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第六章/平凡な非日常
Episode157╱豊かな生活①
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(225.)
今にも雪が降りそうな冷たい風が吹き、思わず身震いする。
皆もおなじなのか、皆一様に寒そうにしていた。
「豊花さんのチームができたら私たちの傘下に入ってもらいます」
お寺から出て自宅に向かう途中、沙鳥がさきほどの話のつづきをはじめた。
「だからその話まだ生きてたの!?」
「当然です」
ぞろぞろと皆で帰宅途中に沙鳥はそう言う。
「柊さんが入ってくだされば、柊さんは豊かな生活の一員になるわけです。が、愛のある我が家の一員は何人豊かな生活の人員が増えても豊花さんだけですよ?」
「ちょっと理解が追い付かない……てか、柊が入るとは決まってないじゃん」
「いいえ、あの方は入りますよーーふふ」
沙鳥は不敵な笑みを浮かべる。
心を読んだ結果、なにかを理解したのだろう。
そもそも豊かな生活て……愛のある我が家にしろネーミングセンスはどうにかならなかったのだろうか?
「豊花、また、なにかするの?」
瑠衣が沙鳥を押し退け右隣に割り込む。
なぜか鏡子が負けじと左隣に位置した。
自分で言うのもなんだけど、瑠衣には好かれているから近寄ってくるのは理解できる。まあ、ありすのほうが好きなんだろうけど。
それに対して鏡子はいったいなんなんだ。
こんなに人数がいるのだから、誰の近くにいても問題ないのに、なぜ私の隣に居たがるのか。
「女心がわからないひとですね……」沙鳥は呟くと瑠璃を見た。「瑠璃さんはよろしいのですか? 豊花さんがお二人に取られてしまわれますよ?」
「い、いきなりなによ! ……べつにいいのよ。きっとだけど、瑠衣は私の考える好きとは違うだろうし」
と言いつつも、瑠璃もしっかり私の背後に歩み寄ってきた。
「大人気ですね」
「……ゆった。女の子にはモテるんだなー」
いやいや裕希姉。男からも告白されたこと何回かあるし、ナンパだってされている。どっちかというと男のほうが近寄ってくるよ、この見た目だと。
「わたしのハーレムの一員だよ!」
瑠奈……嘘をつくんじゃない。嘘を。
「ところで気になってるんだけどさー。この集まりってなんの集まりわけ? 瑠奈っちやゆきちゃんは、愛のある我が家っていう犯罪組織のメンバーだってわかってるけどさ、ほかのひとは?」裕希姉はみんなを見渡す。「年齢層バラバラだし、瑠璃ちゃんや瑠衣ちゃんは学校のクラスメートだってわかるけど、他は? 予想はつくけどさ」
「瑠璃と瑠衣以外は全員、愛のある我が家の一員だよ……」
「うわー、やっぱりかー。みんな綺麗な顔してえげつないことしてるんだね?」
えげつないとは失礼なーー間違いじゃないけど。
「勘違いされないでほしいのですが、我々は暴力団とは違って、行っている商いはすべて対等なものですよ」
「そーなの? てか、誰が組長とかってあるの?」
「組長といえるかはわかりませんが、私がリーダーを務めさせていただいております」
「へー。そーなんだ?」
裕希姉はそこまで興味がないのか、それ以上は追及しなかった。
「話は戻りますが、豊かな生活が創設されたら、仕事内容を今とは少し異なることをしてもらいます」
「せっかく話題が変わったのに……なにをやらされるの?」
沙鳥は少しだけ考える素振りを見せ口を開く。
「今までどおり氷の密売は継続していただくとして、厄介者の警察が手を焼いている犯罪者の討伐を担当してもらいます」
「まてまて待って! それってゆきや澄の仕事じゃないの!?」
最悪、命に関わる重大な仕事じゃないか!
「澄さんでは役不足なーー澄さんでは楽に対処できてしまうようなレベルの相手、それも近場にいる犯罪者を担当していただきます。澄さんもお忙しいんですよ。なにせ全国津々浦々の凶悪犯罪者ばかりが相手ですからね。ゆきさんは水商売のケツモチですし」
「だからって……」
不安過ぎる。
第一、柊まで巻き込むなんて、なんだかダメな気がするんだけど。
ん?
