199 / 233
最終章
Episode190╱神造人型人外兵器No.3-5-9の殲滅作戦(前)
しおりを挟む
(291.)
やっと帰宅して落ち着いた状態で、自室に帰り、ようやく私は安眠できた。
夢の内容が悪夢だったため、安眠とは呼べないかも知れないが……熟睡とまではいかなくても睡眠を摂取できたのは間違いない。
ちょうど起床したタイミングで、スマホの着信音が流れた。
いやな予感しかしないが、出る以外に方法はないだろう。
これでも愛のある我が家の正規メンバーであり、なおかつ豊かな生活のリーダーを任命されているのだから……。
スマホの通話ボタンを上にスライドして耳に当てた。
「沙鳥、おはよーー」
『緊急事態です。これからの目標を端的に説明するために深夜の連絡申し訳ありません。が、こればかりは伝えておきます』
沙鳥おはよう、の、『う』の分に言葉を重ねるほど、慌ただしく挨拶を言わせてもらえないほど、電話口からでも沙鳥の焦りがこちらに伝わってくる。
「緊急事態って……このあいだナンバー4を倒したばかりだよ?」
『それに関してはご苦労様です。しかし、新たな問題が発生しました』
まさか、まさかまさかまさか。また神造人型人外兵器が出現したとでも言いたいのか。
毎回の如く、命からがらでなんとか勝利を掴めただけだぞ。運が味方をしなければこちらが命を落としていただろう。
『今までは神造人型人外兵器はひとりずつ現れていました。ですが、今回は異なります』
「えーーつまり?」
『噂に聞くと、日本全国各地に神造人型人外兵器が三人も同時に現れてしまったのです』
「はぁああ!?」
悪い冗談はよしてくれ!
神造人型人外兵器の名に負けないほどの凶悪な人型兵器が、まとめて三人も登場を果たしただと!?
自然と冷や汗を掻いてしまう。
『すべてを塵に変えるための半自動の存在かもしれませんが、北海道、東京、大阪の三つの県にひとりずつ標的が姿を出現させ、通行人を無差別に惨殺しているらしいのです。たまたま目撃者とコンタクトをとりましたが、非現実的な力で殺人を繰り返しているというーーどう考えても神造人型人外兵器以外に考えられません』
「ちょっと待ってくれ! 今までの相手は一体だからこそ、仲間を連れてどうにか討伐したんだ。三人も相手にするなんて無茶すぎる!」
『焦らないでください。今回ばかりは我々も動きます。舞香さんを筆頭に、舞香さんにはゆきさんも同行させます。また、豊花さんは瑠奈さんたちと行動を共にしていただきます。なんなら柊さんや瑠衣さんのちからを借りても問題ありません』
問題ありませんーーだと?
「瑠衣や柊を連れていっても足手まといにしかならないのがわかってる! あの子らの攻撃は、まるで通用しなかったんだよ! 瑠奈ひとりいてくれなかったら、あの後どうなっていたのかがわからないほどだ! だったら私と瑠奈で出向くしかないじゃないか!」
『言質はとりましたからね?』
けほんと咳払いをした。
「第一、私はどこにいる神造人型人外兵器を狙えばいいの?」
『狙うーーというより殺処分ですね』沙鳥は少しのあいだ間を置く。『そうですね。そうしましょう。風月荘から一番近場にある東京にいる相手をお願いします』
東京か。たしかに神奈川県に一番近いのは東京だから合点がいく。
しかし、疑問がふつふつと湧いてくる。
「あのさ? 私以外にも神殺しの剣および同格の武器を所持しているわけ?」
『心配ですか。あれは豊花さんしか持ち得ていないです。ですが、舞香さんなら器用に立ち回ってくれるでしょう』
なんとも曖昧な返事だ。私すら不安になってしまう。
これ以上、仲間が亡くなっていくのはごめんだ。
話を聴くところによると、北海道には舞香とゆき、そしてサポート役として沙鳥も出向くらしい。
ともすれば、大阪には誰が行くのだろうか?
