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第七章╱杉井豊花(急)
Episode187╱杉井豊花はこれが騒動の終演だと信じて
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(277.)
数日経過したが、二代目風月荘での暮らしには未だに慣れていない。
仕事も最近はこれと言ったこともなく、瑠衣や柊に収集をかけていない。
この狭苦しい一室でやることと言ったら、寝ることくらいしか娯楽がないのが地味にキツい。
定期的に覚醒剤の補充として、沙鳥から運搬されてきた覚醒剤や睡眠薬を碧や三島に手渡しているだけだ。
最近は討伐や暗殺の任務は沙鳥から連絡が来ていない。
要するに暇なのだ。
と、風月荘の玄関の扉が開いた音がした。
誰か来たのかと一瞬警戒したが、奥から聴こえてきた声で瑠璃が訪ねてきたことを把握した。
「瑠璃りんじゃん。何か用?」
と、たまたま廊下に繋がるキッチンに佇んでいた瑠奈が瑠璃を見るなり挨拶をした。
しかし、瑠璃は瑠奈の挨拶に生返事を返すだけで、『豊花はどこ?』と訊いていた。
いずれやってくると思っていたけど、こんなに早く居場所を突き止めるとは……我ながらびっくりだ。
瑠璃の声が室内まで響いてきたことで、自分の部屋を示すため花の間の扉を開けて共有廊下を覗く。
そこにいたのは、心配と不安が入り交じった表情を顔に浮かべている瑠璃が佇んでいた。
「豊花……誰にも言わないで退学して、危ないことに顔を突っ込んでなにをしているの? たしかに、両親を亡くして悲しいのは痛いほどわかる! でも、なにも新たな犯罪集団の揃った建物に引っ越す必要はあったの!?」
「……いろいろ理由があるんだよ」
瑠璃には私の考えなんて到底理解できないだろう。
でも、これは流れ上こうするしかなかったんだ……そこは理解してほしい。
「それでも……未だに私には腑に落ちないのよ。豊花含む瑠衣や……柊さん? まで巻き込んで、私としてはなにひとつ理解できないのよ」
「理解されないのは百も承知だよ。でも、やらなきゃいけないことが私にはあるんだ」
「……」
瑠璃は納得できないといった様子のまま、かといえ『危ないからやめて』としか言うことができないのだろう。押し黙ってしまった。
と、そのとき。沙鳥からスマホに着信が来た。
慌ててスマホを取り出し耳に当てる。
『豊花さん。まずいことになりました。本格的に神とやらが動き始めました』
「ええ!? つまり澄と戦えってこと!?」
いやいやいやいや!
今の実力じゃ、こちら側が一瞬でミンチになる未来しか見えない。
『焦らないでください。神は澄さんを切り札にしているのは間違いないですが、人類を滅ぼす人型兵器を複数の町にばら蒔き破壊活動にいそしむようです。この神とやらが製造した人型でありながらも人外の奴を一人残らず殲滅してください。それが今の討伐班に下す依頼です』
「人型人間?」
『人類を抹消するためだけに神とやらが短時間に創造した人型人外です』
「……」
ついに、神と人類の戦いがはじまるというわけか……。
『豊花さんを筆頭に、柊さん、瑠衣さん。必要なら瑠奈さんも加えて迅速に対象を処分してください』
それだけの情報では、どこに敵対者がいるかわからないじゃないか。
しかも、人型と云われているのであれば、見た目だけでは敵対者だと到底見抜けない。
ひとまず瑠衣と柊に連絡を入れる。
久しぶりの実践だ……相手がどのような力を使っているのかわからない以上、こちらは最大人数で挑む以外に、こちらには諸方を知らない。
連絡を入れ終え、新たなアジトの居場所を伝え、今から来ることをお願いした。
今は午後の五時。授業はとっくにおわっているはずだ。
「また危ないことする気?」
「否定はしないよ。でも、今回の内容は神からの挑戦状だ。受ける以外に未来はないんだよ」
