無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 過去から未来編ー

愚者 (フール)

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第4章 騎士道を学べ

第1話 教うるは学ぶの半ば

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   セント・ジョン学園は、平民の子供でも学べる平民科。
貴族の令息と令嬢が通う貴族科。
こちらは、ごく普通の学科を学ぶ学園である。

それと違って、剣術や騎士の志を学ぶ特殊な学園があった。
軍学園と呼ばれるここは、男女関係なく寮生活が原則である。
昼夜、規律を重んじて生活を送る。
例外は一切認められない。

それゆえに、淑女科から転入するプリムローズにはお試し日が設けられた。
他国の留学生というのも、間違いなく考慮もされたのは言うまでもない。

     
    海原を渡ってエテルネル国からの留学生プリムローズは、教師が教鞭をとる教壇きょうだんの横に机と椅子が用意されてしまった。
思いきりさらし者にされているような気がして、軍事に関した初めての授業を受けている。

どこへ行っても席は一番前に固定されていたが、教壇の隣とは斬新なこころみに本人は苦笑いする。
年齢や背丈せたけが原因で配慮され、ありがた迷惑と感じた。  
最近は、文句をイチイチ言うのもバカバカしく。
どうでもいいやの境地になる。

「一般に弓兵きゅうへいは高いと、言わせているのはナゼか?
答えられる者はー。
おい、誰かいるか!?」

初老にさしかかった先生は、教壇の上から学生たちの顔を見まわす。
教室では誰が答えるか。
目でけん制し合っているだけで、答えを見いだせないようだった。
手を挙げてまで、目立って回答したくないのだろう。
明らかにその態度に、教師は学生たちに対してイラついていた。
威圧を放って空気がピリピリつき、答えを求められた生徒たちがおびえている。

『私はこんなのは、祖父で慣れっこだけど…。
あ~あ、先生怒り顔だししょうがない』

耳の横に腕を高々と真っ直ぐに手をあげると、最初は隣で視界に入ってこない。
恥ずかしがりながら手を振ると、やっと気づいてくれた。
意外だったので目を広げて先生は、その手を見て答えるようにうながす。

「君が…?
君が答えるのかい」

「はい、先生!
弓兵を育成し軍団を維持いじするのは、費用と時間がかかるからです」

「よし、正解だな。
では、騎兵きへいと弓兵の違いを述べよ」

「騎兵は馬に乗り個人的な傾向けいこうが強かったのに対して、弓兵はあくまでも集団を優先させています。
気質的に対称的だと考えます」

「よろしい!
どうして、そうなったかを説明してくれないか?」

「騎兵は雇い主を優先に考え、弓兵は王に忠誠と言う点で顕著けんちょに違います」

フムフムとアゴひげさわり、プリムローズの顔を探るかの様に見ている。

「君は、明日から正式に生徒になる子だね。
いち教師として、私は歓迎するよ。
前とは、環境は異なるが頑張りたまえ。
今日の授業はここまでにする。
それでは皆さん。
またの授業で会おう」

教科書を閉じると脇に抱えて、扉を開けて生徒に向き変えると一礼して閉めて姿を消した。

『なんだか、気難しそうな先生だったわ。
皆さんは終わりって聞いて、緊張の糸が切れたように見える』

ロッタ先輩とジャンヌ様、そしてスクード公爵嫡男ちゃくなんオスモが席に近寄ってくる。

「プリムローズ嬢、あの先生にひるまないってだけで凄いよ。
その知識をどこで習ったものだい?」

「祖父からです。
家が武門派ですので、武術のウンチク話をよく聞かされて育ちました」

そうなんだと周りから声をかけられて、感じが砕けた雰囲気になる。
将軍職のスクード公爵の息子が、こんな質問に答えられないとは思えなかった。

「オスモ様は知っていたのでしょう。
どうして、答えなかったのです」

彼の前に寄っていきながら、アメジストの瞳をギラッと輝かせて詰問した。

「先生の質問が正解しても、次々に突っ込むんだ。
答えられないまでするんで、悪い意味で有名な先生なんだよ」

言い訳をする彼は、周りの級友たちに助けを求める。

『性格に難ある先生だったのか』

しかし、それでは双方とも関係が悪化するだけではないだろうか。
ムムッと黙ると、このまま静観するかどうか悩んだ。
悶々もんもんと考えている途中で、この場を和ます声が身近から聞こえた。

