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第五章/異能力者
Episode098╱日常?④
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(140.)
「二年生と一年生で異能力に対する目線がちげぇ」
私が教室に入り席に座るなり、宮下はそんなことを言い出した。
「嫌でも聴こえてくるよ、一年生の廊下通ってると、わけわからねートンチンカンな陰口が」
「ほ、本当? 瑠衣が心配だ……」
「ああ、瑠衣ちゃん、傷ついてねーといいけどな」
もしもこれでいじめがはじまったらどうなる?
過去の事件の再来かもしれない。
……いや、ありすが戻ってきた今、瑠衣は反抗しないだろう。無抵抗にいじめの矛先を向けられる。
「でも、どうして一年生と二年生で態度が違うの?」
「それはほら、瑠衣ちゃん普段からまわりに見えない壁張ってひとを寄せ付けようとしないだろ? それに比べて豊花ちゃんはどうだ? 男から女の子に変わったから男が気軽に話せる可愛い女子だし、女の子の辛さも理解してるだろ? だから女の子も話しかけやすいと思うぜ? それに普段から俺らとつるんでるからな」
女の子の辛さ……真っ先に頭に浮かぶのが生理だ。
今から嫌になる。
あまりに酷いなら産婦人科に行けとか沙鳥に言われたけど、恥ずかしくてとてもじゃないが行けるわけがない。
「三年生はどうなんだろ?」
「さあ? 三年の廊下通る機会あんまりねーしよ。だったら先輩に訊けばいいんじゃねーか? ほら、空先輩辺りに」
「いやー、あはは……空先輩かー……」
最近普通になりたい同好会に顔も出していない奴が訊きに来たらどう思うだろう?
「と、噂をすれば……」
「え?」
教室の入り口付近に空先輩と柊が覗いていた。
こちらが気づくと手招きをしてきた。
「おい、杉井だったよな? おまえとまた会いたいっていう族が多いんだ。一度集会に参加してやれ」
空先輩は唐突にそんなことを言い出した。
「いやいやいや、私は族じゃないんだから……」
「ほらね、先輩。嫌がるに決まってんじゃん」
柊はぶぅたれて文句を言う。
「はぁ、まあ仕方ない。一応言ってみただけだ。私からドラゴンメンバーの連中には断っておくが、機会があれば会いにいってやれよ。あれ以来ファンみたくなっているからな」
ゾッとしない話だ。
あ、そうだ。
「先輩、三年生は異能力者についてどういう噂が立っているんですか?」
「噂? ああ、大半は興味ないよ。みんな自分の将来でいっぱいいっぱいだ。稀に噂話に興じてる奴も、興味本意って奴だな。おまえには変なファンが着いてるし。いきなり転校してきた美少女、いや、異能力者で元は男らしいぞ? みたいにな。可笑しなファンはまえまえからいる」
嫌な話を聞いてしまった……。
ふと疑問を抱く。
精神的にも女の子になったのだったら、たとえばイケメンとかに興味を持ちそうだけど、そういう気の迷いは全然ない。
ただ、男女関係なく格好よいひとは格好よいと思えて、可愛い子は可愛いと思えるだけだ。性的指向は含まれていない。
「じゃあな。暇になったら部活に顔を出せ。歓迎はしてやる」
「普通になりたいならね~。べー、だ」
空先輩と柊は言い残し立ち去っていった。
「どうだった?」
宮下が聞いてくる。
「うん、まあ、普通みたい」
世の中噂だけで回っているわけじゃないんだな。
宮下の顔を見る。
「ん?」
私は静かに顔を振った。
「なんだよその態度!」
「いや、べつに、あはは……」
一瞬、宮下に恋心でも抱いているんじゃないか気になったが、どうもそういう雰囲気ではない。
大事な大事な友達なことには代わりないけど、恋愛対象になるようではないみたいでホッとした。
これで私が宮下に恋心を抱いたら可笑しな事になる。
いや、体は女なんだからやろうと思えばいろいろやれるけど……そうじゃなくて!
ただ、宮下のことはそういう眼でみたくないのだ。
もし、宮下が女の子だったらどうだったのだろう?
……わからない。
けど、やはり瑠璃のほうに気が触れていたのかな?
