前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

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第五章/異能力者

Episode138╱最終決戦前

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(195.)
 ようやく涙が収まり冷静さを取り戻してきた。
 カッと暑くなった体温が急に冷めていくのが自分でもわかる。

「落ち着いた?」
「……うん……ありがとう」
「いったいなにがあったの?」

 今しがた起きた出来事をありすに暴露する。

「あちゃー。でも仕方ないでしょ。それ以外になにか方法があった?」
「……」
 うん。私の中にはあれ以外の対処法なんて存在していなかった。
 と、スマホが鳴りはじめる。
 誰だろう? こんな時間に。
 不審に思いながらも、画面をスライドして通話を繋げた。

「もしもし」
『もしもーし、雪見先生……よー』

 声だけでわかる。つけられた傷がまだ痛むのだろう。

「だから、私はきょうでやめようと思って……」
『やめるにせよやめないにせよ、いろいろ準備が必要でね~。で、とりあえず今日は授業を中断して、明後日まで休みになったわ~』

 たしかに、死体と共に授業なんて受けさせたくないであろう。

『ほら、まえにも赤羽さんがバラバラ殺人犯したじゃなーい? この学校にはなにがあるんだってみんな大騒ぎよ』
「裕璃は退学しました。なら、私も既に退学するしか道はありません」

 最悪、裕璃と同じく異世界行きだ。島流しとどっちが酷いんだか。

『ところがね~。なぜか警察の方はあまり相手にしてくれないのよ。今回の件ーーあっ、来たみたい。相手をしてあげてね』

 パトカーの音が鳴り響き、わが校の前で止まった。
 警察官ーーん? この警察官見たことあるぞ? どこだっけ……?
 名前は忘れたけど、沙鳥を捕まえた警察官に酷似している。

「今回殺害されたのは双子の姉妹であっていますかね?」
「はい~他にも二人いましたが、不思議な力で逃げました~」

 警察官が私に振り向き真面目な表情を顔に浮かべた。

「倒した相手の名前はわかるかな?」
「え? あ、はい。月見里緑と月見里赤です」
「ならお手柄だな」

 お、お手柄!?
 ひとふたりも殺した相手にお手柄!?
 どういう意味なんだ。

「異能力の世界に属する相手に危害を加えられそうになり、もっといえば殺害されかけて、慌てて異能力で応戦。やむなく二人は返り討ちにあって死亡……こういう絵を描いておこうかね」

 なんだろう。この警察官はやたらとフランクだなぁ……。
 校庭から雪見先生らしき影が近寄ってきた。まだ額は赤く痛々しい。

「先生方、これは殺人ではなく討伐です。皆がこぞって犯罪行為をする連中です」
「え、なら豊花ちゃんの処遇は?」
「無論、無罪です」三人くらい、いつの間にか警察官が増えていた。救急車まで来ている。「警察も異能力者保護団体も愛のある我が家も協力して異能力の世界のメンバーを全員亡きものにする。これが我々の仕事ですから」

 む、無罪……?
 あれだけ殺人が多数に見られたと言うのに?
 少なくともクラスには居づらくなってしまった。

「学校の下す処遇は特になしにしておいてくれ。杉井さんは自身を犠牲にしてクラスを助けたんだ。死体は異能力者保護団体に渡してくださいね。殺人事件を公にしない。これは守ってください。情報統制を敷き、箝口令も発足する」つまりみんなにこの事件についてなにも話してはいけないという命令だ。「これなら杉井さんも自由に登校できるはずだ。死体も隠蔽し、掃除屋に依頼して、最後には警察でも事情を相談し会議を終える。そこに加害者である杉井さんの名前は出てこない」
「は、はぁ……」

