黒ずきんのアーニャ ~刻まれる快楽の呪い~

コロンド

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Ep.3-3 《魅了の悪魔》

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「はぁ……はぁ……」

まだ何もされていないのに呼吸が荒くなる。
背後からリリアに優しく抱き締められると、それだけで体はどんどん熱くなっていく。
本当は今すぐその腕を払いのけて距離を取りたいのに、それができない。
アーニャはリリアの瞳を見たその瞬間から、全身の力が抜けて一切抵抗することができなくなっていた。

『で、でたー! リリア選手のサキュバスモード! は、肌面積が多くて……す、すごくえっちです……』

『アーニャ選手、どうやら魅了のデバフ効果を受けてしまったようですね。魅惑の悪魔サキュバスの能力。その効果が続く限り、アーニャ選手はリリア選手に一切歯向かうことはできません』

(くっ……そんな、はずが……っ!)

プレイヤーの能力を一時的に変化させるデバフの存在自体は知っているが、魅了などという効果をアーニャは知らない。
おそらくはこの裏の世界、ベータの世界だけに存在するデバフ効果なのだろう。
どんなにアーニャが抵抗しようという意思を持っても、体はまるで言うことを聞いてくれない。

「あれれ、まだ何もしてないのに、アーニャちゃん体ぴくぴくしてるよ? どうしたの? もしかして、みんなの視線で感じちゃった? アーニャちゃんはドMなのかな?」

「ち、違う……ッ!」

自分に言い聞かせるように、アーニャは必死に首を振って否定する。

「ふふっ、口先だけはまだ抵抗できるんだ。じゃあその生意気なお口、塞いであげる」

「え、な、やめっ――――ンぅうッ!?」

アーニャの唇がリリアの唇で塞がれる。
口の中から甘い香りがして、不思議と不快感はない。
一瞬甘い感覚に蕩けるも、アーニャはハッとして抵抗を試みる。
だが抵抗の意思を見せた頃には、すでに後頭部をギュッと掴まれて、もういくら頭を振っても唇を離すことはできなかった。

「んっ、ぁむ……」

「んッ……んぁンンッ!?」

リリアはゆっくりと味わうようにアーニャと唇を合わせるのに対し、アーニャは背筋を反らせながらヒクヒクと体を震わせる。

「キャー、リリア様~~!!」
「まぁまぁリリア様ったら、扇情的な口付けですわね」
「すごい、アーニャさんもあんなに顔真っ赤にして、すごく気持ち良さそう……」

会場に響く、観客達の黄色い声。
嫌でも聞こえてくるその声に、アーニャは耳を塞ぎたくなる。

(ん……うるさい、見る……なぁ…………ぁ、ンぁっ!?)

そしてその刺激は不意にやってきた。
観客達の方へ意識が動いていたアーニャを狙い撃ちするかのように、リリアの舌がアーニャの口内に侵入する。

「ンンッ!? ンぅううッ!?」

甘く蕩ける感覚が口内で暴れまわる。
自分の舌を好き勝手に舐めとられ、アーニャはもうどう抵抗したらいいか分からなくなる。
女性に口内を責められるなんて初めての経験で、アーニャはただ体を痙攣させて、悶えることしかできない。

「ん、あむぅ……んんっ……」

『わ、わーッ! え、えっちです! リリア選手のえっちな舌責めでアーニャ選手、内股になって体、ビクビク震えてます……!』

自身の顔を手で隠し、クランは指の隙間から試合を眺める。

『リリア選手がサキュバスモードになった時点で分かっていたことですが…………これはもう、だめかもしれませんね』

一方ジューンは冷静に試合を見つめる。
そしてここからアーニャが逆転して勝利することは絶望的であることを悟る。

「んんっ、ぷはぁ…………ふぅ、アーニャちゃん、顔真っ赤だよ……」

数十秒間口内を舌責めされた後、リリアは急に唇を離す。

「ぁ……んぁ……っ」

リリアが口を離すと二人の口元を涎の糸が引き、そして途切れる。
抱きしめるリリアの腕から解放されたアーニャは、とろんと蕩けた表情でその場にペタンと座り込む。
全身が熱く疼いて、立ち上がることもできない。

「みてみて、あの子、もっと欲しそうな顔してる」
「完全にリリア様の虜になってしまったのね」
「しょうがないわ、リリア様にあんなことされたら誰だってそうなっちゃうもの」

