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第四章/杉井豊花(破)
Episode078╱説得
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(112.)
急ぎ足で愛のある我が家に到着する。慣れた手つきで煙草の空箱を指定して階段をかけ上る。いつもの部屋の鍵を開け、中に飛びいるように入った。
そこには、瑠奈と沙鳥と舞香と澄がいた。ほとんどの面子が揃っている。
「すみません、急用で連絡が受け取れませんでした」
そんなことはどうでもいい。
沙鳥に目線を合わせ読心をしてくれと暗に伝える。
澄が裏切るかもしれない。そしてそれは、地球の人類の滅亡を意味するのだと心中で伝えた。
読心で沙鳥に伝わったのか、澄が裏切るかもしれないことを知り、沙鳥は「別室に移りましょう」と部屋を変えることを提案する。
「皆さんはここで待機していてください。少し豊花さんと相談がありますので」
沙鳥はそう伝え、普段は使わない三階のとある部屋に通された。
「で、なにがあったのでしょうか?」
「神に……遭遇しました」
普通なら笑われるような言動だが、沙鳥は心中を読んだのか頷き納得した。
「で、その神様はなにと?」
「それは……」
神に言われたことを事細かに沙鳥に伝えた。沙鳥はいつになく真剣な表情をしている。会話を詳しく聞いてくれているのだ。
「なるほど……いよいよ澄さんが動き出すときが来るというわけですか」
「知っていたんですか!?」
「はい」
沙鳥がメンバーに咥える際、澄は言っていたという。善と悪の境界線にいるお主らに協力するが、時が来たら動き出すと。その際、日本を初め世界の人類を皆殺しにすると。幸い仲間である我々は最後にしてやるとも……。
「澄さんを説得しなきゃダメじゃないですか!」
「お待ちください。どうしてあなたが神と会い、地球が滅亡することを知っているのですか?」
「それは……長くなりますが」
実は本日体調を崩したのではなく、暴走族同士の争いに首を突っ込んだこと。そこで相手を倒していくうちに発狂して神に会うことや地球の滅亡を未来予知したことを説明した。
「本来なら信じられない話ですが、豊花さんが仰られると説得力が増しますね……読心術でも嘘をついているようには見えませんし」
「なら、早く澄を説得しないと!」
「どうやってでしょうか?」
……たしかに、それは考えてなかった。
「裏切るのもいつになるかまでは判明していないのですよね」
「……それはそうだけど」
でも、早いほうが良いに決まっている!
「ちょっと澄さんに話を訊いてみます!」
「あ……まったく、人の話を聞かない人です」
沙鳥のため息を後ろに、私は部屋を飛び出し澄もいるみんなの部屋へと戻った。
「澄!」
部屋に入るなり澄に声をかける。
「なんじゃ、騒がしい」
「澄さんが人類を滅亡させるって本当ですか!? やめてください!」
「ほう……誰に聞いた?」
一瞬、澄の瞳がギラリと輝いた気がした。
恐怖で震えそうになるが、今はそれどころではない!
「神に会いました」
「神って……ぷぷぷ」
瑠奈は笑っているが、澄は笑っていない。
「そうか……神に会ったのか。して、なんと申しておった」
「えっと……」
沙鳥に伝えたことをそのまま伝えた。
「たしかに、わしも神に会ったことがある。わしの姿で目の前に現れてな」
「それじゃ!」
「ただし、わしの考えは変わらんよ。善と悪との境界線が見つかるまではここにいるが、居心地もよいしの。じゃが、いずれは人類を滅亡させることに代わりはない」
「そんな……」
神はなぜ澄という殺戮兵器をつくったのだろう?
人ひとりの営みが、神の一言によって潰えてしまうではないか。
「お主に言われて、そろそろ人類を滅亡させるときが来たのかもしれんの」
ーーなら、異霊体の存在はなんだったんだ! 神の失敗作と言われて納得できるか!ーー
珍しくユタカが激昂する。
「わしは善でも悪でもない中間地点を探していた。それに近いおまえたちに協力してきたが、結局やっていることは悪だ。善と呼ばれるものも結局は悪でしかなかった」澄は迷う素振りを見せる。「わしはどうすればいい?」
迷っているならやめるべきだ!