やはり瑠璃は、いくら事情を説明しても納得していないといった表情だ。
そのとき、私の目の前に“私の姿を模した神”が姿を唐突に表した。
「おまえは!?」
「え、え? 豊花、誰と話しているのよ?」
「ごめん。瑠璃には見えていないんだと思う」
私は瑠璃を背後にまわし、神の目の前に立ち塞がった。
『はは、人類抹消の前哨戦さ。思うように澄のコントロールが難しくてね。だから新たにボクがつくった人外たちを使って、まずは日本から。各地域に神造人型人外兵器を短時間で複数つくったのさ。澄は第一号だとして、十号までしか実用に足りうる製造はできていないんだけどね』
「だからって……今からなにをするつもりなんだよ!?」
瑠璃には相手の声が聴こえていないのか、唐突に空に向かって喋りだした私を見て、『ちょっと……いったい誰と話しているのよ?』と不安そうな表情を顔に浮かべている。
いちいち神の台詞を伝えるのも億劫だ。今のところこのまま蚊帳の外でいてもらおう。というより、瑠璃を巻き込みたくない。
『さあ、人類の生き死に賭けた戦いが今からはじまるんだ。どちらが勝つのかな? あはは」神は無邪気な笑みを浮かべたあと、一息つき、言の葉をつづけた。『人類の底力を見せるときが来たんだ。澄ほど特別な存在じゃないけれども、一からボクがつくった十の人外や、これからまだまだつくる人型人外兵器たちーーどこまで抗うことができるかな? 人外を倒していき、最終的に澄に打ち勝つことができたら、ボクはこれ以上、この世界に干渉はしないよ』
とだけ言い残すと、神に触れようとするまえに神は姿を煙のように消して、目の前から霧のように姿を消した。
「くそ……澄への対抗策なんてなにひとつないのに」
ーー私があるではないーー「か」
珍しくユタカが姿を幽体から肉体に戻した。
ユタカが役に立つビジョンが見えないんだど……。
寸刻、ユタカは剣の形状に変態した。
不思議とその剣は自身の手にフィットした。まるで、最初から私の両手で握るのに特化した剣だ。
「神殺しの剣……もしかしたら、これなら神造人型人外兵器にも対抗できるかもしれない
「ちょっと……理解が追い付かないんだけど、豊花はどこを目指しているのよ?」
「この世界に現存する神殺しの剣だよ。いま何よりの課題は、私が剣を扱う技術がないこと。いくら体にフィットした剣といはいえ、剣術なんかは学んだことが一度もないんだよね」
これからは真剣に鍛えなければならないだろう。
「いまの段階では打開策はないに等しい……なにか策があればいいんだろうけど」
と、瑠奈が聞き耳を立てていたのか、扉を開けると瑠奈がそこには鎮座していた。
「しかし、いくら剣術を鍛えたって、メンタルを鍛えたって、相手は聞いたことすらない相手だから、弱点などもわかっていない! どうして私なんだよ……」
「これからしばらく、豊花には異能力と精霊操術の力を要所要所でつかって、神造人型人外兵器をひとりずつ殺るしかないんじゃない?」
瑠奈にそう云われているが、神が作り出した神造人型人外兵器という澄を作り出した神が新たに創造した化け物に尖兵が勝てるビジョンが全く浮かばない。
どういう姿をしていて、どのような能力を持ち得ているのか、澄と同格の強さを誇っていたらと考えると、残念ながら微塵も勝ち目はないことがわかってしまう。
「ちょっとちょっと! これ以上豊花に負担をかけるわけ!?」
「でも、そうでもしないとこちらはじり貧になるよ?」
瑠奈の言葉のほうが正しい。こちらから探さないでいると、向こうが大挙して押し寄せてくるようにしか考えられない。
相手のリーダーは神だろう。その神は澄以外には容赦はしないだろう。
「問題は神造人型人外兵器の強さとやっている悪事を知りたい」
「神造人型人外兵器は、なまえのとおり神の天啓を受けて町や人を無差別に攻撃してるんだよね……またまたテレビでは異能力者扱いされて、流れで異能力者自体が犯罪者なのだから私は異能力者とわかった場合は即処分したほうがいいと思いますね。あれですよ?」
