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第3章 それぞれの巣立ち
第7話 渡りに船
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横切る大半は、辻馬車で知らない人同士を乗せる。
それだけ馬車を保有するのは、一般人は経済的に難しい。
徐々に馬車と対面する時間が短くなり、プリムローズたちは周辺の様子が気になる。
観光を終えた人たちが、馬車の中で楽しげに談笑している姿があり。
それが印象的で、ますます行く場所に期待が持てた。
「あまり渋滞が起きてない。
観光地だけあって、整備しているようね」
「先ほどから緩やかな坂道を上がっています。
事故を起きないように、道幅を広げているみたいです」
「ねぇ、恋人たちが誓ったと言われている木が、この上にあるのよね。
特別に飾り付けとかされていたりしてー」
プリムローズ、メリー、エリアスは、その木を各々が想像していた。
向かう先を予想する面々たちに、見知った者は言わぬが花。
せっかくの楽しみを奪っては、無粋でつまらない。
馬車の中から漏れ聞こえてくる会話を無視して、ギルはヘイズで有名な観光地を目指す。
「お嬢様、木が見えないようですが…。
とても立派な屋敷が、前方から見えてきましたよ」
メリーの弾ける声に、エリアスが同じく前に目をやる。
彼女らに声をかけてる。
「名所ですから、そこで商売でもしているのかもしれません」
「もーう、エリアス殿下!
夢をぶち壊さないで下さい。
もしそうなら、商魂たくましい。
私も見習って、どんな商品が置いてあるのか。
とことん勉強させて頂きましょう」
『また、お嬢様は新しい商売を始めるつもり。
公爵令嬢が、そこまで金儲けをしなくてもいいのに。
お嬢様にとって、金儲けが趣味になっているのかもしれない』
ヘイズから輸入する品で、新店舗の話が進んでいる
あまり良い趣味ではないと、メリーは顔を曇らせた。
馬車が目的地に停まり、プリムローズたちは外へ降り立った。
周りを見れば屋敷にはたくさんの人たちが入って行き、何やら品を買い求めている。
「ねぇ、木はどこにあるの?!
大木がないようだけど、恋人たちの木はいったい何処にあるのかしら?」
期待し楽しみにしていたので、驚きと失望の気持ちが言葉として口に出るのだ。
もう一台の馬車から降りた令嬢たちが、プリムローズのガッカリした言葉を聞きつけて笑って近づく。
「大木ではありませんが、木はございますのよ。
プリムローズ様、さあ行きましょう!」
ライラは意味深なことをプリムローズに言うと、彼女の自分より小さな手を握る。そして、屋敷の裏口から中へ入って行った。
「ええーっ!
ちょっと、お待ちになって~!
ライラ様、いきなり何すんの。
まさか、屋敷の中に木があるとか!?」
中はカフェになっていて、お茶を頼んだり食事もしていた客人たちを突っ切る。
出入口には、何かを販売しているようだった。
「見て、素敵な木たちございましょう!
いまが盛りの季節で、見所なのよ」
大きな木ではないが、確かに木だった。
自分の背丈の倍ぐらいの高さであろうか。
赤に近いピンク色の花をつけた木が左右あり、まるで塀にみたいになって下へ道沿いに続いていた。
途中にはベンチや広場もあり、皆がお弁当を食べながら楽しんでいる。
「うわぁ~、なに綺麗!!
ピンクの道みたいだわ。
あの花、私は見たことがありませんわ。
何という、花ですの?」
「ヘイズより、ずーっと東の国から海を渡って運ばれた花です。
大陸にはございませんのね。
カメリアって名で、ヘイズでは呼ばれてます」
「カメリアと言いますの。
ここからではまだ遠くて、よく見えませんけど美しい色をしてます」
心配で後を追ってきたオスモが、プリムローズを無視してライラしか目に入らないように話す。
「ピンクのカメリアの花言葉は、恋しく思うです。
結ばれない恋だからこそ。
相手を恋しく感じるかもしれません」
「オスモ様、私たちは離れてませんよね」
「もちろん、ずっと一緒だよ。
いつまでもライラ!」
婚約者の手オスモ様が、彼女の手の甲へキスをした。
「あらまぁ、お熱いこと。
ピンクから真っ赤に、花の色が変わりそうですわ。
ココで愛を誓い合って、一生添い遂げて下さいませね」
彼女の茶化し聞いて知らぬ人たちも、笑いながらライラ様たちに祝福してくれていた。
「イヤですわ~!