正直な話、愛のある我が家で戦力になるのは舞香、私、瑠奈、ゆき、四人くらいしか頭に浮かんできない。
『思考を読まずとも杞憂はわかります。ですが、大阪には刀子さんを筆頭に、静夜さんとありすさんが足を運んでくれます。なにより、対神兵器とも唱われる異能力者も参戦する予定なので、どうにかしてくれるでしょう』沙鳥はそれだけ言い残すと、『それでは早速、急いで現地に向かってください。検討を祈ります。相手の写真を携帯に送っておきますね』
ーーこれが神と人類の戦争だとばかりの口調で宣告した。
沙鳥は通話を切った。切ってしまった。相手の弱点や技術を教示してくれるわけでもなく……。
だが、頼まれたからには、愛のある我が家からの命令には逆らえない。
仕方なく、私はパジャマを着替えて外出用の普段着に着替えた。上着も着用し、荷物として清涼飲料水と簡易食事を鞄に詰めた。
そのまま月の間に向かいノックする。
「瑠奈! また神造人型人外兵器が発生した! しかも今回は三人纏めて行動しているらしい」
「え~……あんまりやる気が湧かないなぁ。このまえなんて足を引っ張ることしかできなかったのに。わたしに務まるかな?」
瑠奈は前回、ほとんど役に立たなかったことで、気分が落ち込んでしまっていた。
「無理を言っているのはわかる。でも、これは愛のある我が家リーダーの沙鳥の命令だ。頼むから、着替えてすぐに出かける準備をして!」
「はぁあ~。へいへい。役に立つかはわからないけど、沙鳥に言われたら逆らえないじゃんか」
第一、二回目の討伐の際、瑠奈は特別な力をつかっていた記憶もある。
柊なんかより、よっぽど役に立つだろう。
そう考えている。
「で? 敵対者の居場所はどこにいるわけさ。私なら無差別にバラバラ死体増産しちゃうかもしれないよ?」
「ターゲットを隠し撮りにした写真があるから、これを見ればだいたいのターゲットの姿や居場所は確認できると思う」
瑠奈は相手が大きく映った写真をまじまじと見たあと、ナンバー5、7、9がそれぞれ映った写真を見たあと携帯を私に手渡した。
「野郎ばかりじゃん。なおさら興味が失せるよ。成功した暁には私好みの女の子に囲まれる。それならもうちっとやる気が上がっていただろうに……はぁ、残念」
と、毎回の如く男はミジンコだと言わんばかりの感想を吐き捨て、反対に、女性の写真の対象に対しては、汚い唾を唇から垂らし笑顔になっていた。
本当に唾液で汚れたら困る!
と考えた私は瑠奈から敵対組織の女性の写真を没収した。
「大丈夫だって! わたしとしても、老若男女問わずに敵だと確信した相手は容赦なく殺処分するけど、もしも幼子や可愛娘ちゃんがいたら良心の呵責が痛むだけって話で、実際に手を出すような非人道的な真似はするつもりないから安心してよ」
今しがた少女の写真を見たとき涎が垂れているのを見逃す自分ではない。
全然信用できないんだけど……。
「そこは尊重しておくことにするよ。とにかく、今から東京都にいる神造人型人外兵器を処分に向かうね」
この台詞を筆頭に、瑠奈も渋々と重い腰を上げて立ち上がった。
「さっさと終らせることにしよ」
「ーーどうなるのか心配は収まらないけど、まえよりはマシだ。まあ、なんだ。頼りにしているよ、瑠奈」
(292.)
