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第五章/異能力者
Episode099╱異能力の世界
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(142.)
いつもどおり愛のある我が家に向かうまえ、校門で瑠衣と瑠璃と会い、途中まで一緒に帰ることになった。
そこに宮下まで駆け寄ってくる。
「なあ豊花ちゃん、たまには遊ぼーぜ? 最近連れないじゃねーか」
「いや……あはは、バイトを始めたというか……なんというか……」
「マジで!?」
瑠璃にジト目で見られる。
うう……宮下にだけは知られたくない。もしかしたら嫌われてしまうかもしれないし。
いや、宮下にかぎってそんなことないだろうけどーー!?
私は目の前から歩いてくる双子らしき子どもの片方がーーショートヘアーでズボンの赤と緑のオッドアイの少年? が小さなナイフを振るのを目視した瞬間、咄嗟に数歩下がった。
そこにシュンッ、と音が鳴る。
「あれ? 本当に避けた」
背丈は私よりも低い。もしかしたらまだ小学生かもしれない。よくて中学生かもしれない中性的な声をした少年が、そんなことを呟いたのだ。
隣にいる顔立ちの似たロングヘアーで、これまたオッドアイの少女が、指で鉄砲の形をつくる。
それを私に向けた。
「おい、どーした豊花ちゃん?」
その線上に宮下が割り込む。
まずい!
私は咄嗟に宮下に抱きつき位置をずらす。
「バン」
少女が呟いた瞬間、宮下の肩に弾丸が当たったかのように血が噴き出した。
「がっ! な、なんだこれ!? いてぇ!」
「宮下、瑠衣、豊花、下がって! 異能力者よ!」
瑠璃が特殊警棒を鞄から素早く取り出し真横に伸ばす。
それを構えると同時に双子に駆け寄る。
少年が小さなナイフを誰にも当たらない位置で振るう。
しかしーー。
「っ! どうして!?」
特殊警棒を持つ右腕に斬撃が辺り、血が辺りに散る。
「みんな下がって!」
「おい……豊花ちゃん!」
宮下の声を後ろに、私はスカートからナイフを取り出し瑠璃を追い抜き双子に駆け寄る。
少女がピストルを模した形に構えた指を引く。そこを避ける。やはり空気が真横を通った。
少年が小さなナイフを適当に数回振る。
ーー燐光が辺りに発生してる。奴は斬撃の位置をずらしているぞ!ーー
言われなくても直感的に理解している。
来ると勘で察知した位置を左右に避ける。背を低くする。
少年のナイフに自分のナイフをぶつけた。少年のナイフは弾け飛び宙を舞う。
「あら、緑(みどり)ったら、油断して」
「ごめん、赤(あか)」
武器を持っていない少女のほうをどうするかが問題だ。
少女は指を二本伸ばして、こちらのナイフにぶつけてくる。
まるでナイフとナイフがぶつかったかのような刃物の音が周囲に響き渡る。
「この!」
瑠璃が背後から駆け付け、少女ーー赤と呼ばれた少女の右腕を特殊警棒で叩いた。
「っ! 痛いわ……」
赤は痛みを訴える。
「赤……逃げたほうがよくない?」
「そうね、そうしましょう」
「逃がすと思う?」
瑠璃は傷ついた右腕を擦り、左手に握り直した特殊警棒を双子に向ける。
「やはりきみが一番厄介だったが、時間だ。惜しいな」
双子の背後に突然、眼鏡をかけたオールバックの二十歳ほどの男性と、その真横にサイドテールの女子高生が現れた。
「何者よ? あんたたち……」
瑠璃は訝しげに問う。
「異能力の世界の一味、とだけ言っておこう。捨て石のつもりではあったが、小野寺君くんたちをああもアッサリ処分されては……それに裏切り者まで排出してしまった」
裏切りもの……?
「異能力の世界!?」
つまり裏切り者とは鏡子のことだ。
待て待て!
あの組織は小野寺さつきがリーダーで、メンバーは他にはいないと鏡子は言っていたじゃないか!