プリムローズ様ったら、大きな声を出して人前で仰らないで」
否定しながらも、婚約者のオスモの目を見つめるライラ。
「ライラ、いつまでも君への愛は変わらないよ」
「オ、オスモ様もイヤですわ。
こんなたくさんの人の前で…」
『ぬけぬけと私の前で、よく言えること。
サンドラに言った言葉は、一生忘れませんよ』
「証人は、ココにおられる皆様ですわ。
ライラ様、オスモ様に裏切られたりしたらー。
我が国でお暮らし遊ばせ。
いつでも、歓迎致しますから」
縁起の悪い事を冗談ぽく話す彼女に周りは笑っているが、オスモ独りは真顔で耳を傾けていたのである。
馬車に全員が集まると、ピクニック用の荷物の多さに改めて頭を痛めた。
ギルとオスモ様は重たいものを持てるが、エリアス殿下とヨハン様は…………。
ご令嬢たちは、自分のバスケットぐらいは持てるだろう。
「ギルとオスモ様は飲み物、メリーと私が主食を運ぶわ。
後の残りは、皆様でお願いします」
「これをここいらで、食べれたら楽なんだけどよ。
持ち運びは、重いし面倒だ。
腹に納めるのが、得策なんだかな」
大人で付き添い役のギルが、辺りに適当な場所がないかと見回す。
空いているテーブルは、見る限りひとつもなかった。
「ねぇな、しょうがない。
ひとまずは、ここから移動して場所を探すしかない」
一同が荷物に手をかけ始めたところに、肝っ玉母ちゃんのような声が響く。
「あんたたち、ちょいと待ちな!
どうやら食べる場所を、探すのに難儀しているようだね」
気の良さそうなおば様が、ギルの肩を軽く叩いた。
もしかして、場所を譲ってくれるのか。
この手の直感は鋭く、ギルは調子よく夫人を褒めた。
「お姉さん、美人さんだね。
カメリアも真っ青だ!」
逆効果になりかねないと、オスもたちも呆れ聞いていた。
「あれって、不味くありません」
「シーッ、黙ってライラ」
ハラハラするやり取りを見ていたが、案外すんなりと夫人は聞き流してくれた。
「お前さん、心にもないことを言ってくれるね。
お世辞だとしても、嬉しいもんだね。
あたし達、食べ終わって帰ろうとしていたんだ。
席を譲るがどうだい?
さっき偶然に、素敵な会話を聞かせてくれた。
これはお礼の気持ちだよ」
「本当かい、心も美人さんだ。
助かった、ありがとうよ」
ギルはうまくいったと、私たちに片目を瞑っておどけてみせる。
『調子にのって、この男はー。
美しさは、見た目だけでないか。
そう考えると、ギルは良いこと言うじゃない。
この本質を知っているから、メリーもギルに好意を持てるわけか』
人の良さそうな夫人に、プリムローズはお礼のお辞儀をした。そして、もう一度確認する。
「おば様、お席の件は宜しいのですか?
もしそうでしたら、私たちには【渡りに船】です」
プリムローズが喜んでギルと頭を下げていると、エリアスが船に反応を示してきた。
「渡りに船、船ですか?
海もないのに、どうして船がここで出てくるんですか?」
「困っている状況の時に、思いがけない助け舟があることですよ」
メリーが彼に意味を説明すると、ベルナドッテ公爵嫡男ヨハンもエリアスたちの話に加わってくる。
「席が見つからなくて、私たちは困っていたんです。
思わぬ幸運が舞い込んできた」
その夫人の後ろについて行くと、屋敷の中庭にゴザを引いたりして食べたり寛いでいた。
「あそこだよ!