東京都のど真ん中に、私と瑠奈は集まっていた。
この地域から探すのは骨が苦労するかもしれないし、人が多すぎてナンバー5を確認するのは困難かもしれない。
そう考えた私は、仕方なく切り札を使うことにした。
小声で、隣の瑠奈にすら聴こえぬように『直観』と唱えた。
探すのは一苦労だ。きょうは1日長くなるぞ。
ーーと、そう思っていたときだった。
なんと、ナンバー5は挑発するかのように、目前に建つビルの屋上から飛び降りてきた。
あんな高さから飛び降りたら骨折どころじゃ済まない気がする。しかし相手は華麗に着地し、傷ひとつ負っていなかった。
「てめーらが俺様を見つけるのに手間隙かけていやがったからさ、仕方なくこっちから出向いてやったよ。感謝しろよ? 地球の膿みどもが」
「ナンバー5……好き勝手にするのはそこまでだ」
瑠奈は珍しくーーもないが、普段どおり怒りで顔を赤く染めている。
ナンバー5は厭らしい笑みを浮かべながら、まるで挑発するかのような言動を放つ。
「君たち人類に、いったいなにができるというのかな? 見せてやろうか? 私の美学を」
野次馬で集まっていた人たちに手のひらを向けた。
寸刻、手のひらから太い虹色の閃光が市民に向けて放たれた。
無論、直撃した市民の腹部に穴がぽっかりと空き、足に閃光がかすっただけの女性も片足を失った。
母親となかむつまじく遊んでいる親子を一瞬で消し炭へと変えてしまったのだ。
「なにをするんだ! おまえの相手は私たちだけだろう!?」
「いいや違うね。俺たちの的は地球上の人類すべてだ」
ナンバー5はナンバー4のように片手を太陽に向けて翳した。
「早速ですまないが、一気に終わらせてやる。あの世で感謝しな」
ナンバー5は体表を禍々しい焔で包み込んでいるため迂闊に手を出せない!
「この殺人野郎め。いや、殺戮野郎が! 無為な戦いはやめてわたしたちにかかってこい! やめないのであれば、もしやわたしたちが怖くて攻撃できないとほざくんじゃねーやな? ああ!?」
瑠奈は激昂し、台詞を言い終えるが早くナイフを取り出し風の刃をナイフの周囲にまとわりつかせる。
そのままナンバー5の腹部めがけ、瑠奈は全力で相手を切り切り裂こうとした。
しかし、しかしだーー。
「なんて弱々しい攻撃だ。想定以下の実力でしかないないじゃないか。このような輩にナンバー4は敗北をしたのか。あれでは失敗作だな」
「瑠奈! 神造人型人外兵器には物理攻撃が通用しない!」
「ちっ。チート野郎が!」
しかし、フレアと同体化したときは命からがら勝利を手にした。
ならば、やることはただひとつ!
私はナンバー5から一時的に距離を放す。
瑠奈にも思惑が伝わったのか、バックステップした。
両者ともに口を開いた。
「我と契りを結びし火の精霊よ 私にとっての光となる炎よ 我にちからを貸してくれ フレア!」
「微風瑠奈の名(な)に於(お)いて 風の精霊を喚起(かんき)する 契約(けいやく)に従(した)がい 今(いま) 此処(ここ)に現界(げんかい)せよ シルフィード!」
詠唱を終えた私たちの姿は変貌する。
それだけではない。自身が精霊と同化することにより、精霊操術を使うステップのひとつを省略でき、自由自在に精霊操術が使えるようになるのである。
「おいおい。いくらちからを高めたところで、俺様にはまだ届いていないぜ?」
と、瑠奈は私の考えていることを素早く察したのか、暴風の速度でナンバー5の背後にまわる。
「なるほど。挟みうちってわけか。面白い」
ナンバー5は余裕綽々な様子で、まずは瑠奈から処分しようと考えたのか、瑠奈に向かってからだを振り向いた。
「食らえ!」
瑠奈は鎌鼬のような風の刃を幾度となく繰り返す。
その隙に、背後ががら空きのナンバー5の背後に駆けていく。
「てめーは後回しだ。引っ込んでいろ。まずはこの生意気なガキから生首にするんだからよぉ!」
言動が冗談に聞こえない。
真に生首を集めているのだろう。
なんて、なんてサイコパスなんだろうか?