一瞬、鏡子が嘘をついたのかと疑問を抱くがすぐに消えた。
沙鳥に嘘は通じない。つまり、鏡子は知らない事実だということだ。
「協力関係を結びはしないだろうと思っていたが、まさか皆殺しにされるとは……いやはや、嵐山沙鳥というのは極悪非道な人間だ」
「極悪非道なのはどっちだ! 真中さんや大海組の組員たちを殺しておいて!」
やれやれ、と言ったふうに男性は首を振った。
「我々は異能力者であるという点で仲間ではないか。その仲間を殺す、外道以外の何者でもない」
「聞いちゃいられねーな!」宮下が息を切らしながら声を張り上げる。「てめーらみたいにいきなり豊花ちゃんや俺たちを狙う無差別殺人鬼と、豊花ちゃんや瑠衣ちゃんみたいな異能力者をごっちゃにしてんじゃねーよ!」
「きみはわかってないね。まあ仕方ない。異能力者ではないのだから。異能力者こそ新人類だ。愛のある我が家で一番厄介な杉井豊花を処分できなかったのは痛手だが、ここは素直に立ち去るとしよう」
「だから逃げられるとでも……!?」
瑠璃が言うと同時ーー双子とサイドテールの少女、オールバックの男性は、パッと姿を消してしまった。
舞香の力と……同じ?
おそらくあの男か、隣の少女による異能力だろう。
「なんなのよ、あいつら……」
傷を擦りながら、瑠璃は特殊警棒を下ろした。
「まさか……あれが真の……」
異能力の世界?
こうしちゃいられない。
沙鳥に早く告げなければ……!
今回は明らかにこちらも敵視している。
「ごめん、宮下と瑠璃は病院に行って! 瑠衣も付き添ってあげて! 私は行かなくちゃいけないところがあるから!」
「あ、おい豊花ちゃん!」
「豊花!?」
私はスマホを取り出しながら愛のある我が家に走って向かった。
あいつらの話を聞いているかぎり、狙いは私たちだ。
一緒にいないほうが、むしろ瑠璃たちは安全だろう。
『もしもし、襲撃にでも遭いましたか?』
「!? どうしてそれを!」
『鏡子さんに一斉監視をしていただいていましたら、偶然豊花さんが襲撃されているのを見つけました。見せてもらっていましたよ。異能力の世界ーーあれがおそらく真の組織でしょう。おそらく小野寺さつきは捨て駒です。急いで愛のある我が家までいらしてください』
それに返事をし、私は急いで愛のある我が家へと向かった。
(143.)
愛のある我が家に到着すると、朱音と澄、結愛以外のメンバー全員が一室に揃っていた。
ソファーには沙鳥に舞香、ゆきと鏡子が座っており、瑠奈はベランダで煙草をふかしている。それに、刀子さんまで室内にはいた。
「いらしましたね。豊花さん、こんな時期に異能力者が反感を買うことをやらかす組織がまだ残っていたなんて」
「こっちでも情報を集めていたところだ。一部のメンバーの姿と異能力の内容は判明しているが、全貌は掴めていない」
刀子さんは書類をテーブルに広げる。
どうやら赤と緑は北海道の異能力者保護団体に一時期申請しており、きちんとした情報が乗っていた。
もうひとり、先ほど見かけたサイドテールの女子高生も載っている。
『月見里赤(やまなしあか) 女性(12) 身体干渉 指をピストルの形にして弾くと銃弾が、剣の形に構えると物を切ることができる』
『月見里緑(やまなしみどり) 女性(12) 概念干渉 刃物で切った位置の座標を好きな位置に移動する。その際本物の刃物の刃は切れ味がなくなる』
緑……中性的だと思ったけど、女性だったのか。
『栗落花由佳(つゆりゆか) 女性(17) 概念干渉 人物を指定して空間を移動できる。運ぶ人数が多いほど時間がかかる』
こちらは舞香の劣化版というか廉価版というか……小野寺さつきさんよりは強力な異能力者だ。