と、そのときーー。
「お邪魔する、柊も、一緒」
「外に鍵すら掛けていないなんて本当に不用心な奴なんだから」
柊と瑠衣がボロい風月荘の内装を横目でチラチラみながら、私の花の間まで歩いてきた。
「来てくれてありがとう……でも正直な話。今回の戦いは勝てるかどうかわからないんだ」
「誰だか知らないけど、私の実力に敵う奴なんて地球上に1000人くらいしかいないわよ」
いや、絶対もっと上にいるだろーー。
走馬灯のように流れる過去の柊の失態、ミス、ポカの数々が脳裏に過る。
「相手はまた異能力者とか犯罪者なわけ?」
柊は退屈そうに胡座をかいた。
「異能力者でも犯罪者でもない。ーー神が人類を滅ぼそうとしてつくった人造人型兵器の集団だよ」
「な、なによそれ……あんた、神様に喧嘩でも売っちゃったの? それとも記憶が低迷していてまともな会話ができなくなった虚言癖なわけ?」
「相変わらず辛辣だな~……」
だが、言われなくてもわかっている。
実際に神とやらと交流したことのあるメンバーは、私、微風瑠奈、現世朱音くらいなものだと言っていた気がする。愛のある我が家の正規メンバーなら神を受け入れて打開策を考えているだろうけど、あくまで片足を裏社会に突っ込んでるから理解が追い付いているだけであり、柊や瑠衣に言っても『コイツはいったいなんの妄言を発しているんだ?』と一笑符にされてしまうだけだろう。そういう予想はできていた。
「これからの戦いは、今までの仕事よりも数段格上の敵対者と戦うことが予想できるんだよ。だから、各自にはきちんとトレーニングしておいてほしい」
「うわ……面倒くさい」
柊は話途中に幾度もあくびをしており、あまり興味がなさそうな態度をしている。
瑠衣は能天気な顔で、緊張感がまるでない。
このチームを纏めるのは些か以上に難しさを感じてしまう。
「なんだか専門的な話になってきているみたいだから、私にはよくわからないわよ」
「砂風、なに、言っているのか、全然わからないよ?」
「とにかく要約するなら、全国各地に人類を滅ぼそうとする敵対組織があるから、それを止めるのが私たちの仕事になる。やることはいつもと変わらないよ」
「それならいいけどさ……」
神の存在なんて信じる人間ーーそれでも目の前に実際に現れる神なんて、会ったことのないひとは理解に追い付けないだろう。
ふと地デジを見れるように改造したブラウン管のテレビを点けた。
タイミング的に異能力者問題を話題に議論している番組だった。
『たったいま速報が入りました。神奈川県の三浦市で建物の上から紅い閃光を無差別に地面に放っています! 辺りの建物は崩れ、現段階でわかっているのは死者が30人以上にも登っているところです!』
画面には一般人が隠れながら敵対者をビデオで撮影している映像がちょくちょく挟まっている。
『ああ、人間とはなんとも愚か者だ。これは処分していくしかないだろう』という独り言の音声まで流れている。
「酷い……早くなんとかしないと」
瑠璃は特殊警棒を鞄に突っ込み、風月荘を後にしようとする。
「待って! 相手は仮にも神が創造した危険人物なんだ。異能力者でもない!」
「でも、放っておくわけにはいかないじゃない!」
「だから、これらの専門家として、私が行くから安心して」
「私も着いていくわ」「私も、行く」
豊かな生活討伐班全員で取りかかれば、万が一にでも勝算はあるはず。
それに、今回の相手は単なる異能力者ではない。神が創造した強力な異能のちからを持つ者。だから瑠璃の出る幕はない。
「ここは私たちに任せてほしい」
ついに、神出鬼没な自称神との戦いが幕を開けるのだ。
沙鳥に連絡を入れて、香織や鏡子のちからを借りて、相手の現在地を教えてくれとお願いの連絡を入れた。
『現在地は三浦半島の三崎海岸で休んでいます。まずはこれは破壊して、次に来る人外に備えましょう。検討を祈っておりますよ』