4席が2つで8人分、ピッタリ人数分あるね。
近くにベンチもあるから荷物も置ける。
どうだい特等席だろう」
自慢気に場所を指して、譲る席を説明してくれた。
ケラケラ笑って言う夫人は、やはり太っ腹母さんって感じがする。
プリムローズたちがまた礼を言うと、何度もいいんだよって笑い出す。
そして家族たちに、どけとか片付けろと命令する。
慌ただしく動いている家族構成は、弟夫婦の家族に子供たちが総勢4人。
持ってきていたクッキーの量を、プリムローズは瞬時に頭の中で思い浮かべた。
互いに挨拶してお礼を言うと、家族はゾロゾロと出口に歩いて行こうとしていた。
「メリー、余ったとき用にクッキーを入れる袋あったはずよね」
「はい、お嬢様。
急いでご用意致します!」
プリムローズの話に反応して、手際よく袋にクッキーを詰めてくれた。
「皆さんは、お先に食べていてね。
席を譲ってくれた家族に、コレを渡しに行ってくるわ」
息を切らして走って追いつくと、呼び止められた家族たちは驚きプリムローズを振り返った。
彼女からクッキーの入った袋を受け取ると、喜んで笑顔でこう言ってくれた。
「アンタ、わざわざ駆けて来てくれたんだね。
甘い香りがする、これはお菓子かい?
子供たちに、有り難く頂くことにするよ。
カメリアの御加護が、お嬢さんにありますようにー」
礼を言ってから、手を振りながら私に向けて投げかけてくれた。
「皆さんに、カメリアの御加護を~!
お席譲ってくれて、ありがとうございました」
ここでの決まり文句の挨拶なんだと思った。
同じ様に真似て言うと、親切な家族たちの姿が目視できるまで右腕をあげて大きく振り続ける。
引き返す途中で、先にカメリアの花の美しさを堪能する。
足取り軽くスキップする気分で、ひとりプリムローズは戻って行くのだった。
それだけ馬車を保有するのは、一般人は経済的に難しい。
徐々に馬車と対面する時間が短くなり、プリムローズたちは周辺の様子が気になる。
観光を終えた人たちが、馬車の中で楽しげに談笑している姿があり。
それが印象的で、ますます行く場所に期待が持てた。
「あまり渋滞が起きてない。
観光地だけあって、整備しているようね」
「先ほどから緩やかな坂道を上がっています。
事故を起きないように、道幅を広げているみたいです」
「ねぇ、恋人たちが誓ったと言われている木が、この上にあるのよね。
特別に飾り付けとかされていたりしてー」
プリムローズ、メリー、エリアスは、その木を各々が想像していた。
向かう先を予想する面々たちに、見知った者は言わぬが花。
せっかくの楽しみを奪っては、無粋でつまらない。
馬車の中から漏れ聞こえてくる会話を無視して、ギルはヘイズで有名な観光地を目指す。
「お嬢様、木が見えないようですが…。
とても立派な屋敷が、前方から見えてきましたよ」
メリーの弾ける声に、エリアスが同じく前に目をやる。
彼女らに声をかけてる。
「名所ですから、そこで商売でもしているのかもしれません」
「もーう、エリアス殿下!
夢をぶち壊さないで下さい。
もしそうなら、商魂たくましい。
私も見習って、どんな商品が置いてあるのか。
とことん勉強させて頂きましょう」
『また、お嬢様は新しい商売を始めるつもり。
公爵令嬢が、そこまで金儲けをしなくてもいいのに。
お嬢様にとって、金儲けが趣味になっているのかもしれない』
ヘイズから輸入する品で、新店舗の話が進んでいる
あまり良い趣味ではないと、メリーは顔を曇らせた。
馬車が目的地に停まり、プリムローズたちは外へ降り立った。
周りを見れば屋敷にはたくさんの人たちが入って行き、何やら品を買い求めている。
「ねぇ、木はどこにあるの?!