「くっ!」
幾数もの究極速度の火球が放たれ、瑠奈は避けるのに精一杯になってしまっている。風の刃は時折使うものの、大技の風の魔法は一切つかっていない。
理由を考え、すぐに察した。
ナンバー5に風を送るーーつまり酸素を送ることにより、更なる燃え上がりを見せるのだと理解しているのだ。
ならば、私にできる一か八かの賭け。負けたら死あるのみのゲーム。
だけれどやらなければいけない。
私は小声でユタカを呼び出し、神殺しの剣の形態に変態させた。
相手は瑠奈に夢中だ。見たところ、相性の問題で瑠奈が不利に見えてくる。
手にフィットした剣が現れる。
「まだまだぁあ!」
瑠奈はこちらの意図を察してくれたのか、あえて雄叫びをあげてくれた。
ナンバー5は未だに私が呆けていると考えているのだろう。未だに瑠奈ばかりを目で追っている。
瑠奈の悲鳴とも雄叫びとも捉えられる大声を発した。
そのタイミングで、私はナンバー5の背後に駆け寄った。
背中まで、あと5、4、3、2mまで接近し、ついぞナンバー5に神殺しの剣を背後から背中に突き立てた。
「……なに!? なん……だと……!?」
ナンバー5の動作が、たったの一突きで止まってしまったのだ。
やはり、神殺しの剣は神造人型人外兵器にもダメージを与えられる。今回の出来事でそれが確信に変わった。
「助かったよ、瑠奈。瑠奈が囮になってくれなかったら今頃全滅していたかもしれない」
「そっちこそ、神殺しの剣? とかいう切り札があるならさっさと使えばよかったじゃん」
「いや、神殺しの剣は相手に隙がないと使えないんだよ。だからこそ、背後からナンバー5を攻めて背後に隙をつくってくれたからこそ、倒すことができたんだ」
すると、ナンバー5は『無念』とだけ残して光の粒子に変貌し、さらさらと辺りに飛翔していった。
これで残るはナンバー3、ナンバー6、ナンバー7、ナンバー8、ナンバー9、ナンバー10の計6人だ。澄もナンバー1としているが、すぐにはコントロールできないと謳っていた。
だから実質残り6人と考えていいだろう。
……舞香やゆき、沙鳥に刀子さん、静夜、ありすの実力で、果たして相手と渡り合えるのだろうか?
いざとなったら、私も出向くしかないだろう。
なにせ、私は唯一神造人型人外兵器に通用する神殺しの剣を所持しているのだから……。
だけど、刀子さん側にも神に抵抗する異能力者がいると聞いたような……まあいい。あとがどうなるかはみんなの戦い次第だ。
やっと帰宅して落ち着いた状態で、自室に帰り、ようやく私は安眠できた。
夢の内容が悪夢だったため、安眠とは呼べないかも知れないが……熟睡とまではいかなくても睡眠を摂取できたのは間違いない。
ちょうど起床したタイミングで、スマホの着信音が流れた。
いやな予感しかしないが、出る以外に方法はないだろう。
これでも愛のある我が家の正規メンバーであり、なおかつ豊かな生活のリーダーを任命されているのだから……。
スマホの通話ボタンを上にスライドして耳に当てた。
「沙鳥、おはよーー」
『緊急事態です。これからの目標を端的に説明するために深夜の連絡申し訳ありません。が、こればかりは伝えておきます』
沙鳥おはよう、の、『う』の分に言葉を重ねるほど、慌ただしく挨拶を言わせてもらえないほど、電話口からでも沙鳥の焦りがこちらに伝わってくる。
「緊急事態って……このあいだナンバー4を倒したばかりだよ?」
『それに関してはご苦労様です。しかし、新たな問題が発生しました』
まさか、まさかまさかまさか。また神造人型人外兵器が出現したとでも言いたいのか。
毎回の如く、命からがらでなんとか勝利を掴めただけだぞ。運が味方をしなければこちらが命を落としていただろう。
『今までは神造人型人外兵器はひとりずつ現れていました。ですが、今回は異なります』
「えーーつまり?」
『噂に聞くと、日本全国各地に神造人型人外兵器が三人も同時に現れてしまったのです』
「はぁああ!?」
悪い冗談はよしてくれ!
神造人型人外兵器の名に負けないほどの凶悪な人型兵器が、まとめて三人も登場を果たしただと!?
