無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 過去から未来編ー

愚者 (フール)

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第1章 閉ざされし箱

第1話 夫婦喧嘩は犬も食わぬ

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 大陸から海を渡りここ島国ヘイズへ留学している彼女は、わざわざ会いに来てくれた祖父母たちを見送った。
再会の喜びや思わぬ出来事に遭いながらも、それらを乗り切っての別れである。
祖父母と偽ってまで来てくれた王子ルシアンが去った後は、祭りの様に賑やかだったのに急に物寂しくなっていた。
別れ際に安心してもらうため作った笑顔が、仮面が外れたようになくなり悲しげな表情になってしまう。

後ろから、その姿を誰かに見られている気配がする。 
気落ちしたところを見せないように、誰が居るっていうのよって態度で美しい髪を輝かせて揺らし振り向く。

すると、メイドのメリーとマーシャル伯爵夫人が立っていた。
不似合いで、変な組合せ。

メリーはあからさまに困惑し、伯爵夫人は逆にワクワクしている子供のようだ。

『イヤな予感がするわ。
この勘は、昔から何故か百発百中__ひゃっぱつひゃくちゅう__なのよ』

私からこの気持ちを、伯爵夫人に窺わなくてはならないのか。

「まぁまぁ、伯爵夫人。
お別れの挨拶を頂けて、とっても光栄ですわぁ」

本心からでない彼女の言葉がけに、メリーはお嬢様ったら白々しらじらしいと思っている。
この後を考えてたら、かえって主人が不憫ふびんになってしまうのだ。

「別れは言いませんわよ。
この私も、クラレンス公爵令嬢とヴァロまでご一緒致しますから~。
べつに宜しいですわよね」

『何を言い出している、この女はー!』

メリーには主人の顔色ひとつで、読み取れた本音ほんねである。

「はあ?
伯爵夫人、何を言っているのですか?!
ヴァロに行くのですか?
誰と誰がですか?
なんだか、耳と頭が急におかしくなったようです」

「お若いのに、もうボケてますの。
私とプリムローズ様です。
私に申したではありませんか。
思い立ったが吉日と!
ご自分から、私にハッキリと言いましたわ」

口と目を同時に大きく開け、プリムローズは、気弱な女から悪女に様変さまがわりした別人のマーシャル伯爵夫人に見入った。

『しまった!
まさか、こう出るとは思わなかった』

焦り、じんわりと冷や汗をかく中で、よく考えてみるプリムローズ。

『でも、待って!
この人と修道院しゅうどういんにいる姉上に、会いに行けば彼女の話を聞ける。
亡きベルナドッテ公爵夫人の闇に、確実にその秘密に一歩近づく』

一石二鳥、今日だけで何鳥になるんだと考えをめぐらしていた。

その前に強烈きょうれつ一波乱ひとはらんがあるのを彼女は知らずに、愉快ゆかいげに笑っている夫人を見ては頭で損得を計算する。

彼女らに忍び寄る不気味な大きな影が、ゆっくりと背後からせまってきた。

「うわっ、驚いた!
マーシャル伯爵、お気持ち分かりましてよ。
やっと再会した弟君が、他国に行かれたのですもの。
何時でも、我がエテルネルのクラレンス領地へ会いに来て下さいませ」

ムリにこの場を取り繕おうとして、ペラペラと的外まとはずれな話すをしだす。

そんなプリムローズをあわれに思い、つい口に出してしまう。

「お嬢様…。
ちっ、違いますよ」

小さなの鳴くような声で、否定されたプリムローズ。
一旦、黙りマーシャル伯爵夫妻の様子を#伺__うかう。
夫婦に視線を向けると、プリムローズとメリーは見守ることにした。

「ヘレン、行かないでくれ!
まだ、体調が完全ではないだろう。
元気になってから、二人でヴァロへ行こう。
なっ、そうしよう!」

プリムローズの話を無視して横を横切り、今にも泣きそうに妻の手を握り締めていた。

「旦那様、私だけではありません。
プリムローズ様達がいらっしゃいます。
ねっ、クラレンス公爵令嬢!」

夫から優しく握られている手をふりほどき、妻である伯爵夫人は私の右手を取ると力を込めて握り締めてきた。

『突然、私に振ってくるの?!
子供の私に、この場をどう対処すればいいのよ』

「【夫婦喧嘩は犬も食わぬ】って言いますわよ。
勝手に、二人でやって下さいませ。
迷惑ですことよ!」

『あのお嬢様が必死ですわ。
気の強さはヴィクトリア様譲りで、こんな時まで立派に意思表示してます。
あぁ、我が主はなんと強いお方なのでしょう』

メリーは、改めて災厄から逃れようとしている。
プリムローズを誇りに思うのである。

「夫婦のいさかいはよくあることで、すぐ和解する事が多いですわ。
他人が仲裁ちゅうさいするものではないし、馬鹿げてますよね」

そんな主人を、かばう様に口を出してきた。
一介いっかいのメイド風情ふぜいが、生意気なまいきにも理路整然りろせいぜんと言葉の意味を説明する。

「メリー、貴女は正しいことを言っています。 
大体だいたい、夫である伯爵の許しなく領地を出るのはいけませんわ。
落ち着いたら、ヴァロヘいらっしゃい!
お待ちしてますわ」 

こんな時にも高飛車たかびしゃな彼女は、握られた夫人の手を押しやると、キッパリ拒絶した。

さきほど考えていた目的を忘れ、反対の言葉を言っては背中をそむけた。
こんな令嬢を、周りは白い目で傍観ぼうかんする。

『おっ、お嬢様…。
ここで手を払うとは、強引すぎます』

プリムローズたちのやり取りを、気にしていた者がいた。
誰なのだろうか。
この人物のせいで、騒ぎがまたまた大きくなる。

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