「やり取りを聞いているだけで、生唾なまつばものだったよ」

同じ級友になっていたロッタが、素直にそう話すとなぜかカチンとした。

「でも、答えを知っていたなら答えればいいし。
分からないなら、堂々と質問すればいいわ。
知らないことを生徒に教えるのが、それが教師の義務なのです」

プリムローズの発言に、ジャンヌが反応を返す。

「【おしうるは学びのなかば】。 
こんな言葉があったわね」

「ジャンヌ、もの知りだね。
え~っと、意味は…。
人に教える時は、半分は自分にとっての勉強になるということだったな」

意味を言えるってことは、ロッタも知っていたんじゃと聞いた人は思うのだった。 

「そんな意地悪な考えをしているか、分からないけどさ。
ビクビクしている態度を見て、生徒をバカにしいるのかと勘ぐるよ」

オスモは先生の気持ちを考察こうさつして、彼が長く教壇に立っている間にそうなってしまったのだろうかと思った。

「教え子たちから、先生を変えていければいいじゃない。
きっかけさえあれば、人は変われると思います。
今度の授業から、元気にこちらから挨拶致しましょう!」

自分たちより年下に言われて、前からこうしていた彼らは微妙な気持ちになる。
まだ初対面の周りにいた学友たちへ、プリムローズから誘ってみた。
これは、彼らの心にすこし傾いたようだ。

「誰とは…、申し上げられませんけど。
将軍の息子が、こんな腰抜けとは思いませんでしたわ。
これでは指揮命令など、とてもできないでしょうね」

何処から出してきたのか。
白い薔薇の模様で薄いのピンク扇を広げて、プリムローズが目だけギョロつかせて嫌味を言いきった。
淑女を学ぶ場から来ただけあり、仕草は完璧な貴族の令嬢であった。

「ロッタ、あれ何処から出したかしら?」

「目にも留まぬ速さだった。
ああ見ると、やはり公爵令嬢だ」

オスモとプリムローズの険悪けんあくさを気にしないで、ふたりは普通に喋っていた。

「本人を前にして、ハッキリと言ってくれるね。
今度の授業、ドアが開いたら先生へこちらから挨拶するぞ。
いいか、みんな裏切るなよ!」

名指しされたオスモが、周りの級友たちに照れながら命令する。  
どうやら、公爵嫡男だけあってクラスメートに信頼はあるらしい。
ため息混じりの返事と混じり、明るい笑い声が辺りを響かせた。

ロッタとジャンヌは、はじめはプリムローズが軍学園へ編入すると聞いたとき。
気まぐれな令嬢の我儘わがままだと、よく思ってなく馬鹿にしていたのだ。
偏見へんけんに満ちた考えは、私たちの方だったのではないか。

見かけは人形のみたいで可愛いいが、醸し出す空気はどこかいさましい。
そして少し高飛車たかびしゃで、魅力的な年下の他国の公爵令嬢に魅了されていた。

まとめ役になったオスモが、本来の用件をプリムローズに伝えてくる。

「お昼は学園で食べるから、探せばライラたちと会えるよ。
私は、友人たちと食べるので遠慮させてもらう」

「ええ、また機会がありましたらお誘いくださいませ」

きっと、私たちと食事するのが恥ずかしいんだ。
同じクラスメートに、婚約者と一緒にいるところを見て欲しくないのね。
思春期の青年なら仕方ないわ。

「ライラ様は気さくな方です。
よろしかったら、ロッタ先輩たちも御一緒しませんか?」

悩む顔つきをしたが、隣にいるジャンヌがそうしましょうと言ってくれてる。
私たち三人はライラ様を探して、合流するとお昼を共にしたのだった。
    
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