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第3章 それぞれの巣立ち
第25話 ローマの道は一日にしてならず
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初日をまだ残しているのに、想像していた違いを感じていた。
そして、最後の仕上げが残っている。
寮へ帰り談話室に足を踏み入れると、数十人の女子生徒たちが賑やかにしていた。
女はお喋りが好きなのは分かるが、揃いすぎじゃないかとプリムローズは怪しむ。
「みんなー、集まれ~!
うん、全員いるようだな。
これから新入生を紹介する。
今日から、我がウネルマの館の仲間になった者だ」
ロッタがプリムローズの横に立つと、集まった仲間に話しかけた。
視線を一気に集められ、彼女らしくない緊張が稲妻のように走った。
ゴクンと生唾を飲み込んでから、気合入った声を出すプリムローズ。
「ウネルマの館の寮生の皆さま、はじめまして!
プリムローズ・ド・クラレンスです。
出身は、海を隔てた大陸で真ん中の位置にあります。
エテルネル国という国名の出身です。
先輩方、これから宜しくお願いします」
ロッタ先輩につられて、私はハキハキとした挨拶になる。
いつもの話し方とどこか違う。優雅さというよりも、軍人みたいな感じになってしまった。
『半日しかいないのに、私も染まってしまった。
私のノリがいいだけなのかも』
頭を下げてペコリとすると、儀礼だけの拍手がされている。
顔をあげてみると、周りの空気が変化したように感じた。
ピーンとした空気が気になるところだ。
今度はジャンヌがパンパンと手を叩くと、全員の視線が彼女に注目がゆく。
「みなさん、1日の汗と疲れを取る。
お風呂時間を決めます」
ここにいる全員に声がけすると、そこかしこから雄叫びをあげて興奮する寮生たち。
「「「よっしゃあー~」」」
長袖のシャツを腕まくりしたり、屈伸運動を始める者もいた。
『これは、なんの準備運動?
たかが、入浴するためだけにこんな熱量って…。
かなり変だわ。
すっかり、私の存在は無いものにされている』
ぽつーんとひとり立っていたら、プリムローズに誘いの声がかかる。
「プリムローズ嬢。
君は、今日初めて経験する。
よって、私たちと組もうではないか!」
「貴女は、腕相撲した経験がある?」
「ふぇ?腕相撲ですか!?
はい、あります。
したことありますよ」
ありますとも、小さき頃より領地であの3歩歩くと忘れる鳥頭たちとね。
ロッタとジャンヌは返事に頷くと、これから何があるのかと目をパチパチしてしまう。
『これから、なにを始めるの。
どうしたら、腕相撲と入浴は関係があるのだろうか』
よく観察してみると、仲の良い人たちが自然に組んでいるようだ。
「では、第一回戦するぞ!
三人一組で、腕相撲で決める。
ブロック優勝した組は、水汲みと湯沸かしが免除される。
そして、最初に入る特権が与えられるぞ!」
たぶん、新参者のプリムローズのために説明してくれている。
「これから腕相撲の試合するの!?」
その疑問は払拭された。
なにせ、自分以外はヤル気に満ち足りているからだ。
人の熱気に部屋の温度があがっているように感じ、プリムローズの顔が熱くなってきた。
「負けないわよ!」
「今度こそ、今日は一番になるぞ!」
数々の甲高い声がする度に、なぜかビクッと反応してしまう。
そして、気合いある雄叫びに固まる戦の神の孫娘だった。
「プリムローズ嬢、申し訳ないわね。
いつもこんな感じなの。
驚いたでしょう!?」
目を大きくして口が丸くなるプリムローズの顔に、心配げにジャンヌは呼びかけた。
「あ、あの~。
お風呂に入るだけで、毎晩しているのですか?