自然と冷や汗を掻いてしまう。
『すべてを塵に変えるための半自動の存在かもしれませんが、北海道、東京、大阪の三つの県にひとりずつ標的が姿を出現させ、通行人を無差別に惨殺しているらしいのです。たまたま目撃者とコンタクトをとりましたが、非現実的な力で殺人を繰り返しているというーーどう考えても神造人型人外兵器以外に考えられません』
「ちょっと待ってくれ! 今までの相手は一体だからこそ、仲間を連れてどうにか討伐したんだ。三人も相手にするなんて無茶すぎる!」
『焦らないでください。今回ばかりは我々も動きます。舞香さんを筆頭に、舞香さんにはゆきさんも同行させます。また、豊花さんは瑠奈さんたちと行動を共にしていただきます。なんなら柊さんや瑠衣さんのちからを借りても問題ありません』
問題ありませんーーだと?
「瑠衣や柊を連れていっても足手まといにしかならないのがわかってる! あの子らの攻撃は、まるで通用しなかったんだよ! 瑠奈ひとりいてくれなかったら、あの後どうなっていたのかがわからないほどだ! だったら私と瑠奈で出向くしかないじゃないか!」
『言質はとりましたからね?』
けほんと咳払いをした。
「第一、私はどこにいる神造人型人外兵器を狙えばいいの?」
『狙うーーというより殺処分ですね』沙鳥は少しのあいだ間を置く。『そうですね。そうしましょう。風月荘から一番近場にある東京にいる相手をお願いします』
東京か。たしかに神奈川県に一番近いのは東京だから合点がいく。
しかし、疑問がふつふつと湧いてくる。
「あのさ? 私以外にも神殺しの剣および同格の武器を所持しているわけ?」
『心配ですか。あれは豊花さんしか持ち得ていないです。ですが、舞香さんなら器用に立ち回ってくれるでしょう』
なんとも曖昧な返事だ。私すら不安になってしまう。
これ以上、仲間が亡くなっていくのはごめんだ。
話を聴くところによると、北海道には舞香とゆき、そしてサポート役として沙鳥も出向くらしい。
ともすれば、大阪には誰が行くのだろうか?
正直な話、愛のある我が家で戦力になるのは舞香、私、瑠奈、ゆき、四人くらいしか頭に浮かんできない。
『思考を読まずとも杞憂はわかります。ですが、大阪には刀子さんを筆頭に、静夜さんとありすさんが足を運んでくれます。なにより、対神兵器とも唱われる異能力者も参戦する予定なので、どうにかしてくれるでしょう』沙鳥はそれだけ言い残すと、『それでは早速、急いで現地に向かってください。検討を祈ります。相手の写真を携帯に送っておきますね』
ーーこれが神と人類の戦争だとばかりの口調で宣告した。
沙鳥は通話を切った。切ってしまった。相手の弱点や技術を教示してくれるわけでもなく……。
だが、頼まれたからには、愛のある我が家からの命令には逆らえない。
仕方なく、私はパジャマを着替えて外出用の普段着に着替えた。上着も着用し、荷物として清涼飲料水と簡易食事を鞄に詰めた。
そのまま月の間に向かいノックする。
「瑠奈! また神造人型人外兵器が発生した! しかも今回は三人纏めて行動しているらしい」
「え~……あんまりやる気が湧かないなぁ。このまえなんて足を引っ張ることしかできなかったのに。わたしに務まるかな?」
瑠奈は前回、ほとんど役に立たなかったことで、気分が落ち込んでしまっていた。
「無理を言っているのはわかる。でも、これは愛のある我が家リーダーの沙鳥の命令だ。頼むから、着替えてすぐに出かける準備をして!」
「はぁあ~。へいへい。役に立つかはわからないけど、沙鳥に言われたら逆らえないじゃんか」
第一、二回目の討伐の際、瑠奈は特別な力をつかっていた記憶もある。
柊なんかより、よっぽど役に立つだろう。
そう考えている。
「で? 敵対者の居場所はどこにいるわけさ。私なら無差別にバラバラ死体増産しちゃうかもしれないよ?」
「ターゲットを隠し撮りにした写真があるから、これを見ればだいたいのターゲットの姿や居場所は確認できると思う」
瑠奈は相手が大きく映った写真をまじまじと見たあと、ナンバー5、7、9がそれぞれ映った写真を見たあと携帯を私に手渡した。
「野郎ばかりじゃん。なおさら興味が失せるよ。成功した暁には私好みの女の子に囲まれる。それならもうちっとやる気が上がっていただろうに……はぁ、残念」
と、毎回の如く男はミジンコだと言わんばかりの感想を吐き捨て、反対に、女性の写真の対象に対しては、汚い唾を唇から垂らし笑顔になっていた。
本当に唾液で汚れたら困る!