なにやら頬が冷たい。
空を見上げたら、ふわふわと粉雪が少しだけ降ってきた。
「ちなみに、豊かな生活の人事は豊花さんに完全に一任します。給料などは私が手配しますが、誰を雇うかは豊花さんが決めてくださいね? 売人役として二人、犯罪者討伐役として三人、豊花さん含めて計五人は集めてほしいところですね」
「そんなに集まるわけないじゃないか!」
そもそも友達が少ない身の上、誘える相手は柊くらいだろう。
空先輩は普通の暮らしに戻りたがっている身の上、不可能だし……。
ーー宮下は?
いやいやいや、いくら親友に近い仲間だからって、それはダメだろう!
いや、親友だからこそ犯罪行為に巻き込むわけにはいかない。
でも……まあ……犯罪者相手の討伐に関してなら、こっちが犯罪者になるわけじゃないし、ちょっとだけ誘ってみようかな?
いやいややっぱり危険だし、ダメだダメだ。
「ひとまず豊花さんは一番戦力になると思われますので、豊花さんはなるべくなら討伐班に属してくださいね。あと二名と、売人役二名です。まあ、最悪ひとりでも大丈夫でしょう」
なら、討伐役は私と柊が担当するとしたら、売人役は誰だろう。
なおさら宮下にお願いなんてできるわけがない。
瑠璃はぜったい無理だろうし、瑠衣にそんな犯罪なんてさせられるわけがない。
スマホの連絡先を見ながら思慮する。
「売人役として、蒼井 碧さんを指名してはいかがでしょう?」
「は?」瑠奈が沙鳥を睨み付ける。「これから断薬させようとしている相手になにさせようとしてんだよ? ああ!?」
瑠奈の豹変した姿を初めて見たからか、裕希姉や瑠璃たちは少し驚いた表情を浮かべた。
だけど、瑠奈の言っていることのほうが正しい。
「それはあなたが勝手に考えていることでしょう? 碧さん自身は断薬するとは言っていない。なら、趣味である薬を仕事にしたほうが本人も喜ぶでしょうねぇ? ま、豊花さん。本人にどちらを求めるのか訊いてみてください。断薬か、売人になるか」
「そんなこと……」
とりあえず、売人の件についてはおいておくとして、討伐班だ。
残り一人……ふと、大空静夜の顔が頭に浮かんだ。
いやいや、静夜は殺し屋としての本職があるし、ツテもない。誘うだけ無駄だろう。
やはり宮下か……誘うだけ誘ってみよう。
危険な仕事だと念入りに伝えて、それでも本人がやる気なら手伝ってほしい。
と、そこまで考えたところで、瑠衣が話に割り込んできた。
「討伐? の仕事なら、私、やってみたい」
「ちょっと瑠衣!? あんたなに言ってるのよ!? 犯罪集団なんかに入れさせないわよ!?」
瑠衣の突飛な発言に対して、瑠璃が当然のように激昂する。
当たり前だ。どこの世界に妹が犯罪集団に入るのを認める姉がいるのだ。
……。
「ん? どしたの、ゆったー? 私の顔になにか付いてる?」
いや、いた。
しかし、それは事後報告だし、この姉だからだろう。
「豊かな生活の討伐班は犯罪には当たりませんよ? 瑠衣さん、あなたは強力な異能力者、豊花さんを手伝ってくれるのなら大いに助かります。おねがいできませんか?」
「うん、オッケー」
「ちょっと!?」
瑠璃と私を抜かして勝手に話が進んでしまった。
「瑠衣さんは強力な異能力を持っており、なおかつ一流の殺し屋であるアリスさんから直接指導を受けたことのあるほどの猛者です。即戦力になれるでしょう」
「ダメよ! 瑠衣、あなた異能力をこれ以上使ったらーー」
「姉さんの、言うこと、聞かなくちゃいけない、決まりはないよ? 私はもう決めたの。豊花、よろしく」
「あーもう!」
瑠璃は頭をかきむしり動揺を隠せない。
それはそうだろう。実の妹が命の危険に曝されるかもしれない仕事に就こうとしているのだ。