「仲間を裏切るっていうの? 瑠奈、沙鳥、ゆき、翠月、舞香、彼女らが仲間だったから助けたんじゃないのか!?」
「たしかに仲間じゃ。だからこそ、迷う。滅ぼしていいものか」
「瑠奈や沙鳥、翠月の行為は善と悪の境界線だ! 両者納得している! 法律なんかじゃない! それを理解したから長々とここにいたんじゃないの?」
私はそう力説する。
「……少し考えさせてくれ。わしの使命は地球を終わらせることだとおもっていた。じゃが今になって揺らいでいる。わしは、ひとりの人として生きてもいいのか?」
「今さらなに言ってんのさー、澄っちはわたしたちの仲間だし人間だよ。人間じゃないっていう奴がいたらわたしがぶっ飛ばしてやる!」
「私は例え澄が人間じゃなくても仲間だと思っているわよ」
「澄はたしかに化け物染みた力を持っているけど、それなら異能力者も同じだよ」
みんなして頷く。結束が固いのがわかる。
遅れて入ってきた沙鳥も、澄は普通に生きていい人間だと頷く。
「そうか……わしの使命はどうなるのかはまだわからない。じゃが、神に交渉してみることにする」
これでうまくいったのだろうか?
第一、なぜ神は私の前に姿を表したのか。
その疑問が解消されない。
私がいなくても問題は解決したのではないだろうか?
疑問は解決されないまま、一時ひとまずは問題は解決された。
第一、あの直観とも違う未来予知はなんだったんだ?
帰宅時、再び神が目の前に現れた。
私の姿で。
「やはりきみに任せて正解だったよ」
「なにが正解だ。私がいなくてもどうにかなってーー」
「どうにもならなかったんだよ、きみというイレギュラーがいなければね」
それだけ言うと、神は再び姿を消した。
『また会おう』
それを残して……。
いったい、私はなんなのだろう。
異能力者としても特別なのに、未来予知をし、ついには神とも出会った。
地球滅亡を防ぐのが存在意義(レードンデートル)?
私は普通の人間だ。たしかに異能力者かもしれないけど、私は私がなすべきことをなすだけだ。
ぐるぐると混乱した頭のまま、私は帰路についたのだった。
急ぎ足で愛のある我が家に到着する。慣れた手つきで煙草の空箱を指定して階段をかけ上る。いつもの部屋の鍵を開け、中に飛びいるように入った。
そこには、瑠奈と沙鳥と舞香と澄がいた。ほとんどの面子が揃っている。
「すみません、急用で連絡が受け取れませんでした」
そんなことはどうでもいい。
沙鳥に目線を合わせ読心をしてくれと暗に伝える。
澄が裏切るかもしれない。そしてそれは、地球の人類の滅亡を意味するのだと心中で伝えた。
読心で沙鳥に伝わったのか、澄が裏切るかもしれないことを知り、沙鳥は「別室に移りましょう」と部屋を変えることを提案する。
「皆さんはここで待機していてください。少し豊花さんと相談がありますので」
沙鳥はそう伝え、普段は使わない三階のとある部屋に通された。
「で、なにがあったのでしょうか?」
「神に……遭遇しました」
普通なら笑われるような言動だが、沙鳥は心中を読んだのか頷き納得した。
「で、その神様はなにと?」
「それは……」
神に言われたことを事細かに沙鳥に伝えた。沙鳥はいつになく真剣な表情をしている。会話を詳しく聞いてくれているのだ。
「なるほど……いよいよ澄さんが動き出すときが来るというわけですか」
「知っていたんですか!?」
「はい」
沙鳥がメンバーに咥える際、澄は言っていたという。善と悪の境界線にいるお主らに協力するが、時が来たら動き出すと。その際、日本を初め世界の人類を皆殺しにすると。幸い仲間である我々は最後にしてやるとも……。
「澄さんを説得しなきゃダメじゃないですか!」
「お待ちください。どうしてあなたが神と会い、地球が滅亡することを知っているのですか?」
「それは……長くなりますが」
実は本日体調を崩したのではなく、暴走族同士の争いに首を突っ込んだこと。そこで相手を倒していくうちに発狂して神に会うことや地球の滅亡を未来予知したことを説明した。
「本来なら信じられない話ですが、豊花さんが仰られると説得力が増しますね……読心術でも嘘をついているようには見えませんし」
「なら、早く澄を説得しないと!」
「どうやってでしょうか?」
……たしかに、それは考えてなかった。
「裏切るのもいつになるかまでは判明していないのですよね」
「……それはそうだけど」
でも、早いほうが良いに決まっている!