それを言い残し、沙鳥は通話を切った。
こうして、神々のつくった尖兵たちとの争いがはじまるのであった。
これが、巻き込まれる騒動の最後だと信じて……。
数日経過したが、二代目風月荘での暮らしには未だに慣れていない。
仕事も最近はこれと言ったこともなく、瑠衣や柊に収集をかけていない。
この狭苦しい一室でやることと言ったら、寝ることくらいしか娯楽がないのが地味にキツい。
定期的に覚醒剤の補充として、沙鳥から運搬されてきた覚醒剤や睡眠薬を碧や三島に手渡しているだけだ。
最近は討伐や暗殺の任務は沙鳥から連絡が来ていない。
要するに暇なのだ。
と、風月荘の玄関の扉が開いた音がした。
誰か来たのかと一瞬警戒したが、奥から聴こえてきた声で瑠璃が訪ねてきたことを把握した。
「瑠璃りんじゃん。何か用?」
と、たまたま廊下に繋がるキッチンに佇んでいた瑠奈が瑠璃を見るなり挨拶をした。
しかし、瑠璃は瑠奈の挨拶に生返事を返すだけで、『豊花はどこ?』と訊いていた。
いずれやってくると思っていたけど、こんなに早く居場所を突き止めるとは……我ながらびっくりだ。
瑠璃の声が室内まで響いてきたことで、自分の部屋を示すため花の間の扉を開けて共有廊下を覗く。
そこにいたのは、心配と不安が入り交じった表情を顔に浮かべている瑠璃が佇んでいた。
「豊花……誰にも言わないで退学して、危ないことに顔を突っ込んでなにをしているの? たしかに、両親を亡くして悲しいのは痛いほどわかる! でも、なにも新たな犯罪集団の揃った建物に引っ越す必要はあったの!?」
「……いろいろ理由があるんだよ」
瑠璃には私の考えなんて到底理解できないだろう。
でも、これは流れ上こうするしかなかったんだ……そこは理解してほしい。
「それでも……未だに私には腑に落ちないのよ。豊花含む瑠衣や……柊さん? まで巻き込んで、私としてはなにひとつ理解できないのよ」
「理解されないのは百も承知だよ。でも、やらなきゃいけないことが私にはあるんだ」
「……」
瑠璃は納得できないといった様子のまま、かといえ『危ないからやめて』としか言うことができないのだろう。押し黙ってしまった。
と、そのとき。沙鳥からスマホに着信が来た。
慌ててスマホを取り出し耳に当てる。
『豊花さん。まずいことになりました。本格的に神とやらが動き始めました』
「ええ!? つまり澄と戦えってこと!?」
いやいやいやいや!
今の実力じゃ、こちら側が一瞬でミンチになる未来しか見えない。
『焦らないでください。神は澄さんを切り札にしているのは間違いないですが、人類を滅ぼす人型兵器を複数の町にばら蒔き破壊活動にいそしむようです。この神とやらが製造した人型でありながらも人外の奴を一人残らず殲滅してください。それが今の討伐班に下す依頼です』
「人型人間?」
『人類を抹消するためだけに神とやらが短時間に創造した人型人外です』
「……」
ついに、神と人類の戦いがはじまるというわけか……。
『豊花さんを筆頭に、柊さん、瑠衣さん。必要なら瑠奈さんも加えて迅速に対象を処分してください』
それだけの情報では、どこに敵対者がいるかわからないじゃないか。
しかも、人型と云われているのであれば、見た目だけでは敵対者だと到底見抜けない。
ひとまず瑠衣と柊に連絡を入れる。
久しぶりの実践だ……相手がどのような力を使っているのかわからない以上、こちらは最大人数で挑む以外に、こちらには諸方を知らない。
連絡を入れ終え、新たなアジトの居場所を伝え、今から来ることをお願いした。
今は午後の五時。授業はとっくにおわっているはずだ。
「また危ないことする気?」
「否定はしないよ。でも、今回の内容は神からの挑戦状だ。受ける以外に未来はないんだよ」
やはり瑠璃は、いくら事情を説明しても納得していないといった表情だ。
そのとき、私の目の前に“私の姿を模した神”が姿を唐突に表した。