だけど……それをいうなら、瑠璃のやっている異能力者保護団体の仕事だって危険は付き物だ。瑠衣に文句を言う筋合いはないとも思えた。
「瑠衣が入ってくれれば心強いけど、最悪命に関わるよ? 本当にいいの?」
「うん、大丈夫。私、強いから。あれからも、鍛えてる」
瑠衣は嬉しそうに顔を喜色に染めた。
逆に瑠璃は納得しておらず、怒りで顔を彩っている。
「どうしてあんたらの仲間になんて……」
「瑠璃さん、たしかに豊かな生活は愛のある我が家の傘下ですが、厳密には違う組織。愛のある我が家に定期的に顔だしするのも愛のある我が家のメンバーである豊花さんのみです。豊花さんがリーダーの人助けの組織に入ると考えてくだされば結構ですよ」
「屁理屈以下の理論じゃない! 瑠衣、私は心配なのよ。異能力霊体侵食度のステージがこれ以上上がったらって考えると怖いのよ……」
ーー前々から言っているが、侵食度が最大になっても宿主の意識がなくなるわけではない。融解してどちらも存在するようになるだけだ。豊花もステージFだが意識がなくなっていないであろう?ーー
久しぶりにユタカの声が脳裏に響く。
たしかに、自分が変わったとは思えない。
「姉さん、大丈夫。豊花、これから、よろしく」
「う、うん」瑠璃は未だに納得していないけど。「よろしくね」
「これで豊かな生活の正式なメンバーがひとり決まりましたね。柊さんが入るとしたら、あとは二人必要です。なにかしらのツテを辿って集めてくださいね。それまでは三人でできる仕事をまわしますから」
「うん……わかったよ。いろいろと不安だけど」
だけど、覚醒剤の密売から自分だけは離れられそうだ。
しかも、今回の仕事内容は、薬物・売春・闇金といった犯罪側ーー悪側の仕事ではない。犯罪者の討伐、確保といった正義側ーー善側の任務だ。
これなら少しはモチベーションが上がるってものだ。
「売人役として、あくまで私見ですが、碧さんという方を推させていただきます。覚醒剤はやらせないにしても、睡眠薬程度ならつづけさせても問題ないと思われます。その睡眠薬代の為にも、売人をやらせてあげたらいかがでしょうか?」
「だから!」
「瑠奈さんは黙っていてください。豊花さん、後日碧さんに訊いてみてくださいね? 豊かな生活という組織で覚醒剤と睡眠薬の売人役をしないか……と」
「……一応訊いてみるけど」
瑠奈の荒れようを見ると、気が引けるなぁ……。
「それでは、これにて豊かな生活の誕生を宣言します。以降、豊花さんは愛のある我が家の一員でありながら、豊かな生活のリーダーとしての責任を果たしてくださいね」
「いろいろ心配なのは変わらないけど、わかったよ」
こうして、帰路の雑談から、急遽私がリーダーの新生組織ーー豊かな生活が誕生したのであった。
……このダサイ組織名だけはどうにかならなかったのだろうか?
今にも雪が降りそうな冷たい風が吹き、思わず身震いする。
皆もおなじなのか、皆一様に寒そうにしていた。
「豊花さんのチームができたら私たちの傘下に入ってもらいます」
お寺から出て自宅に向かう途中、沙鳥がさきほどの話のつづきをはじめた。
「だからその話まだ生きてたの!?」
「当然です」
ぞろぞろと皆で帰宅途中に沙鳥はそう言う。
「柊さんが入ってくだされば、柊さんは豊かな生活の一員になるわけです。が、愛のある我が家の一員は何人豊かな生活の人員が増えても豊花さんだけですよ?」
「ちょっと理解が追い付かない……てか、柊が入るとは決まってないじゃん」
「いいえ、あの方は入りますよーーふふ」
沙鳥は不敵な笑みを浮かべる。
心を読んだ結果、なにかを理解したのだろう。
そもそも豊かな生活て……愛のある我が家にしろネーミングセンスはどうにかならなかったのだろうか?
