからだって、しょうがない人ね」
そんな小物はどうでもいいと、プリムローズはメリーに本題を聞かせる。
「問題は、アルフレッド達よ。
領民たちやお祖父様の子分たちに頼んで、彼らのよい評判を流させるようにしたわ」
「お嬢様、もう大旦那様がなさっているのではありませんか?」
座りながら腕を組んで、彼女の考えに同意した。
「私の考えていることは、すでにお祖父様ならやっているか。
エテルネルの問題は、国にいる者で何とかなるわね」
メリーは、黙ってうなずくだけだった。
「そうそう、ギルたち。
ゲラン親子の服は似合っていたかしら?」
「お見立てがよいようで、なかなかよい男振りでした。
ウィリアム様は黒に近い紺で、ギル師匠は紺よりちょっと明るい青。
親子ですので、お色を合わせた様に見えました」
「おばあ様とポレット夫人のお見立てよ。
男性は適当でいいわよね。
暗い色を着せてれば無難で」
主人の発言に、一ひねり加えてメリーは気を効かせて返す。
「【良工は材をえらばず】。
お二人とも、素材は良いですから」
「すぐれた技術を持つ人は、材料の良し悪しなど問題にしないという意味ね。
「なるほど服も問題なしですわ。クスッ」
うまい言葉を言うなとメリーに感心して、意味を言っては鼻で笑ってからお茶に口をつけた。
「メリー、明日ギルの妹君イングリッド様が来訪するわ。
貴女がお茶をいれてちょうだいね。
私は、晩餐会で着るドレス選びをするから」
「え~、私がお嬢様のドレスをお選び致します。
お茶の支度は、他の者に頼んで下さい」
『もう、イングリッド様と顔見せする絶好の機会ですのに分かっていない』
心の中で、彼女に向かって言っている。
『家族たち水入らずの再会で、なんで私を指名したのかしら?
ギル師匠とくっつけようと、お嬢様が画策しているのはバレバレなのよ』
「知らないメイドよりも、メリーのような気心知れた人がいいでしょう。
貴女なら貴人の接待に慣れているんだし、何かあったら私の責任にもなるのよ」
「お嬢様の責任にー。
そんなことさせません!
私にお任せ下さい!」
「ありがとう、メリー。
よろしくお願いするわ」
返事してからしまった顔のメリーに対して、ひっかかったとニンマリとプリムローズヒル。
なかなか素直な気持ちになれない、メリーとギル。
はっきりしない関係に、イライラしながら見守るしかなかった。
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