「で、だ。リーダーらしきあの男、鏡子の異能力で見せてもらったが、情報がまるでない。異能力者保護団体に所属はしていないし申請もしていない。つまり、異能力者かどうかも不明というわけだ」
刀子さんは言い終える。
「厄介ですね……豊花さんが直に緑さんに触れていてくだされば、追跡も容易だったのですが……」
たしかに。向こうは鏡子の異能力が成長しているとは知らないはず。つまり触れる隙くらいあっただろう。
不覚だ……。
「……でも……私の異能力に……感染したひとが……触れてくれさえすれば……」
「ええ、情報戦で有利に立てます。刀子さん、ここは真剣に異能力者保護団体と愛のある我が家で協力しましょう。あなた方にもまずい存在のはずです」
「無論だ」
刀子さんは即答する。
しかし、誰もこれも厄介な異能力者だ。
まるで愛のある我が家のように……。
そう考えると、愛のある我が家も端から見れば異常な組織なんだな……。
「一番厄介なのが豊花さんと認識していましたね……豊花さんはしばらくここに身を隠すべきです」
「待て。向こうに転移能力があるのが厄介だ。ここに飛ばれでもしたら寝首をかかれるのがオチだぞ」
沙鳥と刀子さんは議論する。
というか、一番厄介なのが私と思われていること事態が、向こうの認識不足なんじゃなかろうか?
舞香や沙鳥に鏡子、ゆきも瑠奈も、最終兵器の澄がいない現状だって、私よりも強力な異能力者ばかりだというのに……。
ーー豊花には不意討ちが通じない。もしかしたらその点が厄介扱いされたのかもな。ーー
そういうことかな?
「さっそくだが、異能力犯罪死刑執行代理人として、ルーナエアウラとメアリーの奴には動いてもらうぞ」
「ええ、そのつもりでお貸ししていますので」
「情報はこちらでも集める。おまえらも用心するんだな」
「ええ」
刀子さんは部屋から出ていった。
「さて……赤羽さんにも念のため注意しておきますか」
沙鳥は前例から暴力団も狙われると考えたのだろう。
二代目大海組の組長、赤羽さんに連絡を入れる。
瑠奈が煙草を吸い終えたのか室内に入ってくる。
「誰々この子たち? かわいいじゃん、特にこのオッドアイの長髪の娘。へー、この子も女の子なんだ? みんな珍しい苗字だねー」
等と呑気な事を口にする。
鏡子に見せてもらっていなかったのだろうか?
「この子たちに殺されかけたんだよ……」
「本当に? えー……なら、犯しちゃっても罪にはならないかな?」
「いくら犯罪者相手とはいえ強姦や略奪は加害者的な犯罪ですよ。やめてください」
電話を終えたのか、沙鳥が瑠奈に注意する。
「赤羽さんたちも情報収集をしてくださるそうです。私たちは鏡子さん頼りですが相手がどの辺りにいるか捜索しましょう。豊花さんの真の異能力を知っている……つまり私たちの異能力は粗方割れていると考えて行動したほうがよさそうです」
「ええ、そうね。栗落花って子は私と異能力が似てるわね。最大射程距離とかが判明していれば心強いのだけど」
舞香はそう呟く。
そうか。転移にも射程距離や能力発動までの時間があるのか。
それにより、完全に舞香さんの劣化版というわけでもなくなるのか。
相手が幼かったからナイフを当てるのに躊躇してしまった。
覚悟を決めたのに、これじゃダメダメだ。
ーーあの場で殺していたら宮下や葉月姉妹に殺害現場を目撃されてしまうだろう。なるべく相手を殺すとは考えないほうがいい。私は捕らえるのを目標にしてみてはどうかと提案しよう。ーー
捕らえる……か。
教育部併設異能力者研究所送りにされたら死ぬよりも地獄が待っていそうな気がするけどね。
これからどうなるのだろう?