 よくわからないけど、まだ学校に居られる可能性はあるってことだ。
 でも、今の状況からよそよそしくされる可能性のほうが大きい。

「はい、着替え。いつまで朱殷を纏っているんだから。一応小さいサイズにはしておいたよ?」
「あ、ありがとう……」

 気が動転しているのか、周りにひとがいるのを一切気にかけず、衣服を脱いで着替え、ありすに買ってもらった衣服に袖を通した。
 ぼけーっと一人で行動してしまった。
 どういう処罰が下されるかわからないが、とにかく学校にはもう行けないだろうと覚悟を決めていた矢先、これだ。
 でも、今学校に行っても、まえみたく楽しい生活はできないと思うんだ……。
 チャイムが鳴った。本来なら小休憩のタイミングだが、やたら校門からひとが湧き出てくる。
 そこには、宮下、瑠璃、瑠衣までもが走ってくる。

 警察官が数名校内へと入り込んでいく。なにか相談事があるのだろうか?
 残った前に見たことのあるような顔をした警察官が、私の耳に口を近づける。 

「学校側はこの件に関しては黙秘を貫く。今しがた君のクラスの生徒には既に箝口令が敷かれた。つまり、元通りの生活をしてくれていて構わない」とにかく、と警察官はつづけた。「いままでどおり接するようにとみんなにも雪見先生が忠告してくれたらしい。無論、家族にも連絡はしないよ」

 だからきみはなにも気にせず、今回のは不慮の事故だったとすればいい。
 ーーだから、登校はつづけてもいいんだよ?
 と言った。
 でも、人殺しに周りから見られて孤独に暮らすのはいやだ……。でもそれ以外なにができる?

「安心しろって! 薄々感付いていたからな!」

 宮下は普段通りに明るく振る舞ってくれた。

「だいたい、杉井まで登校組を抜けられたら守り通せる自信かないんだけど。豊花にもがんばってもらわないと」とありす。
「多少は怖がるやつもいるだろうけど、今までの豊花を知っていて、尚且つ説明を詳細に聞かされた今なら、豊花の味方をする生徒もいるくらいだよ? きょう明日は休みになったから、明後日からは登校しよう?」

 と瑠璃に乞われる。
 瑠璃に言われてしまっては逆らえない。逆らえないけど……。

「また行ったら行ったで迷惑をかけるかもしれない。今回みたいに」
「次は私、瑠衣、瑠璃も応戦するように努力するから、ね?」

 そこまで言われてしまっては、断ることも難しい。
 私は渋々納得した。

   




(196.)
「姉御! 大丈夫でしたか?」

 ドラゴンメンバーにも情報が行っていたのか、不安そうに心配してくる。

「大丈夫だよ」と答えて、ひとまず異能力者保護団体にで向かうことにした。
「あ、ならバイクで送りますよ」

 そう言われ、メットを被される。ドラゴンメンバーの一人の男の子の後ろに乗ることにした。手を前にまわす。
 どちも緊張しているのがわかる。私は仕方ないとしてバイク男も妙にあたふたしている。なんだろう?

 瑠璃や瑠衣、宮下も誘われるが、宮下は俺は異能力者保護団体に住んでいないとひとり踵を返す。
 そんな姿を見ていたのか、三葉が影から現れ宮下の隣に陣取った。
 あの子、意外と大胆だなぁ……。

「捕まっててくだせい!」
「はい!」

 そして、バイクは走行を始めた。

 

 電車だと遠いが、バイクだと予想以上に早く到着した。

「ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ、姉御にはいろいろ世話になってますからね! そんじゃ!」

 ドラゴンメンバーはみんなを降ろして帰路についた。
 異能力者保護団体到着、さっそく沙鳥はロビーで寝転がっていた。隣には異能力発現中の鏡子と、ノートパソコンをひたすらカタカタしたかと思えば分厚い雑誌を見たりと世話しない。

「沙鳥、実は……」
「はい?」ピクリっと沙鳥はこちらに顔を向けた。
「いろいろな出来事があって、あ、赤を殺したら神無月に」
 詳細に語ろうとするが、ついついどもってしまいなかなか言えない。無駄に緊張していることが沙鳥に伝わったのかため息を溢す。

「声に出さなくてもわかります。ーーそれはそれは、間一髪でしたね。大変だったでしょう」

 沙鳥は意外と慰めてくれた。

「意外ですか?」
「いや、なんでもないです」

 読心~!

