小さな私の独り言

snow drop

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幸せの形は みんな違う

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生まれた時からひとりぼっちの
キリギリス

これでいいんだと
生きてきた

ある日アリの大家族に出会う
いつも誰かが傍にいて
賑やか
汗流し働く親
その姿がキリギリスの目に新鮮に写った

キリギリスは
音楽が好きだった
ひとりぼっちのキリギリスにとって
音楽だけが友達


ある日
キリギリスは
一生懸命働くアリのために
バイオリンを演奏した


でも
アリはそんなキリギリスを
疎ましく思ったのか
無視をした
アリには
キリギリスが遊び呆けてるように
見えたから

実際そうなのかもしれないが

キリギリスは
アリにあっちへ行ってくれないか?と言われ
トボトボと家に帰った


その日から
キリギリスは
バイオリンを練習した
毎日毎日何時間も
弾き続けた


寝る間も惜しんで
食べ物もほとんど食べず
練習した


ようやっと
素敵に弾けるようになって
アリ達に聴いてもらおうと
外へ出ると


1面の雪景色

いつの間にか
季節は冬になっていた


凍えながら歩く

震えながらも大事そうにバイオリンを抱える

アリくんたち
こんどこそ
喜んでくれるかな


やっとの思いで
たどり着いたころには

もう体力が残りわずになっていた

弱弱しくも
トントンと
ノックする


なかなか
開かぬドアに
もう一度
力を振り絞りノックする


トントントン


しばらくして
ドアがほんの少しだけ開いた


怪訝そうに
顔を覗かせるアリ


キリギリスは
一生懸命笑顔を作り言った


やぁアリくん
この前は
忙しい時にごめんね
ぼくの音楽をもう一度聴いてくれないかな?


アリは
また怪訝そうに キリギリスを見ると言った


キリギリスくん
君はあのあとも働かず
ずっとバイオリンを弾いてたのか?




キリギリスは
苦笑い


あぁ君たちに
素敵な音楽を聴かせたくて
毎日練習してたら
気がついたら
冬になってたよ



キリギリスの乾いた力のない笑いが
冷たい風とともに消えていった



アリは飽きれたような顔をして
キリギリスに言った


生きるためには
働かないと行けないんだ
わかるかい?
少しでも先の未来を考えて
準備をするんだ
この先困らないためにも備えることが大事
厳しい冬が来ることは
君も知っていただろう?



キリギリスは
何も言い返せなかった
アリの言葉はその通りすぎたけれど
実際のところ
キリギリスには響かなかった
言い返せば
アリがもっと怪訝な顔になるとわかってたから
言い返せなかったのだ


少し愛想笑いをするキリギリス
アリはため息一つつくと
今日だけだ
と言って
キリギリスを家の中へ入れた


外とは大違いに
息苦しくなるくらの温かさ
子ども達は走り回り
お母さんアリは
忙しいそうにご飯の準備
ここは天国なのか?

知らずのうちにキリギリスの頬を涙が伝っていた


不思議そうな顔で
キリギリスを見る子ども達


お父さんアリがみんなに声をかける
キリギリスくんが
どうしても私たちに音楽を聴かせたいそうだ
と言うと

子ども達の目が輝いて
キリギリスに小さい手の拍手が送られた


キリギリスは
涙を拭うと
精一杯の笑顔を作った


ぼくは
アリくんたちのようには
生きられませんでした
でも
ぼくはアリくんたちが
大好きです
どうか聴いてください


そう言うと
キリギリスは
今まで歩くのもやっとだったはずなのに
背筋をピンと伸ばし


力強く
時に優しく
アリ達が瞬きを忘れるほどに
素敵な音楽を奏でた


その音楽は
永遠に続いてほしいと
全てのアリが思うほど
楽しく明るく時に切なくて
子どもたちは
くるくるとキリギリスの周りで踊り出す


あぁ
なんて幸せなんだ
キリギリスは
心からそう思った


アリ達もみんな
キリギリスの音楽で笑顔になった
お母さんアリが
キリギリスの分のご飯をよそうと
テーブルの真ん中の席へ置いた


まだまだ続くと誰もが思った時
音楽がパタっと止まる

みんなが一斉にキリギリスを見ると

キリギリスは
涙でぐちゃぐちゃの顔で
笑うと


その場に力無く倒れた



アリがキリギリスを揺さぶる

何度も声をかける


そう
キリギリスは
死んでいた


幸せそうな笑顔で





























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