「ちょっと澄さんに話を訊いてみます!」
「あ……まったく、人の話を聞かない人です」
沙鳥のため息を後ろに、私は部屋を飛び出し澄もいるみんなの部屋へと戻った。
「澄!」
部屋に入るなり澄に声をかける。
「なんじゃ、騒がしい」
「澄さんが人類を滅亡させるって本当ですか!? やめてください!」
「ほう……誰に聞いた?」
一瞬、澄の瞳がギラリと輝いた気がした。
恐怖で震えそうになるが、今はそれどころではない!
「神に会いました」
「神って……ぷぷぷ」
瑠奈は笑っているが、澄は笑っていない。
「そうか……神に会ったのか。して、なんと申しておった」
「えっと……」
沙鳥に伝えたことをそのまま伝えた。
「たしかに、わしも神に会ったことがある。わしの姿で目の前に現れてな」
「それじゃ!」
「ただし、わしの考えは変わらんよ。善と悪との境界線が見つかるまではここにいるが、居心地もよいしの。じゃが、いずれは人類を滅亡させることに代わりはない」
「そんな……」
神はなぜ澄という殺戮兵器をつくったのだろう?
人ひとりの営みが、神の一言によって潰えてしまうではないか。
「お主に言われて、そろそろ人類を滅亡させるときが来たのかもしれんの」
ーーなら、異霊体の存在はなんだったんだ! 神の失敗作と言われて納得できるか!ーー
珍しくユタカが激昂する。
「わしは善でも悪でもない中間地点を探していた。それに近いおまえたちに協力してきたが、結局やっていることは悪だ。善と呼ばれるものも結局は悪でしかなかった」澄は迷う素振りを見せる。「わしはどうすればいい?」
迷っているならやめるべきだ!
「仲間を裏切るっていうの? 瑠奈、沙鳥、ゆき、翠月、舞香、彼女らが仲間だったから助けたんじゃないのか!?」
「たしかに仲間じゃ。だからこそ、迷う。滅ぼしていいものか」
「瑠奈や沙鳥、翠月の行為は善と悪の境界線だ! 両者納得している! 法律なんかじゃない! それを理解したから長々とここにいたんじゃないの?」
私はそう力説する。
「……少し考えさせてくれ。わしの使命は地球を終わらせることだとおもっていた。じゃが今になって揺らいでいる。わしは、ひとりの人として生きてもいいのか?」
「今さらなに言ってんのさー、澄っちはわたしたちの仲間だし人間だよ。人間じゃないっていう奴がいたらわたしがぶっ飛ばしてやる!」
「私は例え澄が人間じゃなくても仲間だと思っているわよ」
「澄はたしかに化け物染みた力を持っているけど、それなら異能力者も同じだよ」
みんなして頷く。結束が固いのがわかる。
遅れて入ってきた沙鳥も、澄は普通に生きていい人間だと頷く。
「そうか……わしの使命はどうなるのかはまだわからない。じゃが、神に交渉してみることにする」
これでうまくいったのだろうか?
第一、なぜ神は私の前に姿を表したのか。
その疑問が解消されない。
私がいなくても問題は解決したのではないだろうか?
疑問は解決されないまま、一時ひとまずは問題は解決された。
第一、あの直観とも違う未来予知はなんだったんだ?
帰宅時、再び神が目の前に現れた。
私の姿で。
「やはりきみに任せて正解だったよ」
「なにが正解だ。私がいなくてもどうにかなってーー」
「どうにもならなかったんだよ、きみというイレギュラーがいなければね」
それだけ言うと、神は再び姿を消した。
『また会おう』
それを残して……。
いったい、私はなんなのだろう。
異能力者としても特別なのに、未来予知をし、ついには神とも出会った。
地球滅亡を防ぐのが存在意義(レードンデートル)?
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