問題を解決したと思ったら新たな問題が立ち塞がる。
ーーいったい、いつになったら平穏は訪れるのだろうか?
いつもどおり愛のある我が家に向かうまえ、校門で瑠衣と瑠璃と会い、途中まで一緒に帰ることになった。
そこに宮下まで駆け寄ってくる。
「なあ豊花ちゃん、たまには遊ぼーぜ? 最近連れないじゃねーか」
「いや……あはは、バイトを始めたというか……なんというか……」
「マジで!?」
瑠璃にジト目で見られる。
うう……宮下にだけは知られたくない。もしかしたら嫌われてしまうかもしれないし。
いや、宮下にかぎってそんなことないだろうけどーー!?
私は目の前から歩いてくる双子らしき子どもの片方がーーショートヘアーでズボンの赤と緑のオッドアイの少年? が小さなナイフを振るのを目視した瞬間、咄嗟に数歩下がった。
そこにシュンッ、と音が鳴る。
「あれ? 本当に避けた」
背丈は私よりも低い。もしかしたらまだ小学生かもしれない。よくて中学生かもしれない中性的な声をした少年が、そんなことを呟いたのだ。
隣にいる顔立ちの似たロングヘアーで、これまたオッドアイの少女が、指で鉄砲の形をつくる。
それを私に向けた。
「おい、どーした豊花ちゃん?」
その線上に宮下が割り込む。
まずい!
私は咄嗟に宮下に抱きつき位置をずらす。
「バン」
少女が呟いた瞬間、宮下の肩に弾丸が当たったかのように血が噴き出した。
「がっ! な、なんだこれ!? いてぇ!」
「宮下、瑠衣、豊花、下がって! 異能力者よ!」
瑠璃が特殊警棒を鞄から素早く取り出し真横に伸ばす。
それを構えると同時に双子に駆け寄る。
少年が小さなナイフを誰にも当たらない位置で振るう。
しかしーー。
「っ! どうして!?」
特殊警棒を持つ右腕に斬撃が辺り、血が辺りに散る。
「みんな下がって!」
「おい……豊花ちゃん!」
宮下の声を後ろに、私はスカートからナイフを取り出し瑠璃を追い抜き双子に駆け寄る。
少女がピストルを模した形に構えた指を引く。そこを避ける。やはり空気が真横を通った。
少年が小さなナイフを適当に数回振る。
ーー燐光が辺りに発生してる。奴は斬撃の位置をずらしているぞ!ーー
言われなくても直感的に理解している。
来ると勘で察知した位置を左右に避ける。背を低くする。
少年のナイフに自分のナイフをぶつけた。少年のナイフは弾け飛び宙を舞う。
「あら、緑(みどり)ったら、油断して」
「ごめん、赤(あか)」
武器を持っていない少女のほうをどうするかが問題だ。
少女は指を二本伸ばして、こちらのナイフにぶつけてくる。
まるでナイフとナイフがぶつかったかのような刃物の音が周囲に響き渡る。
「この!」
瑠璃が背後から駆け付け、少女ーー赤と呼ばれた少女の右腕を特殊警棒で叩いた。
「っ! 痛いわ……」
赤は痛みを訴える。
「赤……逃げたほうがよくない?」
「そうね、そうしましょう」
「逃がすと思う?」
瑠璃は傷ついた右腕を擦り、左手に握り直した特殊警棒を双子に向ける。
「やはりきみが一番厄介だったが、時間だ。惜しいな」
双子の背後に突然、眼鏡をかけたオールバックの二十歳ほどの男性と、その真横にサイドテールの女子高生が現れた。
「何者よ? あんたたち……」
瑠璃は訝しげに問う。
「異能力の世界の一味、とだけ言っておこう。捨て石のつもりではあったが、小野寺君くんたちをああもアッサリ処分されては……それに裏切り者まで排出してしまった」
裏切りもの……?
「異能力の世界!?」
つまり裏切り者とは鏡子のことだ。
待て待て!
あの組織は小野寺さつきがリーダーで、メンバーは他にはいないと鏡子は言っていたじゃないか!
