無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 過去から未来編ー

愚者 (フール)

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第4章 騎士道を学べ

第25話 損して得取れ

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 予期せない馬車の事故のせいで、人々は混乱し騒がしくなっている。
現場となった場所は踏み潰されたり転がり、無残となってしまった野菜や果物が散乱していた。

それを片付け拾っている人たちの側を、タルモとプリムローズは慎重に避けながら歩んでいた。
足下が危ぶまれ滑りやすくなって、タルモはプリムローズをエスコートするように支える。
そんな頼りがいのある紳士に、今から探る男女の知りうる情報を話聞かせる。

「あの方たちは、都の治安を警護する憲兵たちでしたか。
そんな感じには、私からはみえなかったですな」

馬車の事故を見てせせら笑っていた様子に、非番でも仲間に知らせに行ったり手助けする気配すらない。
友人になった令嬢が、男性に好意を持っている理由を説明された。
彼女の話からして、出会った頃は好青年だったのだろう。
どうやら悪い方へ変わってしまったようだと、タルモは聞いていて残念になり表情を曇らせていた。

「まだ、決めつけてはいけませんがー。
もしそうなら、私たちにそんな嘘をついたのでしょうか?」

「自分を好きになってくれた女性を、ガッカリさせたくなかった。
そんな優しさかもしれません。
恋人がいると伝えてしまえば、彼女を悲しませてしまいますからね」

「なんとなくわかりますけどー。
知ってしまった時の方が、よっぽど落ち込みます」

「そうですな。
あとは、優越感を失ってしまうかでしょうな」

「……、優越感ですって!
憲兵を目指している者として憧れ尊敬いるだけで、純粋な想いを彼に寄せておりますのよ」

プリムローズは感情的になって、目の前にいる人物につい八つ当たりをしてしまう。
言ってからすぐ反省する態度され、タルモはうつ向く頭を撫でて優しく言った。

「ここで私たちが、議論しても仕方ないことです。
私は顔を割れてませんが、プリムローズ嬢は気づかれてはまずいのでは!?」

「タルモ殿には、関係ありませんでしたのにー。
失礼な物言いをして、気分悪くさせました」

「いや、謝らなくてもいいですよ。
プリムローズ嬢の話を聞いて、私も興味がでてきました」

向かう一軒の店は、平民でも買える位の上質なドレスが客引きするかのように飾られている。
近づいていくと店内には、普段使いの服まで幅広い品揃えをしている店構え。

外は何やら騒がしいようだが、客が一人も来ない。
手持ち無沙汰で、カウンターへ暇そうに肩肘をつく。
売上の帳簿整理でもするかと、用意していたところで呼び鈴が客の来訪を知らせた。
顔をあげてみればここでは場違いな身なり。 
年齢からしたら父娘らしき2人が、ベルを鳴らして子供の方が慌てて入ってきた。

「いらっしゃいませ~」

こんな店で買い物するようには見えず、冷やかしかもしれないと思うが声だけはかけてみる。
勘は外れたようでカウンターにまっすぐ来ては、いきなり早口でしゃべりだす可愛い女の子の用件を聞くことにした。

なるべく目立たない服装にしたいと告げ、特に髪を隠したいと変わった事を言い出してくる。
これは買ってくれそうだと、店主は顔色をガラッと変えてる。
そして、機嫌よくプリムローズに話しかけてみた。

「そうかい、そうかい。
お嬢様の髪の色は、キラキラして目立つからね。
う~ん、そうだね。
団子だんごにして、ボンネットで全部隠そうとしよう。
正面じゃなければ、顔が見えないものがいいんじゃあないかい」

おばさんはコレだアレだと、コーディネートしては服を差し出してくる。
ボンネットは青の小花を刺繍ししゅうをしてあり、白に水色の花模様のスカート。
水色より青に近いブラウスを用意して、私のサイズが合うか合わせては納得しうなづく。
いている靴は紺色だったため、ピッタリした色合わせになっていた。

「わあ~、素敵な服だわ。
自分でいうのもなんだけど、可愛くみえます!」

愛想よくはニコニコしては、プリムローズの髪を左右均等きんとうにし三つ編みし始めた。
後ろに1つにクルクルして、青い袋みたいな青い布をギュウーとひもをリボンにしてくれた。

「可愛らしい町娘に、すっかり早変わりしたね。
おかみさん、すまない助かったよ」

顔形と髪や目の色違う男に目をやり、彼は令嬢の付きいだと判断した。

『かなり良いところの娘とみたいだね。
見たこともない珍しい紫の瞳。
漂う空気は、まるで王女様のようだ。
アタシはお目にかかった事はないがね』

店主は二人を見て頭の中で、金勘定して通常より高い値段を言うか迷った。
しかし、欲と格闘の末にぼったくりするのをやめた。
ケチくさい事をして、自分の信用を失くしたくないと思い直したのだ。

「会計はー、そうだね。
ボンネットは銅貨3枚。
スカートとブラウスを合わせて、銀貨5枚だ。
髪型は、お代はいらない。
オマケしとくよ!」

プリムローズの表情はパッと明るくなり、自分の持つ小さなバックから金貨を1枚出しておばさんの手に握らせる。

「お釣りはいりません。
貴女は親切で、とても正直な方です。
それに、私を素敵にしてくれてました」

握った手を開くと、滅多に見ない硬貨が黄金に光り輝く。

「き、き、き。
金貨じゃないか!!
これはもらいすぎだ。
お釣りを用意するからね」

引き出しからお釣りを出そうと、顔を背けたらて身を屈める。
その隙に、プリムローズはタルモの背広の裾を引っ張った。

「タルモ殿、ドレスを急ぎ馬車に置きに戻りましょう」

「おかみさん、気にせず貰ってくれたまえ。
そんなに強く引っ張らないでください。
プリムローズ様!」

店主はカウンターから急ぎでて、店から立ち去る途中の二人に向かい声をかけた。

「お客様、毎度ありがとうございます。
また、来てくださいね」

声に気づいたプリムローズは、頭を下げて見送る店主に手を振る。

「【損して得取れ】とは、よく言ったもんだね。
目先の利益や損失ばかりにとらわれてしまってはいけない。
一時は損をしたとしても、最終的には大きな利益を得られるように、物事を長期的な視点で見ることが大事だという意味だったかね」

商売あがったりになるところが、思わぬかたちで大儲けになった。
今日は早めに店を閉めて、家族にちょっと贅沢なものでも食わせられると喜ぶ。

プリムローズと呼ばれていた娘の名前を、たしか何処かで聞いたことがあると思い出した。

「プリムローズ、プリムローズ。
なんだか、洒落た名前。
やはり、見かけ通りに貴族のお嬢様だったようだね」

後日、名前の正体が判明するまではスッキリしないモヤモヤな日を過ごす。
これを知ったとき、店に来た客人に自慢するのがお決まりとなるのだった。
     
 

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