ーーただ妄想したとき嫌な気分を感じなかったのは問題だと思うぞ?ーー
……私は男でもある。
だから嫌な気分を感じなければならないけど、まあ、べつに好きと思いもしなかったんだし気にしないでくれ。
同性愛者でないかぎり、私はたとえ今は身も心も女寄りでも、原型は男であるんだ。
それを忘れる気にはなれない。
ーー豊花と分離してしまったが、それゆえ逆に幽体として活動できなくなったことが残念だ。ーー
残念?
ーーああ、残念でならない。幽体で豊花に触れられないと開発できないではないか。ーー
か、開発?
ーー……さあ授業だぞ?ーー
か、開発ってなに!?
(141.)
相変わらず瑠衣のクラスメートの空気は重い。
瑠衣がなにをしたっていうんだ。
……いや、たしかに何かしたかと聞かれたら、なにかはしたんだよな~……。
だけど、無関係なクラスメートまで蔑む理由にはならないだろう。
瑠璃と瑠衣、二人と普段どおり昼飯を食べていると、このあいだ教室の隅で陰口を叩いていた三人の女子のうちのひとり、髪を少し染めているツーサイドアップの女の子が席に近づいてきた。
「なによ?」
瑠璃がツンケンな態度で返事する。
「あんたに用じゃない。す、杉井先輩だったかしら? その……宮下先輩に伝えてくれない?」
「?」
「わ、私は好きで瑠衣の悪口は言っていないって、周りの空気に流されて……それで……」
流れで悪口を言う……つまり本気で瑠衣に文句を言っていたわけじゃないのか。
「名前は?」
「三葉……三葉(みつば) 渚(なぎさ)……つ、伝えてくれる、いや、伝えてくれますか?」
「うん。わかった。宮下ね? 伝えておくけど、もう悪口は言わないでね」
「……」
三葉は無言で立ち去ってしまった。瑠衣に謝罪する気はなさそうだ。
「なんで宮下に?」
「あんた鈍感だったっけ? 多分、あの子宮下のことが好きなのよ」
ああ、なるほど。
宮下自身は名前も知らない様子だったから、多分片思いなのだろう。
でも、残念ながら宮下を狙っている女子って結構いるって話だ。
顔はイケメンってほどじゃないけど、親しみやすくて男らしい。人の悪口を無意味に吐かないし、男女分け隔てなく接してくれる。私が女子なら異性として好いていただろう。
ーー女子だろう?ーー
いやいやいや!
生まれから女の子だったらの話!
宮下が愚痴るのを聞いたことなんかも、数えるくらいしかないからな~……。
そういや男にコクられたとかでガックリしていたときも、べつに同性愛が気持ち悪いとかそういう発言してなかったし、本当にできているやつだ。
べつにそういうアレじゃないけど、宮下を三葉みたいな会話の流れで悪口を言う奴に渡したくない。
ーーべつに宮下は豊花のものではないのだがな?ーー
う、うるさいなぁ。
まあ、宮下の判断次第だろう。
あとはあの子の努力次第。
宮下に彼女がいるかすら聞いたことないしな。
……ちょっと訊いてみようかな?
ーー豊花……いきなり『宮下、恋人とかっているの?』等と訊くのだけはやめておくのだぞ? 今のおまえの外見上、勘違いされかねない。ーー
「ぶっ!」
思わず噴き出してしまった。
「ちょっと汚い。いきなりどうしたのよ? 瑠衣も唾を拭いてあげるなら袖じゃなくてハンカチとか……」
瑠璃に疑問がられてしまった。
というか瑠衣も汚い。噴き出した私が言うのもなんだけど、私の唾液を自分の制服の袖口で拭っている。やさしさアピールだろうか?
それはやさしいを通り越して不審だ。
ーーとりあえず訊く訊かないは豊花に任せるが、聞き方には気を付けた方がいい。ーー
ま、まあ、聞き方には気を付けるよ……。
帰宅前のホームルーム。宮下にコッソリ耳打ちする。
「一年生の女子のひとりが弁明してたよ。宮下に伝えてくれって。瑠衣の悪口は流れで言わざるを得なかっただけだってさ」
「は? 誰だそいつ? 瑠衣ちゃんの悪口言ってたって昨日のか?」
「うん。三葉 渚って娘」
宮下は首を傾げ唸る。あまり身に覚えがないらしい。
「どんな奴?」
「ツーサイドアップで貧乳気味の可愛らしい子だよ」
ーーまあ私には敵わないがな、と豊花は思ったーー
「思ってない!」
「?」
宮下に不審がられたじゃないか!
