日高見の空舞う鷹と天翔る龍 地龍抱鷹編

西八萩 鐸磨

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驟雪の章 衣川 4

~月山~ 4

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「・・・すでにご承知の通り、俘囚安倍頼時、貞任親子追討の命が国守様より下った。曰理権太夫殿わたりごんだゆうにおかれても、みかどの臣であるからには、国守様に付き従い、賊徒を討つよう国府ここを立たれよ。」
「もっとも、安倍貞任は貴殿の義兄であり、頼時は義父である。その心中察するに余りあるものであるが、そこを曲げて帝の大恩に報いることを切に願いまする。」


 そう言って、修理少進景通しゅりしょうじょうかげみちは、経清に向かって大きく頭を下げた。


「・・・修理少進様、理解りました。確かにわたくしは、帝の臣。国府に仕えるものでございます。たとえ身内といえども、朝廷に弓を引く者を赦す訳にはいかないでしょう。すみやかに兵を整え、国守様に同道どうどういたしましょう。」


 経清も、景通に向かって一礼した。


「ところで、随分ずいぶん館内やかたないが静かですな。心なしか家人がいつもより少ないように見受けられますが?」


 景通は、顔をあげると片眉を上げて尋ねた。


「そうですかな?いつもとそれ程変わりは無い---」

「権太夫はおるかーー!」


 どたどたと足音を盛大にたてて、光り輝く漢が室に入ってきた。


「ごん---。や、これは失礼。」


 銀色に耀く鎧を着けた永衡が、経清の向かいの上座に座る景通を見つけて狼狽ろうばいし、室の入り口で固まった。


「相変わらず騒々しいな、十郎。それに、失礼ではないか、国守様の御使者である修理少進景通様がお見えになっておるのだぞ。」


そう言って経清が、振り返る。


「なっ。な、なんだその恰好は!」

「ん?あ、ああ。景通様のご子息の、景季かげすえ殿が見えられて、北伐ほくばつの軍に加わるようにとの、国守様の命を受けたのだ。おそらく、お主のところにも同様に命が下されるものと思って、さっそく支度をし、兵を引き連れて参った。」


 永衡は、経清に言われて一旦自分の姿を確かめたのち、そう答えた。


「・・・だからと言って、それを着てきたのか。・・・よりにもよって・・・。」


 経清が、絶句する。


「権太夫殿、たしかこの方は・・・。」


 振り返ったまま絶句している経清に、景通が声をかける。


「これは失礼いたしました。この者は、伊具十郎いぐじゅうろう平永衡でございます。共に、先代の国守様に随行して下った者にございます。」

「十郎。突っ立てないで、ここへ来て座らぬか。」


 経清は、慌てて景通の方へ向き直り、永衡を紹介する。


「おお、貴殿が噂に聞く武勇の持ち主の伊具郡司殿であったか。」

「いやいや、わたくしなど坂東の方々にくらぶれば、大した武勇はございませぬ。」


 鎧をガチャガチャと鳴らしながら、経清の隣に座った永衡が、大きく手を左右に振って謙遜する。


「そうですかな?俘囚にも負けぬ武勇の持ち主と聞きおよんでおりますぞ。その武勇をもって、こたびのいくさ、お二人には是非とも武功を挙げていただきたい。よろしくお頼み申しましたぞ。」


 景通はそう言って、並んだ二人の顔を交互に見た。


「「はっ。」」


 経清は、一瞬なにか言いたげな素振そぶりを見せていたが、すぐにそれを消して、永衡とともに頭を下げた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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