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3.出逢い
しおりを挟む「え?」
速さについては、同僚のサラにだって負けない自分が、全く気付くことなく背後を魔獣に取られたことよりも、さらにその上をいく速度で繰り出された攻撃と、その攻撃が終わった時には背中を預けられていたことに、ソラは瞬間、自失した。
「それより、まずは早いとここいつらを片付けましょう」
言うないなや、黒髪長身の男は長剣を翻し、目の前の身の丈5mはあるオオカミの魔獣を、肉片に変えていく。
「は、はい!」
自分のやるべきことを思い出したソラは、今や襲い掛からんとしていた20匹目の魔獣を鎌の錆にしたのだった。
「で、あなたはどちら様でしょうか?」
集めた魔獣の死体を、劫火で焼き尽くしていた男に、サラがたずねる。
「サラ、御加勢くださった方に、その言い方はありませんよ」
ルシルは、依然として警戒を緩めようとしないサラに、嗜めるように言った。
「構いませんよ。どこぞの馬の骨とも分からない男に、警戒をするなという方が無理というものです。ましてや、姫様をお守りする立場の者としてはね」
肩を竦める仕草をすると、ボーッとしていたソラに向かってウインクをした。
「「!」」
されたソラはビクリと肩を震わせ、それを見たサラは一層キッと男を睨み返した。
「なぜ・・」
「その装飾の馬車に、その紋章。ドラグニアス王国のものですよね」
ルシルの問いかけを途中でさらって、男が言った。
別に隠し立てすることでは・・・ないことはなかったが、彼女たちの無言の答えが、肯定を示していた。
「僕は・・エン。そう、エンだ。兄たちにはエンちゃんと呼ばれている。」
黒髪に黒目、どちらかと言うと色白で、190センチを超える長身痩躯。
この辺りでは珍しい姿形をしている。
この辺り・・この国ナーガランドには、黒髪もいるが、殆どが茶髪や赤髪で褐色の肌をしている。
そして男たちの殆どは、極端に痩せているか、あるいは極端に太っているかのどちらかであった。
「エンちゃん・・という感じではないけれど・・・」
「かわいい・・」
侍女2人の意見は正反対のようだった。
「いやあ、まあ。呼ばれ慣れているんで、なんとも・・・」
エンは、後ろ頭をポリポリと掻いて、困惑したように眉を下げた。
「確かに、かわいいかも・・・」
その表情を見たルシルが、誰にも聞こえないようにポツリと呟いた。
「ところで、これから君たちはどうするんだい?御者も護衛もいなくなっちゃったけど」
エンは話題を変えるように、馬車を振り向いて聞いてきた。
「城へ戻るのかい?」
「いえ、城にはもう戻れません・・・このまま進むしか・・」
ルシルが思い詰めたような表情で呟く。
「・・・」
2人の侍女も下を向いている。
「そう。じゃあ、僕が護衛兼御者として付いていってあげようか?」
エンが世間話をするかのように、軽い口調で提案した。
「よ、よろしいのですか?」
ルシルが、大きく目を見開いて聞き返す。
「いけませんルシル様!こんな得体の知れない男を・・」
サラが慌てて制止する。
「いいんじゃないですか?強いし、速いし、それに速いし」
「何を訳のわからないこと言っているんですか!強いとか速いとか、そういう問題じゃありません!」
ソラのよく分からない言い分に、サラが叫ぶ。
「まあまあ、落ち着いて。報酬は・・そうだなあ、ドラグニアスの王都までの身元保証ということで」
睨み合う2人の肩に手を置いて、エンがルシルの顔を見る。
「・・・わかりました。よろしくお願いいたします。」
そういって、ルシルは頭を下げた。
「「ルシル様!」」
肩に置かれた手に抗議する暇もなく、承諾してしまったルシルに2人の次女は同時に主の名前を叫んだ。
サラは悲壮な顔で、ソラは輝く顔で。
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