これって、冗談ですわよね?」
「毎晩ではないけど、冗談ではないわ。
こうやって、仲間との絆を高めているの」
ニコニコと笑って、ジャンヌは当たり前のように言っている。
「腕や体を鍛えるために、楽しんで酷使する。
一日の最後に、これが締めの訓練となる。
さぁ、闘おう!」
寮長ロッタの掛け声に、必ずノリよく反応する寮生たち。
「「「おー!!!」」」
『お祖父様、おばあ様…。
世界は広いですね。
こんな変わった風習が、ここにございました』
心で呼び掛ける、すこし逃避心が出てきていた。
「プリムローズ嬢は最後だ。
君は、負けても構わん。
初めはどんなものか。
そこで、ジャンヌと見ていてくれ!」
ロッタ先輩は、自ら一番目に戦うことを宣言する。
「第一回戦!始めー!」
2ブロックに分かれての腕相撲大会。
三人が4組で、勝った2組で優勝を争うのか。
12名が2ブロック。
24名の軍学園に女性がいる。
これは多いと見るのか、少ないと感じるか。
考えに耽っていたらロッタ先輩は、鮮やかに勝ちをおさめていた。
「1勝をしたぞ!
次は、どっちが行くんだ?」
「私にしましょう。
新人さんは顔見せもあるからー。
ふふふ、最後にね!」
ジャンヌ様は片目をつむり、私の肩を軽くポン叩くと相手に向かっていった。
「頑張ってくださいませ。
ジャンヌさまぁ~」
次に勝負する彼女を見送っていたら、入れ替わりにロッタがプリムローズの隣に近寄る。
「ロッタ先輩、もう1度訊きますがー。
これって、毎晩するの?」
「ハハハ、しないしない。
入浴は月・水・木・土曜日。
入らない日は、体を拭くか。
それ以外に入りたい時は、入りたい人同士で決めるんだ」
「なぁーんだ、そうなんだ。
入る入らないを選択できるし、最低限の清潔さを保てられる訳ですね」
「うん、安心したか。
やった、ジャンヌも勝ったぞ。
次は君の番だよ。
プリムローズ嬢」
『ああ、私の番なのね。
誰と戦うんだろうか?』
「生意気な小娘!
相手は、この私よ!
国へ帰る印籠を渡してあげるわ。
親切な私に感謝しなさい」
「あれっ?
その声はソバカスさんでしたか。
お互いに頑張りましょうね」
「生意気なチビちゃん。
舐めやがって、誰がソバカスさんよ。
人が気にしていることを、デカい声だして言うんじゃないわよ」
ロッタとジャンヌは、困り顔で二人のやり取りを見ている。
それは、他の戦い終えた生徒たちも同じだった。
「彼女たち、知り合いだったの?」
「ジャンヌ、だったら名で呼ばないか。
廊下で、顔を合わせただけだろう」
注目の一戦が、切って落とされた。
「それでは、最後の勝負になります!
両者構えて、はじめー」
互いに視線を合わし、手を組み合う。
『思っていたより力が弱いな~。
一気にするか、ジワジワ攻めるか。
あんまり、初日から目立ちたくないな』
ボケ~ってどうしょうかと思っていたら、相手の手がブルブル震えはじめた。
「あらら、辛そうね。
いますぐ、楽して差し上げる」
バーンといつもより優しくねじ伏せると、ソバカスさんは倒れて腕を擦っていた。
「アンタ、詐欺師より質が悪いわ。
見た目と、ぜんぜん違うじゃないよ」
「まあ、よく言われますけど。
詐欺師扱いしない下さい」
いつも言われ慣れていたが、さすがに大勢が注目する中で言われれば言い返したくもなるものだ。
「アンタ、ちっこいから油断してしまったわ」
彼女は負けたことが恥ずかしいみたいで、言い訳をして周りにアピールしていた。
「チビ…。
チビって、失礼な人ね。
名前で呼びなさい」
「もう、いいわ。
今度はやる時は、手加減しないから覚えておきなさいよ」
一方的に捨て台詞を言って、仲間たちの方へさっさと行ってしまう。
プリムローズだけが、その場に残される形になった。
『またしても、逃げ足が早い。
しかし、この腕相撲の意味が分かってきたわ。
こんなに努力しないといけない。
女騎士になるには、訓練と鍛練が大事なのね』
周りは意外な結果に、勝者プリムローズへの拍手がまばらに聞こえていた。
「君、細くて小さいのに強いじゃないか。
でかしたぞ、プリムローズ嬢」
「ロッタ先輩、勝てました!
