僕はスキルで思い出す

魔法仕掛けのにゃんこ

文字の大きさ
19 / 33
二章 王都バッシュテン編

海とガレン

しおりを挟む
王都バッシュテンを出てから1日半、ガタゴトゆれながら馬車が木立の間を進んでいく。何か変な感じ……変な匂いがする……?

「お客さん、ルプスポートは初めてなんだって?海見たことないんかぁ?この木立を抜けたら海が見えるからな。ほらあっちだ!」

馬車を運転しているおじさんが指を向けた先、馬車が丁度木立を抜けた瞬間。そこには……海があった!



「凄いわ!これが海なのね!ねぇねぇアルノ!海って広いの……どうしたの!?」

アルノが馬車の縁を掴んだまま微動だにせず、海を見ながら涙を流している。何か様子がおかしい、私はアルノを両手で抱えると揺すった。

「アルノ!しっかりしてアルノ!」

何度か揺すっていると、ボーっとした目のまま涙を流し、私を見てこう言った。

「本当にオアシスより大きいんだ……」

私もそうだけどアルノだってオアシスどころか砂漠だって見たことない、これはアルノじゃないの??砂漠と言えばガレンって言う子が砂漠の民のはずだからその記憶なのかしら……とりあえずこういう時は……

パシッ!

「しっかりしてっ!」

右ほほを叩いた。



これが海なんだ……本当にオアシスより大きいんだなぁ!ドーレンも言ってたっけ、とっても大きいって……僕はついに心残りだった事、海を見ることができた。5年前にアルノが『思い出す』を使ってから、僕はこの日を待ちわびていた。ありがとう……、たいした力じゃないけれど、これで僕の力をアルノと完全に共有させる事ができる……これは僕の感謝の気持ちだ、受け取ってよね。



パシッ!

「いたっ!」

「気をしっかりもってアルノ!まだボーっとしてるわね、もう一回!」

僕は慌てて両手を体の前で振る。

「ミリス!もう大丈夫だからも叩かないで!平気平気!」

「心配したわよもう!今どうしたの?ガレンって子の記憶が出ていたみたいだけど……」

「うん、どうやらガレンが死ぬ前に心残りだった『海が見てみたい』って事を、僕を通して果たされた事で表に出てきてしまったみたい。僕にお礼を言った後引っ込んでいったよ。それに……」

ステータス
名前 アルノ
種族 人間
職業 狩人
ユニークスキル 『思い出す』
        『魔法剣Lv1』

スキル     『腕力強化Lv3
        『集中Lv2』
        『気配察知Lv1』
        『剣聖Lv1』
        『神速Lv1』

「ガレンから貰っていた『腕力強化』がLv2から3に上がってる、確かもともとガレンはLv3で所持していたから、お礼として上がったみたいだね。」

これはひょっとしてユーフィリス王女の心残りを果たしたら『魔法剣』や『剣聖』もレベルが上がるんだろうか?確か王様の元に帰ってくるって約束を果たしたいって事のはずだから、王都で謁見させてもらったらわかるかもしれない。

「夫婦喧嘩かい?もうルプスポートにつくから後にしなよぅ。荷物忘れないようにな。」

僕らの様子を伺っていた御者のおじさんの言葉に

「まだ夫婦じゃありませんっ!」

真っ赤になったミリスが慌てて訂正していた……まだ?



ルプスポートに着いた。ここに来た目的の1つは早々に果たしてしまったので、後は村で頼まれている買出しをするだけでいい。港町ならではの香辛料や油、トーマスの森ではなかなか手に入らないものばかりをここぞとばかりに買い込んでいく。そろそろ夕食をとって宿にいかなくちゃいけない時間かな。

「ねぇアルノ、折角だから海の魚を食べてみたいわ。」

「そうだね、村では川魚や干物くらいしか食べた事ないしね。」

僕らは「最高に美味しい海の幸!ここでしか食べられない絶品だよ!」のノボリが立つ店に入る事にして、お勧め料理を頼んだ。

「はいお待たせー!『シェフの気まぐれ・魚のソテー』と『タテホ貝のスープ』だよ!」

初めての海の魚は、なんだろう?川の魚より濃い?感じで美味しい。海の塩味が魚の体にしみこんでるのかな?タテホ貝も食べた事なかったけどぷりぷりしていて食感が楽しくこれもまた美味しい。ミリスも満足そうな顔をして食べている。海の幸って美味しいね!村のみんなにも食べさせてあげたいなぁ。二人でそんな話をしながら満足の行く夕食を食べた。



次の日僕らは漁港から海べりを歩き、砂浜になるところまでやってきた。昨夜夕食を食べたお店で、ここが海で遊ぶのに良い場所だと聞いたからだ。まだ早い時間なので誰もいない。荷物は宿に置いてきてあり、二人とも海で泳げる格好(僕は膝丈のズボン、ミリスは股下までのズボンとシャツ)をしている。川遊びで泳いでいたので海でも平気だと思うけど、どうかな?

「アルノー!海、気持ちいいわよー!」

「ミリスー!あんまり遠くまで泳ぐと危ないよー!」

全然問題なかった、ミリスは腕をぐるんぐるん回して泳いでいる。僕も泳いでみたけど口に入った水がしょっぱくて驚いた、海の水って本当に塩が入ってるんだ……僕も夕べの魚のように塩味がしみこんでいるのだろうか?

「ねぇアルノ?あそこに浮かんでいるの何かしら?」

ミリスが少し離れたところを指差している。僕も目を凝らしてみてみると何か栗色の物が漂っている……髪の毛?

「あれって髪の毛じゃないかな!?誰かおぼれているのかも!」

「大変!はやく助けなくちゃ!」

僕らは必死でおぼれている人を抱え浜辺へと引っ張っていった。だがそれは人ではなかった。その人は上半身は女の人で下半身は魚……人魚だったのだ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...