前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

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最終章

Episode188╱神造人型人外兵器No.2の無差別攻撃

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(278.)
 翌日の早朝。学校がある瑠衣や柊にも、きょうは人類滅亡を防ぐための重要な戦いだと知らせたことにより、二人は学校を休んで三浦半島の三崎町まで電車とバスを駆使してたどり着いた。
 日に日に寒さが増しており、海岸付近だから冷たい潮風も吹いている。
 いくら服がないからといって、暖かい洋服がないわけではなく、それもきちんと羽織っている。雪は降っていないが寒さは健在だ。川崎よりは風が暖かいが、それでもついつい寒気で体が震えてしまう。
 真冬特有の寒気をからだで浴びて、どこか神秘さを覚える香りが鼻腔を擽る。

「もしも敵対者とかち合ったとしても、みんな無謀に相手に近寄らないようしてね。異能力者ではなく、相手は神の生み出した兵士だから、いったいどのような技を放ってくるか全く不明瞭だし」
「わかってるわよ!」
「うん、わかった。了解」

 街中を共に散策している途中、明らかに常識では乗ることすらできない建物の真上に、こちらを見下すような瞳を向けている、一般的にいえばイケメンに分類されるような人間が仁王立ちしているのを見つけた。

 本来なら瑠奈を連れていきたかったのだが、珍しく病気でダウンしているため、結果として初期の豊かな生活のメンバー三名で討伐任務を請け負うことになってしまったのだ。

「まったく……人類という名の地球の害は、なぜに毎年のように増加しているのだろう。嘆かわしい。せめてもの慈悲として」男性は片手を空を掴むように手を真っ直ぐ伸ばす。「楽に逝かせてあげるとしよう」

 直後、挙げた手のひらに真紅の閃光が辺りから渦を巻くように手元に集め始めた。
 その寸刻、私の脳裏から危険信号が発された。

「みんな辺りにバラバラに散って避けるんだ!」
「へ?」「ん?」

 二人はいまいち理解が追い付かず、疑問の表情をしながら左右上下に移動し始めた。
 次の瞬間、集まった紅色の閃光が四方八方へと無差別に放たれた。
 建物の屋上から無差別に放ったそれは、辺りに現存する古い民家や、通行人複数名が閃光で貫かれ、幾人の人間の手足や頭、心臓など、ありとあらゆる場所に切断の能力が付与されている紅色の閃光が直撃してしまう。
 閃光が当たり通り抜けていったからだは、予想通りに、当たった位置が、まるでスライスされるかのように切断され多量の出血が地面に広まる。
 四肢の一部が欠損したり、まだ小学校低学年と思わしき幼い少年の胸に直撃したりして、阿鼻叫喚の地獄へと化していた。

 幸い、私の仲間たちは私の指示に寄り皆軽傷で済んでいた。
 私は直観をフルに使い、背後に下がったり、首を傾げたり、前に一歩踏み出したり、体を捻ったりして、なんとか全発避けることがギリギリできた。

「この場所じゃこちらからの攻撃が届かない! なんとか階段を登ろ……う?」

 相手は地の利を捨てるかのように、高い建物の上階から地面に降り立った。
 いきなり目前にターゲットが現れたのだ。

「あんたはいったい何がしたいのよ? 無実のひとを大量に殺めておいて、よくもそんなへらへらしていられるわね!」

 柊も無差別に不良をぼこぼこにしていた過去があるから、おまえが言うのか? といった疑問も湧いてくるが、たしかに昔の柊は相手を殺めることばかりはしていないと話していたこともあった。

「愚かで儚い人類を殲滅させるため、神様によってつくられた人型人外兵器製造ナンバー2だ。製造ナンバー1こと神(無)の子は現在、神様によって永久の時間をかけて洗の……う……いや、教育を受けているところさ。だから直々に神が新たに創造した9人の内、私が前哨戦を承ったまでだ」