この腕相撲してみて、【ローマの道は一日にして成らず】が頭に浮かびました」
「ローマの道?
祖国にある道の名前かい。
腕相撲がイヤで、祖国を思い出してしまったか」
お嬢様には、この勝負は刺激的だったのかもしれない。
いきなり変な言葉を言っているのは、その為ではないかとロッタは心配する。
「ローマの道は、違う国の人が昔に作った道です。
とても長い道で、長年の積み重ねがあって初めて完成する。
そんな言葉の意味です」
「へぇ~、そうなんだ。
道を作るのも、大変な労力だもんな」
「皆さんも腕相撲したり楽しみながら、筋力をつけているのかなぁと思いました」
「うん、そうだね。
楽しく寮生活できるように、先輩たちが生みだしてくれたのだと思うよ。
しかし、負けると思っていたから驚いた。
ヨシヨシ、よくやった」
ロッタ先輩に頭を撫でぜられている彼女は、照れて赤い頬になってしまう。
「エッヘン、ロッタ先輩に褒められてしまった」
ロッタにされるがままの姿は、ニコニコして嬉しがる姿は主人に可愛がられている子猫に見えた。
「2人とも、遊んでないで用意しましょう。
20分後にお風呂に入るわよ」
ほらほらと両手で仰いで促すように、ロッタとプリムローズを急かす。
「うん、そうだな。
早く支度するか。一番風呂は最高に気持ちがいいんだよ。
また、部屋に迎えに行くから」
「はい、お願いします。
ロッタ先輩、準備してお待ちしておりますわ」
最初に入る風呂の特権を得たプリムローズたちと、敗者になった者たちはバタバタとヘ団らん室を出て行った。
3人は階段を上がり、それぞれ自室へー。
ロッタとジャンヌと、一緒に湯船に浸かる。
温かい湯の中で数分だけ、今日の様々な出来事を振り返っていた。
明日からは、授業を見学してから正式に加わる予定。
彼女の長かった軍学園の初日が、やっと終わるのだった。
そして、最後の仕上げが残っている。
寮へ帰り談話室に足を踏み入れると、数十人の女子生徒たちが賑やかにしていた。
女はお喋りが好きなのは分かるが、揃いすぎじゃないかとプリムローズは怪しむ。
「みんなー、集まれ~!
うん、全員いるようだな。
これから新入生を紹介する。
今日から、我がウネルマの館の仲間になった者だ」
ロッタがプリムローズの横に立つと、集まった仲間に話しかけた。
視線を一気に集められ、彼女らしくない緊張が稲妻のように走った。
ゴクンと生唾を飲み込んでから、気合入った声を出すプリムローズ。
「ウネルマの館の寮生の皆さま、はじめまして!
プリムローズ・ド・クラレンスです。
出身は、海を隔てた大陸で真ん中の位置にあります。
エテルネル国という国名の出身です。
先輩方、これから宜しくお願いします」
ロッタ先輩につられて、私はハキハキとした挨拶になる。
いつもの話し方とどこか違う。優雅さというよりも、軍人みたいな感じになってしまった。
『半日しかいないのに、私も染まってしまった。
私のノリがいいだけなのかも』
頭を下げてペコリとすると、儀礼だけの拍手がされている。
顔をあげてみると、周りの空気が変化したように感じた。
ピーンとした空気が気になるところだ。
今度はジャンヌがパンパンと手を叩くと、全員の視線が彼女に注目がゆく。
「みなさん、1日の汗と疲れを取る。
お風呂時間を決めます」
ここにいる全員に声がけすると、そこかしこから雄叫びをあげて興奮する寮生たち。
「「「よっしゃあー~」」」
長袖のシャツを腕まくりしたり、屈伸運動を始める者もいた。
『これは、なんの準備運動?
たかが、入浴するためだけにこんな熱量って…。
かなり変だわ。
すっかり、私の存在は無いものにされている』
ぽつーんとひとり立っていたら、プリムローズに誘いの声がかかる。
「プリムローズ嬢。
君は、今日初めて経験する。
よって、私たちと組もうではないか!」
「貴女は、腕相撲した経験がある?」
「ふぇ?腕相撲ですか!?