大木がないようだけど、恋人たちの木はいったい何処にあるのかしら?」
期待し楽しみにしていたので、驚きと失望の気持ちが言葉として口に出るのだ。
もう一台の馬車から降りた令嬢たちが、プリムローズのガッカリした言葉を聞きつけて笑って近づく。
「大木ではありませんが、木はございますのよ。
プリムローズ様、さあ行きましょう!」
ライラは意味深なことをプリムローズに言うと、彼女の自分より小さな手を握る。そして、屋敷の裏口から中へ入って行った。
「ええーっ!
ちょっと、お待ちになって~!
ライラ様、いきなり何すんの。
まさか、屋敷の中に木があるとか!?」
中はカフェになっていて、お茶を頼んだり食事もしていた客人たちを突っ切る。
出入口には、何かを販売しているようだった。
「見て、素敵な木たちございましょう!
いまが盛りの季節で、見所なのよ」
大きな木ではないが、確かに木だった。
自分の背丈の倍ぐらいの高さであろうか。
赤に近いピンク色の花をつけた木が左右あり、まるで塀にみたいになって下へ道沿いに続いていた。
途中にはベンチや広場もあり、皆がお弁当を食べながら楽しんでいる。
「うわぁ~、なに綺麗!!
ピンクの道みたいだわ。
あの花、私は見たことがありませんわ。
何という、花ですの?」
「ヘイズより、ずーっと東の国から海を渡って運ばれた花です。
大陸にはございませんのね。
カメリアって名で、ヘイズでは呼ばれてます」
「カメリアと言いますの。
ここからではまだ遠くて、よく見えませんけど美しい色をしてます」
心配で後を追ってきたオスモが、プリムローズを無視してライラしか目に入らないように話す。
「ピンクのカメリアの花言葉は、恋しく思うです。
結ばれない恋だからこそ。
相手を恋しく感じるかもしれません」
「オスモ様、私たちは離れてませんよね」
「もちろん、ずっと一緒だよ。
いつまでもライラ!」
婚約者の手オスモ様が、彼女の手の甲へキスをした。
「あらまぁ、お熱いこと。
ピンクから真っ赤に、花の色が変わりそうですわ。
ココで愛を誓い合って、一生添い遂げて下さいませね」
彼女の茶化し聞いて知らぬ人たちも、笑いながらライラ様たちに祝福してくれていた。
「イヤですわ~!
プリムローズ様ったら、大きな声を出して人前で仰らないで」
否定しながらも、婚約者のオスモの目を見つめるライラ。
「ライラ、いつまでも君への愛は変わらないよ」
「オ、オスモ様もイヤですわ。
こんなたくさんの人の前で…」
『ぬけぬけと私の前で、よく言えること。
サンドラに言った言葉は、一生忘れませんよ』
「証人は、ココにおられる皆様ですわ。
ライラ様、オスモ様に裏切られたりしたらー。
我が国でお暮らし遊ばせ。
いつでも、歓迎致しますから」
縁起の悪い事を冗談ぽく話す彼女に周りは笑っているが、オスモ独りは真顔で耳を傾けていたのである。
馬車に全員が集まると、ピクニック用の荷物の多さに改めて頭を痛めた。
ギルとオスモ様は重たいものを持てるが、エリアス殿下とヨハン様は…………。
ご令嬢たちは、自分のバスケットぐらいは持てるだろう。
「ギルとオスモ様は飲み物、メリーと私が主食を運ぶわ。
後の残りは、皆様でお願いします」
「これをここいらで、食べれたら楽なんだけどよ。
持ち運びは、重いし面倒だ。
腹に納めるのが、得策なんだかな」
大人で付き添い役のギルが、辺りに適当な場所がないかと見回す。
空いているテーブルは、見る限りひとつもなかった。
「ねぇな、しょうがない。
ひとまずは、ここから移動して場所を探すしかない」
一同が荷物に手をかけ始めたところに、肝っ玉母ちゃんのような声が響く。
「あんたたち、ちょいと待ちな!