「うーん……ああ、あの子か。たしかに乗り気で陰口叩いてる感じじゃなかったな。でもどうしてそれをわざわざ俺に伝えるんだ? 第一、自分で言ってくれりゃいいのによ」
自分から言う勇気がないのはなんとなくわかる。もしも宮下に好意を寄せているならの話だけど。
「それは多分……いや、なんでもない」
宮下が好きだというのは推測に過ぎない。それに、なんだか釈然としない。
宮下の言うとおり自分自身でハッキリ伝えるべきだ。
「まあ、流れってのはわからなくねぇが、俺はそういうのに乗る奴は嫌いだな」
「あ、そう……」
三葉……自分の知らないところで宮下に振られてしまった。
「そういえば宮下って彼女の話とか聞かないけど、女の子に興味ないの?」
気になって訊いてしまった。
聞き方が別の意味でまずくなってしまった。
「興味ないわけねーだろ! でも、残念ながら彼女なんて出来たことねーよ。おまえ、彼女候補に推薦してくれねーか? 誰でもいいからコクられてみてーな」
「いやいやいや、あはは……」
誰でもいいならチャンスだぞ三葉!
他の女子からブーイングを受けるかもしれないけど、早い者勝ち状態だ!
「ま、男子たるもの好きな娘が出来たら自分からコクらねーとな。そういう意味じゃ、可愛いって思う娘はいても、好きだ! って感じる女子には会ったことねーな。豊花ちゃんくらい可愛ければ箔はつくだろうけどな」
「いやいや、それはないって……いや、宮下のことは好きだけど、元は男なんだから異性に興味ないって」
「だよなー、はぁー。恋愛とかしてみてーな」
「こらこら~豊花ちゃんと宮下くん、まだホームルームは終わってませんよ~」
ついつい会話が長引いて雪見先生に怒られてしまった。
ま、宮下に彼女がいなくて、三葉が宮下に好意を寄せていても、私には関係ないや。
なんなら私が露払いしよう。宮下に相応しいかどうか。
ーーそれは宮下が好きすぎる奴のやる行動だぞ、やめておけ。ーー
……まあ、たしかに、考えすぎたかもしれない。
「二年生と一年生で異能力に対する目線がちげぇ」
私が教室に入り席に座るなり、宮下はそんなことを言い出した。
「嫌でも聴こえてくるよ、一年生の廊下通ってると、わけわからねートンチンカンな陰口が」
「ほ、本当? 瑠衣が心配だ……」
「ああ、瑠衣ちゃん、傷ついてねーといいけどな」
もしもこれでいじめがはじまったらどうなる?
過去の事件の再来かもしれない。
……いや、ありすが戻ってきた今、瑠衣は反抗しないだろう。無抵抗にいじめの矛先を向けられる。
「でも、どうして一年生と二年生で態度が違うの?」
「それはほら、瑠衣ちゃん普段からまわりに見えない壁張ってひとを寄せ付けようとしないだろ? それに比べて豊花ちゃんはどうだ? 男から女の子に変わったから男が気軽に話せる可愛い女子だし、女の子の辛さも理解してるだろ? だから女の子も話しかけやすいと思うぜ? それに普段から俺らとつるんでるからな」
女の子の辛さ……真っ先に頭に浮かぶのが生理だ。
今から嫌になる。
あまりに酷いなら産婦人科に行けとか沙鳥に言われたけど、恥ずかしくてとてもじゃないが行けるわけがない。
「三年生はどうなんだろ?」
「さあ? 三年の廊下通る機会あんまりねーしよ。だったら先輩に訊けばいいんじゃねーか? ほら、空先輩辺りに」
「いやー、あはは……空先輩かー……」
最近普通になりたい同好会に顔も出していない奴が訊きに来たらどう思うだろう?