「豊花、また、なにかするの?」
瑠衣が沙鳥を押し退け右隣に割り込む。
なぜか鏡子が負けじと左隣に位置した。
自分で言うのもなんだけど、瑠衣には好かれているから近寄ってくるのは理解できる。まあ、ありすのほうが好きなんだろうけど。
それに対して鏡子はいったいなんなんだ。
こんなに人数がいるのだから、誰の近くにいても問題ないのに、なぜ私の隣に居たがるのか。
「女心がわからないひとですね……」沙鳥は呟くと瑠璃を見た。「瑠璃さんはよろしいのですか? 豊花さんがお二人に取られてしまわれますよ?」
「い、いきなりなによ! ……べつにいいのよ。きっとだけど、瑠衣は私の考える好きとは違うだろうし」
と言いつつも、瑠璃もしっかり私の背後に歩み寄ってきた。
「大人気ですね」
「……ゆった。女の子にはモテるんだなー」
いやいや裕希姉。男からも告白されたこと何回かあるし、ナンパだってされている。どっちかというと男のほうが近寄ってくるよ、この見た目だと。
「わたしのハーレムの一員だよ!」
瑠奈……嘘をつくんじゃない。嘘を。
「ところで気になってるんだけどさー。この集まりってなんの集まりわけ? 瑠奈っちやゆきちゃんは、愛のある我が家っていう犯罪組織のメンバーだってわかってるけどさ、ほかのひとは?」裕希姉はみんなを見渡す。「年齢層バラバラだし、瑠璃ちゃんや瑠衣ちゃんは学校のクラスメートだってわかるけど、他は? 予想はつくけどさ」
「瑠璃と瑠衣以外は全員、愛のある我が家の一員だよ……」
「うわー、やっぱりかー。みんな綺麗な顔してえげつないことしてるんだね?」
えげつないとは失礼なーー間違いじゃないけど。
「勘違いされないでほしいのですが、我々は暴力団とは違って、行っている商いはすべて対等なものですよ」
「そーなの? てか、誰が組長とかってあるの?」
「組長といえるかはわかりませんが、私がリーダーを務めさせていただいております」
「へー。そーなんだ?」
裕希姉はそこまで興味がないのか、それ以上は追及しなかった。
「話は戻りますが、豊かな生活が創設されたら、仕事内容を今とは少し異なることをしてもらいます」
「せっかく話題が変わったのに……なにをやらされるの?」
沙鳥は少しだけ考える素振りを見せ口を開く。
「今までどおり氷の密売は継続していただくとして、厄介者の警察が手を焼いている犯罪者の討伐を担当してもらいます」
「まてまて待って! それってゆきや澄の仕事じゃないの!?」
最悪、命に関わる重大な仕事じゃないか!
「澄さんでは役不足なーー澄さんでは楽に対処できてしまうようなレベルの相手、それも近場にいる犯罪者を担当していただきます。澄さんもお忙しいんですよ。なにせ全国津々浦々の凶悪犯罪者ばかりが相手ですからね。ゆきさんは水商売のケツモチですし」
「だからって……」
不安過ぎる。
第一、柊まで巻き込むなんて、なんだかダメな気がするんだけど。
ん?
なにやら頬が冷たい。
空を見上げたら、ふわふわと粉雪が少しだけ降ってきた。
「ちなみに、豊かな生活の人事は豊花さんに完全に一任します。給料などは私が手配しますが、誰を雇うかは豊花さんが決めてくださいね? 売人役として二人、犯罪者討伐役として三人、豊花さん含めて計五人は集めてほしいところですね」
「そんなに集まるわけないじゃないか!」
そもそも友達が少ない身の上、誘える相手は柊くらいだろう。
空先輩は普通の暮らしに戻りたがっている身の上、不可能だし……。
ーー宮下は?
いやいやいや、いくら親友に近い仲間だからって、それはダメだろう!
いや、親友だからこそ犯罪行為に巻き込むわけにはいかない。
でも……まあ……犯罪者相手の討伐に関してなら、こっちが犯罪者になるわけじゃないし、ちょっとだけ誘ってみようかな?
いやいややっぱり危険だし、ダメだダメだ。
「ひとまず豊花さんは一番戦力になると思われますので、豊花さんはなるべくなら討伐班に属してくださいね。あと二名と、売人役二名です。まあ、最悪ひとりでも大丈夫でしょう」
なら、討伐役は私と柊が担当するとしたら、売人役は誰だろう。
なおさら宮下にお願いなんてできるわけがない。
瑠璃はぜったい無理だろうし、瑠衣にそんな犯罪なんてさせられるわけがない。
スマホの連絡先を見ながら思慮する。
「売人役として、蒼井 碧さんを指名してはいかがでしょう?」
「は?」瑠奈が沙鳥を睨み付ける。「これから断薬させようとしている相手になにさせようとしてんだよ? ああ!?」
瑠奈の豹変した姿を初めて見たからか、裕希姉や瑠璃たちは少し驚いた表情を浮かべた。
だけど、瑠奈の言っていることのほうが正しい。