「今日明日が急遽休みになったため、鍋でもつつきながら、これからの行動を相談しもしましょう。この要塞を破れる異能力者なんて極々僅かしかいませ」あと、と沙鳥はつづけた。「リーダーは神無月ではありませんでした。裏で手を引いているのは睦月ーー異能力者の範囲を決めて異能力を使わせなくする。まあ、まさにリーダーには相応しい異能力者でーー」
「たっだいまー!」と大声で帰宅の報告をする瑠奈が現れた。「探すの苦労したよー。鏡子と香織さまさまだね。もちろん。文月は瀕死にさせてから楽しんだあと殺害したよん。殺してくれーとか喚いていたっけ。そそるよね」

 楽しんだ?
 楽しむって、なにを楽しんだんだ?
 ついつい気になってしまう。

「では、残るは神無月チーム(うち二人死亡)、リーダーである睦月、裏切り者の水無月、汗が猛毒の弥生、リーダー格はこ四人でしょう。追い詰められた苦肉の策が、本日の強襲です。栗落花と共にいるだけで狙いにくくなりますね」
 ふと、鏡子と香織が気になりチラ見してしまう。
 鏡子の異能力に併せ、香織の土地勘やネットやダークウェブの情報を手当たり次第調べている。

 発見者には10万円プレゼント。条件、本物だと判明してからの後払いになると書いたメッセージを、ネットの友人に総送信している。
 ダークウェブの掲示板でも地道に情報を集めていっていた。

 なぜかテカテカスッキリした顔の瑠奈を無視する一同。つまり、赤、緑、文月を処分したことになる。
 栗落花を討伐することが最優先となってきた。手だては森山を使う手法。
 異能力を使えなくしている間に殺してしまう。あとは豊花の下位互換である神無月や、弥生、睦月を処分する。

「神無月が誰を浚うのかがわかってきていない状況。森山だよりになるな」

 色彩さんは物騒なことを口にする。

「あのーー」

 帰りそうになっているドラゴンメンバーに、あるものを持って駆け寄る。

「どうしました、姉御?」
「あ、姉御とは言わなくていいからさ。この写真」判明している異能力の世界の写真と情報を渡した。
 そう。ドラゴンメンバーにも判明している顔写真を渡し、見つけたらこそこそ連絡をくれるとうれしいーーそんな小さな作戦だった。

「わかりました。絶対見つけ出すっす!」

 といってすんなり了承。
 ……一般市民に紛れていたら厄介だ。そういう考えだからドラゴンメンバーにも任せてしまったのだけれど、考えが安直過ぎるか。

「決して見つけても近寄らないでねー! バレないように連絡だけくれればいいから」
「わかっていますよ、んじゃ、姉御。たまには集会に顔だしてくださいね!」

 曖昧な笑みで、そこは誤魔化した。


        
 いい加減飽き飽きしてきた。
 三日間かからず処罰してやる。
 理不尽な目に遭った仕返しをしなければならない。
 幸い学校側は寛大で、問題がなくなれば登校してきていいと言ってくれそうな雰囲気だ。
 けれど許せない。無関係な人を多数も巻き込みやがって!

「豊花さん、激昂はいいのですが、新たに班分けしたので見ておいてください」

 沙鳥に言われ、テーブル上の紙に書かれた文字を読む。

○豊花、瑠璃、瑠衣、ありす(A班)
○沙鳥、舞香、ゆき、瑠奈(B班)
○ドラゴンメンバー(探索班)
○鏡子、香織(探索班)
○森山、アリーシャ、色彩、真中、静夜、美夜(防衛班)
○煌季、三日月(治療班)

 三日月さんはどんな容姿をしているひとなんだっけ?
 そういえば見たことない気がする。
 名前のとおり綺麗なひとなのか。逆なのか。美人タイプに幼さが残っている感じなのか。
 ーーそのすべてを内包した女性がロビーにやってきた。

「みかっち、どうしたの?」
「いえ……わかりました」

 ず、ずいぶん無愛想なひとだこと。

 ドラゴンメンバーは辺りを散策、A班B班は探索班から情報を受け取ったら現場に向かう。


 さあ、最終決戦だ。
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