僕はスキルで思い出す

魔法仕掛けのにゃんこ

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二章 王都バッシュテン編

海とガレン

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王都バッシュテンを出てから1日半、ガタゴトゆれながら馬車が木立の間を進んでいく。何か変な感じ……変な匂いがする……?

「お客さん、ルプスポートは初めてなんだって?海見たことないんかぁ?この木立を抜けたら海が見えるからな。ほらあっちだ!」

馬車を運転しているおじさんが指を向けた先、馬車が丁度木立を抜けた瞬間。そこには……海があった!



「凄いわ!これが海なのね!ねぇねぇアルノ!海って広いの……どうしたの!?」

アルノが馬車の縁を掴んだまま微動だにせず、海を見ながら涙を流している。何か様子がおかしい、私はアルノを両手で抱えると揺すった。

「アルノ!しっかりしてアルノ!」

何度か揺すっていると、ボーっとした目のまま涙を流し、私を見てこう言った。

「本当にオアシスより大きいんだ……」

私もそうだけどアルノだってオアシスどころか砂漠だって見たことない、これはアルノじゃないの??砂漠と言えばガレンって言う子が砂漠の民のはずだからその記憶なのかしら……とりあえずこういう時は……

パシッ!

「しっかりしてっ!」

右ほほを叩いた。



これが海なんだ……本当にオアシスより大きいんだなぁ!ドーレンも言ってたっけ、とっても大きいって……僕はついに心残りだった事、海を見ることができた。5年前にアルノが『思い出す』を使ってから、僕はこの日を待ちわびていた。ありがとう……、たいした力じゃないけれど、これで僕の力をアルノと完全に共有させる事ができる……これは僕の感謝の気持ちだ、受け取ってよね。



パシッ!

「いたっ!」

「気をしっかりもってアルノ!まだボーっとしてるわね、もう一回!」

僕は慌てて両手を体の前で振る。

「ミリス!もう大丈夫だからも叩かないで!平気平気!」

「心配したわよもう!今どうしたの?ガレンって子の記憶が出ていたみたいだけど……」

「うん、どうやらガレンが死ぬ前に心残りだった『海が見てみたい』って事を、僕を通して果たされた事で表に出てきてしまったみたい。僕にお礼を言った後引っ込んでいったよ。それに……」

ステータス
名前 アルノ
種族 人間
職業 狩人
ユニークスキル 『思い出す』
        『魔法剣Lv1』

スキル     『腕力強化Lv3
        『集中Lv2』
        『気配察知Lv1』
        『剣聖Lv1』
        『神速Lv1』

「ガレンから貰っていた『腕力強化』がLv2から3に上がってる、確かもともとガレンはLv3で所持していたから、お礼として上がったみたいだね。」

これはひょっとしてユーフィリス王女の心残りを果たしたら『魔法剣』や『剣聖』もレベルが上がるんだろうか?確か王様の元に帰ってくるって約束を果たしたいって事のはずだから、王都で謁見させてもらったらわかるかもしれない。

「夫婦喧嘩かい?もうルプスポートにつくから後にしなよぅ。荷物忘れないようにな。」

僕らの様子を伺っていた御者のおじさんの言葉に

「まだ夫婦じゃありませんっ!」

真っ赤になったミリスが慌てて訂正していた……まだ?



ルプスポートに着いた。ここに来た目的の1つは早々に果たしてしまったので、後は村で頼まれている買出しをするだけでいい。港町ならではの香辛料や油、トーマスの森ではなかなか手に入らないものばかりをここぞとばかりに買い込んでいく。そろそろ夕食をとって宿にいかなくちゃいけない時間かな。

「ねぇアルノ、折角だから海の魚を食べてみたいわ。」

「そうだね、村では川魚や干物くらいしか食べた事ないしね。」

僕らは「最高に美味しい海の幸!ここでしか食べられない絶品だよ!」のノボリが立つ店に入る事にして、お勧め料理を頼んだ。

「はいお待たせー!『シェフの気まぐれ・魚のソテー』と『タテホ貝のスープ』だよ!」

初めての海の魚は、なんだろう?川の魚より濃い?感じで美味しい。海の塩味が魚の体にしみこんでるのかな?タテホ貝も食べた事なかったけどぷりぷりしていて食感が楽しくこれもまた美味しい。ミリスも満足そうな顔をして食べている。海の幸って美味しいね!村のみんなにも食べさせてあげたいなぁ。二人でそんな話をしながら満足の行く夕食を食べた。



次の日僕らは漁港から海べりを歩き、砂浜になるところまでやってきた。昨夜夕食を食べたお店で、ここが海で遊ぶのに良い場所だと聞いたからだ。まだ早い時間なので誰もいない。荷物は宿に置いてきてあり、二人とも海で泳げる格好(僕は膝丈のズボン、ミリスは股下までのズボンとシャツ)をしている。川遊びで泳いでいたので海でも平気だと思うけど、どうかな?

「アルノー!海、気持ちいいわよー!」

「ミリスー!あんまり遠くまで泳ぐと危ないよー!」

全然問題なかった、ミリスは腕をぐるんぐるん回して泳いでいる。僕も泳いでみたけど口に入った水がしょっぱくて驚いた、海の水って本当に塩が入ってるんだ……僕も夕べの魚のように塩味がしみこんでいるのだろうか?

「ねぇアルノ?あそこに浮かんでいるの何かしら?」

ミリスが少し離れたところを指差している。僕も目を凝らしてみてみると何か栗色の物が漂っている……髪の毛?

「あれって髪の毛じゃないかな!?誰かおぼれているのかも!」

「大変!はやく助けなくちゃ!」

僕らは必死でおぼれている人を抱え浜辺へと引っ張っていった。だがそれは人ではなかった。その人は上半身は女の人で下半身は魚……人魚だったのだ。

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