どうやら食べる場所を、探すのに難儀しているようだね」
気の良さそうなおば様が、ギルの肩を軽く叩いた。
もしかして、場所を譲ってくれるのか。
この手の直感は鋭く、ギルは調子よく夫人を褒めた。
「お姉さん、美人さんだね。
カメリアも真っ青だ!」
逆効果になりかねないと、オスもたちも呆れ聞いていた。
「あれって、不味くありません」
「シーッ、黙ってライラ」
ハラハラするやり取りを見ていたが、案外すんなりと夫人は聞き流してくれた。
「お前さん、心にもないことを言ってくれるね。
お世辞だとしても、嬉しいもんだね。
あたし達、食べ終わって帰ろうとしていたんだ。
席を譲るがどうだい?
さっき偶然に、素敵な会話を聞かせてくれた。
これはお礼の気持ちだよ」
「本当かい、心も美人さんだ。
助かった、ありがとうよ」
ギルはうまくいったと、私たちに片目を瞑っておどけてみせる。
『調子にのって、この男はー。
美しさは、見た目だけでないか。
そう考えると、ギルは良いこと言うじゃない。
この本質を知っているから、メリーもギルに好意を持てるわけか』
人の良さそうな夫人に、プリムローズはお礼のお辞儀をした。そして、もう一度確認する。
「おば様、お席の件は宜しいのですか?
もしそうでしたら、私たちには【渡りに船】です」
プリムローズが喜んでギルと頭を下げていると、エリアスが船に反応を示してきた。
「渡りに船、船ですか?
海もないのに、どうして船がここで出てくるんですか?」
「困っている状況の時に、思いがけない助け舟があることですよ」
メリーが彼に意味を説明すると、ベルナドッテ公爵嫡男ヨハンもエリアスたちの話に加わってくる。
「席が見つからなくて、私たちは困っていたんです。
思わぬ幸運が舞い込んできた」
その夫人の後ろについて行くと、屋敷の中庭にゴザを引いたりして食べたり寛いでいた。
「あそこだよ!
4席が2つで8人分、ピッタリ人数分あるね。
近くにベンチもあるから荷物も置ける。
どうだい特等席だろう」
自慢気に場所を指して、譲る席を説明してくれた。
ケラケラ笑って言う夫人は、やはり太っ腹母さんって感じがする。
プリムローズたちがまた礼を言うと、何度もいいんだよって笑い出す。
そして家族たちに、どけとか片付けろと命令する。
慌ただしく動いている家族構成は、弟夫婦の家族に子供たちが総勢4人。
持ってきていたクッキーの量を、プリムローズは瞬時に頭の中で思い浮かべた。
互いに挨拶してお礼を言うと、家族はゾロゾロと出口に歩いて行こうとしていた。
「メリー、余ったとき用にクッキーを入れる袋あったはずよね」
「はい、お嬢様。
急いでご用意致します!」
プリムローズの話に反応して、手際よく袋にクッキーを詰めてくれた。
「皆さんは、お先に食べていてね。
席を譲ってくれた家族に、コレを渡しに行ってくるわ」
息を切らして走って追いつくと、呼び止められた家族たちは驚きプリムローズを振り返った。
彼女からクッキーの入った袋を受け取ると、喜んで笑顔でこう言ってくれた。
「アンタ、わざわざ駆けて来てくれたんだね。
甘い香りがする、これはお菓子かい?
子供たちに、有り難く頂くことにするよ。
カメリアの御加護が、お嬢さんにありますようにー」
礼を言ってから、手を振りながら私に向けて投げかけてくれた。
「皆さんに、カメリアの御加護を~!
お席譲ってくれて、ありがとうございました」
ここでの決まり文句の挨拶なんだと思った。
同じ様に真似て言うと、親切な家族たちの姿が目視できるまで右腕をあげて大きく振り続ける。
引き返す途中で、先にカメリアの花の美しさを堪能する。
足取り軽くスキップする気分で、ひとりプリムローズは戻って行くのだった。
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