観客の女性たちに好き勝手に言われ、アーニャは悔しさで歯を噛みしめる。

「ち、違う、の……ぐぅ……!」

だけど体は言うことを聞かない。
腰が砕けたように足に力が入らず、床に座った体勢から立ち上がることもできない。
リリアはそんなアーニャの背後に回り込み、もたれかかるようにしてアーニャを抱きしめる。

「ギャラリーの子達にあんなこと言われてるけど…………どうする、アーニャちゃん。もうちょっと頑張って抵抗してみる? それとも全部諦めて、私と一緒に気持ちよくなる? 私はどっちでもいいけどね」

「んくぅ……っ、抱きつくなぁ……っ!」

「あ、もしかして私のおっぱい押し当てられて、アーニャちゃんえっちな気分になっちゃってる? えへへ、嬉しいな」

「ぐっ、勝手なこと……言わないで……っ!」

言葉では否定していても、アーニャの体はどんどん熱くなっていく。
押し付けられる柔らかい胸の感覚。
耳元に吹きかけられる声。
鼻腔をくすぐる甘い蜜のような香り。
その一つ一つが、アーニャに官能的な刺激を与える。
リリアはただサキュバスという設定上の能力を有しているだけではなく、その一挙一動は人を魅惑することに特化していた。

「ねぇ、こっち、見て」

「……っ!」

アーニャの耳元でリリアが囁く。
ぞくりとした悪寒を感じた後、アーニャの視線が意思とは別に動き出す。

(くっ……私の体なのに、勝手に……動くなぁ……っ!)

いくら心の中で抵抗しても、もはやアーニャの体に自由はない。
リリアと視線が重なった瞬間、またドクンと胸が跳ねる。

「――くぅッ!」

そしてその視線から、目を離せなくなる。

「いい子。じゃあ今度は、手、出して」

言われるがままに、アーニャの右手が勝手に動く。
プルプルと震えるその手が、リリアの方へ近づいていく。

「はーい、よくできました。そのままその位置で、固定しててね」

アーニャは何をされるのか分からないまま、リリアの行動を見つめていた。
そしてリリアがどこかから取り出したソレを目にした瞬間、背筋がゾクリと震える。
ベータアリーナにやってきてからもう何度も目にした呪いの注射器、それをリリアは右手に握っていた。

『ああーっと! あれは呪いの注射器です! アーニャ選手、また新たに呪いを付与されてしまうのでしょうか!?』

アーニャの足が微かに動く。
ゆっくりと動く足からは微かに抵抗の意思を感じるが、赤子のように弱い力では自身の体を動かすこともできない。
その間にもリリアはアーニャの袖を捲りあげ、注射針を右腕に近づける。

(くっ、動け……動けぇえええッ!)

プルプルと震える自分の右腕。
だけどどんなに強く念じても、その腕がその場から動くことはない。

「ちょっとチクっとするけど、我慢してね」

「や、やめっ……やっ、いやぁああああッ!!」

注射針の先端が、アーニャの右腕に刺さる。
そしてチクリとした痛みがやってきて、注射器を刺された場所がどんどん熱くなっていく。
もうすでに呪いまみれのアーニャの体に、新たな呪いが付与される。

『あーっと! アーニャ選手、呪いの注射を打ち込まれてしまったー!』

「やッ、うそ……また……ッ! ん、ぁあッ……か、からだ、あつい……ッ!」

早速呪いの効果が出てきたのか、体がどんどん風邪を引いた時のように熱くなっていく。
だが今までの呪いのような、刺された箇所の感度を上げる呪いとはまた違う感覚。
疼くような熱さが、胸の中心から少しづつ広がっていく。
おそらくは感度上昇の呪いとはまた別物の呪いなのだろうが、それがどんな効果の呪いなのかは分からない。

「ぐっ……な、なにを……したの……ッ!」

「さぁね、どんな効果の呪いだと思う?」

分からない。
まるで分からないが、鼓動がどんどん早くなっていく感覚だけは確かに感じる。

「じゃあヒント。ほら、みんなの方を見てファンサービスしてあげよ」

「んぅ……っ」

リリアはアーニャの頬を掴み、無理やりその視線を観客席が映るモニターの方向へと向けさせる。
観客席の女性たちの視線が一斉にアーニャの方へ集中する。
蔑むような視線、哀れむような視線、心配するような視線。
それらの一つ一つが直接心臓に突き刺さるような錯覚を感じ、ドクンと胸が跳ね上がる。

(んぅう……ッ!? な、なに、この感覚ッ!)