「それはあなたが勝手に考えていることでしょう? 碧さん自身は断薬するとは言っていない。なら、趣味である薬を仕事にしたほうが本人も喜ぶでしょうねぇ? ま、豊花さん。本人にどちらを求めるのか訊いてみてください。断薬か、売人になるか」
「そんなこと……」
とりあえず、売人の件についてはおいておくとして、討伐班だ。
残り一人……ふと、大空静夜の顔が頭に浮かんだ。
いやいや、静夜は殺し屋としての本職があるし、ツテもない。誘うだけ無駄だろう。
やはり宮下か……誘うだけ誘ってみよう。
危険な仕事だと念入りに伝えて、それでも本人がやる気なら手伝ってほしい。
と、そこまで考えたところで、瑠衣が話に割り込んできた。
「討伐? の仕事なら、私、やってみたい」
「ちょっと瑠衣!? あんたなに言ってるのよ!? 犯罪集団なんかに入れさせないわよ!?」
瑠衣の突飛な発言に対して、瑠璃が当然のように激昂する。
当たり前だ。どこの世界に妹が犯罪集団に入るのを認める姉がいるのだ。
……。
「ん? どしたの、ゆったー? 私の顔になにか付いてる?」
いや、いた。
しかし、それは事後報告だし、この姉だからだろう。
「豊かな生活の討伐班は犯罪には当たりませんよ? 瑠衣さん、あなたは強力な異能力者、豊花さんを手伝ってくれるのなら大いに助かります。おねがいできませんか?」
「うん、オッケー」
「ちょっと!?」
瑠璃と私を抜かして勝手に話が進んでしまった。
「瑠衣さんは強力な異能力を持っており、なおかつ一流の殺し屋であるアリスさんから直接指導を受けたことのあるほどの猛者です。即戦力になれるでしょう」
「ダメよ! 瑠衣、あなた異能力をこれ以上使ったらーー」
「姉さんの、言うこと、聞かなくちゃいけない、決まりはないよ? 私はもう決めたの。豊花、よろしく」
「あーもう!」
瑠璃は頭をかきむしり動揺を隠せない。
それはそうだろう。実の妹が命の危険に曝されるかもしれない仕事に就こうとしているのだ。
だけど……それをいうなら、瑠璃のやっている異能力者保護団体の仕事だって危険は付き物だ。瑠衣に文句を言う筋合いはないとも思えた。
「瑠衣が入ってくれれば心強いけど、最悪命に関わるよ? 本当にいいの?」
「うん、大丈夫。私、強いから。あれからも、鍛えてる」
瑠衣は嬉しそうに顔を喜色に染めた。
逆に瑠璃は納得しておらず、怒りで顔を彩っている。
「どうしてあんたらの仲間になんて……」
「瑠璃さん、たしかに豊かな生活は愛のある我が家の傘下ですが、厳密には違う組織。愛のある我が家に定期的に顔だしするのも愛のある我が家のメンバーである豊花さんのみです。豊花さんがリーダーの人助けの組織に入ると考えてくだされば結構ですよ」
「屁理屈以下の理論じゃない! 瑠衣、私は心配なのよ。異能力霊体侵食度のステージがこれ以上上がったらって考えると怖いのよ……」
ーー前々から言っているが、侵食度が最大になっても宿主の意識がなくなるわけではない。融解してどちらも存在するようになるだけだ。豊花もステージFだが意識がなくなっていないであろう?ーー
久しぶりにユタカの声が脳裏に響く。
たしかに、自分が変わったとは思えない。
「姉さん、大丈夫。豊花、これから、よろしく」
「う、うん」瑠璃は未だに納得していないけど。「よろしくね」
「これで豊かな生活の正式なメンバーがひとり決まりましたね。柊さんが入るとしたら、あとは二人必要です。なにかしらのツテを辿って集めてくださいね。それまでは三人でできる仕事をまわしますから」
「うん……わかったよ。いろいろと不安だけど」
だけど、覚醒剤の密売から自分だけは離れられそうだ。
しかも、今回の仕事内容は、薬物・売春・闇金といった犯罪側ーー悪側の仕事ではない。犯罪者の討伐、確保といった正義側ーー善側の任務だ。
これなら少しはモチベーションが上がるってものだ。
「売人役として、あくまで私見ですが、碧さんという方を推させていただきます。覚醒剤はやらせないにしても、睡眠薬程度ならつづけさせても問題ないと思われます。その睡眠薬代の為にも、売人をやらせてあげたらいかがでしょうか?」
「だから!」
「瑠奈さんは黙っていてください。豊花さん、後日碧さんに訊いてみてくださいね? 豊かな生活という組織で覚醒剤と睡眠薬の売人役をしないか……と」
「……一応訊いてみるけど」
瑠奈の荒れようを見ると、気が引けるなぁ……。
「それでは、これにて豊かな生活の誕生を宣言します。以降、豊花さんは愛のある我が家の一員でありながら、豊かな生活のリーダーとしての責任を果たしてくださいね」
「いろいろ心配なのは変わらないけど、わかったよ」
こうして、帰路の雑談から、急遽私がリーダーの新生組織ーー豊かな生活が誕生したのであった。
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