「と、噂をすれば……」
「え?」
教室の入り口付近に空先輩と柊が覗いていた。
こちらが気づくと手招きをしてきた。
「おい、杉井だったよな? おまえとまた会いたいっていう族が多いんだ。一度集会に参加してやれ」
空先輩は唐突にそんなことを言い出した。
「いやいやいや、私は族じゃないんだから……」
「ほらね、先輩。嫌がるに決まってんじゃん」
柊はぶぅたれて文句を言う。
「はぁ、まあ仕方ない。一応言ってみただけだ。私からドラゴンメンバーの連中には断っておくが、機会があれば会いにいってやれよ。あれ以来ファンみたくなっているからな」
ゾッとしない話だ。
あ、そうだ。
「先輩、三年生は異能力者についてどういう噂が立っているんですか?」
「噂? ああ、大半は興味ないよ。みんな自分の将来でいっぱいいっぱいだ。稀に噂話に興じてる奴も、興味本意って奴だな。おまえには変なファンが着いてるし。いきなり転校してきた美少女、いや、異能力者で元は男らしいぞ? みたいにな。可笑しなファンはまえまえからいる」
嫌な話を聞いてしまった……。
ふと疑問を抱く。
精神的にも女の子になったのだったら、たとえばイケメンとかに興味を持ちそうだけど、そういう気の迷いは全然ない。
ただ、男女関係なく格好よいひとは格好よいと思えて、可愛い子は可愛いと思えるだけだ。性的指向は含まれていない。
「じゃあな。暇になったら部活に顔を出せ。歓迎はしてやる」
「普通になりたいならね~。べー、だ」
空先輩と柊は言い残し立ち去っていった。
「どうだった?」
宮下が聞いてくる。
「うん、まあ、普通みたい」
世の中噂だけで回っているわけじゃないんだな。
宮下の顔を見る。
「ん?」
私は静かに顔を振った。
「なんだよその態度!」
「いや、べつに、あはは……」
一瞬、宮下に恋心でも抱いているんじゃないか気になったが、どうもそういう雰囲気ではない。
大事な大事な友達なことには代わりないけど、恋愛対象になるようではないみたいでホッとした。
これで私が宮下に恋心を抱いたら可笑しな事になる。
いや、体は女なんだからやろうと思えばいろいろやれるけど……そうじゃなくて!
ただ、宮下のことはそういう眼でみたくないのだ。
もし、宮下が女の子だったらどうだったのだろう?
……わからない。
けど、やはり瑠璃のほうに気が触れていたのかな?
ーーただ妄想したとき嫌な気分を感じなかったのは問題だと思うぞ?ーー
……私は男でもある。
だから嫌な気分を感じなければならないけど、まあ、べつに好きと思いもしなかったんだし気にしないでくれ。
同性愛者でないかぎり、私はたとえ今は身も心も女寄りでも、原型は男であるんだ。
それを忘れる気にはなれない。
ーー豊花と分離してしまったが、それゆえ逆に幽体として活動できなくなったことが残念だ。ーー
残念?
ーーああ、残念でならない。幽体で豊花に触れられないと開発できないではないか。ーー
か、開発?
ーー……さあ授業だぞ?ーー
か、開発ってなに!?
(141.)
相変わらず瑠衣のクラスメートの空気は重い。
瑠衣がなにをしたっていうんだ。
……いや、たしかに何かしたかと聞かれたら、なにかはしたんだよな~……。
だけど、無関係なクラスメートまで蔑む理由にはならないだろう。
瑠璃と瑠衣、二人と普段どおり昼飯を食べていると、このあいだ教室の隅で陰口を叩いていた三人の女子のうちのひとり、髪を少し染めているツーサイドアップの女の子が席に近づいてきた。
「なによ?」
瑠璃がツンケンな態度で返事する。
「あんたに用じゃない。す、杉井先輩だったかしら? その……宮下先輩に伝えてくれない?」
「?」
「わ、私は好きで瑠衣の悪口は言っていないって、周りの空気に流されて……それで……」
流れで悪口を言う……つまり本気で瑠衣に文句を言っていたわけじゃないのか。
「名前は?」
「三葉……三葉(みつば) 渚(なぎさ)……つ、伝えてくれる、いや、伝えてくれますか?」
「うん。わかった。宮下ね? 伝えておくけど、もう悪口は言わないでね」
「……」
三葉は無言で立ち去ってしまった。瑠衣に謝罪する気はなさそうだ。
「なんで宮下に?」
「あんた鈍感だったっけ? 多分、あの子宮下のことが好きなのよ」
ああ、なるほど。
宮下自身は名前も知らない様子だったから、多分片思いなのだろう。
でも、残念ながら宮下を狙っている女子って結構いるって話だ。
顔はイケメンってほどじゃないけど、親しみやすくて男らしい。人の悪口を無意味に吐かないし、男女分け隔てなく接してくれる。私が女子なら異性として好いていただろう。
ーー女子だろう?ーー
いやいやいや!