はい、あります。
したことありますよ」
ありますとも、小さき頃より領地であの3歩歩くと忘れる鳥頭たちとね。
ロッタとジャンヌは返事に頷くと、これから何があるのかと目をパチパチしてしまう。
『これから、なにを始めるの。
どうしたら、腕相撲と入浴は関係があるのだろうか』
よく観察してみると、仲の良い人たちが自然に組んでいるようだ。
「では、第一回戦するぞ!
三人一組で、腕相撲で決める。
ブロック優勝した組は、水汲みと湯沸かしが免除される。
そして、最初に入る特権が与えられるぞ!」
たぶん、新参者のプリムローズのために説明してくれている。
「これから腕相撲の試合するの!?」
その疑問は払拭された。
なにせ、自分以外はヤル気に満ち足りているからだ。
人の熱気に部屋の温度があがっているように感じ、プリムローズの顔が熱くなってきた。
「負けないわよ!」
「今度こそ、今日は一番になるぞ!」
数々の甲高い声がする度に、なぜかビクッと反応してしまう。
そして、気合いある雄叫びに固まる戦の神の孫娘だった。
「プリムローズ嬢、申し訳ないわね。
いつもこんな感じなの。
驚いたでしょう!?」
目を大きくして口が丸くなるプリムローズの顔に、心配げにジャンヌは呼びかけた。
「あ、あの~。
お風呂に入るだけで、毎晩しているのですか?
これって、冗談ですわよね?」
「毎晩ではないけど、冗談ではないわ。
こうやって、仲間との絆を高めているの」
ニコニコと笑って、ジャンヌは当たり前のように言っている。
「腕や体を鍛えるために、楽しんで酷使する。
一日の最後に、これが締めの訓練となる。
さぁ、闘おう!」
寮長ロッタの掛け声に、必ずノリよく反応する寮生たち。
「「「おー!!!」」」
『お祖父様、おばあ様…。
世界は広いですね。
こんな変わった風習が、ここにございました』
心で呼び掛ける、すこし逃避心が出てきていた。
「プリムローズ嬢は最後だ。
君は、負けても構わん。
初めはどんなものか。
そこで、ジャンヌと見ていてくれ!」
ロッタ先輩は、自ら一番目に戦うことを宣言する。
「第一回戦!始めー!」
2ブロックに分かれての腕相撲大会。
三人が4組で、勝った2組で優勝を争うのか。
12名が2ブロック。
24名の軍学園に女性がいる。
これは多いと見るのか、少ないと感じるか。
考えに耽っていたらロッタ先輩は、鮮やかに勝ちをおさめていた。
「1勝をしたぞ!
次は、どっちが行くんだ?」
「私にしましょう。
新人さんは顔見せもあるからー。
ふふふ、最後にね!」
ジャンヌ様は片目をつむり、私の肩を軽くポン叩くと相手に向かっていった。
「頑張ってくださいませ。
ジャンヌさまぁ~」
次に勝負する彼女を見送っていたら、入れ替わりにロッタがプリムローズの隣に近寄る。
「ロッタ先輩、もう1度訊きますがー。
これって、毎晩するの?」
「ハハハ、しないしない。
入浴は月・水・木・土曜日。
入らない日は、体を拭くか。
それ以外に入りたい時は、入りたい人同士で決めるんだ」
「なぁーんだ、そうなんだ。
入る入らないを選択できるし、最低限の清潔さを保てられる訳ですね」
「うん、安心したか。
やった、ジャンヌも勝ったぞ。
次は君の番だよ。
プリムローズ嬢」
『ああ、私の番なのね。
誰と戦うんだろうか?』
「生意気な小娘!
相手は、この私よ!
国へ帰る印籠を渡してあげるわ。
親切な私に感謝しなさい」
「あれっ?