と考えた私は瑠奈から敵対組織の女性の写真を没収した。
「大丈夫だって! わたしとしても、老若男女問わずに敵だと確信した相手は容赦なく殺処分するけど、もしも幼子や可愛娘ちゃんがいたら良心の呵責が痛むだけって話で、実際に手を出すような非人道的な真似はするつもりないから安心してよ」
今しがた少女の写真を見たとき涎が垂れているのを見逃す自分ではない。
全然信用できないんだけど……。
「そこは尊重しておくことにするよ。とにかく、今から東京都にいる神造人型人外兵器を処分に向かうね」
この台詞を筆頭に、瑠奈も渋々と重い腰を上げて立ち上がった。
「さっさと終らせることにしよ」
「ーーどうなるのか心配は収まらないけど、まえよりはマシだ。まあ、なんだ。頼りにしているよ、瑠奈」
(292.)
東京都のど真ん中に、私と瑠奈は集まっていた。
この地域から探すのは骨が苦労するかもしれないし、人が多すぎてナンバー5を確認するのは困難かもしれない。
そう考えた私は、仕方なく切り札を使うことにした。
小声で、隣の瑠奈にすら聴こえぬように『直観』と唱えた。
探すのは一苦労だ。きょうは1日長くなるぞ。
ーーと、そう思っていたときだった。
なんと、ナンバー5は挑発するかのように、目前に建つビルの屋上から飛び降りてきた。
あんな高さから飛び降りたら骨折どころじゃ済まない気がする。しかし相手は華麗に着地し、傷ひとつ負っていなかった。
「てめーらが俺様を見つけるのに手間隙かけていやがったからさ、仕方なくこっちから出向いてやったよ。感謝しろよ? 地球の膿みどもが」
「ナンバー5……好き勝手にするのはそこまでだ」
瑠奈は珍しくーーもないが、普段どおり怒りで顔を赤く染めている。
ナンバー5は厭らしい笑みを浮かべながら、まるで挑発するかのような言動を放つ。
「君たち人類に、いったいなにができるというのかな? 見せてやろうか? 私の美学を」
野次馬で集まっていた人たちに手のひらを向けた。
寸刻、手のひらから太い虹色の閃光が市民に向けて放たれた。
無論、直撃した市民の腹部に穴がぽっかりと空き、足に閃光がかすっただけの女性も片足を失った。
母親となかむつまじく遊んでいる親子を一瞬で消し炭へと変えてしまったのだ。
「なにをするんだ! おまえの相手は私たちだけだろう!?」
「いいや違うね。俺たちの的は地球上の人類すべてだ」
ナンバー5はナンバー4のように片手を太陽に向けて翳した。
「早速ですまないが、一気に終わらせてやる。あの世で感謝しな」
ナンバー5は体表を禍々しい焔で包み込んでいるため迂闊に手を出せない!
「この殺人野郎め。いや、殺戮野郎が! 無為な戦いはやめてわたしたちにかかってこい! やめないのであれば、もしやわたしたちが怖くて攻撃できないとほざくんじゃねーやな? ああ!?」
瑠奈は激昂し、台詞を言い終えるが早くナイフを取り出し風の刃をナイフの周囲にまとわりつかせる。
そのままナンバー5の腹部めがけ、瑠奈は全力で相手を切り切り裂こうとした。
しかし、しかしだーー。
「なんて弱々しい攻撃だ。想定以下の実力でしかないないじゃないか。このような輩にナンバー4は敗北をしたのか。あれでは失敗作だな」
「瑠奈! 神造人型人外兵器には物理攻撃が通用しない!」
「ちっ。チート野郎が!」
しかし、フレアと同体化したときは命からがら勝利を手にした。
ならば、やることはただひとつ!
