黒ずきんのアーニャ ~刻まれる快楽の呪い~

コロンド

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エピローグ

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見覚えのある天井だった。
上半身を起こし辺りを見回すと、そこに見えるのはいつぞやお世話になった医務室の光景。
衣服は傷一つない、いつもの黒ずきん衣装に戻っていた。
確かあの時はレオに敗北して意識を失って――
そこまで思い出したところでアーニャは自分のすぐ真横に座る誰かの視線に気づく。

「んっ、ううっ……ミヨさん……?」

隣にはミヨがいた。

「サナちゃんはもう自由よ」
「え……?」
「一応、サナちゃんに勝ったら彼女を解放するっていう約束だったからね。彼女が正気を取り戻して闘う意志を失った時点であなたの勝ち……ってことにしてあげる、今回はね」

含みのある言い方で、ミヨはそう告げる。

「サナちゃんの、呪いは……?」
「もちろん解除してあげたわ。ついでにサナちゃんがあなたに与えた呪いも一緒にね。ああでも、それ以外の呪いは解いてないわよ? この件とそれまでの件は関係ないからね」

そう言ってミヨは小さなケースをアーニャに向けて放り投げた。
それを慌ててキャッチする。
感覚遮断グミの入ったケースだった。
呪いの状態がそのままなら少し服が擦れるだけで甘い痺れを感じてしまうはずだ。
しばらく意識を失っていたにも関わらず、今それを感じないのは感覚遮断グミの効果が発揮されているからだろう。
寝ている間にミヨがアーニャの口にグミを与え続けていたのだろうか。
そんなことを考えながら、アーニャはグミを一粒取り出しそれを口に放り込む。

「あそこまでの快楽に耐えられる精神力の持ち主、多分あなた以外にいないからね。あなたにはもう少し私に付き合って貰うわよ」
「……いい迷惑なんですけど」
「だったらもう一度、私が主催するベータアリーナの大会に出てみる? もちろん優勝すればあなたの呪いを全て解除してあげる」

ミヨは立ち上がり、医務室の扉の方へ歩いていく。

「私はいつでも歓迎するわよ」

最後にそう言い残して、ミヨは部屋を後にした。
部屋は静寂に包まれ、アーニャはドサリと頭からベッドに体重を預ける。
寝起きではあるものの、疲れが取れた感覚はまるでなかった。

「ログアウトするか……」

そう口ずさんで腕輪端末に手を伸ばそうとした瞬間、ガラッと音を立てて医務室の扉が開く音がした。

「アーニャちゃ~~ん!」

耳をつんざくうるさい声が響いた。

「こら、医務室ででかい声出すな」
「痛っ!」

上半身を起こして扉の方を見ると、見慣れた二人の姿があった。

「あっ……ルリちゃん、それにエイミーさん」

見舞いに来た様子のギルドメンバーの二人は、アーニャと目を合わせると安心したように微笑んだ。

「またぶっ倒れたんだって? 今度は何したの?」
「いやぁその……こっそり修行と言いますか……」
「あんま無茶しちゃだめだよ~。それにアーニャちゃんが強くなりすぎると、私の立場がなくなるじゃん」

適当な言い訳に対して、疑う素振りすら見せないルリ。
だがエイミーの方は冷静に見据えるような瞳でアーニャを見つめる。
すでに何かしら勘づいているのかもしれないが、彼女がこの場で何かを問いただすようなことはしなかった。

「裏で練習するのもいいけど、ちゃんとギルドの集まりにも顔出しなよ? ルリなんてアーニャがいないといつもつまんなそうな顔してるんだから」
「えーそんなことないですよー……そんなことあるのかなぁ……?」
「ふふっ……はい、ちゃんと顔出すようにしますね」

アーニャはしばらくの間、二人と他愛ない雑談を交わす。
そんな彼女の視線の隅に、ゆらりと動く黒い影が見えた。
開きっぱなしになった医務室の扉の陰に隠れる人影。
そこにいたのはお揃いの、黒ずきん衣装を身につけたサナだった。
目があったアーニャは彼女に向けておいでおいでと手招きをする。
するとサナの表情はぱあっと明るくなって、こちら歩み寄ってくる。
勢い余ってアーニャのベッドにダイブしてくるサナ。
それを抱きしめるアーニャ。
驚くルリとエイミー。

濁りのないこの暖かい空気感が、なんだかとても懐かしいような気がした。
アーニャを取り巻く問題の全てが解決したわけではない。
だけど今この瞬間だけはそんなことは忘れて、アーニャはこの心地よい時間を享受することにした。
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