「おまえは!?」
「え、え? 豊花、誰と話しているのよ?」
「ごめん。瑠璃には見えていないんだと思う」
私は瑠璃を背後にまわし、神の目の前に立ち塞がった。
『はは、人類抹消の前哨戦さ。思うように澄のコントロールが難しくてね。だから新たにボクがつくった人外たちを使って、まずは日本から。各地域に神造人型人外兵器を短時間で複数つくったのさ。澄は第一号だとして、十号までしか実用に足りうる製造はできていないんだけどね』
「だからって……今からなにをするつもりなんだよ!?」
瑠璃には相手の声が聴こえていないのか、唐突に空に向かって喋りだした私を見て、『ちょっと……いったい誰と話しているのよ?』と不安そうな表情を顔に浮かべている。
いちいち神の台詞を伝えるのも億劫だ。今のところこのまま蚊帳の外でいてもらおう。というより、瑠璃を巻き込みたくない。
『さあ、人類の生き死に賭けた戦いが今からはじまるんだ。どちらが勝つのかな? あはは」神は無邪気な笑みを浮かべたあと、一息つき、言の葉をつづけた。『人類の底力を見せるときが来たんだ。澄ほど特別な存在じゃないけれども、一からボクがつくった十の人外や、これからまだまだつくる人型人外兵器たちーーどこまで抗うことができるかな? 人外を倒していき、最終的に澄に打ち勝つことができたら、ボクはこれ以上、この世界に干渉はしないよ』
とだけ言い残すと、神に触れようとするまえに神は姿を煙のように消して、目の前から霧のように姿を消した。
「くそ……澄への対抗策なんてなにひとつないのに」
ーー私があるではないーー「か」
珍しくユタカが姿を幽体から肉体に戻した。
ユタカが役に立つビジョンが見えないんだど……。
寸刻、ユタカは剣の形状に変態した。
不思議とその剣は自身の手にフィットした。まるで、最初から私の両手で握るのに特化した剣だ。
「神殺しの剣……もしかしたら、これなら神造人型人外兵器にも対抗できるかもしれない
「ちょっと……理解が追い付かないんだけど、豊花はどこを目指しているのよ?」
「この世界に現存する神殺しの剣だよ。いま何よりの課題は、私が剣を扱う技術がないこと。いくら体にフィットした剣といはいえ、剣術なんかは学んだことが一度もないんだよね」
これからは真剣に鍛えなければならないだろう。
「いまの段階では打開策はないに等しい……なにか策があればいいんだろうけど」
と、瑠奈が聞き耳を立てていたのか、扉を開けると瑠奈がそこには鎮座していた。
「しかし、いくら剣術を鍛えたって、メンタルを鍛えたって、相手は聞いたことすらない相手だから、弱点などもわかっていない! どうして私なんだよ……」
「これからしばらく、豊花には異能力と精霊操術の力を要所要所でつかって、神造人型人外兵器をひとりずつ殺るしかないんじゃない?」
瑠奈にそう云われているが、神が作り出した神造人型人外兵器という澄を作り出した神が新たに創造した化け物に尖兵が勝てるビジョンが全く浮かばない。
どういう姿をしていて、どのような能力を持ち得ているのか、澄と同格の強さを誇っていたらと考えると、残念ながら微塵も勝ち目はないことがわかってしまう。
「ちょっとちょっと! これ以上豊花に負担をかけるわけ!?」
「でも、そうでもしないとこちらはじり貧になるよ?」
瑠奈の言葉のほうが正しい。こちらから探さないでいると、向こうが大挙して押し寄せてくるようにしか考えられない。
相手のリーダーは神だろう。その神は澄以外には容赦はしないだろう。
「問題は神造人型人外兵器の強さとやっている悪事を知りたい」
「神造人型人外兵器は、なまえのとおり神の天啓を受けて町や人を無差別に攻撃してるんだよね……またまたテレビでは異能力者扱いされて、流れで異能力者自体が犯罪者なのだから私は異能力者とわかった場合は即処分したほうがいいと思いますね。あれですよ?」
と、そのときーー。
「お邪魔する、柊も、一緒」