私はナンバー5から一時的に距離を放す。
瑠奈にも思惑が伝わったのか、バックステップした。
両者ともに口を開いた。
「我と契りを結びし火の精霊よ 私にとっての光となる炎よ 我にちからを貸してくれ フレア!」
「微風瑠奈の名(な)に於(お)いて 風の精霊を喚起(かんき)する 契約(けいやく)に従(した)がい 今(いま) 此処(ここ)に現界(げんかい)せよ シルフィード!」
詠唱を終えた私たちの姿は変貌する。
それだけではない。自身が精霊と同化することにより、精霊操術を使うステップのひとつを省略でき、自由自在に精霊操術が使えるようになるのである。
「おいおい。いくらちからを高めたところで、俺様にはまだ届いていないぜ?」
と、瑠奈は私の考えていることを素早く察したのか、暴風の速度でナンバー5の背後にまわる。
「なるほど。挟みうちってわけか。面白い」
ナンバー5は余裕綽々な様子で、まずは瑠奈から処分しようと考えたのか、瑠奈に向かってからだを振り向いた。
「食らえ!」
瑠奈は鎌鼬のような風の刃を幾度となく繰り返す。
その隙に、背後ががら空きのナンバー5の背後に駆けていく。
「てめーは後回しだ。引っ込んでいろ。まずはこの生意気なガキから生首にするんだからよぉ!」
言動が冗談に聞こえない。
真に生首を集めているのだろう。
なんて、なんてサイコパスなんだろうか?
「くっ!」
幾数もの究極速度の火球が放たれ、瑠奈は避けるのに精一杯になってしまっている。風の刃は時折使うものの、大技の風の魔法は一切つかっていない。
理由を考え、すぐに察した。
ナンバー5に風を送るーーつまり酸素を送ることにより、更なる燃え上がりを見せるのだと理解しているのだ。
ならば、私にできる一か八かの賭け。負けたら死あるのみのゲーム。
だけれどやらなければいけない。
私は小声でユタカを呼び出し、神殺しの剣の形態に変態させた。
相手は瑠奈に夢中だ。見たところ、相性の問題で瑠奈が不利に見えてくる。
手にフィットした剣が現れる。
「まだまだぁあ!」
瑠奈はこちらの意図を察してくれたのか、あえて雄叫びをあげてくれた。
ナンバー5は未だに私が呆けていると考えているのだろう。未だに瑠奈ばかりを目で追っている。
瑠奈の悲鳴とも雄叫びとも捉えられる大声を発した。
そのタイミングで、私はナンバー5の背後に駆け寄った。
背中まで、あと5、4、3、2mまで接近し、ついぞナンバー5に神殺しの剣を背後から背中に突き立てた。
「……なに!? なん……だと……!?」
ナンバー5の動作が、たったの一突きで止まってしまったのだ。
やはり、神殺しの剣は神造人型人外兵器にもダメージを与えられる。今回の出来事でそれが確信に変わった。
「助かったよ、瑠奈。瑠奈が囮になってくれなかったら今頃全滅していたかもしれない」
「そっちこそ、神殺しの剣? とかいう切り札があるならさっさと使えばよかったじゃん」
「いや、神殺しの剣は相手に隙がないと使えないんだよ。だからこそ、背後からナンバー5を攻めて背後に隙をつくってくれたからこそ、倒すことができたんだ」
すると、ナンバー5は『無念』とだけ残して光の粒子に変貌し、さらさらと辺りに飛翔していった。
これで残るはナンバー3、ナンバー6、ナンバー7、ナンバー8、ナンバー9、ナンバー10の計6人だ。澄もナンバー1としているが、すぐにはコントロールできないと謳っていた。
だから実質残り6人と考えていいだろう。
……舞香やゆき、沙鳥に刀子さん、静夜、ありすの実力で、果たして相手と渡り合えるのだろうか?
いざとなったら、私も出向くしかないだろう。
なにせ、私は唯一神造人型人外兵器に通用する神殺しの剣を所持しているのだから……。
だけど、刀子さん側にも神に抵抗する異能力者がいると聞いたような……まあいい。あとがどうなるかはみんなの戦い次第だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる