前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

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第六章/平凡な非日常

Episode163╱魔薬③

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(235.)
 その後、柊と別れを告げて自宅に帰り早速沙鳥に連絡した。

『わかりました。ですが、豊花さんの異能力を使えば相手の居場所を探り出せるのでは?』
「え?」私の異能力……ああ、そうか。「そっちでも一応探しておいてよ」

 碧の自宅を直観で探し当てたように、オリヴィンやラスティンの居場所も見つけ出せるかもしれない。

『あ、お待ちください。最新の情報です』沙鳥は一息開け、再び会話をつづけた。『残り一名、香織さんのちからによって名前が判明していなかった人物の名前が判明しました。名前はマイケル。異能力者です』
「マイケルね……へ?」

 異能力者!?
 拳銃だけでも厄介なのに異能力者なの!?

『異能力は物質干渉で物体を崩す細長い閃光(レーザー)を放つといったものです。拳銃には負けますが、放たれる速度は早く肉眼では捉えられないでしょう』
「……物体を崩す閃光」

 直観で避けるといった方法以外では対処できないかもしれない。
 これは柊や瑠衣を連れていくのは危険だ。
 だが、自分ひとりの力で対抗できるとも限らない。

『どうします? 今回はやめておきますか? 貴女方の成長に繋がると思うのですが……』
「ーーいいよ、やるよ」

 いつまでも一人前にならないままでは、これからさきの仕事に支障が出てしまう。
 柊や瑠衣に災難が襲い掛かる可能性もあるが、ここが踏ん張りどころともいえる。
 今からじゃ遅いだろうから、明日の放課後までに沙鳥が居場所を見つけられなかった場合、部活を休んで上野まで行ってみよう。

『では、頑張ってください。あなた方の働きに期待していますよ。くれぐれもどじ踏んで亡くなられたりしないよう細心の注意を払ってください』
「うん、じゃあなにかわかったらまた連絡して」

 通話を切り、念のため柊と瑠衣に明日の予定について説明することにした。







(236.)
 翌日、普段どおりに授業を受け、放課後、柊と瑠衣と三人で上野に向かうことにした。
 校門から三人で出て、上野に向かう電車に乗った。

「相手は拳銃を持っているだけじゃない。異能力者ーー物質を崩す閃光を放つ能力持ちがいるから気をつけてね」

 一応、昨日説明したのと同じ内容の説明をした。
 郷田のときとは異なり、今回はがむしゃらにナイフを当てに行ったら命の無駄遣いになりかねない。注意はしておけばしておくほど無駄ではないだろう。
 柊は緊張しているのか、「わかっているわよ……」としか喋らず、からだを弱く震えさせている。
 瑠衣は特に緊張した態度を取っておらず、いつもどおりの表情を変えない。
 もう少し作戦を考えたほうがいいのかもしれないが、策と言ってもあまり良い案が浮かばなかった。

「とりあえず、私が真っ先に向かうから二人は背後から着いてきて」
「ん。豊花のあとに、つづく」
「……わ、わかったわ」

 瑠衣は肝が座っているなぁ……。
 対照的に柊はガチガチに緊張してしまっている。
 本当に柊を連れていって大丈夫なのだろうか?

「死んだほうが負け。これを徹底してほしい。どんなに卑怯な手をつかっても勝つことだけを考えて。前回とは違う。相手を殺したほうが勝ちだから」

 それだけ再三警告すると、あとは無言で上野に向かった。
 私自身も緊張しているようだ。いつもより口数が少なくなってしまっている。


 上野駅から降りたあと、スマホに連絡が来ていないか確かめたが、居場所が見つからないのか沙鳥からの連絡はない。

「ーー直観」

 口を開きそう唱えると、私はいく宛もなく歩を進め始めた。
 二人もそのあとにつづいて歩く。
 ホームから出たあと、繁華街へと入っていく。
 途中で行き場を失い、再び「直観」と口にする。
 そうしていくと、とある廃墟ビルの前にたどり着いた。
 郷田のときもそうだけど、どうしてこういうやつらは廃墟ビルや廃墟ボーリング場など、廃墟となった場所を根城にするのだろうか。

「……行くよ」

 二人が無言で頷くのを確認したら、静かに廃墟ビルの内部に入った。
 二階へ上がる。やがて窓枠がなくなった一室から会話が聴こえてきた。
 おそらく、件の三人組だろう。
 床には無造作に伸びた配線が幾つかあり、その一室へとつづいている。

「ン?」黒人ーー多分オリヴィンという奴がこちらに視線を向けた。「ダレダ!?」
「おい、どうしたオリヴィン?」

 足音を可能な限り消したというのに気づかれてしまった。
 こうなったら先手必勝だ。
 私は瑠衣と柊を見やると頷き、一気に行くぞと合図した。
 すぐに部屋の外の影から飛び出し、三人組に駆け寄る。

「マイケル! ラスティン! コイツラハテキダ! キャクジャナイ!」

 オリヴィンはすぐに拳銃を取り出しこちらに向けた。
 遅れてラスティンとマイケルも一瞬で戦闘態勢に入ると、ラスティンは厳ついナイフを構え、マイケルは手のひらを伸ばし五指をこちらに向けてきた。

「直観! 感覚! 思考!」

 早口で唱える。
 直後、肩ら辺に銃弾が飛来してくるのを察知、肩を曲げてそれを避けた。
 すぐさまマイケルが指先から紅く細長い閃光を放つ。
 ギリギリ躱し、一気にオリヴィンの元に近寄った。
 ナイフを振るうが素早い動作で避けられた。

「うっ!?」

 背後から柊の鈍い悲鳴が聴こえてきた。
 チラッと背後に目線をやると、先ほどの避けた閃光が背後にいた柊の胸元に命中していた。

「柊!」

 柊はだらしなくうつぶせに倒れると、そのまま動作をやめてしまった。

「オリヴィン! おまえはそこのガキを始末しろ! 俺とラスティンは後ろにいるガキを処分する!」

 ラスティンは私を無視して瑠衣の方へと駆け出した。
 まずい!
 柊が戦闘不能になった今、三対二でこちらが不利だ。
 急いでオリヴィンをナイフで切りつけようとするが、郷田よりも軽やかな動作をしており、ギリギリナイフが当たらない!
 しかもオリヴィンは拳銃持ち、武器同士をぶつける場面に持っていけない!