一瞬、鏡子が嘘をついたのかと疑問を抱くがすぐに消えた。
沙鳥に嘘は通じない。つまり、鏡子は知らない事実だということだ。
「協力関係を結びはしないだろうと思っていたが、まさか皆殺しにされるとは……いやはや、嵐山沙鳥というのは極悪非道な人間だ」
「極悪非道なのはどっちだ! 真中さんや大海組の組員たちを殺しておいて!」
やれやれ、と言ったふうに男性は首を振った。
「我々は異能力者であるという点で仲間ではないか。その仲間を殺す、外道以外の何者でもない」
「聞いちゃいられねーな!」宮下が息を切らしながら声を張り上げる。「てめーらみたいにいきなり豊花ちゃんや俺たちを狙う無差別殺人鬼と、豊花ちゃんや瑠衣ちゃんみたいな異能力者をごっちゃにしてんじゃねーよ!」
「きみはわかってないね。まあ仕方ない。異能力者ではないのだから。異能力者こそ新人類だ。愛のある我が家で一番厄介な杉井豊花を処分できなかったのは痛手だが、ここは素直に立ち去るとしよう」
「だから逃げられるとでも……!?」
瑠璃が言うと同時ーー双子とサイドテールの少女、オールバックの男性は、パッと姿を消してしまった。
舞香の力と……同じ?
おそらくあの男か、隣の少女による異能力だろう。
「なんなのよ、あいつら……」
傷を擦りながら、瑠璃は特殊警棒を下ろした。
「まさか……あれが真の……」
異能力の世界?
こうしちゃいられない。
沙鳥に早く告げなければ……!
今回は明らかにこちらも敵視している。
「ごめん、宮下と瑠璃は病院に行って! 瑠衣も付き添ってあげて! 私は行かなくちゃいけないところがあるから!」
「あ、おい豊花ちゃん!」
「豊花!?」
私はスマホを取り出しながら愛のある我が家に走って向かった。
あいつらの話を聞いているかぎり、狙いは私たちだ。
一緒にいないほうが、むしろ瑠璃たちは安全だろう。
『もしもし、襲撃にでも遭いましたか?』
「!? どうしてそれを!」
『鏡子さんに一斉監視をしていただいていましたら、偶然豊花さんが襲撃されているのを見つけました。見せてもらっていましたよ。異能力の世界ーーあれがおそらく真の組織でしょう。おそらく小野寺さつきは捨て駒です。急いで愛のある我が家までいらしてください』
それに返事をし、私は急いで愛のある我が家へと向かった。
(143.)
愛のある我が家に到着すると、朱音と澄、結愛以外のメンバー全員が一室に揃っていた。
ソファーには沙鳥に舞香、ゆきと鏡子が座っており、瑠奈はベランダで煙草をふかしている。それに、刀子さんまで室内にはいた。
「いらしましたね。豊花さん、こんな時期に異能力者が反感を買うことをやらかす組織がまだ残っていたなんて」
「こっちでも情報を集めていたところだ。一部のメンバーの姿と異能力の内容は判明しているが、全貌は掴めていない」
刀子さんは書類をテーブルに広げる。
どうやら赤と緑は北海道の異能力者保護団体に一時期申請しており、きちんとした情報が乗っていた。
もうひとり、先ほど見かけたサイドテールの女子高生も載っている。
『月見里赤(やまなしあか) 女性(12) 身体干渉 指をピストルの形にして弾くと銃弾が、剣の形に構えると物を切ることができる』
『月見里緑(やまなしみどり) 女性(12) 概念干渉 刃物で切った位置の座標を好きな位置に移動する。その際本物の刃物の刃は切れ味がなくなる』
緑……中性的だと思ったけど、女性だったのか。
『栗落花由佳(つゆりゆか) 女性(17) 概念干渉 人物を指定して空間を移動できる。運ぶ人数が多いほど時間がかかる』
こちらは舞香の劣化版というか廉価版というか……小野寺さつきさんよりは強力な異能力者だ。
「で、だ。リーダーらしきあの男、鏡子の異能力で見せてもらったが、情報がまるでない。異能力者保護団体に所属はしていないし申請もしていない。つまり、異能力者かどうかも不明というわけだ」
刀子さんは言い終える。
「厄介ですね……豊花さんが直に緑さんに触れていてくだされば、追跡も容易だったのですが……」
たしかに。向こうは鏡子の異能力が成長しているとは知らないはず。つまり触れる隙くらいあっただろう。
不覚だ……。
「……でも……私の異能力に……感染したひとが……触れてくれさえすれば……」
「ええ、情報戦で有利に立てます。刀子さん、ここは真剣に異能力者保護団体と愛のある我が家で協力しましょう。あなた方にもまずい存在のはずです」
「無論だ」
刀子さんは即答する。
しかし、誰もこれも厄介な異能力者だ。
まるで愛のある我が家のように……。
そう考えると、愛のある我が家も端から見れば異常な組織なんだな……。
「一番厄介なのが豊花さんと認識していましたね……豊花さんはしばらくここに身を隠すべきです」
「待て。向こうに転移能力があるのが厄介だ。ここに飛ばれでもしたら寝首をかかれるのがオチだぞ」
沙鳥と刀子さんは議論する。
というか、一番厄介なのが私と思われていること事態が、向こうの認識不足なんじゃなかろうか?
舞香や沙鳥に鏡子、ゆきも瑠奈も、最終兵器の澄がいない現状だって、私よりも強力な異能力者ばかりだというのに……。
ーー豊花には不意討ちが通じない。もしかしたらその点が厄介扱いされたのかもな。ーー
そういうことかな?
「さっそくだが、異能力犯罪死刑執行代理人として、ルーナエアウラとメアリーの奴には動いてもらうぞ」
「ええ、そのつもりでお貸ししていますので」
「情報はこちらでも集める。おまえらも用心するんだな」
「ええ」
刀子さんは部屋から出ていった。
「さて……赤羽さんにも念のため注意しておきますか」
沙鳥は前例から暴力団も狙われると考えたのだろう。
二代目大海組の組長、赤羽さんに連絡を入れる。
瑠奈が煙草を吸い終えたのか室内に入ってくる。
「誰々この子たち? かわいいじゃん、特にこのオッドアイの長髪の娘。へー、この子も女の子なんだ? みんな珍しい苗字だねー」
等と呑気な事を口にする。
鏡子に見せてもらっていなかったのだろうか?
「この子たちに殺されかけたんだよ……」
「本当に? えー……なら、犯しちゃっても罪にはならないかな?」
「いくら犯罪者相手とはいえ強姦や略奪は加害者的な犯罪ですよ。やめてください」
電話を終えたのか、沙鳥が瑠奈に注意する。
「赤羽さんたちも情報収集をしてくださるそうです。私たちは鏡子さん頼りですが相手がどの辺りにいるか捜索しましょう。豊花さんの真の異能力を知っている……つまり私たちの異能力は粗方割れていると考えて行動したほうがよさそうです」
「ええ、そうね。栗落花って子は私と異能力が似てるわね。最大射程距離とかが判明していれば心強いのだけど」
舞香はそう呟く。
そうか。転移にも射程距離や能力発動までの時間があるのか。
それにより、完全に舞香さんの劣化版というわけでもなくなるのか。
相手が幼かったからナイフを当てるのに躊躇してしまった。
覚悟を決めたのに、これじゃダメダメだ。
ーーあの場で殺していたら宮下や葉月姉妹に殺害現場を目撃されてしまうだろう。なるべく相手を殺すとは考えないほうがいい。私は捕らえるのを目標にしてみてはどうかと提案しよう。ーー
捕らえる……か。
教育部併設異能力者研究所送りにされたら死ぬよりも地獄が待っていそうな気がするけどね。
これからどうなるのだろう?
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ーーいったい、いつになったら平穏は訪れるのだろうか?
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