加速する心拍数。
咄嗟にアーニャは視線を逸らす。

「視線逸らしちゃ、だめ」

だがリリアはそれを許さない。
リリアの指がアーニャの首筋を撫で、鎖骨を通り過ぎ、胸をツンとつつく。

「ひぁあああッ!?」

「ここ、敏感なんでしょ? ほら、言うこと聞かないともっと虐めちゃうよ? みんなの方、見て……」

「んぐ、ぅうう……っ!」

もう一度アーニャは観客席の方へ視線を向ける。
だが刺すような視線に耐えられなくて、アーニャはすぐに視線を背けてしまう。

「ねぇ、なんですぐに視線逸らすの? また胸ツンツンしてもらいたいの?」

リリアはそう囁きながら、アーニャの胸をツーっと撫でる。

「ひぁあッ!? 指、だめ……っ!」

過去にかけられた呪いのせいで敏感になったアーニャの胸は、服の上から撫でられる程度の刺激でさえビクンと震えてしまう。

「ちょっと触られるだけであんなに感じて、すごく敏感なのねあの子」
「最初はあんなに威勢よかったのに、もう顔がトロトロよ」
「あぁ~、私もリリア様にあんな風に虐められたいっ!」

アーニャにかけられた呪いのことを知らない観客たちは、悶えるアーニャの姿を見てクスクスと笑う。

(いやっ、見るなぁ……ッ!)

観客席からの視線を意識するたびに、胸が張り裂けそうなくらい熱くなり、体はどんどん敏感になっていく。
普通に体を責められるのとはまるで違う感覚に、アーニャはただただ困惑していた。

「ねぇ分かる? みんな、アーニャちゃんが気持ちよくなる姿を見てうっとりしてるんだよ。みんなにこんな姿見られて、恥ずかしいよね。でもその恥ずかしいのが、すごくくすぐったくて…………気持ちいいんだよね」

「くぅ……っ、一体、何の呪いを、かけたの……っ!?」

痺れを切らして叫ぶアーニャに、リリアはクスリと笑って答える。

「――羞恥による快楽値の上昇。それがアーニャちゃんにかけられた、新しい呪いだよ」

「……え?」

アーニャにだけ聞こえる声でリリアが囁く。
その言葉の意味がうまく理解できず、アーニャは一瞬固まる。

「つまりね、今のアーニャちゃんは、恥ずかしいって気持ちがそのまま気持ちいいって感覚に繋がるってコト」

リリアが目を背けるアーニャの頬を掴み、再び観客席の方へと無理やり視線を向けさせる。

「――っ!? いやぁッ!」

刺さるような観客達の視線を感じた瞬間、胸がドクンと跳ねてアーニャはすぐさま視線をそらす。
そこでようやくアーニャはこの呪いの本質を理解する。
これは身体的に弱点を増やす呪いではなく、意識や精神に新たな弱点を作る、そういった類の呪い。
体に触れずとも意識するだけで快楽を感じてしまうこの呪いは、想像以上に厄介な呪いなのかもしれない。

「アーニャちゃんは自分の恥ずかしい姿を見られると、それだけで体がビクビクって感じちゃう体になってしまいました。実はこの呪い、誰かに与えるの初めてでね。この呪いをかけた相手にやってみたいことが一つあったんだよねー、何か分かる?」

そんなこと言われても、リリアの考えていることなど分かるはずがない。
アーニャは何も言わず、極力外部からの情報を入れないように床を見つめる。
リリアや観客のことを意識するだけで自身の羞恥心が刺激されてしまうので、そうするしかなかった。

「ふふっ、そっぽ向いてかわいーんだ。それじゃ行ってみようか、黒ずきんアーニャの羞恥絶頂チャレンジ! これからアーニャちゃんの気持ちいいところを……一切触らずに絶頂させてあげるね」

「え……な?」

まだ何も理解していないアーニャの耳元に、リリアの口元が近づく。

「さぁ、前を向きなさい」

そして唱えられるその言葉。

「い、あ……っ!」

勝手に動く自分の視線。
その指示に、アーニャは逆らうことはできない。
今まで意識に入れないようにしていた無数の視線が、一気にアーニャを突き刺して、強い痺れが全身を襲う。
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