「外に鍵すら掛けていないなんて本当に不用心な奴なんだから」
柊と瑠衣がボロい風月荘の内装を横目でチラチラみながら、私の花の間まで歩いてきた。
「来てくれてありがとう……でも正直な話。今回の戦いは勝てるかどうかわからないんだ」
「誰だか知らないけど、私の実力に敵う奴なんて地球上に1000人くらいしかいないわよ」
いや、絶対もっと上にいるだろーー。
走馬灯のように流れる過去の柊の失態、ミス、ポカの数々が脳裏に過る。
「相手はまた異能力者とか犯罪者なわけ?」
柊は退屈そうに胡座をかいた。
「異能力者でも犯罪者でもない。ーー神が人類を滅ぼそうとしてつくった人造人型兵器の集団だよ」
「な、なによそれ……あんた、神様に喧嘩でも売っちゃったの? それとも記憶が低迷していてまともな会話ができなくなった虚言癖なわけ?」
「相変わらず辛辣だな~……」
だが、言われなくてもわかっている。
実際に神とやらと交流したことのあるメンバーは、私、微風瑠奈、現世朱音くらいなものだと言っていた気がする。愛のある我が家の正規メンバーなら神を受け入れて打開策を考えているだろうけど、あくまで片足を裏社会に突っ込んでるから理解が追い付いているだけであり、柊や瑠衣に言っても『コイツはいったいなんの妄言を発しているんだ?』と一笑符にされてしまうだけだろう。そういう予想はできていた。
「これからの戦いは、今までの仕事よりも数段格上の敵対者と戦うことが予想できるんだよ。だから、各自にはきちんとトレーニングしておいてほしい」
「うわ……面倒くさい」
柊は話途中に幾度もあくびをしており、あまり興味がなさそうな態度をしている。
瑠衣は能天気な顔で、緊張感がまるでない。
このチームを纏めるのは些か以上に難しさを感じてしまう。
「なんだか専門的な話になってきているみたいだから、私にはよくわからないわよ」
「砂風、なに、言っているのか、全然わからないよ?」
「とにかく要約するなら、全国各地に人類を滅ぼそうとする敵対組織があるから、それを止めるのが私たちの仕事になる。やることはいつもと変わらないよ」
「それならいいけどさ……」
神の存在なんて信じる人間ーーそれでも目の前に実際に現れる神なんて、会ったことのないひとは理解に追い付けないだろう。
ふと地デジを見れるように改造したブラウン管のテレビを点けた。
タイミング的に異能力者問題を話題に議論している番組だった。
『たったいま速報が入りました。神奈川県の三浦市で建物の上から紅い閃光を無差別に地面に放っています! 辺りの建物は崩れ、現段階でわかっているのは死者が30人以上にも登っているところです!』
画面には一般人が隠れながら敵対者をビデオで撮影している映像がちょくちょく挟まっている。
『ああ、人間とはなんとも愚か者だ。これは処分していくしかないだろう』という独り言の音声まで流れている。
「酷い……早くなんとかしないと」
瑠璃は特殊警棒を鞄に突っ込み、風月荘を後にしようとする。
「待って! 相手は仮にも神が創造した危険人物なんだ。異能力者でもない!」
「でも、放っておくわけにはいかないじゃない!」
「だから、これらの専門家として、私が行くから安心して」
「私も着いていくわ」「私も、行く」
豊かな生活討伐班全員で取りかかれば、万が一にでも勝算はあるはず。
それに、今回の相手は単なる異能力者ではない。神が創造した強力な異能のちからを持つ者。だから瑠璃の出る幕はない。
「ここは私たちに任せてほしい」
ついに、神出鬼没な自称神との戦いが幕を開けるのだ。
沙鳥に連絡を入れて、香織や鏡子のちからを借りて、相手の現在地を教えてくれとお願いの連絡を入れた。
『現在地は三浦半島の三崎海岸で休んでいます。まずはこれは破壊して、次に来る人外に備えましょう。検討を祈っておりますよ』
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