生まれから女の子だったらの話!
宮下が愚痴るのを聞いたことなんかも、数えるくらいしかないからな~……。
そういや男にコクられたとかでガックリしていたときも、べつに同性愛が気持ち悪いとかそういう発言してなかったし、本当にできているやつだ。
べつにそういうアレじゃないけど、宮下を三葉みたいな会話の流れで悪口を言う奴に渡したくない。
ーーべつに宮下は豊花のものではないのだがな?ーー
う、うるさいなぁ。
まあ、宮下の判断次第だろう。
あとはあの子の努力次第。
宮下に彼女がいるかすら聞いたことないしな。
……ちょっと訊いてみようかな?
ーー豊花……いきなり『宮下、恋人とかっているの?』等と訊くのだけはやめておくのだぞ? 今のおまえの外見上、勘違いされかねない。ーー
「ぶっ!」
思わず噴き出してしまった。
「ちょっと汚い。いきなりどうしたのよ? 瑠衣も唾を拭いてあげるなら袖じゃなくてハンカチとか……」
瑠璃に疑問がられてしまった。
というか瑠衣も汚い。噴き出した私が言うのもなんだけど、私の唾液を自分の制服の袖口で拭っている。やさしさアピールだろうか?
それはやさしいを通り越して不審だ。
ーーとりあえず訊く訊かないは豊花に任せるが、聞き方には気を付けた方がいい。ーー
ま、まあ、聞き方には気を付けるよ……。
帰宅前のホームルーム。宮下にコッソリ耳打ちする。
「一年生の女子のひとりが弁明してたよ。宮下に伝えてくれって。瑠衣の悪口は流れで言わざるを得なかっただけだってさ」
「は? 誰だそいつ? 瑠衣ちゃんの悪口言ってたって昨日のか?」
「うん。三葉 渚って娘」
宮下は首を傾げ唸る。あまり身に覚えがないらしい。
「どんな奴?」
「ツーサイドアップで貧乳気味の可愛らしい子だよ」
ーーまあ私には敵わないがな、と豊花は思ったーー
「思ってない!」
「?」
宮下に不審がられたじゃないか!
「うーん……ああ、あの子か。たしかに乗り気で陰口叩いてる感じじゃなかったな。でもどうしてそれをわざわざ俺に伝えるんだ? 第一、自分で言ってくれりゃいいのによ」
自分から言う勇気がないのはなんとなくわかる。もしも宮下に好意を寄せているならの話だけど。
「それは多分……いや、なんでもない」
宮下が好きだというのは推測に過ぎない。それに、なんだか釈然としない。
宮下の言うとおり自分自身でハッキリ伝えるべきだ。
「まあ、流れってのはわからなくねぇが、俺はそういうのに乗る奴は嫌いだな」
「あ、そう……」
三葉……自分の知らないところで宮下に振られてしまった。
「そういえば宮下って彼女の話とか聞かないけど、女の子に興味ないの?」
気になって訊いてしまった。
聞き方が別の意味でまずくなってしまった。
「興味ないわけねーだろ! でも、残念ながら彼女なんて出来たことねーよ。おまえ、彼女候補に推薦してくれねーか? 誰でもいいからコクられてみてーな」
「いやいやいや、あはは……」
誰でもいいならチャンスだぞ三葉!
他の女子からブーイングを受けるかもしれないけど、早い者勝ち状態だ!
「ま、男子たるもの好きな娘が出来たら自分からコクらねーとな。そういう意味じゃ、可愛いって思う娘はいても、好きだ! って感じる女子には会ったことねーな。豊花ちゃんくらい可愛ければ箔はつくだろうけどな」
「いやいや、それはないって……いや、宮下のことは好きだけど、元は男なんだから異性に興味ないって」
「だよなー、はぁー。恋愛とかしてみてーな」
「こらこら~豊花ちゃんと宮下くん、まだホームルームは終わってませんよ~」
ついつい会話が長引いて雪見先生に怒られてしまった。
ま、宮下に彼女がいなくて、三葉が宮下に好意を寄せていても、私には関係ないや。
なんなら私が露払いしよう。宮下に相応しいかどうか。
ーーそれは宮下が好きすぎる奴のやる行動だぞ、やめておけ。ーー
……まあ、たしかに、考えすぎたかもしれない。
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