 こんな奴が澄を合わせて10人もいるだって!?
 あまりにも早い兵器の製造。これこそまさに神にしかできない才能だ。

「どっちにしろいい! あんたを殺してからあとのことは考えればいいんでしょ!?」

 柊はナイフを素早く取り出し、製造ナンバー2に駆けていく。
 しかしナンバー2は守りの体勢すら取らない。
 チャンスだと考えたのだろう。
 実際、ナイフはナンバー2の懐に突き立てた。
 突き立てたとしか思えなかった。
 しかし、しかし……。

「ナイフが切っ先で止まった!?」
「残念。我々人外にそのような柔な物理攻撃はまったくの無意味だ」

 物理攻撃が通用しない!?
 震えた手に握るナイフが、途端に弱々しく思えてしまう。
 柊のナイフをつかっている筈なのに、傷ひとつ負わないとは想定外だ。
 柊はナンバー2に首を握り締められ、そのまま持ち上げて地に足が着かなくなってしまう。

「本当に儚い存在だ。この手のちからをもっと込めるだけで、呆気なく絶命してしまうだろう。やはり、人間は脆い」

 ナンバー2が柊の首を絞める力が見ているだけで徐々に強くなっていくことが察せられた。
 助けに行かなくちゃ!
 でも、問題は私の手持ちの獲物はナイフしかない。助けに行こうとして返り討ちにされることは想像に容易い。

「柊!」

 瑠衣はポケットから取り出した切断属性の付与された鞭を華麗に振り回し、ナンバー2にのみ当たるように振るう。
 だが……だがしかし、だ。
 ナンバー2はバラバラになるどころか、鞭が当たったことすら些事なことだと言わんばかりに、体勢を変えず柊を絞め殺そうとする。

 ーー思考。

 たしか、相手は『自分には物理攻撃は通用しない』と言っていた。
 通常攻撃“は”通用しない?
 なら、通用するかは不確定だが、試してみる方法はある。

 魔力補填の方法は現世にはないからあまり乱用はしたくなかったけど、これ以外に打開策はない!

「フレア、頼む。ちからを貸してくれ」と見えない精霊に対して声をかけた。「我と契りを結びし火の精霊よ 私にとっての光となる炎よ 我にちからを貸してくれ フレア!」

 瞬間、フレアは私の真横に現れた。

「フレア、おねがい! ーー同一化!」
『はい!』

 瞬時に私はフレアと重なった姿に変態した。
 こちらの世界ではいざというとき以外は私の魔力量的にも控えたほうがいいのは百も承知。今がまさに『いざというとき』に当てはまるだろう。

 私がフレアと同一化したからか、ナンバー2は意外にも一瞬、ほんの少し、須臾
の間ほどの時間だけ、焦りを表情に浮かべた。

「物理攻撃が通用しないんだったら、私は他の手段に頼るまでだ!」

 私は並みの精霊操術しか未だに使えない。
 だが、これならば当たるはず!
 ナンバー2は柊を片手で持ち上げている状態で硬直を維持している!
 私はナンバー2目掛けてがむしゃらに突進する。

 ナンバー2はその場から動作せず、空いた片手に紅の閃光を周囲に集め、無造作に狙いを定めず、こちらに向かって乱発してきた。
 それを直観と唱え、感覚とあわせてギリギリのラインを避けつつ進む。

 ついにナンバー2に触れた。
 そのまま火の玉を直接腹部で爆発させた。

「ぐぅ!?」

 爆発と熱さの衝撃で、ナンバー2の手元が揺らぎ柊から手を離した。
 その隙を見逃さず、見よう見真似で焔を纏わせた拳を数発、ナンバー2の腹部や顔面を殴り続けた。

「きっ、貴様っ!」

 相手は激昂し、両手を上空へと翳す。
 それにより、先程よりも数倍範囲のある紅色の閃光が渦を巻き集まってきた。

「させるか!」

 マナを心臓から体表へ移し、相手の足元にマナを飛ばす。
 そのマナに魔力を注ぎ、フレアのちからで足元に燃え盛る炎を集めた。
 刹那ーーナンバー2の足元から火柱が立ち上る。