その声はソバカスさんでしたか。
お互いに頑張りましょうね」
「生意気なチビちゃん。
舐めやがって、誰がソバカスさんよ。
人が気にしていることを、デカい声だして言うんじゃないわよ」
ロッタとジャンヌは、困り顔で二人のやり取りを見ている。
それは、他の戦い終えた生徒たちも同じだった。
「彼女たち、知り合いだったの?」
「ジャンヌ、だったら名で呼ばないか。
廊下で、顔を合わせただけだろう」
注目の一戦が、切って落とされた。
「それでは、最後の勝負になります!
両者構えて、はじめー」
互いに視線を合わし、手を組み合う。
『思っていたより力が弱いな~。
一気にするか、ジワジワ攻めるか。
あんまり、初日から目立ちたくないな』
ボケ~ってどうしょうかと思っていたら、相手の手がブルブル震えはじめた。
「あらら、辛そうね。
いますぐ、楽して差し上げる」
バーンといつもより優しくねじ伏せると、ソバカスさんは倒れて腕を擦っていた。
「アンタ、詐欺師より質が悪いわ。
見た目と、ぜんぜん違うじゃないよ」
「まあ、よく言われますけど。
詐欺師扱いしない下さい」
いつも言われ慣れていたが、さすがに大勢が注目する中で言われれば言い返したくもなるものだ。
「アンタ、ちっこいから油断してしまったわ」
彼女は負けたことが恥ずかしいみたいで、言い訳をして周りにアピールしていた。
「チビ…。
チビって、失礼な人ね。
名前で呼びなさい」
「もう、いいわ。
今度はやる時は、手加減しないから覚えておきなさいよ」
一方的に捨て台詞を言って、仲間たちの方へさっさと行ってしまう。
プリムローズだけが、その場に残される形になった。
『またしても、逃げ足が早い。
しかし、この腕相撲の意味が分かってきたわ。
こんなに努力しないといけない。
女騎士になるには、訓練と鍛練が大事なのね』
周りは意外な結果に、勝者プリムローズへの拍手がまばらに聞こえていた。
「君、細くて小さいのに強いじゃないか。
でかしたぞ、プリムローズ嬢」
「ロッタ先輩、勝てました!
この腕相撲してみて、【ローマの道は一日にして成らず】が頭に浮かびました」
「ローマの道?
祖国にある道の名前かい。
腕相撲がイヤで、祖国を思い出してしまったか」
お嬢様には、この勝負は刺激的だったのかもしれない。
いきなり変な言葉を言っているのは、その為ではないかとロッタは心配する。
「ローマの道は、違う国の人が昔に作った道です。
とても長い道で、長年の積み重ねがあって初めて完成する。
そんな言葉の意味です」
「へぇ~、そうなんだ。
道を作るのも、大変な労力だもんな」
「皆さんも腕相撲したり楽しみながら、筋力をつけているのかなぁと思いました」
「うん、そうだね。
楽しく寮生活できるように、先輩たちが生みだしてくれたのだと思うよ。
しかし、負けると思っていたから驚いた。
ヨシヨシ、よくやった」
ロッタ先輩に頭を撫でぜられている彼女は、照れて赤い頬になってしまう。
「エッヘン、ロッタ先輩に褒められてしまった」
ロッタにされるがままの姿は、ニコニコして嬉しがる姿は主人に可愛がられている子猫に見えた。
「2人とも、遊んでないで用意しましょう。
20分後にお風呂に入るわよ」
ほらほらと両手で仰いで促すように、ロッタとプリムローズを急かす。
「うん、そうだな。
早く支度するか。一番風呂は最高に気持ちがいいんだよ。
また、部屋に迎えに行くから」
「はい、お願いします。
ロッタ先輩、準備してお待ちしておりますわ」
最初に入る風呂の特権を得たプリムローズたちと、敗者になった者たちはバタバタとヘ団らん室を出て行った。
3人は階段を上がり、それぞれ自室へー。
ロッタとジャンヌと、一緒に湯船に浸かる。
温かい湯の中で数分だけ、今日の様々な出来事を振り返っていた。
明日からは、授業を見学してから正式に加わる予定。
彼女の長かった軍学園の初日が、やっと終わるのだった。
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