 マイケルは私が眼中になく、瑠衣の方へとレーザーを放つ。
 瑠衣は避けようとしたが、間に合わず肩にぶつかり、血飛沫を散らばし配線が伸びる床に跪(ひざまず)く。
 まずいまずいまずい!
 最適解はどれだ!?

「直観!」

 ーー直観が告げている。
 私はオリヴィンをどうにかすればいいだけだということを。
 ならば背後は気にしない。目の前の敵だけを倒せばいい!
 前方に歩を進めながらナイフの突きを穿つ。
 オリヴィンがそれを避けると、私はオリヴィンの背後までからだを出すと、ナイフを逆手持ちに変えるや否や切り裂く動作をしながら身体を捻り反転する。

「ーーぅぅ……! ぁぁぁ!」

 オリヴィンの背後に広がる光景を確認しながらオリヴィンへとナイフを振るう。
 瑠衣が雄叫びを上げたと思ったら、なにを考えたのか、跪いたまま床に無造作に伸びる配線を一本掴み、立ち上がりながら持ち上げたーー。

「あ? ーーこぽっ!」

 瑠衣が握った配線はマイケルの足元までちょうど繋がっていた。
 一瞬、なにが起こったのかわからなかったーー。
 瑠衣が振り回した配線がマイケルにぶつかる。すると、まるでそこが鋭利な刃物であるかのように、マイケルの身体が綺麗にスライスした。
 血を吐き、真っ二つになったマイケルは地面に崩れ落ちた。

「マイケル!? ファック!」
 
 ラスティンが瑠衣の近場まで駆け寄ると、ナイフを振り上げた。

「瑠衣!」

 オリヴィンが放つ弾丸をギリギリ躱す。

「くっ!」

 直後、床に倒れていた柊がラスティンの足にナイフを振るった。

「なっ!?」

 ラスティンはバランスを崩し動作が遅れる。
 そこに再びナイフで切りつけ、苦しそうに立ち上がると柊はラスティンに体当たりした。
 片足を失い不安定な体勢だったラスティンは、そのまま勢いよく仰向けに倒れた。

「ラスティン! マイケル! チマチマヨケヤガッテ! サノバビッチ!」

 オリヴィンに焦りが見えた。
 超近距離がゆえに、拳銃ではナイフの速度に追い付かない。
 拳銃の場合、構えて狙いを付ける動作が挟まる。ナイフにはそれが要らない。
 ただただ振るうだけでいい!
 ナイフを順手持ちに変え、速度重視の斬撃を無数に放つ。

 一、二、三ーー四回目でようやく拳銃を握る右手首にナイフが命中。
 オリヴィンは痛みからか拳銃を手から離す。
 条件反射のように慌てて地面に手を伸ばす。
 その隙にオリヴィンの首をナイフで切り裂いた。

「ごペ?!」

 オリヴィンは多量に出血しながら地面に崩れ落ちる。
 まだだ、念のために心臓へ突きを放つ。
 心臓ど真ん中にナイフが骨をもすり抜け食い込む。
 引き抜くと赤赤とした血が辺りに散らばる。

「瑠衣! 柊! 大丈夫!?」

 私はオリヴィンから離れ、柊と瑠衣の元に駆け寄る。

「痛い……」
「大丈夫……とは言えないわね……」

 瑠衣と柊は戦いが終わったのを察し、苦しそうに地面に腰を降ろす。
 瑠衣は出血の割には大丈夫そうだが、柊の傷は胸元ーー心臓に当たっていてもおかしくない位置から出血してしまっている。

「早く病院に行こう! ここはあとで沙鳥に連絡しとくから」
「ええ……」

 柊に肩を貸し、なんとか立たせる。
 たしか近場に整形外科があったはず……!

「それにしても、瑠衣。あんな異能力の使い方があったの?」

 今までは刃物限定だったはず。だが、今回は単なる配線だ。武器になる要素が微塵もない。

「多分、ステージが、進行した。私が握っている間は、何でも、白刃に変えられるみたい」

 さらに異能力が進化したのか……。
 チラリと真っ二つになったマイケルに目をやる。
 股間から頭まで綺麗にスライスされていた。
 綺麗に切り裂いており、惨状に見合わずそこまで血が飛び散っていない。

「これは……私たちの勝ちでいいのよね? 死んだほうが負け、殺したほうが勝ち、なんでしょ?」

 柊が弱々しく問いかけてくる。

「うん。どんな手を使おうと、たとえ倒れたまま隙を窺い相手が接近したときに不意討ちをしようと、殺せば勝ちだよ」
「あんたの言っていた意味が……ようやくわかった……」
「あまり喋らないで! すぐに病院まで行くから」

 私たちは死体となった三人を残し、廃ビルを後にした。
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