「ぐぅわぁあああ!?」

 ナンバー2の全身を灼熱の炎が纏いつき、火がナンバー2を包み込む。
 じわじわよりも勢いよく燃え上がる炎は、少しずつ鎮火していった。
 残ったのは、黒焦げのナンバー2だったものが倒れているだけだった。

「……同体化、解除」

 そう唱えるとフレアは隣に姿を発現させた。

「ありがとう。助かった。あとは静かにしてていいよ」
『はい! またなにかあれば呼んでくださいね!』

 フレアはそう言い残し、姿を消した。

 ーーかと思いきや。
 肌がベリベリと剥がれ落ち、元の肌質を取り戻しながら、イケメンであるナンバー2は立ち上がった。

「おまえは許さない。今すぐ原子に変えてやる!」

 再びナンバー2は手を空に翳すや否や、紅色の閃光を辺りから再終結させはじめた。
 この隙を突き一発で打倒するしかない!
 ナイフでは歯が立たない。切れ跡すら残らない。
 私の精霊操術では、火力が不足していて致命傷を与えられない!
 どうすればいい?
 どうすればいい!?

ーー豊花。私を使えばいい。この隙に私を手に持ち切り刻め!ーー

 ーーそうか。

「ユタカ、頼む!」

 言うより早く、ユタカは幽体になり肉体を経由して剣となった。
 剣はまるで私の腕に握ってくれと言うように、私の目前に現れた。
 私はそれを両手で強く握りしめた。

「物理攻撃は効かないと何度言えばわかるんだ!? ああ!? そんなちゃちな剣(けん)で、俺に通用すると思っているのか? 嗤わせてくれる」

 余裕綽々で閃光をどんどん巨大にしながら周囲を巻き込み閃光がいまにも放たれそうになる。

「悪いけどーーこれは単なる剣(けん)じゃない!」私は今までの足の速さを火事場の馬鹿力で凌駕し、素早く相手の肉体に剣を薙いだ。「これはーー神殺しの剣かみごろしのつるぎだ!」
「な! ーーがほっ!?」

 相手の余裕で満たされていた表情から笑みが失せ、恐怖と畏怖の瞳に変貌する。
 神殺しの剣が神の子にすら通用するのであれば、神様が創造した存在にも通用するかもしれない。
 と、一か八かの賭けで臨んだがーー大正解だったらしい。

 ナンバー2は地面に倒れ伏せ、もがき苦しそうに唸った後、肉体がキラキラした粒子に化けて、最後、風に吹かれて粒子はバラバラに散り消えていったのだった。

「けほっ、けほっけほっ!」

 柊は苦しそうに踞りながら、苦しそうな咳を放っていた。顔面は蒼白。やはり苦しかったのだろう。
 
「ちょっと、柊? 大丈夫?」
「だ、大丈夫げほっ! なわけないでしょ!? はぁはぁ……なんなのよ、あの怪物みたいな奴! ナイフがまったく効かなかったんだけど!? そもそも、あんたが今さっき使った魔法みたいなのはいったいなに!? どうして唐突に剣を取り出したの!? なんでナイフでは衣服しか貫けなかったのに、その剣では袈裟斬りできたのよ! もう、わけわかんないことばかりで混乱する!」

 柊は一瞬で敗北し、下手したら命まで奪われそうになっていただろうに、見た光景を畳み掛けてきた。

「私の、異能力も、通用しなかった」

 瑠衣はガッカリしたように肩を落とす。

「今回は特別な相手だから仕方ないよ、二人とも。仕事は終わらせたし帰るよ」


 こうして、私達は現場を後にすることにした。

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